2004 No.22
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中国経済のソフトランディングは可能か

李 子

中国経済はここ数年ずっと急成長を保っているが、昨年から経済運営にはいくつかの矛盾と問題が現れ、主として次のようなものがある。@固定資産投資の増加が速すぎ、建設規模が過大である。A石炭や電力、石油、輸送力などの供給が不足している。B通貨発行量と融資規模の増加が速すぎる。Cインフレのプレッシャーが増大し、生産手段の値上がりが速い。このため、中央政府は一部業種の過熱を抑え、経済運営を平穏に推移させるため、一連のマクロコントロール措置をとっている。

中央政府が急ブレーキをかける方式で経済をコントロールすることがないので、中国経済はハードランディングを防ぐことが可能である、と国家統計局の責任者は見ている。

これに対し、内外の反響はまちまちで、中国経済が見事にソフトランディングを実現することができると見ている人もいれば、中国経済がハードランディングを迫られると、世界経済に影響を及ぼすことを懸念する人もいる。

中国、ソフトランディング実現に自信

温家宝国務院総理はヨーロッパ5カ国とEUの本部を訪問する直前の4月27、28の両日に北京の中南海でそれぞれドイツ「ディ・ウェルト」紙、イタリア「コリエレ・デラ・セラ」紙、ロイター通信、アイルランド「アイリッシュ・タイムズ」紙のインタビューに応じて、次のように述べている。中国経済の矛盾と問題に対し、われわれは解決策をとっている。トータルな考えでは、決然とした、断固とした、適時で、適切なマクロコントロール措置を取り、矛盾と問題を区別して扱わなければならないというものである。われわれは、一時期を経ったらこれらの措置に効き目が現われることになり、経済は平穏にかなり発展し、大きな変動は避けられると確信している。中国経済の問題は根本的に言えば構造の問題と体制の問題にあり、このため、投資体制改革、金融改革を含む改革を引き続き揺るぎなく推進していかなければならない。マクロコントロールに困難があるにもかかわらず、われわれには自信がある。

中央のマクロコントロール措置は主に次の4つである。@通貨発行量と融資規模を抑制する。A土地管理制度を厳格なものにし、断固としてむやみな耕地占用を制止する。B着工中プロジェクトと新規建設プロジェクトの整理・整頓の展開に本腰を入れ、むやみな耕地占用とむやみなプロジェクト建設の法律・ルール違反行為を厳しく処理する。C全国で資源節約のキャンペーンをくり広げる。

われわれはすでに銀行の預金準備率の比率を2回も引き上げた。そして土地管理の規定を発布し、一部業種の投資プロジェクトの資本金比率を高めることにした。

また、次の6大措置をとることになる。ホット・ポイントである業種への融資の過度の増加を厳格に抑制する。そのうち、鉄鋼、セメント、電解アルミなどのプロジェクトの資本金比率を45%に高め、それに対する審査・認可をさらに厳格にすることが重点である。土地備蓄と自動車業種に対し、国の規定に合った新規建設プロジェクトのリスクを厳格に防ぎ、すべての新規建設プロジェクトは国の産業政策、土地使用や環境保全、技術と品質の基準に合わなければならず、立件の手続きを取得し、審査・認可を経た後に融資のサポートを与えられなければならない。不動産業種に対し、異なる地域の不動産業種の発展状況に応じて、融資総量の規制を実行し、当該地区の不動産市場の発展状況、住民の収入レベル、不動産ローンの発展に必要な条件に応じて、融資総額と新規増加融資に占める不動産融資の割合を合理的に決める。

国家発展・改革委員会の発表によると、最近、鋼材の価格が目に見えて下落しており、これは国のマクロコントロール政策が初歩的な効果をあげたことを示している。

鋼材の値上がりは昨年から今年の3月まで続いてきた。しかし、3月中旬に入って以来、国内の鋼材価格、とりわけ建築用鋼材価格が下落傾向にある。全国の22都市の主要鋼材市場の主要な鋼材価格は6週間連続して値下がりし、そのうち、線材、スクリュー・スチールなどの建材は1トン当たり750余元下落し、下落幅は17%を上回り、すでに昨年12月初めの価格レベルとなっている。4月26日から、国内の鋼材価格には急落の傾向が見られ、4月30日には、全国の線材、スクリュー・スチールの代表品種の平均価格はそれぞれ1トン当たり3254元、3441元となり、2日間にそれぞれ1トン当たり200元と180元下落した。このほか、最近の国内の板材も全面安の動きを示している。

各界の見方

中国経済の問題には規制不能よってもたらされた過熱もあれば、経済過熱を適時に抑制しなかったことによって起きた経済の大変動もある。今回中央は過熱の兆しが見え始めると適時にコントロール措置をとったので、中国経済はソフトランディングを実現する見込みがあり、大きな変動が起きることはない、と海外の世論はあまねくこう見ている。

国際通貨基金(IMF)のジョナサン・フィチター氏は5月5日に開催されたアジア銀行家サミットで次のように語った。中国は最近マクロコントロール措置をとっているが、経済のハードランディングの兆しが見えるわけではない。われわれは中国が慎重なマクロコントロール措置を取っていることを評価している。この措置は短期間に一部の企業に影響を及ぼすことはあろうが、長期的に見て、中国ひいてはアジア経済の健全な発展にプラスとなるものである。

モルガンスタンレー首席エコノミストのスティーブン・ロシュ氏は、中国は決して突然自国が初めて広々とした舞台に置かれていることを発見することになったが、少しも経験のない発展途上国ではない。「中国の関係当局は発展がアンバランスで、成長が速すぎる経済を緩め、その発展を上手にコントロールしようとしている。中国は本腰を入れてこの作業に取り組んでいる」と語っている。中国経済は年末にソフトランディングを成功裏に実現する可能性がある。10年前と比べて、現在の中国は経済問題を解決する力をもっている。

中国の経済学者である呉敬l氏は中国経済のソフトランディングに対し慎重ではあるが楽観的な姿勢をとっている。氏は、中央政府は今年2月から中央銀行がマクロ経済の角度から、つまり貨幣政策を利用して貨幣供給総量をコントロールすることを強力に支持しているため、中国経済がソフトランディングを実現する見込みがあると見ている。しかし、氏と他の経済学者も、国が預金準備率を2回も引き上げたが、政策は依然として相対的にマイルドなものであり、投資過熱の局面の悪化を防ぐため、中央銀行は預金の金利と融資の金利を引き上げる可能性もある、と指摘している。

ある銀行業の専門家は、国内の過度の投資を抑制し、物価を抑制して安定させため、中国の金利レベルがますます国際金融環境の影響を受けている中、中央銀行が金利を引き上げることは大勢の赴くところであり、政策の施行は速かれ遅かれの問題にすぎない、と見ている。

現在、中国経済の問題は構造の問題であり、総量の問題ではなく、総量問題以外の問題に対し、中央銀行がどんな貨幣政策をとっても効果が見えにくい、という専門家もいる。

データによると、1回目の預金準備率の引き上げによって、昨年、全国の金融機構の1カ月当たり増加した人民元貸付は第3・四半期の2300億元から第4・四半期の979億元に急減した。しかし、今年1、2月の鉄鋼業種の投資は172.6%増え、セメント業種の着工中プロジェクトの総投資も昨年同期より133%増えた。

 当面、過度に貨幣政策に頼って地方の過度の投資を抑制するやり方を変え、財政政策と貨幣政策などのアプローチを総合的に利用することに転じる必要がある、と見ている専門家もいる。

市場の反応

 中国政府が経済の過熱を抑制するためにとったコントロール措置は世界の金融市場に影響を及ぼし、アジア各地の株式市場に程度の差こそあれ下落が現れ、世界の外国為替市場も揺れ動いている。

 4月には、中国の金融市場の動きは印象的であり、上げ相場は瞬時に頭打ちとなり、商品先物、株式価格が大幅に下落した。

中央銀行が融資規模をコントロールした後の17日目に、上海証券取引所のA株指数は200ポイント下落し、1307ポイント以来の上昇トレンドの中の3分の1が吹き飛んでしまい、1600ポイント以下に反落した。

4月13日から、香港株式市場が下落を続け、ハンセン指数は15日間に1000余ポイント下落し、12000点を切った。上げ幅が最も大きなH株は投げ出されてしまった。

商品先物市場の動きは今月いっそうはらはらさせられるものとなり、各銘柄には下げ一服が時々現れ、相場は全面安の様相を呈するようになった。銅先物価格は1カ月間に1トン当たり5500元以上も暴落し、今月初めの1トン当たり29000元から4月29日の1トン当たり23470元に下落した。アルミニウム価格は1トン当たり2000元下落し、下落幅は10%以上となった。その他の商品、例えば、ゴム、大豆、小麦なども10%以上も下落した。1カ月の間は昨年来の伸び幅の半分以上が見えなくなった。

4月30日、ソウル株式市場の総合指数は12.57ポイント下落し、下落幅は1.44%に達し、KOSDAQ指数は2.57ポイント下がり、下落幅は0.56%に達した。ソウル株式市場で、外国投資家は29日に史上最大規模の7732億ウォンの嫌気売りとなったことについで、30日にはまた7134億ウォンの嫌気売りとなった。

日本証券市場も30日には大幅の下落が起こり、日経指数は242.5ポイント下落した。

最近、アジアの各主要通貨はいずれも下落している。その原因は、アジア諸国と地域の対中輸出が中国市場のニーズ拡大のペースダウンの影響を受けることを懸念したためである。 

韓国は政府の責任者と民間の専門家を招集して緊急会議を開き、中国の経済過熱抑制の韓国への影響について分析を行った。LG経済研究院経済研究センターの責任者呉文碩氏は、「中国政府が経済過熱を避けるために経済成長率を引き続き調整すれば、韓国の輸出は激減するだろう」と懸念している。ここ数年、韓国は経済不振に悩まされており、経済回復がほとんど輸出に依頼するほかなく、とりわけ対中輸出に依存する分が主だった。そのため、韓国各界は中国政府の経済引き締め政策が韓国経済にとって「泣き面にハチ」にさせることを懸念している。昨年、韓国の対中輸出は47.8%激増し、輸出総額の18.1%となった。このほか、韓国の貿易黒字の88.1%が中国との貿易からのものである。すなわち、中国との貿易がないなら、韓国貿易に大きな赤字が現れることが避けられないというわけである。

会議が終わった後、韓国財政経済次官補佐の朴炳元氏は次のように述べた。「中国の温家宝総理の発言は中国が経済のソフトランディングを実現する決意を明らかにしたものであり、それが中国経済のバブル崩壊のリスクを緩和することになるとわれわれは見ている。もし中国が前もって措置をとって、経済景気の調整に力を入れることに成功したなら、世界経済にとってプラスとなる」。

朝鮮日報の報道によると、大韓貿易投資振興公社中国本部は、中国経済のソフトランディングは対中投資企業にマイナスの影響を与えることはなく、とりわけ3来1補(原材料委託加工、サンプル委託加工、部品委託組立て、補償貿易)などの加工貿易企業にとっては、今回の短期間の経済変動がプラスの経営環境づくりに一定の役割を果たし、金融引き締め政策は一部業種の拡張を抑え、原材料価格を引き下げ、さらに企業の経営コストを下げることができる、としている。

また、日本、アメリカなどの国も中国が次にどのような措置を取るかを見守っている。

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長は「中国で問題が生じたら、東南アジアの経済体や日本および間接的にはアメリカにも大きな影響を及ぼすことになろう」と語っている。ところが、グリーンスパン議長は中国経済を楽観視しており、中国がこの時に経済コントロールを実行することはタイミングとしては適切であると見ている。

 今後、中国経済の動きは世界の関心の的となることは明らかである。