2004 No.21
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相手を「再発見」

――温総理の訪欧は中国・欧州関係をグレードアップさせた

馮仲平 中国現代国際関係研究院

中国の温家宝総理は5月2日から13日にかけて、ドイツ、イギリス、イタリア、ベルギー、アイルランドの欧州5カ国およびブリュッセルにあるEU本部を公式友好訪問した。近年来、中国が欧州を前よりずっと重視するようになったことを人々ははっきり感じ取っている。中国の新しい政府の指導者は就任後、中国の外交政策における欧州の地位をいちだんと高めた。昨年10月、中国は最初の「中国の対EU政策文書」を発表し、今年2月、中国の胡錦涛国家主席はフランスを訪問した。温総理は「25カ国の新EU」を訪問する最初の外国指導者である。

温総理の欧州訪問は、中国と欧州の双方がともに満足する成果をあげた。

第一、欧州諸国の企業界関係者との広範な接触を通じて、中国と欧州経済界の相互理解を増進した。ドイツ、イタリア、イギリスなど諸国の経済界は、中国経済の快速の発展に強い興味を抱いているが、中国経済の中に存在する問題にかなり疑問と憂慮をもっている。温総理に随行した中国企業家代表団も、欧州市場、とくに以前の社会主義国を主とする10カ国のEU加盟が中欧貿易に与える影響をあまり理解していない。温総理は欧州に滞在した11日間に、欧州企業界関係者と最も多く接触した。この接触は、双方の理解増進に重要なチャンスをもたらした。双方も温総理訪欧の機を利用して一連の重要な契約と協力意向書を結んだ。具体的に言って、ドイツは中国にとってEU最大の貿易パートナーであり、双方の貿易額は中欧貿易総額の三分の一を占め、2003年は500億ユーロに近い金額に達した。温総理とシュレーダー首相はベルリンで主な商業契約6件の調印式に出席した。シュレーダー首相は、両国の目標は2010年に双方の貿易額を倍増させることであると語った。中独両国総理はまたハイテク面で協力を強化するとともにそれぞれ自国の中小企業がより多く対話するよう励ますことを決定した。温総理はシュレーダー首相に、中国政府が貸付、外国為替、保険、金融、投資便利など五つの方面から企業の対独投資を支持することを承諾した。イギリスはEUの中では対中投資最多の国である。温総理が訪問した際、双方は金額が13億ドルに達する契約を結んだ。李肇星中国外交部長によれば、温総理の訪欧期間に、中国は合計56件の貿易契約、27件の合資契約、多くの合資合作意向取り決めを結び、金額は数十億ドルにのぼったという。

第二、中国と五つの訪問国との政治・戦略対話メカニズムを構築した。中国と欧州の指導者は経済・貿易関係強化の重要性を強調したばかりではなく、同時に今後双方は政治と戦略など分野での対話と協力を強化すべきだと一致して考えた。中国とEUは1998年に年度サミット会議制度を確立したが、EU加盟の各国とはずっと二国間の類似のメカニズムを構築していない。温総理の今回の訪問はこの方面で突破をとげた。例えば、中国とドイツは年度会見メカニズムと「中独対話フォーラム」メカニズムを構築した。中国とベルギーは政治対話強化の共同声明を初めて発表した。中国とイタリアは両国各部門、各分野の協力を統一的に計画、協調する「政府委員会」を設立した。中国とイギリスは「中英関係相互促進グループ」の役割を引き続き強化すると同時に、ブレア首相が来年訪中し、その後両国総理が毎年1回会見することを決定した。

第三、中欧関係に存在する一部の際立った問題の解決を推し進めた。温総理は訪問中に、EUができるだけ早く中国の完全市場経済の地位を承認するよう促した。それに対する反応として、今年6月にEUの執行機構――EU委員会(European Commission)が初歩的な評価の意見を公布する。ブレア英首相らの指導者は中国総理の呼びかけを支持した。温総理は会談で、EUが対中国武器禁輸を取り消すよう呼びかけた。この問題の上では、シュレーダー独首相、フェルホフスタット・ベルギー首相らは中国の立場を支持する態度を改めて表明した。最近中国を訪問したEU委員会委員長プローディ氏は中国側が提出したこの二つの問題に対しずっと積極的な態度をとっている。氏は温総理と会談した後に行った記者会見で、「これらの問題が解決されれば、中国にとってもEUにとってもいいことである」と述べた。

温総理の訪欧が上述の重要な成果をあげたことは、なにを物語っているのだろうか。それは中国と欧州が相手を真に重視し始めたことを物語っている。言い換えれば、中国と欧州は相手を「再発見」したのである。

中国が欧州を重視するのは、主に次のことを考慮しているからである。第一、中国の経済発展における欧州の重要性は上昇のすう勢を呈している。2003年の中国とEUの貿易額は1250億ドルに達し、日本とアメリカに次いで、中国の三番目の大貿易パートナーとなった。今年5月1日、ポーランド、ハンガリーなど諸国の加盟につれて、EUの人口は4億5000万に増え、世界で中国とインドに次いで「商品、労務、資本、人員」の自由流通を実現する三番目の統一的な大市場となった。中国はEU市場を重視しているばかりでなく、欧州諸国の対中投資とハイテク譲渡も非常に重視している。これは中国の貿易市場多元化に役立つばかりでなく、アメリカや日本と比べても、中国は欧州諸国からハイテクを輸入しやすくなる。このほか、イギリス、アイルランドなど諸国は私営化、社会福祉制度、技術成果転化、環境保全などの分野で豊富な経験を積んでいる。これらも中国がさし迫って必要なものである。第二、欧州諸国の多くは中国の重要な外交パートナーであり、地域と国際実務の中で中国と協力するのを望んでいる。中欧関係がまだまだ欧米関係ほど密接ではないにもかかわらず、冷戦後に欧州がアメリカの保護を受ける感覚がすでに大幅に薄くなり、国際実務の中での独立性が大きくなったことを、人々は明らかに留意している。フランスとドイツを代表とする欧州諸国とアメリカがイラクの危機をめぐって生じた矛盾は、大西洋西岸の間に世界をどう管理するか、どのような世界新秩序を確立するかなどの問題をめぐって重大な食い違いが存在していることを示している。EUの共同外交と安全政策高級代表ソラナ氏は昨年論文を発表し、その中で、EUは新世界を支える支柱の一つとなるべきだと指摘している。欧米と違って、中国は多くの重要な地域とグローバルな実務の中で、EUとの共通点が逆にたくさんあることを発見した。例えば、中国と欧州の双方はともに多角主義を主張し、地域と国際危機を解決する面で国連が核心的役割を果たすのを支持し、テロ反対は表面現象と根本問題を同時に解決するのを支持し、武力行使に反対している。これらすべてが中国と欧州の政治関係を接近させたのは疑いないことである。EUの拡大につれて、中国は国際舞台におけるEUの地位と影響力をいっそう重視している。中国の多くの学者は、EUの拡大は「古い欧州」の政治理念と戦略文化の勝利であり、拡大後のEUはより大きな戦略的自信をもって地域とグローバルな実務の中で発言権を獲得するだろうが、これは一辺主義を実行するアメリカとより大きな衝突と矛盾を引き起こすと見ている。

欧州が中国を重視する原因を知るのも難しくない。総体的に見て、欧州諸国は、中国が人口、市場から言っても、またその他の方面から言っても、その規模はあまりにも大きく、重要であり、そのため、欧州は見て見ぬふりをするだ鳥政策をとるべきでないと見ている。EU各国の対中国政策に違いがあるとはいえ、中国の重要性に対する認識は一致している。そのため、各国の対中国政策は非常に大きな実務性がある。しかし、数年前に欧州は中国と接触すべきで、中国を孤立させてはならないと強調し、接触を通じて中国の各方面の発展にある程度の影響を及ぼすのを望んでいた。EUは1995年に「中欧関係の長期政策」というレポートを可決し、1998年に「中国と全面的なパートナーシップを樹立する」と題する文書を発表した。これらの文書の中で、EUは中国が国際社会に入るのを援助することを最も重要な目標の一つとしている。このほか、中国が潜在的な巨大市場として欧州に対し自ずと非常に大きな吸引力をもっているのも当然である。しかし、ここ1、2年来、EUの対中国認識がいちだんと変わった。その対中国政策の重点も相応に調整されている。中国を認識する面では、中国経済が引き続き2桁の成長を保つにつれて、欧州諸国はますます中国の国内市場を重視するようになり、同時に中国が世界経済に与える影響が日ましに大きくなっていることもますます欧州に新しい目で中国を見るようにさせている。とくに欧州諸国の経済が軒並みに不景気で、ドイツなど諸国の政府と企業界は中国総理の来訪にきわめて大きな情熱を示した。5月4日付けの独『シュピーゲル』の報道は、連邦政府から見ると、中国は「過去の14年間にすっかり別の国に変わった」ように見えると書いている。ドイツ第二テレビ局ウェブサイトは温総理の訪問を報道した時、「ドイツ経済の救いの神が来た」という見出しを使った。中国に対するイギリスの態度の転換も代表性がある。昨年、ブレア首相は訪中後から中国との関係をいちだんと発展させる考えを温め始めた。同首相は帰国後、プレスコット副首相に指示して、同副首相の指導の下で、今後の両国関係発展に意見を出し案を練る「中英関係相互促進グループ」を設立した。今年の温総理の訪英中に、双方は両国政府の指導者と外相の年度会見のメカニズム化を決定した。

このほか、欧州諸国は、中国が平和維持、とくに朝鮮の核危機解決の面でなした貢献を普遍的に高く評価した。イギリスのメディアによれば、国際実務と政治領域では、中国のイメージはたえずよくなっている。BBCのあるアジア問題アナリストによれば、全世界がイスラムの極端主義とテロリズムの脅威に関心を寄せているため、中国はますます西側の潜在的な同盟者、国際大家庭の責任を負うメンバーと見られるようになっている。中国が国際反テロ、反拡散などの分野で欧州の重要なパートナーとなれることを欧州諸国がとても望んでいるのは、疑いないことである。しかもこの点は温総理の訪問期間に中国がドイツ、イギリス、イタリア、ベルギー、アイルランドおよびEU委員会と発表したすべての共同声明の中で、明らかに反映されている。

もちろん、中国と欧州の間に、双方が力を入れて解決する必要のある問題が一部存在している。温総理が訪問した数カ国の世論の反応から見ると、これらの問題は主に二つの方面に集中している。一つは経済方面である。一部の国は中国の市場経済地位に依然として懐疑的態度をとっている。独『南ドイツ新聞』の報道は、中国の最大の問題は中国の経済が市場によって主宰されるものでないことにあると書いている。イタリアは、中国の一部の公司がイタリアメーカーの製品を模造していることに不満を覚えている。ベルギーの『自由ベルギー』紙が5月6日に掲載した記事は、アジア巨人の経済発展が企業の移転およびそれによってもたらされるリストラをベルギーが恐れていると指摘している。このほか、一部の国も中国にハイテクを譲渡する時、知的所有権が保護されないことを恐れている。人権問題の上では、欧州の指導者、公衆と中国が強調する重点に依然として大きな違いがある。この点が欧州の対中国武器禁輸問題の解決に影響しているのは疑いないことである。戦略的パートナーシップの概念に関しては、中国側は主に双方の関係の長期性と安定性を保つことを望んでいる。温総理の言葉を借りるなら、それは「ある時、ある事の妨害を受けず、第三者にも矛先を向けない」ことである。欧州諸国の一部のアナリストは「戦略」という語に対する理解が片寄り、中国が欧州とともにアメリカに対抗しようとしていると見ている。しかし、事実は中国の対欧州政策が第三者の要素から受ける影響がますます小さくなっていることである。プローディ委員長の予測によれば、10年内に、EUは中国最大の貿易パートナーとなる可能性がある。この点だけでも、中国と欧州には双方の関係を戦略的に考慮する理由が十分ある。