2004 No.40
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中国のエネルギー資源は
不足しているのか、危機なのか

魯 皮

エネルギー資源不足がいっそう深刻になったことは、中国のエネルギー資源の危機の到来を意味しているのだろうか。中国のエネルギー資源は果たしてみずからの需要を満たすことができないのか。中国はエネルギー資源の不足にいかに対応するのか。中国のエネルギー資源戦略はどのような選択をするのか。

さまざまな徴候が示しているように、中国が世界で一位の石炭、鉄鋼、銅などの消費大国、アメリカに次ぐ世界二位の石油と電力の消費大国になってから、経済の急速な発展に伴い、中国の主要なエネルギー資源と一次産品の需給構造にはかなり大きな変化が見られ、資源の経済発展に対する制約が顕在化し、ギャップもますます大きくなっている。昨年以来、長江デルタ地帯の「電力不足」から、東北、華東、華南、西南などの地区の「石炭不足」と「石油不足」に至る「三つの不足」が深刻化してきている。これは中国のエネルギー資源危機の到来のシグナルなのか。中国のエネルギー資源は果たしてみずからの需要を満たすことができないのか。中国のエネルギー資源戦略はどのような選択をするのか。

深刻化する電力不足

中国では、ほとんどの電力部門のオフィスに色彩によって全国各地の電力供給事情を表わすことのできる地図が掛けられている。赤い色は極度の深刻、黄色い色はかなり深刻、薄緑色と薄黄色は相対的に深刻をそれぞれ表しているのである。今年の4月に入って以来、地図の色彩のトーンは年初の薄緑色と薄黄色から赤い色へと変わってきた。緑色と黄色い色もたまには見にすることがあるが、6月の高温期に入ってから地図は赤い色一色になってしまった。

国家電力管理調整センターの統計データによれば、全国の一日の電気使用量は6月28日に初めて6000億キロワットを超え、29日には6274億キロワットに達し、史上最高となった。

各方面の要素をまとめてみると、2004年の全国の年間電力需要量は2兆1150億ないし2兆1725億キロワット時になると見られていたが、6月初めには、年間の電力不足量は600億キロワット時に達するとの予測が発表された。しかし、データが示しているように、この予測はあまりにも楽観的すぎたようだ。今年上半期に、電力需要量が急速に増え続け、工業用電力使用量は前年同期比17.37%増となり、社会全体の80.73%を占めるようになった。そのうち、電力消費量が多い業種の電力使用量はなかなか減らず、化学工業、建築材料、鉄及び非鉄金属など4つの業種の電力使用量は工業用電力総量の40%を占め、前年同期に比べて0.6パーセント増え、また社会全体の電力使用量の35.3%を占め、前年同期比1.2パーセント増えた。

国家電力監督管理委員会の統計データによれば、全国で強制的停電措置を取った省クラスの送電網は昨年上半期には16で、年末には23だったが、今年は上半期だけでも強制的停電措置を取った省クラスの送電網と省、直轄市、自治区は24にのぼった。今年上半期の全国の電力不足量は昨年の冬より深刻な様相を呈し、2500万キロワットに達した。浙江省などの省、直轄市では「三日間給電制限、四日間操業」、ひいては「四日間給電制限、三日間操業」といった強制的措置を取らざるを得なくなった。

電力需要が伸びているのに、電力供給の増加が追いつかず、供給環境もいっそう悪化することとなった。今年上半期の全国の発電量は前年同期比15.80%増の9908億5100万キロワット時に達したが、20%ひいては30%以上の電気使用量の伸び率と比べれば「焼け石に水」にひとしいと言えよう。

権威のある専門家の見方では、今年4月から始まった電力供給不足はすでに「史上最高」となり、しかも局地的なものと季節的なものから全体的な、年間的な問題になった。

電力供給と密接な関係にある石炭の不足も深刻化している。現在、中国では火力発電は全国の発電総量の70%以上を占め、主に東北、華北、華中、西北などの地区に集中しているが、水力発電を主とする南部地区では、季節的な要因によって電力不足が深刻化するため、石炭の需要量は火力発電の増加に伴って激増している。これらはいずれも「石炭不足」の形成を助長する要素となっている。関連部門の予測によれば、今年の全国における電力需要の伸び率は約12%で、発電用の石炭消費量は昨年より9000万トンを上回ると見られている。今年の7月には、多くの発電所では夏のピーク時以前に石炭を繰り上げて使用したため、石炭在庫量は2、3日分しかない状態になり、正常な在庫ラインよりはるかに低いものとなった。一部地区では多くの大中都市と一部発電所の石炭の供給不足が起きた。石炭の在庫量が不足し、石炭の価格もなかなか下がらなかった。

今年、中国の石油輸入量は1億トンを超える見込みである。そのうちの50%が激動の中東地域から輸入されるため、中国の石油買付の安全情勢はいっそう不安定なものになりかねない。ゴールドマン・サクッス社の予測によれば、中国の経済成長によって将来の石油消費の増加が驚くほど大きくなることが決定づけられ、現在、中国の石油需要量の35%は輸入に頼っているが、2030年にはこの比率は84%に達する。そのため、中国は中東の石油供給に変動があった時にはよりいっそうぜい弱なものとなろう。

石油価格の上昇に伴い、中国では昨年9月中旬以来精製油の供給不足が華東地域から中南、華南、西南、華北などの地域に広がり、ガソリンと軽油の卸売りの停止やガソリンスタンドでの販売制限と売り切れさえも起こった。この不足状態は最近の国際原油市場の激動によっていっそう深刻化し、人々は「4回目のオイル・ショック」への恐怖感を強くしている。

危機の到来か

エネルギー資源の不足はエネルギー資源危機の到来を意味しているのか。電力専門家の呉敬儒、国家発展・改革委員会エネルギー資源研究所所長の周大地らの諸氏の見方では、当面の国内の電力、石炭、石油の供給不足は段階的、地域的かつ構造的な「エネルギー資源不足」であり、経済の発展に対するマクロ予測の外れやエネルギー管理体制の不合理さ、産業構造とエネルギー消費構造が非科学的などの原因が挙げられる。

中国石油学会天然ガス委員会の夏鴻光主任はこう見ている。現在、中国経済が急速に発展していることや、エネルギー資源の合理的な開発と使用はトータルな計画案配の過程を必要とすること、一部のエネルギー資源関連の建設が市場の需要にマッチしていないなどが「ボトルネック」発生の原因となっている。したがって、問題はエネルギー資源をいかに合理的に使うかということにあり、簡単に「危機」と称することはできない。

北京大学中国経済研究センターの胡大源教授はこう分析している。

中国のエネルギー資源問題には、市場の要素もあれば、供給構造の不完全さという要素もある。事実上、エネルギー資源の総量から言えば、中国には短期間に危機はないだろう。これはエネルギー資源サプライチェーンの問題である。電力、石炭、石油は中国のエネルギー資源の一体性を構成するもので、小さな動きも全体に及ぶことになりかねない。

これまでの20年間に、中国のエネルギー資源利用は「GDPが四倍増したのに対し、エネルギー資源消費が倍増にしかなかった」という世界じゅうが目を見張るほどの成果を上げたが、国務院発展研究センターの陳清泰副主任は、中国のエネルギー資源浪費は深刻なもので、省エネの潜在力は極めて大きいとし、さらに次のように指摘している。

中国の発電量の伸び率から見れば、中国の電力供給不足の原因はかなりの程度において供給不足のためではなく、電力利用の粗放さと浪費のためである。例えば、中国では圧倒的多数の鉄鋼公司の一トンあたりの粗鋼の電力消費量はアメリカと日本の同業種のそれをはるかに上回っている。水力発電所や火力発電所などの電力供給側では、それ自身の浪費する電力もかなり多く、水力発電所では10%の電力が発電所自身によって消費されているのである。

中国エネルギー資源研究会理事長、石炭工業協会会長、中国工学院アカデミー会員の範維唐氏は次のように語っている。

中国のエネルギー資源利用効率は依然として低く、先進国を中心とする経済協力開発機構(OECD)の加盟国より20年も立ち後れており、10パーセントの差が見られるが、エネルギー資源消費は先進国と世界の平均水準をはるかに上回り、それぞれアメリカの3倍、OECD国の平均値の3.8倍、日本の7.2倍となっている。工業用ボイラーを例にあげると、中国の平均エネルギー資源消耗率は60%で、先進国より20パーセントも低いものである。

現在続いている「三つのエネルギー不足」は、中国はエネルギー資源国であるとは言えず、省エネと消費の低減が極めて重要であることを物語っている。

陳清泰氏は、省エネの戦略的地位を確立するため、資源を節約することを基本的国策の次元へ引き上げるべきだと提言している。

重要な一環としての産業構造の調整

国家発展・改革委員会エネルギー資源研究所の周大地所長はこう見ている。

中国の産業構造の不合理さがエネルギー資源の「三つの不足」が発生した重要な原因となっている。一部の地方が鉄鋼業、電解アルミニウム業などエネルギー資源高消費型産業を盲目的に発展させていることは経済面での「近視眼的行為」と言ってもよい。

華北電力大学博士コース指導教師の曾明教授は次のように分析している。

現段階の中国のエネルギー資源需給体制はまだ不合理である。ここ数年来、全国のインフラ建設投資に占める電力インフラ建設投資の比率が下がり続けてきたことが、電力発展の立ち遅れや電力供給総量の不足の主因となっている。

中国砿業大学の陶樹人教授は、国の石炭資源管理と供給体系の不合理が「石炭不足」を引き起こした根本的な原因となっている、と見ている。

産業構造の不合理によってもたらされたエネルギー資源効率への影響は中国政府の大きな関心を呼び起こしている。昨年12月26日にインターネットで公表された国家発展・改革委員会の制定した「産業構造調整の方向に関する暫定規則(討論の段階の原稿)」と「産業構造調整目録」には、今度の産業構造調整の方向と重点を、省エネ、節水、消耗低下、環境保全型の先進技術や設備及び製品の普及と採用を奨励し、消耗が大きい、汚染がひどい、品質が良くないといった立ち後れた生産能力、技術及び製品を強制的に撤去することに置かなければならないということが盛り込まれている。

エネルギー資源構造の調整と最適化は中国のエネルギー資源発展戦略の重要な内容の一つとされている。業界関係者は中国の確認石炭埋蔵量は1145億トンに達しているので、中国には石炭不足という問題は存在しない、と見ている。

国務院発展研究センター産業経済部の馮飛副部長は「国家エネルギー資源戦略に関する基本的構想」の編集長として、中国のエネルギー消費構造の調整と合理化について次のような提案を行った。

石炭消費の比率を逐次引き下げ、天然ガス産業の発展を速め、国内の資源に頼って国内市場の石油に対する基本的需要を満たし、水力発電と原子力発電及び先進的な再生可能なエネルギーを発展させ、20年間にエネルギー消費構造の多元化を形成させ、優良エネルギー資源の割合を大幅に引き上げる。

馮飛副部長はさらに次のように強調している。

エネルギー資源分野の改革が著しく立ち遅れていることは、かなりの度合において中国の経済成長と改革の深化を制約する要素となっている。例えば、石炭価格はいまだに市場化されていないこと、電力部門の「発電所と送電網の分離、入札による送電」改革はまだ始まったばかりであること、分離後の石油部門は地域独占性がまだ強いこと、エネルギー資源分野の競争主体や市場の秩序、市場機能、価格構造の改革がまだ不十分であることなどがそれである。したがって、統一の政府エネルギー資源管理機関を設置してエネルギー資源改革を推し進め、石油備蓄体系を確立し、中国のエネルギー資源安全を保障するためのエネルギー資源発展戦略を作成、実施する必要がある。