2004 No.46
(1108 -1114)

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第5回ASEM首脳会議によって
考えさせられたこと

第5回アジア欧州会議(ASEM)首脳会議が10月9日ハノイで閉会した。この会議では、各国は政治、経済、社会、文化の諸分野における協力についての3文書が採択された。また、加盟国も26カ国から39カ国に増えた。しかし、会議が終わると、さまざまな違和音が耳に入ることになった。これについて、本誌記者は中国現代国際関係研究院経済安全研究センターの江湧副研究員にインタビューし、氏の考え方を聞かせてもらった。次はその一問一答。

記者 今回のASEM首脳会議で最も注目すべきことが何かと思われるか?

江湧氏 第5回ASEM首脳会議は、「アジアとヨーロッパのパートナーシップのさらなる振興と充実」を議題とし、政治、経済、社会、文化の諸分野におけるアジアとヨーロッパの協力関係を全面的に発展させることを趣旨とするものであった。ASEANの加盟国であるカンボジア、ラオス、ミャンマーの3カ国とEUの新加盟10カ国がASEM首脳会議の新加盟国となり、この機構が1996年に発足して以来初めての拡充が実現した。このため、ユーラシア大陸にまたがる39カ国、24億以上の人口を含む、GDPが世界の半分を上回っているこの地域間の対話と協力のフォーラムは、世界でいっそう脚光を浴びることになった。

会議では、「第5回ASEM首脳会議の議長声明」、「ASEM経済パートナーシップに関する宣言」、「文化と文明間の対話に関する宣言」が採択された。この3文書、とりわけ「文化と文明間の対話に関する宣言」は各側の大きな共感を呼んだ。それは次のように述べている――「ASEMは東方と西方の文化と文明を包摂するものである。アジアとヨーロッパの間の便利な地理的条件と長期的な往来は、文化交流と対話強化のために有利な基礎を打ち立てた。ASEMは両地域の人々の間でパートナー・シップの雰囲気を盛り上げるべきである」。また、この「宣言」は、文化の多様性は人類の共通の遺産であるということを重ねて明らかにし、互いに排斥することのないように寛容、容認、対話、協力を行い、より安定した、平和な世界を作り上げるよう提唱している。中仏両国の提唱のもとに採択されたこの「宣言」は、並々ならぬ意義を持つものであり、アジアとヨーロッパの協力のモデルと言える。

記者 今回の会議を開く前までの世界の情勢はアジアは熱いが、ヨーロッパは冷え込み、経済は熱いが、政治は冷え込んでいたと言われているが、これをどう見るか。また、ヨーロッパからまた10カ国が加盟したことは、ヨーロッパのASEM首脳会に対する意欲が高まることを意味するかどうか。

江湧氏 ASEM首脳会議の発足当初、アジアもヨーロッパもそれに大きな期待を寄せていた。しかし、アジア金融危機が過ぎ去った後、ヨーロッパ側の意欲は急速にしぼむことになり、ヨーロッパ諸国のASEMに対する熱意はいまでもそれほどではない。今回の会議でも、ヨーロッパ側は名義上は25カ国に増えたものの、実際参会したのは半分足らずの11カ国でしかなかった。そして、参会した国は、ASEM会議の場を借りて、東アジア諸国、とりわけ中国の首脳と会見することを望んだにすぎなかった。EUの新加盟10カ国がASEMに加盟したとは言え、それらはみなEUの新加盟国であり、EUの行動面の一致性を示すことは多かったが、それは何もASEM会議への意欲がヨーロッパで高まっていることを意味するわけではない。

記者 中国・ASEAN自由貿易区の設立及び中欧関係が成熟に向っているため、中国がSAEANとEUの粘着剤だと言う人もいるが、これをどう見るか。

江湧氏 1990年代の中ごろまでに、東南アジア諸国の経済は急速な発展をとげ、かつては「世界経済の発展センター」と呼ばれたこともあった。EUはアメリカがリーダーシップを握る「アジア太平洋経済協力機構(APEC)と対抗するため、東南アジア諸国を仲間に引き入れて、ある種のメカニズムを構築しようとしてきた。

そのため、シンガポールのゴー・チョクトン元首相が1994年10月にフランスを訪問した際、アジア欧州首脳会議を開き、対話と協力を通じてアジアとヨーロッパの経済の発展と社会の進歩を促進するという提案を打ち出した。この提案にはアジアとヨーロッパは積極的な反応を見せた。1996年3月、第1回ASEM首脳会議はタイの首都バンコクで開催され、そして、それ以後2年に1回、アジアとヨーロッパで順番に行われることになった。しかし、その後まもなく、東南アジア諸国は深刻な経済危機にさらされ、「世界の経済発展センター」としての魅力は急速に萎えてしまった。1998年のロンドンサミットでは、東南アジア諸国が経済構造の調整を行い、経済危機の境地から抜け出すことを助けるためのファンドを設立するという提案が打ち出された。ファンド設立のためにヨーロッパ諸国に出資してもらうため、ヨーロッパ諸国の意欲は急速にしぼみ、最終的は4000余万ドルの出資のみで終わった。資金を至急必要とする東南アジア諸国にとって、これぐらいのファンドは焼け石に水にすぎず、両大陸間の文化、学術、人的交流に象徴的に使う以外にない。

東南アジア諸国が経済危機から抜け出すには困難がつきまとい、東南アジアへのEUの興味はだんだん薄れていった。これに対し、ASEANは懸念がないわけではない。それと同時に、成熟した日本経済の低迷が続き、ヨーロッパにとっての吸引力もなくなった。その代わりに、東アジアおよび世界経済の新しいエンジンとなっている中国経済が、EUに興味を抱かせるようになった。ロンドンに設立された国際市場研究センターのトーマス氏は「いまでは、ヨーロッパが最も関心を持つ国は中国である」と述べた。情勢の悪化でどうしようもないインドネシアの外交筋は「中国の首脳が会議に出席しなければ、参会するヨーロッパ諸国の首脳は少なくなるであろう」と嘆いた。

記者 中国がより多く国際機構に加盟したことは、中国が世界経済や安全分野でより大きな役割を果たすことを意味するかどうか。

江湧氏 中国経済の急速な発展による世界経済への貢献は日ましに増えている。世界銀行の統計データによると、改革開放後の20余年間に、世界の新規増加したGDPへの中国の貢献度はアメリカの20.7%に次ぎ、3位にある日本を7%上回る14%となっている。世界のGDP総量の30%以上を占めているアメリカの貢献度に比べて、世界のGDP総量の4%しか占めていない中国の貢献度がこれほど高いのは、まったく奇跡と言うしかない。とりわけ世界の経済成長がスローダウンし、貿易が縮小化しているここ数年間に、中国経済のエンジンとしての役割はいっそう目立つようになっている。中国は01年から03年までに1兆億ドル近くの製品を輸入し、輸入の面では02年にアメリカとドイツに次ぐ世界で3番目の国となり、03年における中国の輸入品の増加率は世界の約3分の1を超え、世界貿易への貢献度はさらに向上した。それゆえに、国連貿易開発会議(UNCTAD)が9月に発表した「2004年UNCTAD世界投資報告書」は、中国を「新しいラウンドの世界経済成長のエンジン」にたとえている。

ちなみに、外国の新聞も、中国を除外して世界経済を討議することは現実ではない、先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)は名実相伴う「金持ちのクラブ」であるとしている。長い間、G7は大国間の経済政策協調を通じて世界経済をリードしてきた。ここ1年間に、G7は世界の通貨政策について3つの共同コミュニケを発表し、何度もより弾力的な為替制度をとるよう呼びかけた。しかし、中国がG7に加入していないため、三つの共同コミュニケの波及効果は所期するところよりはるかに低いものであった。6月に開かれた先進8カ国首脳会議(G8)では、原油価格を安定させることについての対策が討議、策定されたが、それ以後原油価格は依然として高騰している。これは中国のたえず増大する石油需要と密接な関係があると国際世論は見る。ドイツもイタリアも、中国の参会がなければ、G7はますます建設的経済討議ができなくなると見ているそうである。G7の主導による世界経済への影響力の後退を防ぐため、G8の当直議長のスノー米財務長官は中国に、特別招請代表としてG7に出席するよう招請を出した。これは「歴史的意義を持つことだ」とされている。

記者 今回の会議の拡大は世界に注目され、その役割はどの面に現れることになるか。

江湧氏 今回のASEM会議が世界に注目された理由は次の三点である。@ASEANとEUからの13カ国の加盟によって、この機構の発足以来初めての拡大が実現した。A会議の議事日程ひいては開会の期日は、ミャンマーの民主や人権の問題をめぐるASEANとEU間の矛盾の影響をうけることになった。B今回の会議に出席した首脳には新任者(とりわけ中国の温家宝総理)または初めて参会したものが多く、彼らのイメージ、当該国の重要な内外政策についての彼らの説明などが特にメディアの注目を浴びた。C各国は会議で経済、投資、貿易、科学技術、情報技術、文化、社会、公衆医療・衛生、教育、トレーニングなど分野での協力方式について合意したが、これはアジアとヨーロッパの協力パートナーシップを振興、実現することにプラスとなるものである。

ASEM首脳会議はアジアとヨーロッパ諸国の首脳が非公式対話を行うフォーラムとなっているが、すべての問題はやはりそれぞれの地域において討議、解決されるべきである。在来の多国間国際機構と違い、ASEM首脳会議は、国は大小を問わず一律に平等であることを主張し、全員一致で可決する原則をとることになっている。これは長所でもあり、短所でもあろう。多国間の国際協力にとって、メカニズムの構築は格別に重要である。しかし、ASEM首脳会議をメカニズム化するにはかなりの困難がある。例えば、アジア欧州安全メカニズムの構築については、ASEANとアメリカは反対の姿勢を示している。前者はASEANフォーラムがすでに存在するからであるとしており、後者は自らの利益が脅かされることを懸念している。したがって、ASEM会議のメカニズムがまだ制約力と推進力を欠き、その役割と発展もかなり制約を受けるというわけである。