2004 No.38
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アメリカの経済と中国との貿易

――今後のかなり長期間にわたって、貿易摩擦は中米経済関係で最も際立つものとなろう。

傅夢孜 

(中国現代国際関係研究院アメリカ研究所研究員)

冷戦終焉後、アメリカ政府は情勢の変化に適応して、軍事技術の民用への転換を加速することになった。例えば、GPS、通信技術、情報処理、新材料などがそれである。アメリカ経済の急成長は10年間も続いている。中国の飛躍が世界に注目されている中、アメリカ経済もまったく見劣りすることなく大きな飛躍をとげた。1979年から2003年までのアメリカ経済の規模は2兆2000億ドルから11兆ドルに膨れ上がったが、中国経済の規模は2000億ドルから1兆2000億ドルに拡大し、同じ時期における中国の経済成長率はアメリカの2〜3倍となったという推測から見ても、アメリカの経済規模の拡大は決して中国にひけをとるものではない。中米経済の同調的拡張は、世界経済と中米両国の経済・貿易関係を力強く促進することになった。

一、アメリカの経済状況

ブッシュ政権発足後、アメリカの経済成長は鈍化することになった。それは長期的な経済成長期を経てから調整期に入ったからであり、「9.11テロ事件」後のアメリカは非常時に置かれていたからでもある。「9.11テロ事件」の発生によって、ブッシュ政権はテロリズム対策を最優先させ、国防支出削減という冷戦後からとってきた国策を変え、本土防衛支出と国防支出を増やし、しかも国境管理を強化することになった。それによって、アメリカと周辺諸国との貿易コストが増えることになった。テロリズムの脅威に立ち向かうため、ブッシュ政権はやむなく経済成長より、アメリカの国力を利用することに百方手を尽くしている。しかし、ブッシュ大統領が政府の経済閣僚を入れ替えたにもかかわらず、アメリカの経済状況は全般的にみて依然としてクリントン政権のごろには追いついていない。ブッシュ政権の財政赤字と貿易赤字がともに拡大しているが、クリントンの時代には財政黒字が1000余億もあったのである。ブッシュ政権の財政赤字は今年第2次戦争以来最悪の5000億ドルに達する可能性もある。また、貿易赤字も5000億ドルとなるという。クリントンの時代に創出された2000万の雇用の機会は、ブッシュ政権になると、その200が台無しになっていしまった。

今年のアメリカの第1四半期の経済成長率は4.5%という望ましい数字に達しており、第2四半期は3%に下がり、中程度の成長とは言えるが、連邦準備制度理事会(FRB)の推測した4%の年間成長率に達するのは困難がある。国際石油価格の高騰、テロリズムの存在、金利の上昇、金融の逼迫などはいずれもアメリカの経済成長が伸び悩む誘因となるだろう。

二、中米の経済・貿易関係に影響を及ぼすアメリカ経済の成長鈍化

中米両国の経済・貿易関係は両国の国交樹立後に速やかな発展をとげ、貿易額は100余倍拡大し、アメリカの世界大手企業500社のほとんどが中国に進出して中国各地で大型プロジェクトに投資しており、アメリカは中国への投資がもっとも多い国となっている。中米経済の相互依存度が高まっているだけに、アメリカ経済の鈍化は直接中国経済に次ぎの2つ影響を与えることになろう。

@ 民元切り上げプレッシャーの増大。財政赤字と貿易赤字の影響によって、この2年

間にアメリカの経済成長は日本とEUよりも高いものであったのに、ドル対ユーロ、日本円など主要貨幣の為替レートは下がり続けている。人民元が対米ドルペッグ制をとっているため、人民元は「予想外に」切り下がるメリットを手にした。今のところ、アメリカの財政赤字と貿易赤字の上げ足が続いており、下落した米ドルがリバウンドすることが難しいため、人民元の切り上げプレッシャーが絶えずつのることになる。

中国は経済の過熱を抑えるため、金利引き上げの必要が迫っている。しかし、そうすれば、海外資金の流入を奨励することになり、人民元がより大きな切り上げプレッシャーにさらされることになり、中国政府のマクロコントロールの実施を妨げることになる。幸いなことに、アメリカの金利引きあげは、客観的には中国のマクロコントロールのために可能性を広げることになった。しかし、今のところ、アメリカのインフレプレッシャーが緩和し、さらに金利を引き上げる必要性が軽減しているが、中国のマクロコントロールがまだ完全に達成されていない中では、人民元切り上げのプレッシャーが大きくなるかもしれない。

A中米間の貿易摩擦の激化。アメリカが巨大な貿易赤字を抱えているため、中米の間では貿易摩擦はいっそう頻発している。アメリカ通商代表部(USTR)によれば、今年6月のアメリカの対中商品貿易赤字は5月の121億ドルから142億ドルに増えた。ここ数年のアメリカの対中貿易赤字の急速拡大は、アメリカ経済の力強い、持続的な回復と関連がある。アメリカの経済成長が鈍化したら、対中貿易赤字の上げ足が緩めることになる。

三、貿易のアンバランスの原因

ところが、中米の貿易アンバランスは長期的に存在しており、それには主に次の三つの原因があると思う。

@両国の国内のマクロ経済状況と関連がある。もし一国の貯蓄が投資より大きいものとなるなら、その国の輸出は貿易黒字となる。それと反対に、貯蓄が投資より小さくなるなら、その国の輸出はマイナスとなるか、または貿易赤字が出ることになる。中国の貯金率は高いことが中国が大きな貿易黒字を抱えている主な原因である。アメリカの貯金率が低いことが巨額の貿易赤字のもととなっている。

Aアメリカの対中輸出規制と関係がある。中米両国の経済はそれぞれ自らの強みを持っている。アメリカはハイテク、知識集約型設備と製品に強みがあるが、中国のそれは労働集約型製品にある。アメリカの対中輸出規制は、自らの強みを生かすことを制約し、しかも中米貿易のアンバランスを招くことになっている。

B国際分業の再編と関係がある。中国の労働力は資質が高く、人件費も低いため、一部の経済共同体と新興市場は次々と工場を中国に移しており、既存の貿易ルートを通じて製品をアメリカに売っている。中国の対米貿易黒字がなぜ増大したかといえば、関係諸国・地域が対米貿易黒字を中国へシフトさせたからである。

実のところ、理性的な経済学者は、中米間の貿易赤字は大きな問題にならないが、政治的人物によって悪用されるのではないかと懸念している。中米両国は理性的に貿易問題に対処すべきであり、中国政府は中米貿易を発展させながら貿易アンバランスの問題を解決する原則をあくまで主張している。中国経済の発展にともない、中国は米国からの輸入をさらに増やすに違いないと思う。

中国は世界最大の発展途上国であり、アメリカは世界で最も発達した国である。中米両国の経済には大きな相互補完性があり、互いに長所を取り入れ短所をカバーし、それぞれの強みを十分に生かすべきである。中米両国の経済協力は両国の経済協定の実施にプラスとなるだけでなく、世界経済の安定と発展にもプラスとなる。今後、かなりの長期にわたって、貿易摩擦は両国の経済関係の中で、最も際立つものとなろう。長期な視野で見れば、アメリカは対中輸出規制を緩め、両国の経済・貿易往来を正常で、それぞれの強みを生かす軌道に乗せるべきである。中国は対米貿易黒字を利用して、アメリカの国債を持続的に買い入れることを考えるべきである。これは両国の国際収支のバランスをとるためばかりでなく、アメリカにとっては解決に困っている財政赤字を補填することができ、しかも経済戦略の角度から言えば、米ドルの国際的地位をサポートし、確保することにもなろう。