2004 No.42
(1011 -1017)

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司法改革が始まって既にかなりの時間が経つ。曲折しながらも、改革はある程度の成果を収めたが、多くの人が寄せる期待と大きな開きがあることは認めなければならない。更に改革を進めるため、政府は司法改革を政治体制改革の範疇に組み入れた。現在の状況から言えば、幾つかの面で改革が突破口を開く可能性は最も大きいと見られるが、最大のカギとなるのは地方の保護主義を排除することだ。

司法改革のプロセスにおいて、弁護士業は軽視できない存在だ。弁護士業の発展の状況はと言えば、ある面で司法改革の成果は見て取れる。司法改革を全面的に推進するに当たり、政府は1年にわたる弁護士業の整備に乗り出した。

司法改革の安定的推進

――司法改革プロセスの速度は、中国の発展と安定に係わる。

剣 伐

一時遅々として進まなかった司法改革が再び動き出したのは、2004年に入って以降。最高人民法院(裁判所)と司法部はそれぞれ、法院と弁護士業について大規模な整備を行うと共に、法官(裁判官)と弁護士との間の癒着や腐敗を防止するため「隔離壁」を構築した。一方、検察院と公安部など司法・法執行機関も相次いで職務を適正化するため一連の措置を講じて大きな成果を上げた。

改革の加速が必要なのは何故か

現行の司法制度に存在する問題点として、最高人民法院の肖揚院長は、(1)審判の行政化(行政権力による審判への干渉)(2)法官の大衆化(法官の採用条件の低下)(3)司法権力の地方化――の3点を挙げた。カギとなるのは、3番目の司法権力の地方化だ。

所在地の異なる2社の企業が債務を巡り裁判を起こした場合、1年過ぎても実質的審理に入らないケースが中国では多い。それぞれが所在地での審理を譲らないからだ。何故なら、法院や法官が違えば、判決が歴然と異なる可能性があるからためだ。北京大学法学院の賀衛方教授はこの現象を「主客場意識」と呼んでおり、「サッカーと同様、裁判は地元ならやりやすいが、見知らぬ土地ではやりにくい」と指摘する。

地方の司法機関は行政区画に基づいて設置されており、行政事務も地元政府が管理し、特に人事権や財政権は完全に地方に委ねられている。地方では司法機関は権力機関の指導を受け、各地方は相対的に独立した司法体系、また多くの地方が自ら司法上の特殊規定を制定しているのが現状だ。例えば、影響の重大な事件は党委員会が検討して決定しなければ、法院は判決を下せない。

中国人民大学法学院の陳衛方教授は「司法の独立を実現するには、先ず司法機関の人事・財政制度を地方の行政から独立させるための変革が必要だ」と強調。賀教授も「法院を非地方化してこそ、司法の公正さの問題は解決される」と指摘する。

いかに改革を加速させるか

政府は1997年に法治国家の確立を基本方針に定めると共に、司法改革を推進することを明確に打ち出した。その後の4年間に司法改革は、統一司法試験制度(司法関係者と弁護士)や裁判長選任制度、誤審理追究制度を確立したほか、軍事警察的な法官の制服を改めるなどある程度の成果を収めた。ただ、こうした措置は対処療法的なもので、統一された改革計画や明確な改革手順に欠けていた。

賀教授は「政治体制の重要な一部、また政治文明の重要な体現としての司法改革を、政治体制改革の範疇に組み入れれば、技術的に改革を実質的に進展させることができ、我々が期待する成果を上げ、突破口を開くことができる」と提言。

政府はこの提案を受け入れて2002年末、政権綱領の中に正式に司法体制改革を政治体制改革に組み入れること、全社会で公平と正義を実現するのがその目標と方向であることを明記した。

2003年5月、中国共産党中央政治法律委員会(党の司法・法執行の最高指導機関)は専門家を招集して司法改革について討議すると共に、全国の司法体制改革を指導する中央司法体制改革指導グループの発足を宣言した。同グループは中央政治局常務委員で政治法律委員会の羅乾書記が座長を務める。司法改革がうまく進まなかった1つの重要な原因は、統一された指導機関がなかったからだ。

あるメディアは「この決定は司法改革プロセスを主導する核心的機関の誕生を意味しており、司法改革のモデルが最終的に確立された」と論評した。

羅乾書記は同年に開催された全国政治法律工作会議で「司法体制改革を積極的かつ適切に進めていかねばならない」と強調。その後、指導グループは改革に着手し、「司法改革」は社会で最も関心を集める言葉となった。

「その後の1年間に改革はより顕著な進展を見せたが、改革の度合いは庶民の期待とは大きな開きがある」。こう指摘する西南交通大学の傅勇林教授は、更に「司法体制改革は社会の発展に必要であり、全ての改革の中で重要なものだ。改革の遅延は中国の全改革の進展に影響を及ぼす。司法改革のその他の改革と協調させ、全体的に推進して初めて、技術的に実質的な進展を遂げ、加速させることができる」と強調する。

司法改革の3大焦点

司法改革は以下の3つの面で突破口を開ける可能性が大きい。

現行刑法と刑事訴訟法の規定によれば、死刑判決事件の再審理権は最高人民法院が行使することになっている。だが、80年代中期以降、取り締まりの必要性から、一部の事件(主に社会治安を脅かす重大な刑事犯罪)の死刑再審理権は地方の各高級法院に委譲された。

陳教授によると、再審理権が委譲されて既に20年余になり、現在、死刑判決については、最高人民法院による統一基準がないため、各地でも判決の基準にばらつきがあるという。経済事件を例にすれば、金額が同等の汚職事件であっても、地区により判決は異なる。

陳教授は「死刑の再審理権を取り戻して最高人民法院が統一的に行使する、というのが既に共通認識となっている」と指摘する。

第2に、多元化された審理制度の確立が期待されることだ。1949年の新中国建国後は、二審終審制度が一貫して実施されてきた。この制度のメリットは、審判の効率を向上できることにある。だが同時に、2つの法院は主に地方、行政区画内に設置されているため、保護主義がもたらされることになった。また法院内部においても上下に独立性はなく、加えて誤審理追究制度が実施されているため、下級の法院の審判権は制限されてきた。

こうしたことから、一部の学者は多元化された審理制度の確立を提起。具体的に言えば、重大事件については三審終身制を採用し、軽微な事件は一審終審制にして審判を簡素化するというものだ。

メディアによると、司法改革に関しては様々な案が提起されているが、中でも全国7カ所に一定の地域を網羅する、最高人民法院の出先機関としての民事・商事関連法院を設立する案の採用が有望視されている。地方の二審制で行政上の干渉や妨害があった場合でも、この法院では三審制が実施され、同法院は最高人民法院の出先機関であるため、地方の行政上の干渉を受けないことから、審判の独立性が保持される可能性は大きい。もちろん、この方針には一部の学者が疑問を投げかけている。

第3は、多くの専門家や学者が犯罪者の労働改造教育制度の司法化に期待を寄せていることだ。「労働改造教育とは、行政機関が一方的に人身の自由を剥奪するもので、実際、人権の侵害は著しく、改革が必要だ」。陳教授はそう指摘した上で、「今後、公安機関が労働改造教育を実施する場合には、法院にその許可を申請しなければならなくなるだろう」と話している。

◆参考資料

司法制度の枠組み

司法制度の意義について言えば、広義と狭義に2分される。広義の司法とは、国の司法機関と司法組織が訴訟事件及び非訴訟事件を処理する過程における法の執行を指す。狭義の司法とは、国の司法機関が訴訟事件を処理する過程における法の執行を指す。本文における司法とは、広義の司法を指している。司法機関とは、捜査・検察・審判・執行に責任を負う公安(国家安全機関を含む)・検察・審判・監獄機関とを指す。司法組織とは、弁護士や公証、仲裁組織を指す。後者は司法機関ではないが、むしろ司法体系において不可欠な組織である。

司法制度には、捜査・検察・審判・監獄・司法行政管理・人民による調停・弁護士・公証・国家賠償などの制度がある。

1954年に『憲法』と『人民法院組織法』『人民検察院組織法』が初めて公布され、各クラスの法院、検察院は同クラスの政府と同等の立場にあり、それぞれが同クラスの国家権力機関(人民代表大会)に対し責任を担うことになった。同時に、国の審判権と検察権は法院、検察院のみがそれぞれ法に依拠して独立して行使するとの原則が確立された。

現行の『憲法』と『人民法院組織法』の規定によれば、人民法院は国の審判機関であり、その組織体系は、地方の各クラスの人民法院と専門の人民法院、最高人民法院とから構成される。各クラス及び各種の人民法院の審判はいずれも最高人民法院の監督を受ける。地方の各クラスの人民法院は行政区画に基づいて設置され、専門の人民法院は必要に応じて設置される。

検察院の主要な職責は、責任を持って法院の審判を監督すると共に、国家公務員の腐敗行為を捜査し起訴することである。最高人民検察院は国の最高の検察機関であり、地方の各クラスの人民検察院と専門の検察院を指導する。検察院の指導部は同クラスの人民代表大会(地方議会)が選出し、人民代表大会に責任を持ってその活動を報告する。

捜査とは、国の公安機関と人民検察院が事件の処理の過程において、法律の規定に基づいて行う専門の調査と関連する強制的措置とを指す。公安機関は政府を構成する重要な一部であり、国の行政機関、また国の司法機関の1つでもあり、同時に刑事事件の捜査任務をも担う。公安機関は行政管理と捜査任務を行う上で重要な部署であり、犯罪の取り締まりや社会の安定の擁護に果たす役割は極めて大きい。