2004 No.24
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中国版ナスダック

李英明

さる5月27日、中小企業ボードが深セン証券取引所に開設された。深セン証券取引所にとって、これは4年間凍結状態にあった新規株式公開(IPO)の再開を意味するものである。これによって、金融センターになろうとする深センの夢はかなえられた。また中国版ナスダックがその歴史を刻み始めたことをも意味する。中小企業ボードのデビューは中国版ナスダックの段階的開設の第一歩であり、また中国の資本市場が新しい一ページを開き、多段階の資本市場の開設が始まったことをも示している。

さる5月27日、中国版ナスダックといわれる中小企業ボードが深センに開設されたことにより、上海と深センにそれぞれA株とB株という二つのメインボードがあるという1990年以来の中国証券市場の歴史に終止符が打たれた。

業界筋の評価では、中小企業ボードはナスダック(店頭株式市場)とは言えないが、深セン証券取引所のIPOの再開のような簡単なものでもなく、中国版ナスダックのひな型として、深セン証券取引所にとっては小さな一歩であるが、中国の資本市場にとっては大きな一歩である。

中国証券監督管理委員会副主席の範福春氏は、中小企業ボードの開設は、中国資本市場の制度整備が新しい一ページを開いたことを示している、と語った。

中小企業ボード開設の経緯

中国証券監督管理委員会の責任者は次のように説明している。

中小企業ボードの開設は、中央政府が経済の持続可能な発展と経済構造の調整を促すために打ち出した重要な方策である。中国の証券市場は1990に開設されて以来、市場規模がたえず拡大し、技術の状態と規範化のレベルもかなり改善されたが、市場の段階的構造が単一的であるため、企業と投資家の多方面の投資と融資の需要を満たすことは困難であった。中小企業ボードの開設は、より大きな範囲での資本市場の資源配置機能の向上や、中小企業の資金調達難の解決、中国金融市場の全体構造の合理化などにプラスとなるものである。深セン証券取引所の中小企業ボードの開設は、現有の条件の下でナスダック市場の段階的開設を推進する現実的な選択となっている。

中国人民大学金融・証券研究所所長の呉暁求氏は次のように語っている。

中小企業ボードの開設は、中国資本市場の構造と中味を豊かにするものであり、投資家、特に中小投資家のために新たな投資の機会を創出するものである。時の経つにつれて、上海証券取引所と深セン証券取引所の市場機能の違いはいっそう明らかになる。深セン証券取引所は中小企業ボード市場として取引の規模がわりと小さいので、ベンチャー意識を持つ中小投資家の進出にプラスとなるが、ブルーチップは機関投資家の投資に適するものであり、投資家の投資性向に応えるものとなろう。

ここ数年来、中小企業は最も活発になり、最も潜在力のある新しい経済成長ポイントとなっている。現在、中国では登録済み中小企業数は800万社を超え、GDPの伸びに対する寄与は50%以上に達している。しかし、中小企業の資金調達ルートの単一化はその発展を制約するボトルネックとなっている。最新の調査によれば、市場化の度合がわりと高く、中小企業が円滑に発展している地区では中小企業への貸し渋り率は約60%に達しており、全国から見れば、80%の中小企業には融資難の問題が程度の差こそあれ存在している。中小企業ボードを開設し、中小企業のために直接融資の市場を創出することは、中小企業の融資難の解決に資するものであり、経済の持続可能な発展と経済構造の戦略的調整にとって重要な意義を持つものである。

ナスダックの第一歩

全国に先がけて深セン証券取引所の既存の市場に比較的独立した中小企業ボードを開設し、日々の営業活動の中で経験を蓄積し、条件がととのい次第ナスダック市場へ移行することになっている。中小企業ボードはナスダックの段階的開設の第一歩であり、ナスダック市場の開設の核心と重要な一環である。

中国のナスダック市場の創設計画は2000年初に始まり、深セン証券取引所にナスダック市場を直接開設する予定であった。しかし、開設準備の過程においては、諸々の条件にはいくつかの変化が生じた。例えば、国際市場ではネットバブルの崩壊に伴い、圧倒的多数のナスダック市場には株価の大幅な下落が見られ、取引が激減し、後続の上場資源の不足が深刻化し、ひいては上場会社のスキャンダルが頻発し、市場配置の大きな調整の原因となった。国内市場では、ナスダック上場企業のファウンダーズ・シェアーズが満期になれば取引が認められるという期待感によって、ナスダック上場による利ざや稼ぎを目的とする名目のみの会社が数多く現われ、ナスダックに上場する企業の株は一部、二部の間にあると見られている市場で値上がりすることになった。これらの変動によって、ナスダックの開設はかなり大きなリスクに直面していた。

中国証券監督管理委員会の責任者は次のように説明している。

当委員会は中国版ナスダック市場の開設推進を研究・検討するとともに、世界のナスダック市場の経験と教訓を研究し、市場の最初の規模やリスク防止能力、上場企業の業種構造と質などの面をまとめて考えたうえ、深セン証券取引所が全国に先がけて中小企業ボードを開設するという構想を認可した。これによって、ナスダック市場の段階的開設というプロセスとその諸条件の成熟の度合をマッチングさせて、発生可能なリスクを効果的に抑制することになった。

中小企業ボードは新たな市場ボードとして、既存市場の構成部分の一つでもあれば、比較的独立した新たな市場でもある。また、深セン証券取引所のメインボード市場の構成部分として、メインボード市場についての法律や法規及び上場基準の仕組みで独自経営、独自監察、独自のコード、独自の指数という四つの独自を含む比較的独立した管理を実施し、制度の整備を推し進め、ナスダック市場開設の経験を蓄積し、条件がととのい次第独立したナスダック市場を開設することになっている。

メインボードと香港のGEM市場に影響を及ぼすことになるのか

中小企業ボードが開設された後、中小企業ボードの増設は既存のメインボード市場に衝撃を与えることを懸念する人もいる。中国証券監督管理委員会の責任者はこう説明している。中小企業ボードの開設後、上海と深センの証券市場は機能の違いがいっそう明らかになり、新たな先導的効果が現われ、この二つの証券市場の望ましい競争及び制度整備と業務開拓が促され、全般的に市場の自信回復と市場全体の景況感の改善にとって積極的な意義を持っている。一方、中小企業ボードの開設によって、株券の発行はこれまでの一つの市場から二つの市場に変わり、発行規模が拡大され、既存市場の資金が分散するようになるため、市場でも中小企業ボードの増設が懸念されている。証券市場の全体的安定を確保するため、中小企業ボードが始動した後、中国証券監督委員会としては市場の動きを重視し、発行の規模とスピードが市場の受容度に対応することを目指す。

経済学者の蕭灼基氏はこう見ている。

中小企業ボードの開設がメインボードに及ぼす資金分散は微々たるものであり、メインボードにおける「ハイテクボード」の発展を促進し、メインボードとの相互促進の関係を確立することになる。中小企業ボードの開設当初の上場企業数は100社、一社あたりの株式資本は2000万株、上場後の平均株価は20元だとしても、資産総額は400億元にしかならないわけである。この数は数年前なら小さな数字ではないかもしれないが、市場取引総額が1兆元を超えた上海と深センの証券市場にとっては、わずか3%ないし4%の割合でしかないため、資金分散の可能性は大きくはなく、市場もそれを容認することができる。したがって、中小企業ボードはメインボードにマイナスとならないばかりか、逆にメインボードの発展を促すことになる。

深センの中小企業ボードの開設については、香港市場では香港の株式市場と競合関係になるという懸念もある。香港の投資銀行業界には、一部の内陸部企業は「香港を捨てて深センを選ぶようになる」と見る人もおれば、深センの中小企業ボードは香港の創業ボード(GEM)に促進に役立つと見る人もいる。

香港証券取引所行政総裁の周文耀氏はこう見ている。

競合関係は存在しない。香港のGEMは内陸部企業にサービスを提供しているとはいえ、香港と深センの上場市場が調達した資本も、サービス対象となる投資家も異なっているため、この二つの市場は内陸部企業の資金調達と発展戦略の必要に対応するものとなる。

京華山証券国際首席顧問の劉夢熊氏はこれについて楽観視しており、次のように語っている。

内陸部市場に上場する株は一部しか取引できないのに対し、香港市場の場合には、上場する銘柄はすべて取引できるためより公平で公正な原則の下で運営することができる。次に内陸部の人民元の資金調達は外貨に両替してはいけないため、外貨で海外市場を発展させ、あるいは外資株主が外貨の現金を購入しようとする企業はやはり香港市場に上場することになろう。そのほか、内陸部上場企業の新株追加発行については10条の制限があるが、香港の場合には、資本総額20%の新株追加発行は株主総会で決めるという以外に、他の制限はない。これは香港市場が内陸部の企業を引きつけている理由となった。

中小企業の期待

誰が最初に上場する幸運をつかみとるか。

浙江省は中国で民営経済の発展が最も速い省の一つであり、中小企業の数の多い省でもある。関連データによれば、同省の中小型工業企業は68万社に達し、工業企業全体の99%を占めている。国家発展改革委員会などの部門によって選ばれた全国優良中小企業2900社の中で浙江省が900社、最も将来性のある中小企業500社の中で浙江省が108社も占めている。中小企業の盛んな発展は数と質に現れているだけでなく、資金に対する切なる需要と資本市場の素早い反応にも現れている。さる4月、浙江省の関連部門は中小企業ボードが間もなく開設されるという情報を耳にするやいなや、ただちに「わが省の資本市場の発展促進に関する若干の意見」を打ち出し、中小企業ボードを十分に利用して浙江省の中小企業の融資ルートを拡大するという構想を明確にした。

浙江省中小企業局の趙主任は、海外上場に必要な高い費用と運営コストと比較して、深センの中小企業ボードは浙江省の中小企業を強く引きつけており、わが省の中小企業の第一の選択となるだろう、と語った。

四川省も中小企業が比較的発達している地域の一つである。四川省中小企業発展センターの羅光輝主任は次のように語っている。わが省は数年前から中国版ナスダックのデビューに備えて多くの準備を行ってきた。今回、深セン証券取引所の中小企業ボードの開設が認可されたというニュースが発表された後、同センターに問い合わせてきた企業は百社以上に達した。中小企業ボートへの上場を目指す企業の需要を満たすため、同センターは専門の機構を創設することにした。

ベンチャーにとってのオーロラ

深センの中小企業ボードの開設はすべてのベンチャー企業にとってまちがいなくめでたい出来事であると、深セン創業投資同業組合事務総長の王守仁氏は語っている。

中国のベンチャー機関はずっと前からナスダックの開設を首を長くして待っていたと言えよう。達晨創業投資会社責任者の陳立北氏の話では、五月末に認可されたばかりの中小企業ボードは取引株式数には制限があるため、つまりまだベンチャー企業に最も必要な完備したナスダックとは言えないが、ベンチャー企業にとってはつい明るい兆しが見えてきたと言えよう。これはみんなが拍手喝さいするに値することである。

これまでの3年間には、ナスダックの開設延期は育成途上の中国のベンチャー業にとって極めて大きな制約となった。

長年ベンチャー投資に従事してきた深セン市創業投資同業組合副会長の朱方氏は次のように語っている。

一方ではナスダックがずっと始動しなかったため、ベンチャー企業の退出ルートが少なく、その発展は停滞状態が続いてきたが、もう一方では、約3年間の運営を通じて、多くの会社ではハイテク・インキュベーターが一応整えられることになっている。

将来性のあるベンチャー業の成長は中小企業に依存している。統計データによると、中国では現在、中小企業ボードの上場条件を満たす企業は1200余社に達している。これほど豊富な上場資源はいかなる海外市場にも比べるものがない。

国内で最初にベンチャー業に従事する地域として、深センのベンチャー機関数とベンチャー資本はいずれも全国のトップにランクされている。統計データによると、昨年11月30日現在、深センに登録されているベンチャー企業は197社に達し、数と投下資金額は全国の三分の一を占めている。

ベンチャー業の明るい兆しによって、以前ではなかなか実現できなかった地域の金融センターになるという深センの夢がよみがえることになった。国内の著名なベンチャー顧問と投資会社である清科会社は今年の重点を深センに置いて、深セン創業投資同業組合及び広東省ベンチャー促進会と戦略協力取り決めに調印した。竜科創業投資管理会社の田立新氏によれば、深センには誰にも知らない良質のプロジェクトがまだたくさんあり、投資者の「鋭い目」のほか、清科会社のような専門会社が企業と投資側のために受け皿となることが必要である。

なんといっても、投資家がその目をベンチャー精神に富む深センに再び向けたということは確かである。