2004 No.37
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中国は今や世界の玩具の生産国、輸出国。開拓できる巨大な内外の市場を目の当たりにしながら、核心となる技術やブランドの著名度で世界に大きく水を開けられていたが、規範の制定や市場化、ブランド化、ハイテク化が進むに伴い、こうした状況に変化が起きている。

玩具の強制的安全規範

唐元?

8月1日、北京のあるデパートで1歳の子供に玩具の車を買おうとしたある父親は、玩具が包装されていないばかりか、説明書がないことにも気づいた。だが、よくあることなので、ただ「何歳ぐらいの子供だったら遊べるの?」と尋ねると、「1歳以上だったら大丈夫です」と店員。

「家に帰って、車の4輪が簡単に落ちてしまうのが分かったのです。もし子供が呑み込んだりしていたら、と思うと。これは玩具ではないですね、“凶器”ですよ」。彼は今でも想像すると、恐怖を感じるという。

今後、こうした説明書のない玩具は販売できなくなることになった。市場に出回っている欠陥玩具を対象に制定した『国家玩具技術安全規範』が、10月1日から施行されるからだ。

新しい『規範』は、玩具や包装に安全マークや注意事項、使用説明書を添付しなければならないと規定しており、安全マークについては新条項を設けている。玩具が性能や大きさ、特徴などの面で3歳以下の児童の使用に適していない場合、安全マークに「3歳以下の児童の使用に不適」と明記すると共に、使用すれば危険が生じる可能性があることも説明しなければならない。一部の部品やガラス・金属製のスモールボールなどの玩具についても、本体あるいは包装に注意事項を明記するか、年齢に関する注意ラベルを貼る必要がある。外国語で適切な注意や説明が表記できない場合には、実例図を示すことも義務づけられる。

新『規範』が玩具業界に与える影響について、中国玩具協会の梁梅秘書長は「正規の玩具メーカーが大きな影響を受けることはないが、ただ、一部の零細企業は市場から撤退することになるだろう」と分析する。

現在、登記された玩具メーカーは全国で約8000社。実際には1万社を超えるとみられており、数台のミシンで廃棄物などを利用し製造している零細企業も少なくない。

ある調査で、こんな結果が明らかになった。どんな賢明な消費者であっても、玩具を選ぶ際には警戒心を失い、肝心の安全性には注意を払わない。一部の零細企業や悪質販売業者はこうした傾向を逆手にとって、奇抜で刺激的、面白い製品ばかりを製造し、売れればそれでいいと考え、安全性に対しては「適当に」という姿勢だ。

新『規範』は、1986年版の国家基準を初めて大幅修正したもの。玩具使用の安全性はより重視され、国内の玩具生産基準はほぼ国際化され、大半の規定は国際的に通用する玩具基準ISO8124に合致する。この基準は14歳以下の児童用に設計された全ての玩具に適用され、多くの要件が規定されている。玩具を正常に使用する際の要件のみならず、児童が玩具を設計以外のその他の目的に用いることも出来るだけ考慮するよう求めているため、新『規範』も同様に予知可能な玩具の誤用による事故防止の対処が可能となる。

新『規範』で特に強調されているのが、「強制的」という姿勢だ。多くの国が玩具の安全性に対し、非常に厳しい要件を設けている。例えば、欧米諸国のメーカーは製品が使用者に損害をもたらした場合、市場に出回っている全ての同製品を回収するよう命ぜられ、それに伴う重大な責任をも担わなければならないなど、大きな代価を払うことになるが、中国のようにこうした要件を「強制的な要件」として規定している国は少ない

児童が遊ぶ滑り台やブランコ、縄跳び用の縄や横バー掛ける玩具などに関して、新『規範』は強制性を具体化的に示している。(1)玩具を正確に組み立てる方法を提示し、組み立てが正確でない場合、使用の過程で危険が生じる可能性があることを指摘する(2)使用者に定期的に玩具の主要な部材について定期的に検査・点検を行うよう喚起すると共に、検査・点検を行わない場合、滑落や倒壊する危険の可能性があることを指摘する――など「必要な説明書を添付しなければならない」と明文化したことだ。

このほか、年齢別の規則や根拠の確定に関しても詳細な規定を設けており、メーカーが随意に確定してはならない強調。消費者は児童の年齢や興味、玩具の安全性に即して最適な玩具を選べることが出来るようになる。

新『規範』では規定する際に3歳と8歳を境界線に設定。3歳以下の児童の使用に適した玩具については、特に安全性の要件が強化されており、「この年齢の児童は、習慣的に物を口に入れるのが特徴であるため、使用する玩具は喉を詰まらせたり窒息させたりする小部品にも必ず考慮しなければならない」としている。専門家によると、8歳以上の児童は読む能力を身に付けており、説明書や注意事項を読んだり、理解したり、注意したり出来ることが特徴であり、「使用説明書や注意事項は製品の安全な使用にとって必要であり、8歳以上の児童が使用する製品には年齢マークを貼らなければならない」としている。

科学装置の類で、燃料を使用して駆動させる模型車両やロケットなどに有害な化学物質が含まれている玩具について、『規範』は、年齢が8歳以上の児童を対象とし、「父兄の保護の下で安全に使用する」と玩具に明記しなければならないとしている。

新基準は様々な面に言及しており、市場で販売する玩具にしろ、試験用や無料贈呈する玩具にしろ、規範を順守しなければならないと規定。食品袋に入れられた小景品など販売促進で無料提供された玩具に問題があった場合でも、消費者はその責任を追及することが出来るようになる。

重金属が塗布された玩具に限定されていた従来の検査は10月1日以降、木材や紙、プラスチックなど、ほとんど全ての材料で造られた玩具にも適用される。玩具の重金属の含有量も従来基準の半分に規定されており、その条件を満たさなければ、製品を市場に参入させることはできない。

中国玩具協会会員管理部の謝鳳華部長は「新基準は技術面でハードルを高くているわけではないため、現在輸出しているか、あるいは国内の大型デパートで販売している玩具が大きな障害にぶつかることはない」と説明する。現在登録されている約8000社のメーカーのうち、輸出企業は85%を占める。

輸出企業のある社長は「新基準の大多数がISO8124と合致しているため、『規範』の施行は中国玩具の輸出にとってプラスとなる。輸出玩具はこれまで国際基準に沿っていなかったため、製品が回収されるケースが多かったからだ」と述懐する。

新基準が国際化されたとはいえ、中国の玩具業界が貿易ルールの変更に伴う業界の変動に常に敏感に直面せざるを得ない状況に変わりはない。業界関係者は「多くの国が講じるようになった新たな措置が、中国の玩具メーカーの頭を悩ませている。欧州は最近、電池を必要とする玩具について、将来の廃棄電池を回収するための費用を払わなければならないとの措置を打ち出し、カナダが制定した製品の包装回収費用の先行支払制度も、包装を重視する玩具の製造コストを更にアップさせることになる。労働集約性が高く、低コストを武器とする中国のメーカーがある程度の影響が受けるのは避けられないだろう」と指摘する。

また業界関係者は「厳格な基準が新製品の開発を難しくしたり、障害になったりする可能性もある」と指摘した上で、先行して重圧を受ければ、安全な製品を早く開発した者が、販売のカギを握ることにもなり、欠陥のある製品は児童に喜ばれず、父母をも安心させることは出来ず、永遠に市場の「ゲート」は模索できないだろう、と話している。

輸出企業は特に、国際玩具業界協会の認証(ICTI)の基準に関心を寄せている。同協会が制定した『国際玩具業界協会認証の商業的操作規範』(ICTICOBP)は、2006年以降、審査要件を全て満たさないメーカーの玩具は国際市場での販売は許可しない、と規定しているからだ。

同協会は審査機構に委託して玩具メーカーの認証作業を実施するが、アジアでは既に認可された中国の5つの審査機構に委託している。同機構は協会が策定した一連の規準を審査根拠に、玩具の安全性や生産環境、従業員の賃金などに関する意見を提起する。認証取得に企業は費用を支払わなければならないが、一般的には年間約10万元から100万元と違いがあり、しかも毎年再審査を受けることが必要。

深セン輸出入玩具検査センターの江麗媛副主任は「国際玩具業界協会の認証を実施するのは必然の傾向だが、審査プロセス上、難しさもある。複雑なプロセスと高い費用は、国内で認証を急速に普及させていく上で障害になるかもしれない」と指摘する。多くの企業は認証でコストは大幅にアップすると考えているが、認証をパスしなければ、注文を受けることが出来ないことを考え、認証関連の資料を現在収集しているところだ。

その一方、大捷達実深セン有限公司人事部の鄭永華部長は、こう語った。「大企業にとって認証に係わる影響は大きくはない。ウォルマートやディズニーなど国際グループ最大手が生産している玩具を見ても、こうした企業は元々要件を高くしており、認証の得るのは非常に簡単なことだ」