2004 No.39
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安定して発展する新疆ウイグル自治区

――過去、幾度も東トリキスタンの過激派による騒乱が起きた新疆ウイグル自治区。今では国の安全を害する違法事件の発生は減少し、異なる民族が同じ土地で融和された静かな生活を送りながら、新疆の経済発展に向け尽力している。

蘭辛珍

ブドウやナシ、ハミ瓜、綿花、石油、天然ガスと聞けば、誰もが新疆を思い浮かべるだろう。多くのビジネスマン、特に中央アジア各国のビジネスマンはこの新疆の地で成功することを夢見ている。

その一方で、動乱や爆発、分裂といった言葉を聞くと、やはり新疆を想像する。東トリキスタンによる影響を受け、新疆の社会治安には内外の関心が集まっている。ビジネスマンがまず尋ねるのが、「新疆の治安はどうか」だ。

西北部に位置する新疆ウイグル自治区は、総面積の16%を占める国内最大の行政区。その面積は、独仏とポーランドを合わせた面積に相当する。

この広大な土地に47の民族が生活しており、最多は総人口の45.6%に当たるウイグル族。中央政府は民族自治を実施するため、新疆ウイグル自治区を創設し、自治区政府は民族的特性に基づき、現地の各民族の利益にかなった法律や法規を制定できるようになった。

記者は8月24日に新疆に入ったが、10日余りの取材期間中、治安は想像していたほど悪くはなく、皮膚の異なる民族が同じ土地で融和された静かな生活を送っていた。

自治区のスマイ・ティエリワルディ主席は「90年代、東トルキスタンの過激派が新疆で爆発事件や暗殺など分裂活動を繰り返していたが、自治区政府が取り締まりに乗り出し、また国連が過激派をテロ組織に指定して以降、テロ行為は著しく減少した。この2年来、テロ事件は発生しておらず、一般的な刑事事件も少なくなった」と話している。

社会の安定は経済の急成長をもたらした。2004年上半期の国内総生産(GDP)は前年同期に比べ12.9%増加し、全国を3.2ポイント上回った。農村部の1人平均現金収入も全国平均を超え、同11.9%の増。

安定が生活の豊かを

8月26日、区都ウルムチから東へ約300キロ、ブドウの生産で知られるトルファンへ。ちょうど「ブドウ祭り」の開催日に当たり、内外から大勢の観光客が訪れていた。市内の大小様々なホテルはどこも満室で、泊まる場所を探せなかった人も多かったようだが、運良く市民の家に泊まることができた。

トルファンでブドウの主要な生産地と言えば、「ブドウ溝」だ。長さ10キロにも満たない谷の両側にブドウ棚がぎっしりと続く。四季を通じて降水量が少なく、日照時間も十分なので、ここで採れるブドウは非常に甘い。トルファンを訪れる観光客は必ずここを訪れる。

スディク・トルソンさんの家は、ブドウ溝の中ほどにある。トルソンさんは今年35歳。栽培しているブドウ園は約3万平方メートル。ブドウが熟する8月になると多くの業者が購入しに来るので、経営はいささかも心配ない。

この数年、観光客が増えてきたことからビジネススタイルを変更。業者にブドウを売却するのは止めて、干しブドウを生産しながら観光ぶどう園の経営を始めた。

観光客が来ると、未婚の妹と9歳になる娘がウイグル族の舞踊を披露する。観光客は出された新鮮なブドウやスイカ、ハミ瓜など地元の果物を味わいながら鑑賞し、踊りが終わると、トルソンさんは干しブドウをセールス。汚染されていない、品質がいい、市場より味がずっといいと、観光客には評判がよい。市場より価格が高いのはもちろんだ。

「以前は新疆の安全を心配して、来る観光客が少なかったので、低い価格でしか売れなかった。今では社会は安定し、観光客も年々増えてきているため干しブドウへの関心も高まり、収入は前よりもずっと多くなった」とトルソンさん。

5年前の年収は数千元、だが今では3万元を超す。冬には羊や牛を飼育している。

今年受け入れた観光客数はすでに約2000人。年収は昨年の2倍になりそうだという。急がしい時は母親も手伝っている。

 栽培面積と品種を増やそうと、来年には隣人のブドウ園も請け負うことで合意。家を改装して空調やカラーテレビ、バスルームなどを設けるなど、民宿経営にも乗り出すことにした。家は2階建てで面積は約200平方メートル、部屋数は十数室、20人は宿泊できる広さだ。

トルファン観光局では、トルソンさんのような経営形態を支援、こうした方法をブドウ溝に住む農民の間に普及させていきたいと話している。

ブドウ園の経営以外に彼にとって気がかりなのは、小学3年になる娘さんの将来だ。昨年、ウイグル族学校から漢族の学校に転向させた。「娘を中国で最高の大学に入学させたい」からだ。

栽培技術を各民族に

新疆ウイグル自治区の中部。天山山脈によって南疆と北疆に分断されている。新疆の人にとって北疆は比較的静かな土地としてのイメージが強いが、南疆の巴音郭楞(バイングロン)蒙古自治州ではかつて東トリキスタン過激派による事件が頻発した。新疆第2の都市・庫爾勒(クアル)市は同自治州にある。

トルファンから夜12時発の列車に乗り、8時間後にクラルに。市街地に向かう車の中、とてつもなく美しい町並みが目に飛び込んできた。清水をたたえる孔雀河が中心部を緩やかに流れている。緑樹や草花、近代的な建築物が並ぶ光景は、市外地に広がる砂漠地帯と比べるとひどく対照的だ。

トルディ・アイバイさんのナシ園はオアシス・クラルの南部にある。ナシの栽培家として彼を知らない人はいない。彼の栽培技術でナシの1株当たりの生産量は4倍になった。技術を学びたいという人には無料で教える。アイバイさんはこれまで漢族であろうと、他の民族であろうと、彼らが経営するナシ園に技術を伝えてきた。

市の中心から南に100キロほど行ったところ、ナシがたわわに実る地でアイバイさんに会うことができた。彼はちょうど灌漑をしていた。ナシ園はそう大きくはなく、面積は0.4ヘクタール。

アイバイさんは今年42歳。父親から栽培技術を学んだ後、80年代から自家園で高生産量が期待できる技術の研究に乗り出し、開発に成功した。「当初、他の栽培農家にもこの技術教をえようと思ったが、出来なかった。もし漢族に教えたりすれば、分裂を目指す者は漢族のためにやったと言って、私を殺していたでしょう。でも、社会が安定してきたので、教えることにしたのだ」と述懐する。

「技術を教えたりすれば、生産競争に巻き込まれると考えなかったのですか」、と尋ねると、アイバイさんは「いいえ、私は豊かになっていたし、他の人を豊かにしようとするのは当然のことだ」。現在の年収はおよそ10万元(1元=約13円)。多くの人が彼の技術を採用しているが、彼のナシ園は、他と比べるとずっと規模が小さい。

アイバンさんには3人の子供がいる。長女はクラフの高等専門学校に在学中。専門は園芸。卒業後は父親の事業を引き継いでくれるそうだ。現在の悩みは規模が小さく、しかも拡張できないこと。新疆では緑地が少なく、砂漠地帯が大半を占めることから、隣人のブドウ園を請け負うにした。

自治区主席「長期の安定が必要だ」

「我々にとって肝要なのは、新疆の長期的な安定を確保することだ。安定と投資があってこそ、ビジネスは成立し、新疆は発展していく」。自治区政府のスマイ・ティエリワルディ主席はこの強調する。

現在、新疆の経済は急成長の段階にある。石油や綿花では全国最大の生産地であり、綿花の価格変動は世界の動向にも影響を与えるほどだ。

新疆は8カ国と国境を接し、対外開放通商地点は28カ所を数え、中国と中央アジア、西アジアとを結ぶ交通の要衝。貿易の拡大は目覚しく、2004年上半期の中央アジアへの輸出量は前年同期に比べ290%の増となった。バイングロン蒙古自治州で2003年に実施された安全に関する2回目の調査では、95.56%の市民が「満足している」と答えている。

中央政府は新疆ウイグル自治区の発展に重点的に取り組んでいる。2000年に西部大開発戦略を打ち出して以降、既に3000億元近い資金を投入。その額は中西部都市全体の2倍に相当する。

「新疆では、多くの人びとが経済を発展させ、自身も豊かになるために力を尽くしている。年間、30万人を超す外国人、国内からも1000万人以上の人がこの地を訪れているが、問題は起きていない。現在の新疆は非常に安全だ」。スマイ・ティエリワルディ自治区主席はこう強調した。