2004 No.22
(0524 -0528)

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中国は「市場経済地位」からどの
ぐらい離れているか

呉綜之

4月14日、ニュージーランドは中国の市場経済地位を認めると発表して、「中国の市場経済地位問題」を先進国の中で「ゼロ」の突破を実現させた。温家宝総理は同日新華社記者のインタビューに応じた際、ニュージーランドが中国の市場経済地位を認めたことは、中国の改革・開放の大きな成果を客観的に認めたことを示しており、中国政府はニュージーランド政府が両国の経済・貿易関係発展推進のために払った努力を大いに賞賛すると語った。

ニュージーランドが中国の市場経済地位を認めた日に、政府筋に遺憾を覚えさせるニュースも報道された。このニュースはアメリカ商務省がアメリカに輸出された中国製のカラーテレビに対し、中国の企業にダンピングの行為があり、アメリカに輸出した中国製カラーテレビに対し4.35%ないし78.45%の税金をそれぞれ追徴するという最終裁定を行ったというものである。アメリカ商務省がこの裁決を行った核心的原因は、中国が市場経済国ではないということにある。

この二つのニュースは、中国が「市場経済地位」という問題の上で、一方では「非市場経済国」のレッテルが引き続き中国の貿易に損害をもたらし、他方では問題の解決に新たな突破が見られたという状況に直面していることを顕示している。

なぜ焦点になったのか

「非市場経済」問題はずっと中国の貿易を困らせていた重要な「ボトルネック」である。

これは中米双方の中国のWTO加入についての二国間取り決めおよび中国WTO加入議定書と関係があるというべきだ。取り決めの規定によると、中国はWTO加入交渉で、WTO加入後の15年内に引き続き中国を非市場経済国と見てよいことに同意した。

法律技術用語として、「非市場経済」は反ダンピング調査でダンピングの幅を確定する時に使用する重要な概念である。反ダンピングを実行する国の調査当局は、調査対象商品の輸出国が非市場経済国であると認定した場合、輸出国の経済発展レベルとほぼ同じの市場経済国(つまり代替国)のコストデータを引用して、いわゆる正常な価値を計算し、それによってダンピングの幅を確定するが、輸出国の相応の原始的データを使用しない。これはとりもなおさずいわゆる第三国を参照することである。その理論の根拠は、非市場経済国の資源が政府にコントロールされ、企業がたいてい政府に属するか政府の干与を受け、その製品の価値がねじ曲げられて、本当の価値を表すことができないということである。これらの製品が市場経済国に流入すると、後者の関係企業に対する不公平競争を構成する。

選んだ「第三国」と中国の具体的状況に比較できないところがたくさんあることから、中国に対する「反ダンピング」調査はわりに大きな随意性と不公平性がある。そのため、反ダンピングは、通常の状態の下でもともとダンピングしていない中国の輸出商品が「ダンピング」していると裁定し、もともとダンピングの幅が小さかったものを高度のダンピングと裁定して、中国の輸出に人為的な障壁を設けている。

中国製のカラーテレビは1993年以前は年間に欧州に100万台以上輸出されたが、1993年にEUが中国製のカラーテレビに対し「反ダンピング調査」を行い始め、調査の過程でEUの選んだ「参照国」はシンガポールであったが、シンガポールの労働力コストは中国の20倍以上である。「不公平」な参照の下で、中国製のカラーテレビが「ダンピング」と判定されたのである。数年後、EUの市場に占めていた中国製カラーテレビのシェアはほとんど失われてしまった。

名前を公表したくない中国のある貿易専門家は、「非市場経済」問題はいくつかの大きな危害性がある。例えば、その直接的結果として、中国の輸出企業が対外反ダンピング応訴の中できわめて不利な地位におかれ、それが中国企業敗訴の主な原因となるとか、中国の企業が「非市場経済」地位に関する訴訟で勝訴するのが難しく、これが客観的にWTOの一部加入国の国内の関連産業を刺激して、中国製品に対しより多くの反ダンピング訴訟を提出させるとか、中国企業の応訴の積極性を挫き、悪性循環を形成するなどがそれである。対外経貿大学中国WTO研究院のデータによると、2004年2月現在、中国が受けた外国の反ダンピングは600件以上に達し、世界で反ダンピングを最も多く受ける国である。

このほか、同専門家はこう見ている。「非市場経済」地位は中国が市場経済を建設する成果と現状を否定し、中国の国際イメージを傷つけるものである。中国が市場経済国であると認めない規定は、中国の経済発展の現実にゆゆしく背いている。中国は20余年の改革・開放を経て、すでに市場経済システムを確立し、しかもWTOに加入している。こうした状況の下で依然として「非市場経済国」と見られるのは不公平である。中国は反ダンピング国が実際から出発して中国の「非市場経済地位」問題に対処するよう要求しているが、これは貿易パートナーが公平に中国に対処するのを要求しているのであり、公平貿易のために実施する反ダンピング措置が不公平貿易拡大の手段にならないことだけを望んでいる。

問題の解決をはかる中国

今年以来、中国はいろいろの場で、一部の重要な貿易パートナーに、中国に市場経済地位を与えるよう何回も要求した。

温家宝総理は来訪のチェニー米副大統領と会見した際、現段階では中国最大の貿易パートナーであるアメリカに「中国の市場経済地位を認める」よう正式に要求した。

5月3日、アメリカ商務省は来る6月3日に関係問題について公聴会を催し、公衆がそれ以前に商業貿易合同委員会の関係作業グループの議題および関連問題について意見や提案を出すよう希望した。アメリカ商務省国際貿易署輸入局は『連邦記事』に発表した公告の中で、米中双方はさる4月の商業貿易合同委員会期間に、作業グループを設けて、アメリカの反ダンピングにおける中国の市場経済地位および関連問題を討論することに一致同意したと述べている。これらの問題は中国経済の見たところ普通の市場経済と違う特徴および中国が市場や米中貿易に関する政府の政策とやり方を撹乱する可能性があることにかかわっている。

4月下旬、オーストラリアのビル貿易相が北京を訪問し、薄煕来商務部長と共同で「中豪閣僚クラス経済合同委員会第10回会議」を主宰した。この期間に中国側はオーストラリア側に中国の市場経済地位をできるだけ早く認めるよう要求した。ビル貿易相は薄煕来商務部長に、自由貿易協定の実行可能性研究が終わった後でなければ、オーストラリアは中国の市場経済地位を認めることができないと語った。いまのところ、中国はオーストラリアの三番目の大貿易パートナーである。

昨年10月、胡錦涛国家主席がオーストラリアを訪問した期間に、両国政府は中豪経済貿易枠組みに調印した。枠組みは両国政府が中豪両国の自由貿易協定の実行可能性について共同研究を行うことを含んでおり、この研究は来年10月に終わる予定である。今回、ビル貿易相は中豪双方が自由貿易協定の実行可能性研究を加速することを決定したと語った。具体的な時間はまだ確定していないが、来年上半期か第1・四半期に終わる予定である。

ビル貿易相は、中国の市場経済地位を認める問題に市場参入、透明性、競争性など若干の障害が存在しているのは確かで、「この問題は双方のハイレベルが相互信頼の条件下で共同に決定する必要がある」と語った。

中国はEUにもこの問題を提起した。4月16日、中国訪問中のプローディEU委員会委員長は「EU委員会貿易総局はいま技術面から中国の市場経済状況を全面的に分析、評価しており、今年6月30日以前に初歩的な判断が下される」と語った。

4月27日、商務部はあるニュース原稿の中で次にように書いている。20余年の経済体制改革と対外開放を経て、中国はすでに市場経済体制を確立している。中国のWTO加入後、市場開放度は大幅に向上した。中国はWTOのその他のメンバーが公平、平等に中国に対処することを望んでいる。多くの国はすでに中国の完全な市場経済地位を認める問題に対し積極的に態度を表明した。中国側は中豪両国が中国の市場経済地位問題を早期解決することに対し楽観的な態度をとっている。

注目を集めるEUの態度

EU委員会貿易委員ラミー氏の首席スポークスマン、ゴンサレス女史は、中国の市場経済地位のアピールに対し、EUは昨年中国側に「中国の市場経済状況の基礎文書」の提出を求めたことを明らかにした。昨年末、中国側はEUに文書の第一原稿を提供した。EUは同資料を審議、評価したあと、改めて中国側に「長い」質問リストを提出し、中国にこれについて陳述するように要求した。

ゴンサレス女史は、二週間前に、EUは中国側から送られてきた「部厚い」回答文書を受け取った。われわれはいまこれについて全面的に評価しており、EUはこの文書を基礎として最終決定を行うと語った。

中国商務部の中欧貿易専門家が漏らしたところによると、現在EUは中国側が提供したこの文書はとても十分で、EUが必要とする資料がすべて含まれていると考えている。しかし、同専門家はまた、資料が「十分」であるとEUが考えるのは、EUが中国の市場経済状況に完全に満足を覚えていることを意味しない、「これは『満点』でなければ『零点』という過程ではない、欧州と中国の間に多くの分野で食い違いが存在しているのは確かだ」と指摘した。

プローディ氏の言うように、EUは6月30日以前に決定を発表するかどうか。この決定は積極的なものかそれとも否定的なものか。EUの官員はこれに対し明確な回答を避けている。EUが対中武器売却禁止令をなかなか解除しないように、EUが中国の市場経済地位を認める上で依然として多くの障害にぶつかっている。消息筋は、これを盲目的に楽観するのはよくないと指摘した。

しかし、ラミー氏は、審議を経て、中国が確かに市場経済条件に合致していることを認定するなら、EU委員会は中国の市場経済地位を認めることに最初の肯定的な判断を下し、つづいてこの結果をEU理事会に提出して認可、可決する。これによってEUに中国に対し反ダンピング調査を行う過程で、市場経済国と関係ある手続きを適用させると強調した。

ラミー氏はさらに次のように語った。「EUは中国の市場経済状況に対する技術分析の中で、国有業種の規模、国家行政手段の市場介入状況など若干の要因を考察する必要がある。その中で最も重要な問題はEUが金融貸付および保険分野の国家干与を受ける程度を審査することである。このほか、EUはまた製品コストと価格が市場によって決定される規則を中国が遵守しているかどうかを審査する。上述の条件を満たしてのみ、EUははじめて、中国は市場経済地位を獲得すべきだと各加入国に納得できるように態度を表明することができる」。

中国の貿易専門家はこう分析する。6月30日はEU審議の第一段階で、技術面で初歩的な結論を出すにすぎないが、この結論は「政策決定の過程に上昇していない」、というのはEU委員会がEU理事会を代表できないからである。しかし、この技術結論はEU加盟国の利益、EUの行種利益およびEU政府筋の意見にも配慮するため、中国の市場経済地位問題に対するEUの「基調」をわりに的確に反映する。この結論は「最終的なもの」ではないが、「重要なもの」である。

まずEUが世界の最も重要な経済巨頭の一つとして、中国の市場経済地位を認めることはアメリカなどその他の国に対し、非常に重要な率先と模範の役割がある。これは中国の20余年来の改革・開放と市場経済建設成果が西側先進国に認められたことを意味している。

次に、技術面からいうと、市場経済地位の獲得は、中国の対EU貿易のいちだんの発展に役立つ。これはEUの中国商品に対するコスト計算がいっそう的確になり、中国企業に対する「ダンピング」調査がいっそう「透明、公平、操作可能な」ものになることを意味している。中国企業の自衛能力はそのために強化され、中欧貿易の健全な発展を推し進める。

当面の中欧貿易総額は1000億ユーロを突破し、EUは中国の2番目の大貿易パートナーとなっている。今年5月1日に加盟国が25カ国に拡大されてから、EUは一躍中国最大の貿易パートナーになった。しかし、これと同時に、中国もEUの反ダンピングの「重大被害区」となった。商務部提供のデータによると、1979年に中国が初めての反ダンピングに出くわしてからいままでにEUは中国に対し100件近い反ダンピング調査を行い、中国製品に対する立件総数はわずかアメリカに次いで第二位にランクされ、そのため、中国の輸出額は約40余億ドル減少し、反ダンピングにかかわる製品は対欧輸出のすべての分野をカバーしている。

世論は、最近温家宝総理が訪欧した時に発表した「中欧共同新聞コミュニケ」の中で中国が完全な市場経済地位問題の早期解決を改めて要求していることに留意している。温総理は、中国は基本的には市場経済体制を確立しているが、EUも中国と貿易往来の中で重要な地位を占めている。そのため、中国に完全な市場経済地位を早期享有させることは、双方の経済発展にとって有利である、「私はEUと多数の加盟国が同様に非常に積極的な態度でこの問題に対処するものと信じている。これは私がこの問題の解決に対し自信にあふれる原因でもある」と述べた。

これに対し、プローディ氏は、中国に完全な市場経済地位を与えることは、EUが実現に努める目標である、というのはこれが中国に有利であるばかりでなく、EUの経済発展にも有利だからであると語り、2004年6月末以前にこの問題に対する初歩的評価の結果を中国に渡すが、この結果は最終結果を出すのを妨げないことを確認した。