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2004 No.30
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1896年、第1回近代オリンピックがアテネで開催、2004年8月13日には再びアテネで第28回オリンピックが開かれる。現在、中国代表団はその準備に余念がない。中国オリンピック委員会の李富栄副会長は6月下旬、代表団の目標、金メダル獲得数で第2グループ上位を目指すとの考えを明らかにした。

アテネで“神話”を創造できるか

唐元ト

多くの中国人にとってアテネは“神話”を意味しており、故事「トロイの木馬」は中国でも広く知れわたっている。悠久の中国も神話にはこと欠かない。間もなく開幕する第28アテネオリンピックで、中国人は新たな“神話”の創造を渇望している。

◇陸上競技:ハードルを越えられるか

アテネで中国人が最も注目する“神話の人物”が、21歳の劉翔選手。男子100mハードルの世界青年記録保持者で、現在のところ、オリンピックと世界選手権の覇者である米国のジョンソン選手に敗北を味あわせた唯一の選手だ。5月初めに大阪で開かれた世界陸上選手権の第1戦で13秒06の今年世界最高をマークし、初めてジョンソン選手に打ち勝った。

オリンピックの陸上は従来から中国の苦手な競技だった。1992年のバルセロナ以降の大会で毎回、金メダルを獲得してはいるものの、いずれも1個。中国人は陸上競技では先天的な力不足で、外国選手に打ち勝つことはできない、というのが大方の見方だ。そのため、劉翔選手がこの距離を短縮できる“エンジン”になれるかどうか。「アテネでは、ジョンソン選手を負かすことを含めて、不可能なことは何もない。金メダルを取る!」と劉翔選手。

だが、陸上チームの馮樹勇監督は「全体的な実力からすれば、劉翔選手とジョンソン選手との間にはある程度差がある。特に心理的なもの、試合の経験、試合に臨む姿勢では劣っている。だが、彼は前向きだし、瞬発力があり、特に若いのが強みで、トレーニングの状況も良好だ。コーチ陣は彼に大きなプレッシャーをかけないようにしており、科学的で厳格なトレーニングを通じて、アテネでは最良の状態で臨ませたいと考えている。13秒00の記録を目指すが、この成績が出せれば上位入賞は問題ない」と話している。

更に馮監督は「金メダルを確保できる十分な実力がある、と言える種目は現在のところまだないが、理論上から言えば、アテネで継続して金メダルを狙えるチャンスはある。チームは8位以内に入るか、あるいは決勝に進む選手はシドニー大会を上回ることには大きな自信を持っている。全体的な実力は大きく向上した」と強調。

最近の成績などを総合分析すると、メダルを狙える実力を備えているのは7種目。劉翔選手の100mハードルのほか、女子ハンマー投げの張文秀選手と顧原選手、女子5000mと1万mの孫英傑選手に秦慧娜選手、競歩で比較的強いのが女子20キロ、男子の50キロと20キロだ。

上記種目以外に、男女の三段跳び、女子の走り幅跳びに砲丸投げ、円盤投げ、槍投げ、男子十種競技などは8位以内が期待できる。ただ、これらの種目では劉翔選手のような成績が突出した主力選手はいない。

懸念されるのは、1992年以降のオリンピックではいずれも金メダル1個しか獲得しておらず、果たしてこのハードルを越えられるかどうかだ。

◇水泳競技:新人がまた活躍するか

国家スポーツ総局水泳運動管理センターの李樺主任は7月1日、前回オリンピックの女子10mシンクロナイズドダイビングと高飛込みで優勝し、今大会に向けた国内選抜でも1位となった李娜選手にとって極めて残酷なニュースを発表した――彼女は基本的にアテネとは無縁!

李主任は「飛込みで4個の金メダル獲得を確保するというのが、オリンピック選手を選抜する上で最も重要な原則である。李娜選手の強みは動作が軽妙洒脱で整然としており、安定性を発揮でき、それに大試合の経験があることだが、致命的な弱点は難度が低いことだ。得点から見れば優勢とは言えず、個人種目では金メダルを狙う力がないため、仕方なく涙をこらえた。一方、女子シンクロナイズドダイビングでは、莫瀚娜選手と芳麗選手のペアが難度の高い動作ができると分かったので、李娜選手ははずされることになった」と説明している。

中国がオリンピックに復帰したのは、1984年から。以来、飛込みチームは各オリンピックで新人が優勝をさらってきた。今大会に向けた集中トレーニングに参加した16人のうち、

前大会に参加した田亮選手や郭晶品選手、胡佳選手、李娜選手を除く12人はいずれも新人だ。

女子高飛込みで中国は一貫して優勢を保持してきた。この種目では過去5回、金メダルを獲得。新人が輩出する飛込みチームについて言えば、選ばれた労麗詩選手に李?選手、莫瀚娜選手に期待がかかっているが、なかでも有望なのが労麗詩選手だ。普段の力を安定して発揮できれば、アテネで新人が王者となる可能性は大きい。

オリンピックという大試合に参加したことのない全ての新人が越えなければならないハードルは、男子3m飛板飛込みだ。この種目で中国が金メダルを取るのは相当難しい。中国にとって一貫して苦手の種目であり、外国の強敵が最も集まる種目でもある。中国は男子飛板飛込みの2種目、更にシンクロナイズドダイビングで突破口を開ける可能性が大きい。

今年6月に開かれた国際水泳連盟主催の飛込み選手権で、中国は8種目のうち4種目で金を獲得。だが中国は絶対的優位には立てなかった。特にロシアやカナダ、オーストラリアなどの強豪に遭遇したことから、アテネではより苦しい立場に立たされるかも知れない。

「他国より20点リードすれば、金メダルうんぬんは論じられる」。飛込みチームの周継紅監督は更に「中国選手は全ての金を獲得できる望みがある半面、1個も取れない可能性もある」と指摘する。

飛込みチームに比べ競泳チームはどうか。趙戈監督は率直だ。「精鋭が少なすぎる、これが今の大きな問題だ」。

趙監督は「4年の調整とトレーニングを経て、シドニー大会以前よりは良くなっている。ただ、それは限られた範囲だ。つまり、メダルを狙える実力を持つまでに至ってはいるものの、実際に取れるのは、数人に過ぎないということだ。カギを握る選手は7、8人で、中核となる彼らがいかに力を発揮できるかが、中国の命運を左右する」と指摘。

アテネで金獲得の重責は女子選手の肩に掛かっている。優位にあるのは、200m自由型、100mと200m平泳ぎ、800mリレーに400m混合リレーだ。金の取れる羅雪娟選手と楊雨選手、斉暉選手の3人が最高の人選だが、状態が悪ければ、あるいは何か意外なことでも起きれば、競泳チームは“雪崩式”になる可能性がある。

「どの種目を取っても、金メダルを絶対に取れるという訳ではない。ただ頑張るだけだ」と、趙監督は気がきではない様子だ。「世界の競泳は飛躍的に発展する段階にあるが、中国はまだ低位を徘徊しており、世界との格差も開きつつある。現在の中国はただ強豪に追いつき、格差を縮める状態にあるとしか言えない」

男子の目標はより多くの選手が8位以内に入ること。背泳ぎや800メートルリレー、混合リレー、200mバタフライなどで一定の力を備えている。

◇体操:自らを超えられるか

李小鵬選手は前回オリンピックでは2種目で優勝しており、多くのファンが今大会で金メダルの数で体操の天才だった李寧選手(1984年大会で3個を獲得)を抜くことに期待を寄せている。李小鵬選手は「抜けるのは当然だし、それが僕の目標だ」と忌憚がない。

体操チームはオリンピック代表団の中で優勝確率の高い競技だ。1984年以降の各オリンピックで必ず金メダルを獲得し、前回は3種目で優勝。だが今年の国内選手権はオリンピック選抜、という特殊な事情があったためか、李小鵬選手を含む多くの選手がミスを犯したり負傷したりし、チームに頭の痛い問題が生じた。

「選手ごとにトレーニング計画を立てて、怪我の予防を優先しなければならない」。これが体操チームコーチ陣の共通の認識だ。

金メダルを狙えるのは、男子団体に男子個人総合、平行棒、跳馬、あん馬、平均台、段違い平行棒の7種目。黄玉斌監督は「体操では男子が優勢で、アテネでは2〜3個の金メダルを取れると期待しているが、最も重要なのはもちろん男子団体優勝だ」と話している。

◇射撃:五輪初優勝種目で更なる目標を射止めるか

射撃チームの許海峰監督は「アテネ大会の目標は、2種目で金を保持し、3種目で金を新たに目指す」と抱負を語る。

オリンピックで金を狙える実力を持つのは7〜8種目。「トレーニングの観点からにせよ、経験からにせよ、金の確率は僅か30%に過ぎない。そのため、金は最も多くても3個としか言えない。何故なら、トレーニングレベルと実戦での発揮はイコールではないからだ」と許監督。

更に許監督は「ロシアが今年になって全面的にレベルアップしてきた。前回オリンピックから昨年まで、中国チームは何回も負け越している。我々が強い種目は彼らにとっても強い種目でもあり、当然、ロシアが中国の優勝に影響を与える強豪になる」と分析する。

許監督にとって最大の困難は、いかに選手を試合に向けて最良の状態にもっていくか、いかに心の準備をさせて、選手が自分の持つ力を全て発揮できるかどうかだ。

1984年のロサンゼルス大会で、当時の許海峰選手は中国にオリンピック史上初めてとなる金メダルをもたらした。その後の10年間、選手として活躍し、1994年末に引退して射撃ナショナルチーム女子ピストルのヘッドコーチに就任。以後、後輩の李対紅選手、陶?娜選手を育成して、1996年のアトランタ大会と2000年のシドニー大会で金メダルを2個獲得させた。2001年3月にはナショナルチームの監督になり、彼に寄せる期待は益々強まっている。

◇卓球・バドミントン:全種目を制覇できるか

ある意味で、多くの中国人が卓球ナショナルチームに寄せる思いはブラジル人が自国のサッカーナショナルチームに対する思いに似ている――優勝しなければ失敗だ。前回オリンピックでは全種目を制覇したが、今チームの蔡振華監督は「全種目制覇」について語ろうとはしない。アテネでの目標は、2種目を保持し、3種目で優勝を狙うことだ。

だが過去の成績と現在の態勢から見れば、男子ではダブルスのほうがシングルより金メダル獲得の勝算は大きい。ただ現在の状況について言えば、シングルス、ダブルスは五分五分だと言える。その理由は先ず、11ポイント制に改められたことで、試合の偶然性と変化性が大幅に増えたこと。同時に、アテネ卓球の独特な規定によると、ダブルスでは同一協会に属する選手は同一グループに加わる、つまり中国選手は1ペアしか決勝に進めないことになり、優勝が倍以上に難しくなったからだ。

バドミントンチームは4年前のシドニー大会に比べ、全体的な実力、国際試合での実力も成熟、安定しており、参加できる種目数でもインドネシア、デンマーク、マレーシア、韓国などの強豪を上回った。中国チームはアテネでより多くの金メダルを獲得できる能力を持っていると言えるが、確定したオリンピックでの目標は2個の金を保持した上で全ての金を目指すとしている。表面的にはこの目標はやや控えめだが、各種目の主要な強豪の実力を分析すれば、比較的現実的だと考えられる。

◇その他の競技:“隠れた竜に伏せる虎”が現れるか

中国はアテネ大会では野球と馬術の2競技で参加資格を取得できなかった。代表団は参加資格を得た競技、種目の全てに参加する。幾つの競技で幾つの番狂わせが起きるかは、誰も正確には予測できないだろう。

女子テコンドー。陳立人監督に選手2名と、代表団の中では最少のチーム編成だ。2000年シドニー大会で陳中勇選手を率いて金メダルを獲得した陳監督は、こう宣言する。「アテネでは1種目で優勝する!」

女子柔道への参加は7選手。選手数は少ないがが、金獲得の可能性は最も大きい。「7種目全てを狙う」と劉永福監督。

一貫して有望な競技が重量挙げだ。重量挙げ運動管理センターの馬文広主任は、アテネの目標について4個を保持し、6個を新たに目指すと話している。チームの実力と世界の強豪の現状を見て策定した目標で、控えめではなく、また突出してもいない。あるいは表彰台の真ん中に立つ選手は新人かも知れない。“隠れた竜に伏せる虎”が当初目標を達成するか、あるいは、それを超す成績を上げる期待は非常に大きい。

かつてオリンピックで優勝し、中国人のアイドル、モデルとされた女子バレーボールはどうか。数年にわたり様々な曲折を踏んできたが、アテネでアッと言わせてくれるのではと期待が寄せられている。

男子フェンシング。シドニー大会ではフランスに惜敗して銀メダルに甘んじた。今は金が最大目標。アテネでは、「悔いを残さない」が選手たちの“スローガン”だ。

その他の競技でも、「悔いを残さない」が選手たちの心構え。少しのチャンスでもチームのために生かす、という意気込みだ。

男子レスリング。過去3回のオリンピックではいずれも銅メダルを獲得したが、金メダルを手にすることは出来なかった。アテネでは初めて女子レスリングが正式種目として採用され、チームにとって金メダルは近い存在となった。

中国オリンピック代表団を構成する各チームは自らが策定した目標に自信を持ち、現在、大会に向けた細部調整に追われている。一方、選手を待ち受けるのは、アテネの本場で力を出し切ることだ。全ての目標が実現されたなら、中国チームが手にする金メダル数は前回の28個を上回ることになる。金メダルランキングでも、第2グループ上位確保は問題ないだろう。