2004 No.37
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外資銀行の市場参入規制の緩和

中国大陸部住民向け外国為替業務取扱いの認可から、中国投資企業への人民元サービス提供の認可に至るまで、外資銀行の人民元業務取扱いの認可から、中外銀行に対する同等な待遇の実行まで、中国は銀行業開放というWTOに対するコミットメントを逐次履行している。

蘭辛珍

最近、匯豊(上海、香港)銀行(中国)総経理の柯清輝氏は、就任したばかりの頃のキリットとした表情と打って変わって、ときどき顔に喜びがあふれるようになっている。

なぜかなら、中国銀行監督・管理委員会(以下「銀監会」と略)によって制定された「中華人民共和国外資金融機構管理条例の実施細則」が9月1日から正式に施行されるようになったからである。この細則の実施で、外資銀行の市場参入規制が緩和され、外資銀行への審査・認可の効率がアップした。柯氏は、匯豊中国銀行は「中国内陸部の最大手外資銀行」の地位を保つことに自信がある。次の重点は機構の設置と業務ネットワークの拡大である」と自信満々に語る。

三つのポイント

柯氏は、細則には三つのポイントがあると思っている。

@外資銀行の支店増設についての時間上の間隔が取り除かれた。元の規定によれば、外資銀行は中国内陸部に一年で多くて支店1店したか増設できなかった。現在、この制限が撤廃され、外資銀行は自由に支店を設立できるようになった。

柯氏によると、年末までに、匯豊銀行蘇州支店がオープンし、東莞支店の開業も可能となり、匯豊銀行重慶代表事務所と成都代表事務所が支店に格上げされる。

銀監会の統計データによると、これまで、19カ国・地域の銀行62社は中国に営業機構191社を設立した。細則の施行で、その数はさらに増えることになろう。

A外資金融機構の業務範囲拡大に要求される資本金の基準が引き下げられた。外資銀行支店の中国投資企業向け人民元業務と大陸部住民向け人民元業務取扱いの最低運営資本金はそれぞれ4億元と6億元から3億元と5億元に引き下げられることになっている。

人民元業務は外資銀行が手に入れようとしている重点である。現在、人民元業務の取扱いが認可されている外資銀行機構は100余社に達し、中国にある外資銀行の営業機構総数の大半を占めている。2004年6月現在、在中国外資銀行の人民元資産総額は844億元に達し、昨年同期比49%増となった。

中国は2001年12月にまず深?、上海、大連、天津の4都市で外資銀行の人民元業務取扱いを開放し、翌年の12月にはさらに広州、珠海、青島、南京、武漢の5都市を増やした。昨年11月に、WTO加盟時の合意に基づいて、さらに済南、福州、成都、重慶の4都市を開放し、今年12月11日には、北京もそれに仲間入りし、そのほかに昆明と廈門などがある。2006年になって、中国は人民元業務を全面的に開放することになる。これまでに北京にある外資銀行の支店22社のうちの大多数は北京銀監局に人民元業務取扱いの意向を表明しているということである。

人民元業務取扱い機構の増加と開放地域の拡大につれて、外資銀行の人民元業務は急増している。

B外資金融機構の市場参入の手続きが簡略化された。もとの政策規定では、外資法人機構と外国銀行支店の設立を申請するには、申請者は申請書類を機構設立の予定地の銀監会の出先機関に届け、それによって次々と各クラスの銀監会に送り届けて審査してもらうことになっていた。ところがいまでは、申請者が申請書類を直接銀監会に届け、同時に申請書類のコピーを銀監会に送り届ければ済むことになっている。

また、元の政策に基づけば、外資金融機構の人民元業務取扱いまたは人民元業務の拡大、業務範囲の調整、独資銀行や合資銀行の傘下支店の設立、および外資法人機構規約の改正、外資金融機構の市場からの退出事項に対する審査・認可などを申請する場合、その申請書類は所在地の銀監会の出先機構によって次々と各クラスを経て銀監会に送り届けて審査してもらわなければならない。新しい細則では、申請書類を所在地の銀監会の出先機構に届け、それによってあらかじめ審査してもらわってから、直接銀監会に送り届けて審査してもらい、次々と各クラスを経て届け出る必要はなくなるわけである。

高級管理者の任用資格の審査について、銀監会は銀監局に外国銀行の支店長の交替を審査、許可する権利を授与することになっている。

「外資銀行の市場参入に対する審査・認可と高級管理者の任用資格に対する審査手続きなどは大幅に簡略化され、外国銀行の中国大陸部進出はいっそう便利になった」と中央財経大学金融証券研究所の韓復林副所長・教授は見ている。

中国投資銀行の反応

中国政府が外資銀行の市場参入基準を引き下げたことに対し、中国投資銀行は冷静に構えている。「私は外資銀行が中国市場に進出した後の国内銀行の先行きを楽観視している。国内の銀行業の現有の枠組みと利益が大きな衝撃を受けることはない。外資銀行の業務は主に大手多国籍企業、世界大手企業500社にランクされている中国の大手企業および個人向けの財務管理などであるが、国内銀行のユーザーは必ずしも完全に競合しあうものではなく、主な利潤成長のスポットもこうした分野ではないからである」と上海浦東発展銀行北京支店の桑永松氏は述べている。

3年前、中国が銀行業の対外開放に踏み切ることにした際、国内の銀行業では「オオカミが来た」という驚きの声があがった。その後、中国の銀行業界は外資銀行の動きに対しじっとしてはいられなかった。

今回、中国投資銀行は冷静に構えているようである。外資銀行という「オオカミ」が中国に進出してから3年もたったのに、想像するほど恐ろしいものではなかったからである。

李紀宇氏の話によると、外資銀行は機構が少ないため、数多くの国内の銀行ほど便利ではない。そして、この不足は短期間内には変えにくいことである。また、収益獲得の方法も国内の銀行と違い、高額のサービス料を稼ぐことで利益をあげるものであるが、国内の銀行は主に預金と貸付金との金利の差を稼ぐことで利益をあげ、サービス料は取っていない。こうしたことから、外資銀行の中国での発展テンポは制約を受けることになろう。

それだけでなく、制度面の制約も存在している。たとえば、外資銀行による人民元の吸収は現行の監督管理制度に制約されている。外資銀行の人民元負債額はその保有する外貨負債総額の50%を上回ってはならないという規定があるため、外資銀行は人民元預金を吸収することで人民元不足の問題を解決することは難しい。   

しかし、新しい細則では以上の制約が撤廃された。これで、「中外銀行の競争の序幕が切って落とされ、2006年に人民元業務が徹底的に開放されると、中外双方の競争が全面的に展開されることになろう」と中国社会科学院の張卓元教授は見ている。

銀行の監督・管理に従事する人は、外資銀行は一時の的な利潤を稼ぐためではなく、中国の金融市場の将来に照準を合わせて中国大陸部へ来て業務を展開するのであると見ている。したがって、外資銀行の多くは中国市場を見捨てることはなく、しかし、とにかく2006年12月11日までにはまだ2年余りしかないからである。

中国の学者の見解

外資銀行への人民元業務の開放にともない、中国の経済学者と専門家の間では外資銀行に対する監督・管理を強化するようにとの声も高まっている。

現在、外資銀行の資産総額の中国銀行業の金融資産に占める割合は1.4%に達している。この額は向こう15年間に30%を上回ることになると業界の専門家は推測している。長沙理工大学の湯凌霄教授は、外資銀行の市場参入に対する監督・管理を強化することは一刻も猶予できないと見ている。

湯教授の見解では、中国は外資銀行の市場参入の科学的な指標システムを構築すべきであり、「監督・管理のカギは外資銀行のリスク状況を正確に評価・測定することである。中国は外資銀行を誘致する面で、資本金や資産規模などのハード条件を重視しているが、内部規制メカニズムや管理水準などのソフト条件はそれほど重視していない。外資銀行のリスク状況を評価・測定する科学的な指標システムが構築されていないため、監督・管理の主観性、随意性、不透明性を避けることは難しい」

「リスクの評価・測定には、経営者の資質、資本金と資産の規模、外資銀行の所属国の監督・管理制度、所属国の預金保険制度を享受するかどうかなども含まれる。リスクに与える諸要素の影響力によって順位を決め、リスクの小さな外資銀行に市場参入の待遇を与えるべきである」。

中央財経大学金融証券研究所の韓復林副所長は次のように見ている。新しい細則によって、外資金融機関にとっては中国で競争を展開するために公平な条件が備わることになる。ところが、外資金融機構の数が絶えず増えているため、中国銀監会は外資銀行の経営業績とリスク状況を把握し、監督・管理を強化すべきである。そうしなければ、10年ないし20年後に、たとえ1社の外資銀行が倒産しても、その悪影響は中国経済全般に波及することになりかねない。