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2004 No.31
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中国における公聴会制度

李子

西側諸国の公聴会制度が数年前に中国に導入されたが、今では政府の政策的決定の重要手段の一つとなっている。公聴会制度の発展は中国政府が政務公開の道を歩み、公聴会が中国の国民生活のなかでますます大きな役割を果たしてきていることを物語っている。

実践と改善

中国で公聴会制度が実施されはじめたのはつい数年前のことである。1993年、深?政府は市民の生活に密接なかかわりのある商品、サービス価格を調整する際、消費者、経営者、関係専門家の意見を求めた。これが価格についての公聴会の雛形であった。

1998年5月1日から実施された「中華人民共和国価格法」はその23条で、公共事業価格、公益的サービス価格、自然独占経営の商品価格などの政府指導価格、政府定価の決定に当っては、公聴会制度を設け、政府の価格主管部門がこれを主宰し、消費者、経営者、関係方面の意見を聞き、その必要性、実行可能性を論証すべきであると定めている。「価格法」の公聴会制度についての規定は原則論であって、実際に運用するには具体的な規則が必要であることから、2000年8月1日から施行された「政府価格の政策的決定公聴暫定規則」は公聴会の操作規則を設けた。2001年11月23日、もとの国家計画委員会は民間の電気、鉄道、民航旅客、電信の料金、サービス価格を含む「価格公聴目録」を発表し、これらの価格を決定または調整する場合は公聴会を開かなければならないとした。

価格についての公聴会はこれまでに中国のほとんどの省都で開かれている。

ここ数年、社会生活の多くの面についての公聴会が開かれるようになった。

立法公聴会――今年の2月、北京市人民代表大会常務委員会の于均波主任は大衆の切実な利益に関する法規の制定に当たっては立法公聴会を開き、関係ある市民の意見を直接求めるべきであると提案した。

公共事項決定公聴会――山東省済南市は7月に「済南市人民政府の重要な社会公共事項の政策的決定公聴暫定規則」を公布し、8月1日から施行した。8月2日、この「規則」に基づき、同市は、市政府法制弁公室で、「済南市自動車排ガス汚染防止規則」についての公聴会をはじめて開いた。

法執行監督公聴会――広州で「広州市の都市外観・環境衛生管理規定」についての監督公聴会が開かれ、はじめて市民が法執行について監督を行う場が設けられた。

商業計画公聴会――2003年11月、商務部商業改革発展司現代流通発展処の王選慶処長は、都市の商店配置の計画を強化し、流通分野の秩序ある競争を促すため、商務部も公聴会制度を導入していくことを明らかにした。上海では、上海市内と外環状路の間で1万平方メートル前後のマーケットを設けるときは公聴会を開かなければならないと規定した。

幹部選任公聴会――2003年9月、陝西省東光県は幹部選任公聴会制度を設けた。この制度が実施されて以来、これまでに幹部に抜てきされる予定の5人の人が公聴会で、不合格とされ、資格を取り消された。

司法公聴会――2000年後半、河南省許昌市刑務所は受刑者の減刑、仮釈放について公聴会制度を実施し、3年間に公聴会に出た732人の受刑者のうち610人が減刑または仮釈放された。

農村事務管理公聴会――今年に入ってから、河南省新蔡県韓郷鎮政府は村級民主公聴会制度を実施した。公聴会は毎月一回開かれ、満18歳以上の村民が参加することができる。その10日前に村の党委員会が党務、村務、財務に関係のある情況を村の掲示板に張り出し、公聴会で村政府関係者が村民の出す質問に答えるようにしている。統計によると、公聴会はこれまでに6回開かれ、その場で、118件の問題が解決され、村民の満足率は98%以上であるという。

このほかに、大学の学生募集公聴会、苦情処理公聴会、都市計画公聴会、などがある。

以上挙げたような公聴会は個別的ではなく、全国範囲で普遍的に行なわれている。

7月1日から全国で実施された「行政許可法」は公聴会制度のいっそうの法制化を促すことになるだろう。

政策的決定の民主化

政府部門が公共政策を制定するに当たって公聴会を開くのは、大きなメリットがある。一方では、政府の政策的決定部門は公聴会制度を通じて大衆の意見を取り入れ、政策的決定に大衆の意見が反映されるので、大衆から支持され、政策的決定を貫徹しやすくなる。他方では、公聴会制度は大衆の知恵を広く吸収し、政府の公共の政策的決定面での知識不足を補うことができる。「有限」政府は現代法治国家の重要な標識の一つであり、有限は権力の有限性を指し、同時に政府の知識の有限性を指す。政府の知識の有限性はまた政府の理性の有限性を決定づけている。この意味から言うと、政府は万能であり得ないのである。実践が示しているように、公聴会は民間の知識資源を吸収することによって、政府部門が民主性、合理性、実行可能性を兼ね備えた公共政策を制定するのに役立つのである。

問題

公聴会制度は中国においては新生の事物であり、問題も少なくなく、次第に改善していく必要がある。

透明性をより高くする必要がある──7月に四川省成都のある記者が教育費徴収についての公聴会が開かれる前に、主催部門の省物価局に関係資料をもらおうとしたが、公聴会に出席する正式の代表にしか配らないとのことだった。このようなやり方は公衆の知る権利に対する侵犯だとある記者は批判する。公聴会を開く以上、もっと透明性を高めるべきである。

形式主義に走るべきではない──6月に開かれた自動車の橋梁通過年間通し券制導入についての公聴会で、21人の消費者代表が橋梁建設公司の3人を除き、みな反対の意見を述べたが、この案は通過してしまった。というのはこの案は公聴会の開かれる一週間前にすでに決められていたものである。これでは公聴会はただの形式にすぎない。

広州のある部門の世論調査によると、公聴会は「役に立たない」「役割はあまり大きくない」「形式主義」と答えた人が62.5%もいたという。

どういう事項について公聴会を開くべきか──7月15日、国家発展・改革委員会が組織した民航価格についての公聴会が開かれた。関係筋の専門家、消費者、公聴会に参加した代表は中国民航事業はすでに大きく変化しており、航空券料金についての公聴会を開くのは適していない、それよりも北京市のケーブルテレビ視聴代引き上げ問題について公聴会を開くべきだとしている。

北京工商大学の謝志華副学長は民航はすでに独占業種ではなくなっているので、価格決定権は企業に与え、政府は関与すべきではないと指摘する。

北京歌華ケーブルテレビネット公司は、7月1日から全市のケーブルテレビ視聴料金を月12元から18元に引き上げると発表し、社会的議論を呼んだ。多くの消費者はこれについて公聴会を開くべきだとしている。公聴会をなぜ開かないのかというメディアの質問に物価局はこう答えた。ケーブルテレビ視聴料金は「北京市価格公聴目録」に入っていないから、と。

北京市が5年前に定めた目録にケーブルテレビ視聴料金の項目が入っていないのはケーブルテレビはまだ普及していなかったからである。今では、ケーブルテレビはほとんどどの家庭にも入っており、しかも独占経営であるので、「価格法」に定められている公聴会を開くという条件に完全にかなっているのである。

ある専門家は、開くべきでない公聴会を開き、開くべき公聴会を開かないのは関係部門の国家の価格公聴会制度を執行する面に問題が存在していることを物語っていると指摘する。

役割が十分に果たせていない──公聴会の過程と形式を重視しすぎ、その結果の公正性、合理性が重視されていない。一部の公聴会は最終的決定権がなく、大衆、消費者は公聴会の結果がどれほどの役割を果たすことができるのか懐疑的である。公聴会は誰が主宰するのか、だれが参加すべきであるのか、どれだけの大衆、消費者の意見を聞き入れることができるのか、その執行と結果をどのように監督するのか。

中国社会科学院法学研究所の周漢華氏はこう見る。公聴会は流行歌のようなもので、はじめは皆から人気を集めるが、しばらくすると魅力がなくなってしまう。人びとは、公聴会はどうしたのか、いったいどのような公聴会が必要なのかと問いかけている。

公聴会を開くのは第一歩であり、それも第一歩にすぎず、重要なのは公聴会制度を改善することである。公聴会制度を的確に実施してこそ、政府部門の価格の政策的決定の科学性、透明性を高めることができるのである。