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2004 No.32
(0802 -0806)

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中国の外交理論の礎

  ――時代、秩序、安全、文明についてのケ小平氏の新思想

              裴遠穎

           (外交ペンクラブ)

故ケ小平氏は偉大な政治家だけではなく、傑出した国際戦略家と外交家でもあった。氏が打ち出した一連の先見性のある科学的な外交方針、政策、戦略構想は、独特な外交思想システムともなっており、新しい時期における中国の外交理論の礎と外交活動の指導的方針でもある。

新しい世紀において、中国は国際情勢の新動向と自国の外交実践をまとめ上げるとともに、ケ小平氏の外交思想システムおよび独立自主の平和外交政策をより豊富にし、発展させている。本文においては主に次のいくつかの点について述べることにした。

時代に関する新思想

ケ小平氏は早くから次のように述べている――世界には非常に目立つ問題が二つあり、一つは平和の問題であり、いま一つは発展の問題であり、この2つの問題で解決されたものは一つもない。平和と発展は密接な内在的関連があるものであり、平和は発展を離れることができず、発展は平和を必要とする。平和は人類の生存と発展に必要な重要な条件であり、平和で安定した環境がなければ、いかなる国も力を集中して建設を行うことができず、全人類の協調した、バランスのとれた、経済と社会の充実した発展もなければ、世界の持続的な平和と安定もなくなる。世界には数多くの問題が存在しているが、平和と発展のように全局にかかわる問題はない。ケ小平氏は南北関係の問題をきわめて重視し、第3世界と発達諸国の経済の開きを縮小し、ひいては最終的にそれを解消することこそ当今の世界のあらゆる問題の核心と見ていた。

平和と発展は人類の生存と世界の運命に直接にかかわる問題である。世界は平和と発展を必要とし、平和と発展がなければ、人類と世界には前途がない。20世紀には、世界大戦が2回も起こり、それに冷戦期の対峙も経たため、各国の人民はともに新しいラウンドのホットウォー(熱い戦争)や冷戦、動乱の出現および南北経済のギャップの拡大などを望まず、平和の維持と発展の促進は世界人民の共通の願いであり、全人類の共通の目標でもある。つまり、平和と発展は時代のテーマである。

現在、平和と発展というテーマは、覇権主義、安全に対するこれまでと異なった脅威、南北の経済発展のアンバランス、生態系環境の悪化などの挑戦に直面している。これらの挑戦に対応するには、各国は政治の面で尊重し合い、ともに話し合い、他のものに押し付けたりしないほか、経済の面では、互いに促進し合い、ともに発展を目指し、文化の面では、互いに参考し合い、長所を取り入れ短所をカバーし、仲良く共存し、安全の面では、互いに信頼し合い、ともに脅威に対処し、相互関係の面では、平等に付き合い、一国単独主義を捨て去るべきである。要するに、平和、安定、公正、合理的な国際政治・経済の新秩序を構築し、新しい安全観、新しい文明観を樹立することがそれである。

国際新秩序についての観点

ケ小平氏ははやくも1990年代に、平和と発展こそ当面の世界の2つのテーマであるという考え方から、平和共存の5原則を踏まえて平和、安定、公正かつ合理的な国際政治・経済の新秩序を構築する構想を打ち出し、国際新秩序を構築するには、国際旧秩序を打ち破り、覇権主義に反対し、他国の内政への干渉に反対し、平等を踏まえて国際間の経済協力を強化、拡大し、さまざまな差別政策とやり方に反対しなければならないと述べた。

政治新秩序の核心は、主権の尊重と相互内政不干渉であり、経済新秩序の要旨は、平等互恵、長所を取り入れ短所をカバーすることである。国際政治・経済の新秩序を構築するには、主権平等と相互内政不干渉を核心とする国際関係の準則を厳守し、安全で安定した国際平和の環境をつくり、平等互恵の原則にのっとって、ともに発展する新しいタイプの国際関係を樹立し、独自に選択し、共通点を求め相違点は残し、仲良く協力し、すべての国はその大小を問わず平等であるという国際局面を作り出すものである。

冷戦の終結後、唯一の超大国は強大な実力に頼って、強権政治を推し進め、「新介入主義」、「主権という観念は時代遅れになった」、「人権は主権を上回るものである」、「新しい帝国」などの論調を吹聴し、「先制」の戦争を起こし、政権の入れ替えを画策することになった。政治新秩序の観点はこれとは反対に、各国の事柄は各国人民が自ら管理し、世界の事柄は世界人民が管理することおよび多極化を主張している。強調したいのは、ここで言う多極化は国際関係の民主化であり、大国が勢力圏を分割、画定し、ともに世界を牛耳するという歴史に現れた多極化と本質的な違いがあるものである。

経済のグローバル化はトータルな動きであり、世界の経済発展に新しいチャンスをもたらすものとなった。しかし、それは国際経済の旧秩序にまだ根本的な変化が起こっていない時期に行われ、発達諸国がリードして「ゲームのルール」を制定したものなので、そのチャンスは発達諸国以外の各国にとっては均等なものではない。弱い立場にある発展途上国はそれほど多くの利益を得られなかったり、利益を得られないばかりか、自国の経済利益ひいては主権も侵害されたりすることもある。そのため、経済のグローバルな進展にともない、主権、平等、互恵の原則が遵守、貫徹されるべきであり、国際経済の協力と交流は互いに促進し合い、ともに発展をとげる目的に達するべきである。

要するに、世界の多極化であろうと、それとも経済のグローバル化であろうと、当今の国際関係の主体が依然として民族の国家であるという事実は変えることはできない。各国とも国際社会の平等の一員であり、いずれも独立した主権国であり、いかなる「理由」をもってしても国家主権を制限する口実になれることはできない。ところが、「主権の移譲」を「主権観念が時代遅れになった」根拠とする人がいるのである。これは成り立つものではない。もし「主権の移譲」は主権国が互恵互を前提に自発的に決めたことであれば、主権の弱化を意味せず、関係諸国が主権を行使する方式の一つである。でなければ、「主権の剥奪」となるだろう。

しい安全観

ケ小平氏の外交思想に特別強調されているのは、各国の主権の平等である。主権の平等を確保するには、安全保障がなければならない。軍事同盟の結成、軍備の強化が安全保障にとって最も信頼できる手段だと見られていた。そのため、軍備競争が必ず激化し、国と国の間の猜疑と不信が強まり、国際情勢の激動と不安定が必至となり、それだけでなく、関係諸国の経済と社会の発展に影響を及ぼすことにもなる。歴史が証明しているように、旧い安全観は国際安全にとってマイナスとなるだけでなく、各国の平和的発展にとってもマイナスとなり、そして矛盾を激化させ、ひいては衝突や戦争を引き起こすことにもなる。

国際情勢の新たな特徴にもとづいて、中国は新しい安全観を打ち出した。新安全観は、国家間の相互信頼、互恵、平等、協力を国際安全保障の主な道筋とするようを主張している。相互信頼は前提であり、国際関係の面で相互信頼を実現してこそはじめて、大小や強弱が違い、社会制度やイデオロギー、文化的背景、発展のレベルが異なる国々が互いに尊重しあい、平等に付き合い、誠実に協力し合うことができるのである。主権の尊重は平和擁護のための政治的基盤であり、互恵協力は平和擁護のための経済的保障である。平等を踏まえた対話と話し合いはトラブルを解決し、平和を守る正しい、効果的な方法である。安全は必ず全ての国にとっての安全でなければならない。すべての国は大小、貧富、強弱を問わず、安全の面で平等な権利を享有し、いかなる国も自国の安全のために他国の安全を損なうべきではない。もし一部の国だけが安全で、あるいは絶対的に安全なものであるが、いま一部の国は安全なものでなく、ひいては絶対的に安全ではないなら、この世界は決して穏やかではありえない。

新安全観は本当の持続的な平和の実現を主旨とするものであり、21世紀の平和と発展というテーマのためのものであり、冷戦思考とまったく対立するものである。新安全観は必ず強権政治勢力の必死の抵抗を受けることになるにもかかわらず、その強大な生命力は阻むことができず、その重要な意義は必ず歴史によって立証されることになろう。

新しい文明観

ケ小平氏は、すべての国にはそれぞれ自らの長所があり、いずれも人類文明の発展に自らの貢献をしてきた、と何回も述べており、国家関係は社会制度、イデオロギーを親疎の基準にすべきではない、と繰り返して強調している。

ケ小平氏のこの思想は新文明観の基礎である。文明の多様性は人類社会の基本的な特徴であり、国と国、民族と民族の間には、社会制度や価値観、発展の道、歴史的伝統、宗教信仰および文化的背景などの違いが存在している。互いに尊重しあい、仲良く付き合い、共通点を求めて相違点は残し、互いに促進しあってこそはじめて、異なる文明が仲良く共存する多彩な世界を作り出すことができるのである。歴史や文化、経済と社会制度の違いは親疎、敵視、衝突の理由となるべきではなく、かえって、相互補完の原動力となるべきである。世界のさまざまな文明は長期的に共存し、競争と比較の中で互いに長所を取り入れ、短所をカバーし、共通点を見出し、相違点を残す中でともに発展することができるのである。世界の多様性を認めず、尊重せず、一つのカラーの統一を図ろうとし、自国の社会制度、発展のパターン、価値観を他国に押し付け、なにかとすると孤立化、制裁、武力で威嚇するやり方はヘゲモニズムのものであり、歴史の発展法則に逆行するものでもある。現在、世界には200近くの国、60余億の人口があり、各国とも自らの伝統と発展のパターンをもち、世界の多様性を単一化し、それぞれの特性を消し去ることは可能であろうか?もちろん、さまざまな文明にはそれぞれの価値観があるため、お互いに偏見がゆえに衝突を引き起こす可能性もある。こうしたことは歴史的にまれに見ることではないとはいえ、まったく避けることができるのである。現在、人類社会は異なる文明が平和的に付き合える時代に入っており、誤解や緊張、衝突を回避するだけでなく、仲良くつきあい、共通の繁栄を実現しなけれならない。さもなければ、人類に災禍をもたらす以外にない。世界の多様性を保つという中国の主張、つまり現代文明観は、ほかでもなく、この歴史的、客観的要請を反映するものである。

独立自主の平和外交政策

世界の平和を擁護し、平和共存五原則を踏まえて、すべての国と協力を繰り広げ、ゆとりのある社会を全面的に建設することに努めることは、中国の対外政策のトータルな目標である。中国はこの目標とケ小平氏の外交思想にもとづいて一連の新たな方針を打ち出し、平和を愛し、原則を遵守し、責任のある大国のイメージを作り出すよう努めている。激動の国際情勢に直面して、中国はアジア金融危機、南アジアにおける核の競争、コソボ危機、「9.11事件」の衝撃、アフガン戦争、イラク戦争、朝鮮半島の核問題などの国際問題で重要な役割を果たし、誠意のある、責任感のある、実務を重んじる、弾力性をもつ、開放的な外交スタイルと原則を堅持し、正義のために主張する社会主義国家の姿勢を示している。周辺諸国や大国、発展途上国との関係および多国間外交の面で、中国は注目に値する外交成果を上げた。

歴史的な経験が立証しているように、周辺情勢の変化は中国の国益とかかわりのあるものであり、周辺諸国との関係がどうであるかは中国外交の大局、国の安全、発展戦略、社会の安定に直接影響を及ぼすものである。平和、安全、協力、繁栄した周辺環境を作り出すことは中国外交の中で最も重要な位置を占め、新しい時期の中国外交の特徴でもある。中国は隣国を友とみなし、隣国をパートナーとする」方針と「睦隣、安隣、富隣(善隣友好、善隣安定、善隣富裕)」の政策を提出し、中国と周辺諸国の関係を全面的に推進することになった。東南アジア諸国との区域協力は新たな進展をとげ、インドとの関係に重要なブレークスルーが見られたことはその一例である。

互いに力となりあい、相互依存、相互競争、相互協調をむねとすることは冷戦後の大国関係の特徴である。諸大国との関係を改善し、それを発展させ、中国に複雑な国際情勢の中でインシアチブを握り、有利な地位に立たせることは、中国外交の肝心な課題である。大局と戦略に目を向けることは中国の大国政策の特徴であり、すでに所期の成果をあげ、中米、中ロ、中欧の関係はに成熟の域に向っている。

発展途上国との関係は中国の外交政策の基本的な立脚点であり、中国が国際的に役割を果たすための重要な基盤である。

当面の世界では、国と国の政治、経済、安全など面での関係は日ましに緊密化し、多国間外交の影響力はいっそう顕在化している。中国は国際問題でしかるべき役割を果たしている。国連の役割を強化するようのという中国の主張、国際機構と地域協力機構およびその他の多国間活動で果たした役割は、国際社会で高く評価され、広い範囲で称賛されている。