2004 No.33
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国内企業の対外投資を奨励

――中国は外国からの直接投資の主要な受け入れ国としてだけでなく、徐々に資本の輸出国になりつつある。

蘭辛珍

商務部と外交部は7月19日、「対外投資国別産業指導リスト」を共同で公布した。「リスト」は、政府が奨励する企業の対外投資先として67カ国・地域、農林牧畜漁業、採鉱、製造業、サービス業などの業種を列記している。

政府が企業の対外投資に関して国別、業種別に方向性を示したのは今回が初めて。

商務部の高官は、「リスト」を公布した目的は、国内の主力企業による対外投資を奨励・支援するとともに、対外投資の支援体制を完備することにあると話している。

現在、海外に投資している企業は7000社余りに達しており、世界の約160カ国・地域に及ぶ。

中国社会科学院経済研究所の張卓元研究員は「『リスト』の公布は、国内企業による対外投資の展開を指導し、企業が国の内外、2つの市場を十分活用できるよう奨励し指導すると共に、更に高次元のレベルで国際経済技術協力に参与し、国別による産業配置を合理化し、海外での盲目的な投資や内部競争を防止する上でプラスとなる」と評価する。

商務部の高官は「『リスト』は不変的なもので、今後政府は、情勢の進展と変化に即して引き続き期間を置いて国別指導リストを公布すると共に、既に公布した国・業種についても随時更新し、調整し、補充していく」との方針を明らかにしている。

国内企業の対外投資ブーム

中国は外国からの直接投資の主要な受け入れ国としてだけでなく、徐々に資本の輸出国になりつつある。この2年近くの間に、国内企業に対外投資ブームが訪れた。海爾や厦華、格力など多くの国内の有力企業が相次いで外国に生産拠点、開発研究センターを設立している。

国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計によると、昨年の中国の対外直接投資額は350億ドルを突破。UNCTADが世界各国の投資促進機構を対象に実施した調査結果では、対外投資でトップは米国、次いで独、英、仏、中国、日本の順で、中国は初めて日本を抜いてベスト5に顔を連ね、大規模な投資を導入してきた中国は世界の主要投資国の仲間入りを果たした。

「多くの発展途上国について言えば、中国が米国に次ぐ投資大国になる可能性は大きい」。UNCTA国際投資協定室の・暁寧博士はこう語る。

商務部のデータによると、金融機関を除き、2003年に海外企業の設立が認可されたのは510社。前年に比べ45.7%増加し、中国側の投資額は同112.3%増えて20億8700万ドルに達した。2002年は9億8300万ドルで、新規進出企業は350社だった。

国内企業が対外投資を始めたのは、1979年以降。改革開放政策が実施された時代で、これを機に海外に進出する企業は急速に増えていく。この年の11月、北京の友誼商業服務総公司が東京の丸一商事と合弁で「京和股?有限公司」を設立。これが中国企業初の合弁企業となった。

政府は2003年、対外投資を支援する政策を制定。商務部と国家外貨管理局は認可審査の削減、手続きの簡素化、権限の委譲など海外投資に関する許認可作業の改革を試験的に実施。先ず、海外での加工貿易認可手順を簡素化した。投資額が300万ドル以下のプロジェクトについては地方に認可権限を委譲すると共に、提出する関係書類を少なくし、建議書や事業化前調査報告書の認可も取り消した。北京や天津、上海、山東、青島、江蘇、浙江、寧波、福建、アモイ、広東、深センなど12の省・市で加工貿易以外の海外投資プロジェクトの認可・審査を試験的に実施。沿海部や四川、重慶市、黒竜江などの省・市に対しては2億ドルの範囲内に限り当地の外貨管理局に審査権を委譲すると共に、海外投資外貨利益回収の保証金の納付も取り消した。

商務部対外経済協力司の呉喜林副司長は「この政策により、国内企業の対外投資の増大が促された」と強調する。

対外投資は第1・2・3次産業に及んでいるが、サービス貿易や工業関連の加工、農業と農産品の開発、資源開発などに相対的に集中している。

現在、少なくとも十数カ国が中国を外資吸収の最大の目標国にしており、日本や英国、シンガポール、スウェーデンなどが投資促進機構を設置。

企業の対外投資戦略の実現を支援し、内外企業間の投資情報の交流を強化するため商務部は7月20日、国内企業の対外投資プロジェクトの現況、海外の投資プロジェクト案件、投資仲介機構に関する情報などを紹介する対外投資情報サービス専門のホームページを立ち上げた。

UNCTAD国際投資協定室の・暁寧博士は「中国の対外投資は非常に重要な段階を迎えた。じきに新たな投資ブームが起きるのに備えて、政府はよりキメ細かな対外投資戦略を制定する必要がある」と指摘する。

政府のサポート

商務部によると、「対外投資国別産業指導リスト」は、周辺の友好国である◇中国経済と経済面で補完性の強い国◇中国の主要な貿易パートナー◇中国と戦略的パートナーシップを構築した国◇世界の主要な地域経済組織の加盟国――の5点に基づいて策定したという。

中国人民大学の趙恩淵教授は「対外投資の面で、政府は海外投資に向けたサービスをより多く提供すべきであり、『対外投資国別産業指導リスト』のようなサービス性のある指導は非常に必要だ」と指摘する。

実際、西側の大規模な多国籍企業はいずれもグローバル戦略を有しているが、国内企業は規模が小さく、グローバルなネットワークは構築されておらず、国際競争で劣勢に立たされているのが現状だ。特に投資先は発展途上国が多く、投資環境は不安定で、政治的な面も含めてリスクが大きい。これを是正するには政府が対外投資の促進、企業の融資や担保など一連のサービスを提供することが必要となる。

政府は対外投資を奨励するため、一連の優遇・保護政策を制定した。

政府の規定によると、資源開発または投資が比較的多い製造関連企業に対しては、自ら調達する一部の資金のほかに、国に対し外貨または人民元による優遇融資を申請することができる。プロジェクトが発展途上国の要求に合致し、援助的性格のある合弁やプロジェクトについては、政府が対外援助計画に盛り込むことを認可した場合、必要な資金を国が政府のその年度の対外援助資金や外貨の限度額内で調達することができる。これにより、対外投資企業の資金面での問題はある程度解決されることになった。

同時に政府は、投資企業の製品について、国が輸入する場合、同品質で同価格を条件に、企業は国の輸入計画に盛り込むよう申請することができ、国は優先的に輸入するようにする、と規定している。

趙恩淵教授は政府が今後強化すべき対外投資の奨励と保護施策について、(1)信用融資を提供して多国籍企業の国際競争力を増強し、特にハイテクの研究開発に従事する海外プロジェクトに対しては補助金を支給し、企業が投資前に実施する事業化前調査報告書に資金援助すると共に、プロジェクトへの融資で担保などを提供し、その国の投資機会に関する情報を提供するほか、合弁経営対象の選択と認定、技術協力計画の策定、投資コンサルティングサービスの確立などで支援する(2)海外投資した企業が受ける待遇と利益を保護すると共に、海外投資リスクと二重課税の回避を最優先する――の2点を強調した。

直面する問題

北京師範大学経済学院の趙春明教授は「この数年来、中国の対外直接投資は急速に伸びているが、総体的に言って数多くの問題を抱えている」と語り、先ず規模が総体的に小さいことを指摘した。

現在、中国の海外直接投資額が世界全体に占める比率は0.15%に過ぎない。統計によると、外資導入と対外投資の割合は先進国では1:1.14であり、発展途上国では1:0.13だが、中国は1:0.09と、中国の対外直接投資はまだ初期の段階にある。

投資プロジェクトでのハイテク利用率も低い。この数年、投資は質的、等級的にも向上してハイテク利用の高い製造プロジェクトも一部に現れ、一部のハイテク企業は積極的に米国や欧州の先進国に現時法人、または合弁の研究機関や技術センターを設立してはいるが、総体的に言えば一次産品への投資が過度に重視されており、ハイテク産業への投資は依然として規模は小さい。趙春明教授は「非貿易面での海外投資プロジェクトにおいては、40%近くが付加価値の低い、ハイテク利用率の低い労働集約型のプロジェクト(資源開発や一次産品の加工など)であり、こうしたプロジェクトはその他の発展途上国の類似製品と競合するため、海外市場での将来性は楽観できない」と指摘。

投資する地区の配分も合理的ではない。これが対外投資市場の更なる開拓に影響を与えている。投資先は香港・マカオ地区が全体の46.8%を占めており、次いで北米が13.7%。全体的な配置を見れば、発展途上国・地域への投資が際だって少ない。企業の海外投資の影響力と競争力を拡大するには、これらの問題が早急に解決されることが必要だ。

「喜ぶべきことは、中国企業の対外投資が急速に増大してきたことである。この10年間の伸び率は年平均76.8%に達しており、中国企業の影響力の増強にプラスだ」と趙春明教授は話している。

付属資料1:国内企業の対外投資5大業種

■加工・組み立て型製造業:投資先が実施する貿易保護主義政策に左右されず、現地で生産し、販売することができるため、この分野に進出する国内企業は多い。自動車やオートバイ、小型農機具の組み立て、テレビや冷蔵庫、洗濯機、扇風機、空調などの家電の加工・組み立て。

■ 資源開発:東南アジアやアフリカなど資源は豊富だが発展の遅れた地区に集中しており、

投資形態は国有の持ち株企業への出資が主体で、一部の力のある民間企業も戦略的進出を開始している。

■ 科学技術開発:多くの企業が先進国にハイテク新製品開発企業を設立し始めており、開

発した新製品は国内企業が生産して国外に輸出している。同時に海爾や厦華など、国内のハイテク関連企業は国際市場に目を向け、対外投資を実施すると共にハイテク製品の輸出を拡大して製品の国際化を実現した。

■工事請負・労務契約:中国は豊富な労働力を抱え、労務請負企業は国際市場でかなりの競争力を備えている。世界貿易機関(WTO)への加盟に伴い、中国に労務市場を開放する先進国は増え続けており、労働力の輸出が最も多いのは米英やカナダ、シンガポールなど。この数年、民間の小規模な対外投資は労働力輸出に集中している。

■サービス貿易:金融・保険、貿易、小売り、情報コンサルティング、運輸、通信、医療・衛生、観光、広告、メンテナンスなど。

付属資料1:「対外投資国別産業指導リスト」の記載国・地域

◆アジア:タイ、シンガポール、ラオス、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、インド、パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタン、東ティモール、北朝鮮、モンゴル、日本、韓国、イラン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、トルコ。

◆アフリカ:エジプト、スーダン、アルジェリア、モーリタニア、マリ、ナイジェリア、ケニア、タンザニア、ザンビア、モザンビーク、ナミビア、マダガスカル、南アフリカ。

◆ヨーロッパ:スウェーデン、フランス、イギリス、アイルランド、ドイツ、オランダ、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、ロシア、キルギスタン、ハザクスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャン。

◆オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、バヌアツ、

◆北米・南米:カナダ、アメリカ、メキシコ、キューバ、トリニダード・トバゴ、ブラジル、ベネズエラ、アルゼンチン、チリ、ジャマイカ、スリナム。