2004 No.40
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エネルギー戦略:自力支援または他力支援?

――中国のエネルギーの活路はどこにあるのか。自立か、国際協力か、それとも新エネルギー源の開拓か。

国務院発展研究センター産業経済部の馮飛副部長は「今後20年については、『節エネ優先・構造の多様化・良好な環境』という持続可能なエネルギー発展戦略を実行することに賛同する」と考えを示した。

馮副部長はその理由についてまず、節エネの潜在力が大きいことを挙げた上で、次のように説明した。第1に、製品あたりのエネルギー消耗率が高いことだ。製品単位のエネルギー消耗は先進国を25〜90%上回っている。火力発電所での標準炭消耗はキロワット時あたり404グラムだが、国際レベルは317グラムで27.4%も高い。第2は、生産高に占めるエネルギー消耗が高く、世界でも最高の国の1つであることだ。標準炭500グラムあたりの国内総生産(GDP)は僅か0.36ドルに過ぎない。日本は5.58ドル、世界平均は1.86ドル。試算によれば、産業と製品構造の調整、エネルギー高消耗業種の比重の低下、高付加価値製品の比重の増大、住民のエネルギー使用の合理化などの措置を講じることで、短期間に標準炭にして3億トン前後は節減できる潜在力はある。「十五」(第10次5カ年計画・2001〜2005年)を通じては、約4億トンに達すると見込まれている。

節エネは、世紀を越える経済・エネルギー発展目標を達成する上で重要な役割を果たす。科学的分析によると、GDP1万元あたりのエネルギー消耗は、標準炭にして1995年は2.33トンだったが、2010年に1.25トン、2030年は0.54トン、2050年には0.25トンまで減少すると予想される。専門家の間では省エネは石炭と石油、天然ガス、電力と並んで重要な「第5のエネルギー」と見なされている。

次に、エネルギー生産構造の調整が可能なこと。1990年以来、1次エネルギーの消費構成では石炭の占める比重が明らかに低下している。馮副部長が「国家エネルギー戦略の基本構想」で指摘しているように、エネルギー構造の合理化プロセスがエネルギーの総需給量に及ぼす影響は非常に大きく、供給分析や構造合理化プランによれば、2020年までには1億2800万トンは節減することが可能だ。

一方、学術界やエネルギー界では、国際協力を通じてエネルギー問題を解決できるという声も聞かれる。

将来の動向を見れば、石油や天然ガスなど良質なエネルギーの消費が急増することで、需給による構造変化が求められるだろう。従って、エネルギー構造はその調整と合理化によって石炭の消費比率を低下させ、天然ガスの普及を加速させ、内外の資源に依存して国内石油市場の需要をほぼ賄うことは可能となる。

これについて、北京石油大学の陳大恩副学長は「中国はエネルギーの備蓄制度の実施を加速させるべきだ」と強調。陳副学長によると、現在、中国は戦略的な備蓄油田あるいは天然ガス田は有していない。その一方で、中国にある資源の将来については楽観視できない状態にある。石炭は21世紀の需要を満たすことは出来ても、石油や天然ガス、ウラン資源については、仮に輸入を考慮しなければ、その需要を満たせるのは2010年までだ。石油の輸入量は1996年に2262万トンを突破、輸出量を上回ったことで中国は石油の純輸入国に転じた。今世紀中期までに、エネルギーの輸入は総需要量の50%以上に達すると予想される。国内資源の大量開発と使用といったやり方を早急に改めなければ、国民経済を持続的かつ安定して発展させてきた原動力が勢いを失うだけでなく、資源の持続可能な利用にもマイナスとなり、後世にも大きな影響を及ぼし、長期的な利益をも損なうことになる。エネルギーを主として輸入に依存している国にとって、資源の備蓄は一段と重要性を増す。政府は探査または開発した油田、または天然ガス田を計画的に温存、または採掘量を削減し、その分を戦略的備蓄に回すことが必要だろう。国際原油価格の変動を睨みながら、チャンスを逸することなく低価格の段階で原油を購入して、戦略的備蓄を拡充していくことが肝要だ。同時に、企業に対しても備蓄を奨励する必要がある。

別のエネルギー戦略もある。長期的に見れば、一部の資源の欠乏が国際的な問題になることも必ずあるだろう。そうしたことから、一部の専門家は、エネルギー危機を解決するカギは新素材、新エネルギーの開発にあり、再生可能な資源を積極的に利用すべきだと提唱している。

中国鉱業大学の陶樹人教授は「現在では水力資源や、生物物資利用エネルギーの開発が最も注目されているが、地熱エネルギーや風力エネルギー、太陽エネルギーなどの再生可能なエネルギーなどの開発も必要だ」と指摘する。

中国科学院と中国工程院の会員で、金属学・材料科学を専門とする師昌緒氏は論文の中で「太陽エネルギーと風力エネルギーは新素材としての利用が可能だ。水素エネルギーや核エネルギーは新エネルギーではあっても、使用の面で安全性の問題が存在する。現在研究されているナノ(10億分の1)メートル炭素管は水素蓄積能力が非常に高く、幅広い関心を集めている。蓄電池の用途は拡大しつつあり、リチウムイオン電池の将来性は大きい。主に航空宇宙分野で用いられているが、交通や発電所などでその信頼性と長期にわたる安定性について詳細な分析がなされれば、応用分野はさらに拡大される」と論じている。

更に師氏は「石炭を石油に変える技術は世界では既に成熟しているが、中国での応用は立ち上がったばかりであり、エネルギーとして研究に値する」と指摘。その上で「国家石油備蓄戦略を発展させる過程でこの技術が実現されれば、その意義はことのほか大きい」と強調する。

だが国務院発展研究センター産業経済部の馮副部長は、この技術に期待を寄せていない。「現在の計画によれば、2008年の第1期プロジェクト終了時の生産量は500万トン、2期プロジェクトを終えても生産量は1000万トンで、この生産量では同期の必要な消費量を満たすには足りない。経済的角度から考慮すれば、この方法は重視するに値しない」と指摘している。

更に馮副部長は、宇宙にエネルギーを求める考え方に疑問を投げかけた上で、「再生可能なエネルギーを大々的に発展させてこそ、中国のエネルギー問題は解決できる」との考えを強調。現在、再生可能な資源の研究は停滞し進展していないどころか、むしろ長期にわたって低迷状態にある。資源の再生可能な時代が来るまでにはまだ時間がかかりそうだ。


■参考資料

エネルギー戦略:構造の多元化

エネルギー構造の多元化は、中国の2020年までのエネルギー開発戦略の柱。水力発電や原子力発電、太陽エネルギー、生物物資利用エネルギー、風力エネルギーなど再生可能なエネルギーを大々的に開発し、化石燃料への依存度を低めてエネルギーの持続可能な発展を実現する、というもの。

専門家は「代替エネルギーを発展させれば、エネルギーシステムの脆弱性が相殺されるだけでなく、将来の国際的なエネルギー産業の競争においても優位な地位を確保することができる。特に新しい代替エネルギーによって、広大な農村部での需要に応えることができるほか、森林の過度の伐採や植生の破壊にブレーキを掛けることができるため、長期的かつバランスの取れた社会を発展させる上でその意義は大きい」と指摘している。

今後発展させる主要な代替エネルギーは先ず、水力発電である。水力発電は選択できる重要な代替エネルギー。現時点での開発率は僅か15%と、世界水準より遥かに低く、しかもインドやブラジル、ベトナムなど発展途上国を下回っているため、開発の潜在力は大きい。

次に核エネルギー。先進国では重要な代替エネルギーとなっているが、中国での開発は進んでいない。現在、全国の発電量に占める割合は1.2%。エネルギー供給の面から見れば、ウラン資源による原子力発電の将来性については、「短期的には資源は豊富であり、中期的に資源は確保され、長期的には潜在力がある」と言える反面、直面する3つの大きな難題は「投入資金、技術、環境」だと言えるだろう。中国は2020年までに原子力発電を積極的に発展させ、発電容量を4000万キロワット、総発電量に占める比率を4%まで高めることを目指している。

第3に再生可能な資源。小規模水力発電や太陽エネルギー、風力エネルギー、生物物質利用エネルギーなど。中国はこの分野での資源は豊富だが、開発コストはむしろ高くつき、規模が小さいことを理由に、政策的に奨励されてこなかったために開発が遅れている。再生可能なエネルギーを積極的に開発することで、化石燃料の代替エネルギーとする長期的な目標を達成する計画だが、短期的には、いくらかゆとりのある社会を全面的に建設する過程で辺境、農村部でのエネルギーの使用問題は解決することが可能だ。中国は2020年までに再生可能なエネルギーをある程度の規模にまで発展させることで、化石燃料への代替をより大規模に展開できる基盤を整備したいとしている。