2004 No.40
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再び浮上した歴史問題

--日本における教科書検定と閣僚の靖国神社参拝及び韓国における日本統治時代の親日行為の究明などの新しい動きによって、東アジア諸国の関係は試練にさらされている。

丁志涛

最近、日本では歴史教科書問題が再び日本の右翼勢力によって引き起こされている。靖国神社も騒がしくなった。何度も靖国神社参拝を行った日本の小泉純一郎首相は最近、これは自分の政治的信条だから断固として変えないと公言した。また、その閣僚と国会議員も今年の敗戦の日に靖国神社を参拝した。日本のこれらの新しい動きは東アジア地域で大きな反響を呼び起こした。例えば、韓国では日本支配当時の親日行為真相究明が進められている。それと同時に、中韓日三国で高校の歴史課目の教材を作成するという計画も実施されている。

日本と東アジア諸国の関係に触れると、歴史問題は避けて通れない問題として浮上してくる。日本は自国の行為に対する隣国の反応がオーバーだと思い込んでいるが、これに対し、他の隣国にとっては日本の侵略歴史を美化する行為を放任するわけにはいかないのである。日本、ひいては関連のある東アジア諸国は、いかにして歴史問題に正しく対処し、今のような悪循環から抜け出すかという試練に直面している。

日本東京都教育委員会が8月26日、「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した扶桑社の歴史教科書を来春新設する都立初の中高一貫校「白鴎高校附属中学校」で採択することを決めた。「新しい歴史教科書をつくる会」が編纂した右翼的な歴史教科書は2001年度用の教科書採択の中で、かつての侵略の歴史を歪曲したために市民や父兄、教職員の猛烈な批判を受け、542の採択予定区で惨敗に終わり、わずか東京の公立養護学校の一部と愛媛県の公立ろう学校及び一部の養護学校で採用され、採用率は0.1%にもならなかった。四年後、この「つくる会」は再び勢いを盛り返して、右翼的な歴史教科書を日本の公立の高等学校に採用させようとした。

8月27日、中国外交部スポークスマンの孔泉氏は記者会見で、東京都教育委員会が右翼的な歴史教科書の採用を決定したことに対して強い不満と憤慨の意を表し、「日本の歴史教科書問題の本質は、日本側がかつての侵略の歴史を真に正しく認識して対応していくかどうかということである」と指摘した。9月1日、韓国の潘基文(パン・ギムン)外交通商相も日本が史実を歪曲した歴史教科書を採択したことを批判するとともに、真実の歴史は一つしかないと強調し、未来に向けた韓日関係の構築には、日本政府がいっそう歴史を直視しなければならず、正しい歴史認識は韓日関係の発展の基礎であるという韓国の立場を表明した。

教科書問題については、中韓両国の立場は一致するものである。大多数の日本の人々と学者も右翼の行為を認めていない。日本の右翼的な教科書の採用をボイコットしようと、中韓日三国の学者は2002年から中学生用の「東アジア共通歴史副教材」の作成を始め、来年5月にこの三国で同時出版される予定である。別の歴史副教材と違って、この「副教材」は大量のイラストと写真を使って、この三国の近現代史上の共通の歴史をありのままに記述したものである。

日本でたびたび起こる歴史を歪曲した教科書の事件は、戦争終結から半世紀以上も経ったのに、日本にはあの真実の歴史を直視しようとせず、ひいてはさまざまな手段でみずからの侵略によってアジア隣国にもたらされた苦難と傷を回避し、美化している人たちが一部にはいることをも物語っている。北京大学日本研究センターの彭家声副主任はこう見ている。日本は愛国心と民族主義を特に強調している国であり、第二次世界大戦の敗戦国としての歴史は多くの日本人の心理に暗い影を残した。日本の右翼勢力はまさにこの極端なナショナリズムを利用して歴史の歪曲を行っているのである。

経済面と政治面の要素も、日本がどうしても現実に直面しようとせず、ひいては歴史を歪曲する重要な原因となっている。1990年代のバブル経済崩壊後、日本の経済がもとの上り坂から下り坂へと変わり、経済衰退や失業率及び犯罪率が上昇しているため、国民はそれまで持っていた優越感を喪失してとまどいにさらされることになった。一方、日本の政界は絶えず分裂と再編を繰りかえし、右翼勢力とナショナリズムが再び台頭してきた。十余年前から低迷し続けてきている日本経済に直面して、小泉内閣は経済を再興することを誓ったが、施政能力が弱いため、その支持率の地滑り現象が何度も起きた。こうした状況の中、歴史教科書の改ざんで自国の経済や政界の動きから人々の目を逸らそうとしているのである。

今日の日本社会は右翼的傾向が強まり、ムードもますます保守的になっている。それは日本政界の靖国神社参拝に対しての姿勢からもうかがうことができる。8月15日は日本が無条件伏降を発表した敗戦の日である。今年のこの日には、小泉氏はその演説の中で、日本がアジア諸国で繰り広げたあの侵略的歴史を深く反省していると述べたにもかかわらず、その内閣の4閣僚と国会議員の58人は依然として靖国神社に参拝した。8月31日、小泉氏は日本の財界側の「日中首脳会談ができる雰囲気づくりを」との要望に対し、「自分の政治信条だから断固として変えない」と述べ、来年以降も続ける考えを強調した。2001年4月の首相就任以来、小泉氏は毎年一回も欠かすことなくA級戦犯を祭った、軍国主義精神を宣伝する靖国神社に参拝しているのである。

歴史認識の問題は日本の新世紀における発展の趨勢を反映しているだけでなく、東アジア地域全体の平和と安定にも影響を及ぼしている。小泉氏はかつて、靖国神社は参拝する、それによってもたされた中国や韓国との関係悪化はまたなんとかすればよいと強調した。小泉氏のこの考え方とやり方はここ数年日本は東アジア地域での孤立状態が続き、東アジア諸国との政治的関係が進まない原因ともなっている。日本側の歴史問題に固執する姿勢によって、中日関係の「政冷経熱」の局面を招くことになった。中国の靖国神社問題についての立場は一貫したものである。中国は歴史を正しく認識し、対処することを主張し、日本のごく少数の政治的人物のマイナスの行動に深い遺憾の意を表明している。

韓国ではいま、日本植民地支配時代の残滓清算を目的とする親日行為真相究明が繰り広げられている。これも日本の誤った歴史観に対応するものと見られている。

歴史の真相を明らかにするため、韓国の民間団体と政界は長い間ずっと親日反民族行為真相究明を進めてきたが、調査はなかなか進展をみせなかった。韓国の政治と社会構造の変化に伴い、親日行為究明を求める声もますます大きくなり、政府と与党は歴史真相究明問題に関心がますます高まり、それを執政の重要な課題の一つにしている。韓国のノ・ムヒョン大統領は8月15日の「光復節」59周年記念式典で、韓国は歴史問題を明らかにするための「真相究明特別委員会」を設置することを明らかにした。

もちろん、ノ・ムヒョン政権の歴史清算の初志も各方面からの質疑を受けている。野党のハンナラ党はこう指摘している。ノ・ムヒョン政権が過去の歴史問題の清算に固執しているのは、当面の経済困難などを乗り越えることに自信がないからであり、その目的はハンナラ党の朴槿恵(パク・クンヘ)代表を失脚させることにある。彼女の父親であった、元大統領の朴正煕(パク・チョンヒ)は第2次世界大戦当時に日本陸軍士官学校に入り、後に中国東北侵略日本軍の中隊クラスの将校であったことのあるため、調査対象となった。しかし、この調査がまだ始まっていないうちに、ヨルリン・ウリ党の高官が次から次へと人々の非難の的となった。8月19日に前党首、辛基南(シン・ギナム)議長が父親の親日歴史問題で辞職したのに続いて、8月24日には国会議員、国会文化観光委員会委員長の李美卿(イ・ミギョン)も父親が日本の植民時代に日本軍の憲兵だったことを認めた。これらのことの皮肉な意味合いはヨルリン・ウリ党にとっては予想もつかなかったことであろう。

この歴史問題清算をめぐる戦いの初志と結末がどうなるかを問わず、韓国の大多数の国民はこの清算行動に歓迎の態度を示していることが明らかとなっている。韓国社会世論研究所の調査によれば、半数以上の調査対象は、親日真相究明は誤った歴史を明らかにするものであるから、引き続き行うべきだと考えている。韓国が親日の歴史を清算するためにとってきた一連の措置は、韓国の国民、特に青年の、日本の韓国とアジア隣国侵略の歴史に対しての認識を強化するうえで積極的な意義を持ち、韓国の国民が近代の歴史を反省することに役立つものであるが、日韓関係への影響は消極的ものだとされている。日本はこのことに懸念を示している。辛基南(シン・ギナム)議長が辞職した時、韓国訪問中の日本民主党の鳩山由紀夫前党代表は8月18日に、韓国の歴史清算行動は日韓両国関係にマイナスな影響をもたらすことになりかねない、と指摘した。

7月下旬、韓日両国の指導者は韓国の済洲島で非公式首脳会談を行い、北朝鮮の核問題と日朝国交正常化の条件などについていくつかの合意に達した。両国の政府関係が上昇期にあるので、韓国は歴史問題でいくらか譲歩したようである。会談後の記者会見で、歴史問題と靖国神社参拝問題をどう見ているかという日本人記者の質問に、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は「任期内にこの問題を正式の議題、あるいは焦点の問題とはしない」と公言した。それにしても、独島をめぐる領有権紛争が存在し、両国の歴史観が異なっているため、両国関係の真の発展には、時間と両国指導者の政治的先見性がなくてはならない。来年は日韓関係正常化40周年を迎えることになるが、この東アジアの重要な二国の関係は、どのように内部事務を処理するか、外交の二国関係に影響するといった難問に直面することになろう。

同じく東アジアに位置する中国、日本、韓国はいずれも悠久な文化と伝統を持ち、しかも発展の中で互に影響しあっている。中日韓三国間の関係から見て、最も問題が少いのは経済協力であり、困難は政治面にあり、そのうち歴史問題は解き難い問題となっているようで、三国の間には根強い不信感が存在している。こうした関係がいちだんと発展していくならば、三国の国際政治舞台での役割にとって大きな障害になるにちがいない。政治問題、特に歴史問題をうまく解決できなければ、中日韓三国の経済舞台での主役としての役割も割り引かれることになろう。