2004 No.30
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老舗はどのように生き残っていくのか

「老字号(老舗)」は中国の商業における特有の呼称である。それは歴史が長く、名声が高く、製品の品質が良く、独特な加工方法があるすぐれた民間企業のことを指している。これらの老舗は特色に頼ってしのぎを削る商業の競争の中で闘い、絶えず自らを発展させ、大きくし、地元ひいては全国的によく知られる知名度や影響力を持つようになった。ある意味から言えば、中国の老舗は深い文化的蓄積と長い歴史的蓄積を持っているために中国の文化財の一部となっている。

中国商業連合会によると、中国の老舗は主に北京、天津、上海、西安、南京、杭州など長い歴史をもつ著名な文化都市に分布しており、小売、飲食、サービス、製薬、酒造などの業種がある。一部の老舗の製品は時代遅れになって社会的価値を失い、淘汰されてしまった。ちなみに、冗員が多く、蓄積が足りず、考え方が旧く、製品の品質を重視しないなどの諸問題に悩まされて、困難な境地に置かれている老舗がかなりある。

1993年以降、国の関係部門によって認められた「中華老字号」企業は16000余に達している。そのうち、やっとのことで現状を維持しているものは70%、長期的に赤字を抱え、倒産に追い込まれたものは20%、かなりの生産規模があり、収益も望ましいものは約10%しか占めていない。

企業として、老舗の死活はまったく市場の選択した結果であり、つまり「適者生存」という正常なことであると見る人もいるが、その名を世に馳せるブランドの形成には、先人のあまりにも多い心血と数え切れないほどの人たちの民族産業に寄せる希望が凝結しており、老舗の衰退と消失は惜しむべきことであり、国は政策面から保護とサポートを与えるべきであり、こうすれば、老舗を保護することだけでなく、中華民族の文化的伝統を受け継ぐことでもあると見る人もいる。

市場の枠組みが大きく変わった今日において、長い歴史をもつ中国の老舗はいったいどのようにして生き残っていくのか。

 わざわざ保護する必要はない

黒竜江商業研究所の牟勇春研究員 老舗の衰退と消失は市場経済の必然的な結果である。私はハルビンの正陽楼という老舗に寄ってみたこともあるが、店内にはテーブルが乱雑に並べられ、雰囲気は良いとはいえなかった。このような店は美味しい料理があってもお客様を集めにくい。老舗の衰退は客観的環境と直接の関係があるが、自らの弱みやいたらぬ点も致命的なキズであると思っている。十数年間も変わることのないいくつかの特色のある料理のほかに、蓄積もなく、拡充もせず、経営意識も旧くて時代後れとなっている。老舗に対し、保護ばかりしてはならず、ある意味から言うと、老舗を保護することがビジネス界の新たな企業を虐げることになる。数多くの老舗が倒産する代わりに、数多くの新しい企業が創設されることはビジネス界では非常に正常な新陳代謝である。老舗には一定の文化的価値があるが、ビジネス界で永遠に生命力を保つ資格を備えるというわけではない。

深?市市民の高致賢さん 私の友だちの家には300年前の先祖から伝わる漆器がある。皮の白地にはかすかに見える模様が入っており、光沢が長い年月を経っても薄くなっておらず、漆器の中に水を注いでも、一年間経っても水が臭くなることはなく、文物としての価値が高いものである。しかし、そのような製品を生産していた企業は倒産に瀕している。なぜかというと、それをとくに鑑賞する人以外に、古いものに興味をもつ若者はそれほどいないからである。したがって、老舗の消失を惜しむ必要はない。すべての事物は衰微、消滅するものであり、老舗も同じである。旧いものがなくなれば、新しいものが生まれることになり、中国風の店舗は消失することはなく、屋号が変わるだけのことである。

江蘇省大地不動産公司の職員秦芳さん 旧い屋号は企業を守ってくれる傘ではなく、それを金看板として鼻に高くして、社会と市場の発展に順応しなければ、どれほど長い歴史があっても倒産の憂き目は避けられるものではない。したがって、市場によって老舗の運命を決定すべきであり、わざわざそれを保護する必要はない。

北京瀚海広告公司の丁丁さん 時代遅れのものが淘汰されるのは歴史の必然であり、さもなければ、社会はどのように発展するのか。老舗は百年経ってもまだ存在しているゆえんは、それなりの生存する道理があるからである。そのため、社会の大変動に耐え抜いて現在まで持ちこたえることができるのである。老舗がだめになったとか、困難な境地に置かれているとかを耳にすると、道の突き当たりにさしかかったように、一途に扶助、サポートを与えるのは、かえって老舗の発展にプラスとはならない。老舗は新・新人類の追求する時代の流行と個性的な消費意識と大胆に向かい合って、自らのブランドを改造してはじめて、旧い屋号に恥じないことになるのである。

環境と文化財を保護するように老舗を保護

深?市市民の李成仁さん 老舗は都市の品位を現すものであり、魂である。厳格に言えば、老舗はわれわれの都市の生きている歴史と文物である。都市の文化について言うと、まだ存在しつづけている老舗と消失した老舗の歴史と伝説という大きな中味があるものと言える。したがって、老舗を保護する面で、地方政府はより多くの責任を負う必要があり、税収と政策の面で必要な配慮を与え、必要な場合、環境と文化財の保護のように扶助的資金を投入すべきである。こうしてこそはじめて、都市の歴史と文化がつまっている老舗は新たな生命を獲得することが可能となるのである。

北京機械・電気公司の瀋風技師 中国の老舗は部厚い文化と歴史の蓄積を持つ企業であり、中国の文化財の重要な構成部分であるため、その生き残りが困難であることを座視してはならない。

深?空港の職員石?河さん 百年の樹齢のある一本のごく普通の木でも人間に古木として保護されているのであり、数世代の心血が凝結し、歴史の変遷を経て、中華文化を蓄積してきた老舗に対し、われわれは成り行き任せにする理由はない。老舗は「老」という特色を十分に活かし、市場における激しい競争に迅速に対応し、伝統的な加工方法と現代的な科学技術を結びつけ、絶えず新しい製品を開発し、製品ラインを広げ、そうすれば老舗はますます若返ることになると思っている。

自力に頼って生き残りをはかる

北京科隆商貿有限公司の周福民さん 老舗は中国の伝統的文化の貴い財産であり、配慮と保護を得るべきである。一定の歴史的意義があり、知名度も高い老舗に対し、国は税収、宣伝などの面から扶助を与えてもいい。しかし、「輸血」すると同時に、老舗自らの「造血」機能をも高め、現代化した経営管理方法でそれに生命力を回復させることに留意すべきである。

北京医院の許致遠医師 産業界には、「斜陽産業はなく、斜陽企業はある」という言い方がある。老舗も同じなものであり、もしかして「斜陽製品はなく、斜陽屋号はある」と言えるだろう。老舗は市場経済における角逐の過程でつぎつぎと倒産している主な原因は、その製品が主流の市場にマッチしないことではなく、製品の製造、デザイン、マーケーティングなど面でイノベーションに欠くことである。老舗は新製品と消費者の新しい意識からのチャレンジに直面する中で、変化しなければならないのである。

商貿週刊誌の陳奇編集者 老舗には一定の文化的蓄積があるが、PRして人に知ってもらわなければだめだ。激しい競争の中で生き残ってきた老舗はその文化に対するPRを離れることはできない。例えば、全聚徳北京ダックの店が今日まで生き残ってきた原因は、その文化についての宣伝を十分に展開したからである。全聚徳の歴史を描いたテレビドラマが先般撮られたこともその一例である。北京ダックについての言い伝えを宣伝するとともに、絶えず現代の人たちの好みを満たすために工夫を凝らしていたので、北京ダックは人気を保っている。

老舗を振興する際に非常に重要なことは変化を目指すことである。老舗は尊大ぶったところを捨てて、古いものの良さを新しいものに生かし、現代の人たちの好みを満たし、これこそ老舗の活路と言えると思う。

首都経済貿易大学の袁家方教授 数多くの老舗はすでに体制を転換しているが、転換はそれほど徹底していない。株式制に改造された後、国有の株式は15%から50%までも占めている(北京市東城区のある老舗の国有株は58%にも達している)。政府という特別な株主が老舗の権益を分かち合っているが、果たすべき義務は完全に履行していない。政府は老舗の発展にプラスとなることをすべきである。

政府は都市の企画と改造を行う過程で、老舗に対しとった政府行為の方が市場行為より目に見えて多い。北京の商店街は昔は老舗が集まっていたところであり、西単商店街だけでも曲園、鴻賓楼、淮陽春など多くの老舗があった。現在、西単商店街の改造によって、これらの老舗は他の場所に移転せざるを得なかったのである。

市場経済の条件の下で、とりわけ中国がWTOに加盟した後、政府は市場のルールに従って事を運び、より多くのスペースを企業と市場に残すべきである。政府は中等規模の老舗から完全に手を引き、企業が市場で発展するようにすべきである。

とはいえ、店舗もあれば工場もあり、伝統的な文化の一部分となった規模の大きな老舗に対し、政府は特別な政策をとって保護を与えるべきである。日本、シンガポールなどの国は老舗を保護するための政策と法律を制定しているのである。中国は資金と政策を活用して、国際競争に参与するチャンスをより多く老舗に与えるべきである。