2004 No.22
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利上げはどうしても不可避か

世 紀

いかにしてマクロ経済のソフト・ランディングを実現するかは、当面の中国経済にとって最大の課題となっている。

中国の前回の経済過熱は1993年から1995年までの間に現われた。前回の全体的な「過熱」と違って、今回は局部的なものであり、固定資産投資が急速に伸びているが、消費者物価指数(CPI)の上昇幅はまだそれほど大きくはない。

前回の「過熱」の際には、中央政府は貸付利率を8%から13%に引き上げるという市場手段のほか、地方へ指導グループを派遣するといった行政手段をも取った。結局、ソフト・ランディングがついに実現した。今回のマクロ経済のソフト・ランディングが実現するかどうかにも関心が集まっている。中央政府が一連のマクロ抑制策をとった後、利上げ政策をどうしても実施しなければならないと見ている銀行関係者もいるが、専門家の間でも見解はまちまちである。

利上げに賛成

クレディ・スイス・ファースト・ボストンのアジア太平洋担当エコノミストである陶冬氏は、利上げは時間の問題にすぎず、預金準備率の調整で過熱を抑制するタイミングは逸したと、次のように述べている。

今回の経済過熱の主な特徴はインフレではなくボトルネック現象であり、電力やエネルギー、交通及び原材料の深刻な不足に現われている。これらの基礎産業は投資周期が非常に長いため、たとえ値上げされたとしても、その生産能力がすぐに拡大する可能性はない。まして国の定めた価格の制限を受けているため、価格の上昇幅はわずかなものであるが、供給不足は深刻化している。電力を例にあげると、全国では電力制限のための停電が行われている省、市は22にも達している。いまはなんとか間に合わせることができるが、今年の夏のピーク時になれば、電力不足がいっそう深刻化し、政府はこれまで以上の制限を行わざるを得なくなるだろう。ボトルネック現象によって、クラウディング・アウト効果として、価格競争力に欠ける国の経済と人びとの生活にとってきわめて重要な産業が締め出されることになる。例えば、全国の鉄道輸送量は毎日10万車両であるが、現在の需要量は20万車両を上回っている。農産物は価格競争力に欠けるため十分な運搬手段を得られなくなる。重大な損失を被るのはまさにこれらの国の経済と人びとの生活にとってきわめて重要な産業ばかりである。

モルガン・スタンレーのアジア太平洋担当エコノミストの謝国忠氏の見方では、貸付の需給状況から分析すれば、中国の金利政策が間違っている可能性が高い。一部の銀行には貸出資金がなく、財政部では国債を売り出せないという状況によって現在の金利が低すぎたことが明らかになった。つまり、債務者に必要な資金は銀行の資金保有量を上回っている。金利を引き上げなければ貸付の需要を下げることが困難であり、中国はいま資金がないというリスクに直面しているようである。

ゴールドマンサックス・アジア担当エコノミストの梁紅氏は、実質金利が急落し続けていることはすでにはっきりしているが、これは人々の行為に悪い影響をもたらすことになるため、できるだけ速く利上げと為替レートの調整を考慮するべきだと、次のように見ている。

中国の貨幣政策と為替レート政策はいずれも経済停滞の時に制定された刺激的なものである。2002年2月に金利調整が行われた時に中国経済と世界経済は低落傾向となると見られていたが、事実は正反対であった。

金利を調整するか、それとも為替レートを調整するかについては、純粋の経済学からすると、やはり為替レートを調整した方がコストが小さい。為替レートを調整すれば、輸出はいくらか影響を受けるが、輸入会社には利益がもたらされる。しかも消費を増やすならば、市民も豊かになったと喜びを覚えることになろう。当面の一部のインフレのプレッシャーは輸入原材料によるものである。もし人民元を切り上げれば、その発生を源から抑制することになるだろう。しかし、金利を引き上げるとすれば、すべての人が影響を受けることになるだろう。だが、金利を引き上げることは、何もしないよりましだろう。

今回の経済の過熱化は局部的なものにすぎず、依然として「過熱には至っていない」産業も少なくなく、利上げは全面的な措置であるため、まだ「過熱には至っていない」産業にダメージをもたらしかねないと考えている人もいる。この見解はかつての計画経済の時代の誤った考え方であり、国の指令のほかに貸付管理を行うことにすぎず、はっきり言えば、やはりミクロ管理のパタンーである。うわべから見れば鉄鋼と電解アルミなどの業種の過熱であるが、実際は経済全体の資金の流動性が大きすぎ、中央銀行のゆとりのある貨幣政策がデフレの解消に伴って適切な調整を行っていないことにある。ごく身近な例をあげれば、ポットで湯を沸かす場合、水蒸気が噴き出したとき、電源を切らないままでポットのアナをふさげば、水蒸気はきっと別のところから吹き出てくるに違いない。政府からは鋼鉄と電解アルミは「過熱」業種だと指摘されているが、私の見るところでは石油・化学工業や造船なども同じく過熱産業であり、どんな理由から過熱する業種であるとか、過熱しない業種ではないと見分けているのか。

中央銀行は利上げの問題に対して慎重な政策をとっている。中国の経済問題は人々の想像よりずっと複雑である。現在、就業問題がかなり深刻化しており、個人消費には望ましい兆しが現われているが、輸出とともに経済のソフト・ランディングの役割を果たせるかどうかは、いまのところは未知数である。未知数は経済学者にとっては一つのボカビュラリーにすぎないが、政策決定者にとってはリスクを意味しているため、方策を決める時経済学者より慎重なはずである。私は中央銀行のやり方に賛成しているが、局部調整という構想は誤ったものだと考えている。前述のように、資金の流動性が引き止められなければ、一つの問題を解決したかと思うと、別の問題が起こることになろう。

梁紅氏は次のように語っている。国内では中国経済をめぐる議論がけんけんごうごうと繰り広げられている。完全に過熱と見るものもおれば、局部過熱と見るものもいる。さらには少しも過熱ではないと見る人もいる。しかし議論そのものは中国経済が転換点にさしかかっていることを裏付けている。中央銀行の共通認識の形成にはまだ時間がかかるだろう。長期低迷を続けてきた中国経済はアンバランスになっているため、景気回復の過程を経なければならない。これを「頭はストーブに、足は冷蔵庫に」と例えている人もいる。しかし、もし年末まで何の調整もなければ、来年と再来年には大きな起伏の確率が大きくなる。たとえ急落がなかったとしても、資本の価格が間違ったら誤った行動の原因となり、投資が増え、資産価格のインフレになりかねない。

利上げに反対

JPモーガン・グレーター・チャイナ区域エコノミストの鄭杏娟氏は利上げに反対の見方を示している。その理由は三つある。

一、利上げは人民元切り上げのプレッシャーをもたらすことになる。たとえマイルドなやり方で、つまり商業銀行の金利の変動幅を大きく引き上げたとしても、企業の外国からの借金による経営を奨励することになる。単に人民元の基準金利だけを引き上げるならば、ドルの金利がもっと安くなるからである。中国は外国借款の金利コストを抑制できないため、借款に課税を行い、外国借款のコストを同時に引き上げる以外に道はない。

二、今回の経済過熱は普遍的な過熱ではないので、利上げを行ったら、すべての人を傷つけることになる。

三、アドバース・セレクションという英語のように、借金のコストが高くなったため、借金を返済できる債権者はかえって慎重になるのに対し、どうせ返せないのだからいくら高くても借り入れるようになり、債権者の質が下がることになるだろう。

外国借款に課税を行わない限り、利上げというやり方はあまりよくない。中国は投資意欲のない業種に課税を行えばよい。

外国借款に課税する必要がある。中国は早くからこのようにやるべきであった。私の知るところでは、中南米で実施されたことがある。実施してはたして効果があるかどうかについて議論はあるが、すべての政策決定には賛成の声も反対の声もあるはずである。中央銀行は多くの外国資金が入って来る場合には、できるだけ短期外国借款を抑えたほうがいいと考えている。

これは私個人の提案だが、政府が受け入れるかどうかは知るよしもない。たとえ課税を実施したとしても税率はまだ低いと思っている。それは銀行ローンの伸びが昨年10月から下向きになり、今年の2、3月には下向きではなかったが、少なくとも上昇しないトレンドが続いているからである。しかし、これは固定資産投資の急成長を阻止していない。これによって、銀行ローンを抑制するだけでは足りないことが明らかになった。

固定資産投資の過剰成長の原因は、主に次の三つが挙げられる。一、地方政府は中央政府が金融引き締めを本格化させることを意識したが、依然として土地を高値で払い下げて、この資金を自己資金として支配している。二、一部の企業は製品価格の上昇幅が速い先進産業への投資を急ぎ、他の会社の生産能力が拡大したら、金儲けができなくなることを恐れている。多くの業種にとっては、高利潤と株式市場の融資によって貸付の需要が低下した。これは銀行ローンのリバウンドがそれほど大きくないのに対し、固定資産投資のリバウンドが高い原因となり、貸付抑制だけでは役立たないことをも裏付けている。

現在、この状況にはいくらか改善の動きが見え始めたようである。政府は当初中央銀行、銀行業監督委員会及び商業銀行のみにプレッシャーをかけて、過大な貸出実施を抑えるよう指示を出したが、最近は単に銀行にプレッシャーをかけるだけでは役立たず、過熱気味の業種に課税を行うという財政対策をとるべきだと意識するようになった。例えば、投資額に課税を行うことがそれである。中国では投資方向調節税に対する課税が実施されたことがある。目的性がはっきりしているため、絶対に効果が出るはずである。政府は今後過熱業種への投資を抑制しようとしている。具体的には高級不動産や低級品の鉄鋼、セメント、電解アルミ、小炭鉱、自動車など、過剰生産のリスクを抱えている業種が含まれている。