馮昭奎氏の評論「中日関係の
現状の五つの特徴」(1)
中国社会科学院日本研究所の馮昭奎研究員はこのほど、上海の雑誌「外灘画報」に「中日関係の現状の五つの特徴」と題した文章を発表した。馮氏は文章の中で、現在の中日関係における五つの特徴を次のように分析している。
(1)「政冷経熱」
小泉純一郎首相が靖国神社を参拝する姿勢を堅持していることで、中日両国の首脳レベルの相互訪問がすでに3年も中断している事態を招いた。両国の政治関係は次第に冷え込み、両国の相互対話は次第に狭窄化へ向かい(両国間の相違点にばかり集中しすぎ、両国が直面している地域的、世界的、協力的な課題を深く話し合う余裕がなくなっている)、あまりにも政治的になりすぎている(非政治問題も政治問題化している)。
2004年に入り、小泉首相による元日の靖国神社参拝や、釣魚島(日本名・尖閣諸島魚釣島)に中国の「保釣(釣魚島保全)」活動家が上陸して日本の警察に拘束されたこと、東中国海の石油・天然ガス開発をめぐる論争、サッカー・アジアカップ開催期間中の中国人サポーターの反応など一連の事件が起き、もともとすでに冷え込んでいた中日両国の政治関係は「氷のように冷たい」関係になり、非常に悪化した関係まで後退してしまった。
こうした背景の下で、中日両国間は首脳相互訪問の中断にとどまらず、高官レベルの相互訪問が受ける影響の範囲も拡大してしまった。
(2)3つの「温度差」の存在
「政冷経熱」「地方熱中央冷(地方の関係は盛んだが、中央政府の関係は冷え込んでいる)」、そして多国間協力や地域協力における中日関係と、中日二国間関係の間にも「温度差」が存在する。
中日関係の背後には、小泉首相のような一部の指導者の性格によって移り変わるものではなく、客観的な推進力が存在している。こうした力は結局のところ生産力発展が求めるものであり、両国の広範囲な国民の根本的利益が求めるものなのだ。
(3)一部民衆による相互嫌悪の感情的傾向の高まり
中日両国間の歴史問題と現実問題(台湾問題、釣魚島の主権と海域の紛争のような)は互いに「火に油を注ぐ」ことになり、それは両国の一部民衆の間に互いに反感を持つ感情的傾向が強まる状況を招き、しまいには一部民衆と世論の感情的な「強硬論」が両国政府の手足をある程度縛る状態を招き、戦略的な姿勢から理性的な政策を選ぶ空間を縮小させてしまっている。
相手国民の感情的傾向は政府とその政策によるものではないかと相互に考えていることで、両国間の政治的相互信頼のレベルは低下を招いている。
(4)「政冷」が「経熱」に影響を及ぼし始めた
中日両国の二国間貿易は近年、急成長している。しかし中国全体の対外貿易と比較してみると、中日貿易の成長は比較的緩慢だ。2002年と2003年を例に採ると、中国の対外貿易は2002年に21.8%増、2003年に37.1%増だったが、対日貿易は2002年に16.2%増、2003年に31.1%増にとどまっている。
2004年上半期、中国の輸出成長率は35.7%増だったが、対日輸出は23.5%増にとどまり、その伸び幅は中国の十大輸出対象国・地域で最低だった。
(5)エネルギー問題が重大な試練になる
エネルギー問題は、中日両国の間に確実に存在している多くの利益の互恵点と衝突点を反映し、現在の中日関係における重大な試練となりそうだ。つまり、両国が既存のエネルギー資源を十分に利用するとともに、新しく開発・採掘する「利益互恵点」を両国国民の福祉のために使えるか、既存の「利益互恵点」が「利益衝突点」に転化することを避けられるか、既存の「利益衝突点」が実際の衝突を引き起こすことを避けられるか、あるいは「利益衝突点」がこれから「利益互恵点」に転化できるか(例えば領有権をめぐって論争している島々と海域で共同開発を展開していけるか)など。
人類は現在、再生できない伝統的エネルギーへの依存から、再生できるエネルギーの依存への過渡期にある。この過渡期において、中日両国はエネルギー供給源の多元化を図る分野で必ず競争関係となりそうだ。もし両国がこうした競争関係をうまく処理できなければ、再生エネルギーや新エネルギーの開発と普及、省エネルギーの分野における不可欠な協力に対して十分に重視しなければ、中日関係に損害を与えるようにもなるだろう。
石油・天然ガスなど伝統的エネルギーの供給を保証することは、国家の存亡にかかわる大問題だ。中日両国にとってエネルギー問題は最も協力しなければならない分野であり、最も対立と衝突を避けなければならない分野なのだ。石油・天然ガス供給源が「譲りようのない狭い道」であり、両国の間にある広大な海域で海底石油・天然ガス資源を開発し、両国で石油を輸入するパイプラインが競合する現状において、中日両国ないしは中日韓3カ国は、こうした状況に対して開発協力こそ唯一の出口であると最終的に認識するだろう。なぜならひとたび対立したなら、結局得るものは何もないことになるからだ。
エネルギー問題は中日関係の転換点となる見込みがあるかもしれない。東アジア地域協力の転換点となる見込みがあるかもしれない。ちょうど、欧州の統合がかつての仏独両国による「欧州石炭鉄鋼共同体」(ECSC)から出発したように。
「人民網日本語版」2004年8月13日
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