2004 No.35
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中国の学生が初めて外国に留学して既に130年余りがたつ。1978年の改革開放以降、留学が再びブームとなり、大学卒業生や仕事を辞めた成人が相次いで留学するようになった。この数年来、経済のグローバル化の進展に伴い、国際的なセンスを持つマルチ型の人材が求められてきたことから今、留学が新たなブームになりつつある。だが、これまでとは違う変化が生じた。留学の低齢化だ。大学卒業後にすぐ留学、また高校生も留学するようになった。これに関する専門家の意見は、賛成と反対に分かれる。それでも、この留学ブーム、更に続きそうだ。

新たな第1次出国ブーム

李 子

北京大学医学院で学ぶ20歳の女子学生、王威さんは7月15日、夢を抱きながら英国行きの航空機に搭乗。ロンドンの医科大学に留学するためだ。

彼女は2年前、高成績で北京大学医学院に合格。医師を目指していた彼女だが、思いもよらず看護専門コースに振り分けられてしまった。好きな臨床医学に移籍するつもりでいたが、2年たっても実現しない。そこで彼女は、自分の興味のある専門を学ぼうと、英国留学に向けて努力を続け、念願の入学許可書を手にした。

中国では彼女のような年齢の留学生がこの数年、増え続けており、多くの都市とくに沿海部ではブームになりつつある。毎年6月に実施される大学入試以後が、留学のピークだ。この数年は、18、9歳の高校卒業生の留学数が最も速いスピードで伸びている。

増加し続ける留学

この3年来、留学生の増加は著しい。

自費留学生の数も急増しており、教育関連機関の統計によると、2000年の留学生数は3万9000人で、うち自費留学生は全体の85%を占める3万2000人。2003年は11万7300人に達し、うち自費留学生は約11万人と、全体の93.05%を占めるまでになった。

小中高生の留学も目だって増えている。中高生また小学生が留学するようになったのは、90年代半ば以降。南方では、中高生が留学生全体の70〜80%を占める都市もあるほどだ。深セン大学の調査で、86.6%の中高生が留学を希望していることが分かった。その数は大学生より10%も上回る。

北京澳際留学公司の李平社長は「留学年齢は益々低くなっており、15、6歳が最も多い。以前はほとんどが30代だったが、現在では、25歳の留学は遅いほうで、16〜24歳も比較的多い」と話している。

留学先は米国以外の国が目立つ。専門家は「当初は米国やカナダ、英国、日本などに集中していたが、今では少なくとも103カ国・地域へと急速に拡大しており、また先進国から中等先進国、更に発展途上国への留学も徐々に増えている。2002年の英国留学は前年より70%増加し、オーストラリアやカナダもそれぞれ50%増えた。ドイツやフランス、ウクライナなどの留学は、言語を新たに学ぶ必要はあるが費用が安いため、サラリーマン家庭にとっては留学の新たなホットスポットだ。ロシアや南アフリカ、アイルランド、イタリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、韓国なども人気が高い」と分析している。

今世紀初頭から2050年まで、留学は増加傾向を維持すると予想される。

大学不合格なら出国

高校生の馮鹿さん。成績は普通で、大学受験がうまくいかなかったので、両親は英国に留学させることにした。

常芯さんも馮鹿さん同様、受験に失敗したので外国留学の道を選んだ。ただサラリーマン家庭で収入が多くないため、費用の比較的安いオランダに留学することにしたという。

この数年来、大学に合格しなかったから留学するというケースが増えてきた。両親や本人は留学を不合格からの「出路」にしているようだ。両親は、進学しなければならないというプレッシャーが大きいため、留学が不合格者の最良の選択だと信じて止まない。留学そのものは、大学に受からなかった、進学できなかったという問題を解決してくれる一方で、より豊かな人生体験を子供に与え、子供に将来の明るい生活を設計させるのにも役立つ。外国の大学に入学すれば外国語をマスターできだけでなく、帰国後は仕事も見つけやすく、良い待遇を受けることも可能だ。

子供の出国手続きをしていたある母親はこう語った。「留学させるのは、大学の受験競争が余りに激しいからです。中学の時から子供は、大学入試という大きな石に圧し付けられて来ました」。大学に入る学生数は以前に比べ増えている。ただ、少数の有名校に受験生が集中するため、大学で学べるチャンスを失ったり、合格しても人気のある専門課程で学べなかったりと、言えば有名大学のハードルは益々高くなってきた。「それなら一層のこと、子供を早く留学させた方がずっといい」とその母親は話していた。

教育専門家は「大学不合格者の留学は、国内教育の需給関係に問題があるのが原因だ。多くの子供が大学に入れないため、高校生の進学率は低下している。競争が熾烈だからこそ、多くの家庭が子供を留学させようとしている」と分析する。

就職難を回避

経済の急成長で人材の需要が益々高まってきた。国際センスのある人材が売り手市場の一方で、就職状況はこの数年厳しさを増しており、大学を卒業しても職の見つからない学生が多い。彼らはこう考えるようになった――留学するか、大学院を受験するか、だが大学院試験も非常に激しく、受験準備に苦労しなければならない、両者を比較すれば、同じように代価を払うなら、どうして留学をえらばないのかと。専門的な基礎がしっかりしていれば、高得点を取れば、魅力的な奨学金を申請することができ、高い学費も問題にはならない。そこで、彼らは強く信じるようになった――先進国で新たな知識と先端技術を学びさえすれば、将来の生活に向けて壮大な青写真を描くことできると。家庭に経済的ゆとりのある学生の多くは留学を選ぶようになった。普通の家庭の大学生にとって留学は贅沢な望み。だが大多数が、チャンスがあれば必ず行ってみたい、との願望を抱いている。

これほど多くの学生が留学を切望しているのは? ある調査によると、30%の学生が「視野を広め、知識を増やせる」と答えている。「独立心や能力を培える」が20%。「専門の能力を高め、先進的な理念とくに管理理念が学べる」という回答も数多くあった。

総合すれば、1つの目的に絞られる。就職を目指して競争力を身に付けることだ。テレビ大学を卒業したある女子学生は「本科生は非常に多く、専門学校生の私は能力も学歴も際立って不足している。だから外国で充電し、競争力を高めたら帰国して就職するつもりです」と語っていた。「国内で成功するチャンスは外国よりも大きく、外国で成功し定住するのは、ごく限られた人たちだ」との回答は、82.3%にも上った。英国に留学している小豪さんは「経済の急成長のおかげで、留学して多くの知識を学べることができるようになった。学業を積めば、より成功するチャンスに恵まれる」と将来に託す。

留学は最良の選択か 

45歳の会計士、韓良才さんには息子が1人いる。彼はこう話してくれた。「息子は教師にとって問題児で、クラスで起きる問題にはどれも息子が関わっている。担任の教師はこんなに聡明なのに残念だと話していた。それを聞いて私は、国内の教育方法が息子に適さないのではないかと考えるようになったのです。ちょうど多くの友人が子供のために出国手続きを取っている時だったので、息子の活路になるかも知れないと思い、すぐに留学させることにした。マンション購入のために貯めておいた預金で、カナダに留学させました。ですが、その後の断腸の思いは、私自身しか分からないでしょうが、夜眠りにつくと、息子が事故に遭ったりする夢をよく見るようになったのです。結局、やはり、上海でしっかりと学ぶようにと、すぐに帰国させたのです」

47歳の商輝さんは「私は米国の大学院で学びましたが、そこで生活する道は選びませんでした。でも、米国の教育方法は素晴らしいと認めています。ですから、子供はもう高校2年生なので、視野を広げるには早い方がいいと考えて今、外国の大学で学ぶ準備をしているところです」と心境を語ってくれた。

英語学校の副校長をしている除小平さんは「中国人の留学に対する考え方には間違ったところがあります。留学の動機が非常に盲目的なのです。言えば留学のための留学。虚栄心のためやプレッシャーから逃れるため、“金メッキ”された卒業証明書を手にするためとか。実際、留学は教育を受けに行く、というもので、それに、国際的な資源を利用して教育を受ける、というものなのです」と強調する

北京第44中学・高校の王教諭は「現在、国内の学校で生徒を主体にした環境が整備されているのは非常に稀で、子供の要求への関心度も非常に低い。義務教育段階の多くの学校の環境は社会の実際の生活に比べてずっと遅れており、生徒の興味を引く科目も設置されていません。今の学校では自由に発揮できる場所が見つからないので、留学を選択することになる」と指摘。

南京師範大学の丁家永教授の観点は異なる。「小中高生は留学する必要などありません。何故なら、中国の基礎教育は非常にしっかりしており、外国より優れている学校もあるからです。留学に盲目的に従う必要などなく、外国が必ずしも良いとは限りません。それに、この年代の子供たちは人生観や世界観を養う過程にあり、中高生はまだ自らを律する能力に欠けているため、父母が見守っていなければ、現地での複雑な環境に適応するのは難しく、誤った道に陥りやすくなります。ですから、父母がしっかりする必要があり、決して功を急いだりしてはいけません。でなければ、反対の結果を招くことになるでしょう」

高い留学費用

90年代に自費留学した中高生は、経済・社会的影響力をバックにした家庭の子供たちだった。これに続いて、収入の多い家庭の子供が出国。この数年は、サラリーマン家庭も貯蓄をはたいてまで子供を留学させるまでになった。

留学させるには一体、いくら掛かるのだろう。

ニュージーランドの高校に留学させる予定の女性によると――。高校1年を終えて段階で留学させるが、現地の中学5年は中国の高校1年に該当する。まず半年間英語を学び、その後、試験を受けて合格すれば6年に編入。1年後に7年(大学予科)に進級して卒業後に大学へ。一般に大学は3年制。この5年半の間に必要な生活費、学費は、アルバイトで生活費の一部を稼ぐのを除き、両親は60万元(1元は約13円)を負担しなければならない。国内で同等の教育を受けるのに掛かる費用の10倍以上だ。半年後の英語の難関を突破できなければ、更に1年余分に掛かり、費用は10数万元増えることになる。 

ニュージーランドに比べ、英国に留学した場合の費用は約50%増しだ。1人年間最も少なくても20万〜30万元が必要。8年間の滞在となれば、少なくとも160万〜240万元は掛かる。米国で本科生として学ぶ場合、1年間の学費は生活費も含めて2万ドル。3万ドルを超すケースもあり、一部の有名校はそれをも上回る。

ユネスコの統計によると、2002年に中国は留学生の数で世界最多となった。低めに推定しても留学生総数は46万人、留学先は世界103カ国・地域に上る。

留学に必要な費用は、多くの家庭にとって天文学的な数字だ。2003年の1人平均年収は1000ドルだが、これで計算した場合、米国に1年間留学するのに掛かる2万ドルの費用はなんと、両親の10年分の収入に相当する。