2004 No.46
(1108 -1114)

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専門家、中国の貿易戦略の調整について語る

呉綜之

改革・開放20年数年来、中国は貿易の急速な拡大によって貿易大国となった。しかし、中国はまだ貿易強国とは言えず、まだ多くの問題に直面していると見る専門家もいる。情勢についての見解や問題解決の考え方は同じとは言えないが、中国は新しい情勢に対応し、貿易の持続可能な発展を保つために、適時に貿易戦略を調整する必要があると専門家の大多数は考えている。

中国の貿易依存度は高すぎるかどうか

中国社会科学院世界経済・政治研究所の沈驥如研究員 中国の貿易依存度は高すぎで、適時に調整する必要がある。

貿易依存度とは一国のその国内総生産(GDP)に占める輸入と輸出貿易総額の割合であり、この国の経済が貿易に依存している度合いや国際分業参与の程度及びその経済発展戦略の構成諸要素を示すばかりでなく、その国際関係に重要な影響を及ぼすものでもある。

統計によると、1980年から2001年までのアメリカ、日本、インド、ドイツの貿易依存度は大体14%から20%までの間にとどまっていたが、同期における中国の貿易総額は史上最高額を更新し、貿易依存度は15%からうなぎのぼりに上昇し、2003年には60.2%に達するに至っており、アメリカや日本など先進諸国及び発展途上大国のレベルをはるかに上回るものとなった。

プラス面から言えば、貿易依存度の急速な上昇はまず中国経済が経済のグローバル化のプロセスに参与し、現代の国際分業システムの中でますます重要な役割を果たすようになっていることを物語っている。次に、国外の市場ニーズは中国の経済成長の重要な原動力となっているということが示されている。また、ちなみに、中国は2003年に4300億ドル相当の労働集約型製品を輸出し、4100億ドルの原料と技術集約型製品を輸入している。このような大量の輸出入によって、中国とそのすべての貿易相手の経済効率が引き上げられ、「中国は世界を必要とし、世界も同様に中国を必要としている」という相互依存関係と共通の利益が形成されている。

しかし一方、中国の貿易依存度が今のペースで伸び続けていけば、マイナス要素の蓄積が中国の平和発展と持続可能な発展を脅かすものともなりかねない。一、過度の貿易依存度は他国と中国の間の経済・貿易紛争を招き、「中国威脅論」の口実となって、中国の平和発展が必要としている国際環境を悪化させることとなる。二、過度の貿易依存度は中国経済が直面する国際経済・政治のリスクを増大させることになる。三、過度の貿易依存度は中国をエネルギー資源や原材料などでいけにえにされかねない。中国が近年石油や鉄、銅、ボーキサイト鉱石などの原材料の輸入を増やしていることは「中国威脅論」の重要な口実となっている。中国製品の商品輸出額の約60%は外資企業と合弁企業によって創出されたものであり、これらの製品は究極的にはアメリカや日本などの国から輸入されているのに、外資企業がこれらの製品を生産するために輸入したエネルギー資源と原材料の値段は中国の勘定につけられている。また、資源争奪や原材料価格の上昇も中国のせいにされている。四、欠乏経済の時代に実施されていた低賃金や低地価、税収減免及び市場で技術と交換するなどの外資導入優遇政策は、中国の貿易依存度が高すぎ、多くの産業に供給超過が生じ、WTOに加盟した今日においてはマイナスの作用が働いている。

中国の貿易依存度の上昇はまだ続いているが、正常ではないと思う。今後のかなり長い期間においては、5%〜6.5%という貿易の年間平均伸び率でしか中国や世界に受け入れられず、これは持続可能な発展ためのものでもある。したがって、中国は一連の政策を調整する必要がある。

武漢大学政治・管理学院の苗迎春さん 中国の貿易依存度が過大評価されているので、本当のデータはどうなのかをいっそう検討すべきである。

科学技術の目覚しい発展に伴い、国際分業がますます深化しつつあり、生産と資本の国際化が絶えず強化され、国際経済協力がますます密接なものになり、国際貿易の規模が急速に拡大し、各国の貿易依存度も全般的に急速な上昇傾向を示している。そのため、経済のグローバル化の激しい勢いに伴った中国の貿易依存度の大幅な上昇も一種の必然と言えよう。

中国の貿易依存度の計算式は合理的かどうか、その数値は一体どのぐらいが適切なのかについての意見はまちまちである。貿易依存度が正確に推計できなければ、極端な保護政策あるいは極端な開放政策の策定の原因になりかねず、この両者はいずれも経済の長期発展にプラスとならない。

一国の貿易依存度の高さは、同国の経済総量とも関係があれば、同国のGDP構成と為替レートとも関係がある。またその国の貿易商品構成や貿易方式、貿易の地理的環境及び貿易競争力指数にも左右される。貿易依存度の高さを分析する際には、簡単に他の国と比較してはならず、中国の実情を全面的に考慮するべきである。

中国の貿易構造の特殊性から、従来の貿易依存度計算方法ではじきだされた数値は中国の貿易依存度を明らかに誇張したものである。このため、多くの学者は購買力平価、あるいは普通貿易輸出依存度という計算方法を提起し、その数値は大体25%前後で、アメリカの貿易依存度と近い。私の見方では、以上の二つの計算方法はいずれも中国の加工貿易の役割を見落としているため、その上にGDPに占める加工貿易輸出の割合を加えるべきである。そうすれば、2003年のGDPに占める加工貿易の輸出の割合は約5.6%で、2003年の中国の貿易依存度は30%前後となる。この割合は中国のGDPの成長にとって適切と言うべきである。

当面、貿易依存度の合理的計算方法の研究を強化し、当面の貿易依存度の中国経済に対する作用と影響を正しく評価する必要がある。

輸出志向型経済は唯一の選択かどうか

中国社会科学院経済研究所の左大培研究員 中国は輸入代替工業化戦略に移行するべきだ。

輸入代替工業化発展戦略への移行と言えば、経済界からは、中国では今後一連の災禍へ導く経済政策を実行する可能性があるが、これらの政策はいずれも輸入代替工業化戦略と必然的な関係があるとの懸念の声が上がっている。これは杞憂(きゆう)に過ぎないと思う。

輸入代替工業化戦略は輸入代替の育成を経済発展の主要な措置とするものである。輸入代替とは、輸入品を国産品で置き換えるということである。輸入代替による経済成長は一国のGDPに占める貿易全体の割合を引き下げるものであるから、内向型の経済発展と見なされている。

輸入代替と正反対のものは輸出志向型の経済発展であり、主に輸出の増加によって経済全体の発展を促進し、名実ともに備わった輸出志向型経済成長である。

1980年代に入って以来、中国は輸出志向型の経済発展に取り組んできた。当初の輸出志向型経済成長への移行は、日本と「アジアニーズ」の輸出志向による経済成長促進の成功例を目にしたためであった。輸出の伸びによって経済の発展を促進することは唯一の正しい経済発展戦略であり、輸入代替は誤った経済発展の道だと考えられていた。

実のところ、このような一般化する結論はいかなる頼りになる根拠もない。輸出志向戦略はいかなる時代にも、いかなる場所においても輸入代替戦略よりもいっそう高い経済成長をもたらしうるものではない。この百五十年来の輸出志向戦略で経済発展が失敗した例はたくさんある。

東アジア経済の奇跡は特殊な時期、特定の国や地域に現われた特殊な現象であり、その経験をすべての国や地域が模倣してはならない。当今の国際経済環境は東アジア経済のテークオフ初期とはまったく違うものになっている。

中国のような大国にとっては、輸出志向型工業によって経済発展を進める可能性は少ないのに、まして国内で輸入品を国産品で置き換えることはなおさらのことだ。これはある程度の輸入代替は輸出志向型成長の前提であることを意味している。このような環境の下で、適時に輸入代替戦略に移行しないことは賢明とはいえない。

武漢大学政治・管理学院の苗迎春さん 国内外という二つの市場を十分に利用するべきだ。

中国は輸出志向型経済に属するかどうかということは重要ではなく、重要なのはどのように国内外の二つの市場を十分に生かして経済の持続的発展に原動力を提供するかということである。経済のグローバル化と地域経済の一体化が発展の主流となった今日、内需を主とすることを強調するあまり、海外の巨大な市場を無視することは時宜に合わないことである。しかも、中国自身は13億人口をもつ大きな市場であるため、あまりにも輸出を強調しすぎて、国内市場の経済成長への牽引的役割を無視することも偏った見方である。以上二つの要素をまとめてみると、中国は対外貿易のマーケットシェアを確保するうえで、国内市場の経済成長への影響を拡大し、国内外の双方に配慮を加えるという経済発展戦略を確立する必要がある。こうしてこそ、われわれは、国内外の片方の市場に不安定な動きが出てきても、国民経済の安定発展を確保することができるのである。

輸出超過の考え方から脱する

国務院発展研究センター対外経済研究部の趙晋平副部長 輸出超過の考え方から脱して、中国の対外貿易戦略を再構築すべきだ。

中国はかつて貿易黒字の増加を強調したことがあるが、20年余りの対外貿易の発展や貿易額の急速な拡大及び莫大な出超額の蓄積に伴って、中国の対外貿易情勢も大きく変化している。以前の「出超型」の発展構想は今日の経済発展の情勢にマッチしなくなった。対外貿易は国内市場の需給関係の影響を受けるだけでなく、国際市場の需給関係の影響をも受けるものである。そのため、貿易黒字だけを追求し、輸入を抑え、輸出を奨励するならば、対外貿易の発展のルールをぶちこわし、資源配置の最適化に役立たないことになる。

貿易黒字の減少を対外貿易の経済成長に対する寄与度の減少と見なすことは一方的な見方であり、これは輸入を国内経済成長のマイナス要素として考えるからである。事実上、中国の輸入製品の中のかなりの部分は国内に代替製品がなく、決して国内市場に割り込んだのではなく、かえって一種の補完として中国の全般的な生産能力の向上にプラスとなり、国民経済にマイナスの影響を及ぼさないものである。例えば、エネルギー資源や原材料、機械設備などがそれである。

発展途上国にとって、長期間の貿易黒字あるいは経常収支黒字は国内経済の発展に役立たないのである。それは一種の資本要素の移動、つまり国内の希少資源の移動を意味しているからである。しかも長期間の入超がもたらすリスクもかなり大きい。最も理想的なタイプは基本的なバランスの取れた貿易差額だと思う。

商務部国際貿易経済協力研究院の梅育新博士 輸出の構造と利益はさらに重要だ。

国際貿易システムの中で、いかなる国も貿易黒字の蓄積を絶え間なく続けて、システム全体のアンバランスを引き起こさないわけにはいかない。中国の対外貿易は貿易黒字だけを追求する政策を変えなければならず、構造の最適化と利益向上の道を歩かなければならない。

まず、中国の輸出商品構造は明らかに改善されているが、先進技術応用度の高い商品の面では、依然として正味の輸入国である。言い換えれば、中国の対外貿易は全般的に依然として低付加価値品の輸出で資本製品と交換する構造にある。

次に、中国の輸出効果と利益は高くない。一方では、中国の輸出の多くは加工貿易であり、その収入はわずかな加工費にすぎない。近年来、電子とIT製品の輸出が急成長しているにもかかわらず、その中の大部分はノキア、モトローラ、インテルなど多国籍企業のための加工貿易である。もう一方では、競争が激しくなったため、多くの輸出企業は安価で輸出せざるを得ず、輸出の利潤は非常に低い。

対外経済貿易の最終目標は国内経済の発展を促し、国民の福祉を増進することである。極端に価格の競争力に頼るという輸出パターンは、安価な労働力のいわゆる「比較優位」に極端に依存する原因となり、それによって国内労働者の福祉を改善することができず、内需の拡大が抑えられ、国内経済の持続的成長の原動力と基礎が弱まることになる。

商務部国際貿易経済協力研究院の馬宇さん 輸入を重視することは中国の戦略目標の実現に役立つ。

輸出を重視し、輸入を無視するという貿易発展戦略はすでに新しい情勢下の国民経済発展のニーズに適応しえなくなった。われわれは輸入貿易を再認識し、輸入貿易にしかるべき地位を与えなければならない。

まず、輸入を重視することは国民福祉の増進にプラスとなる。輸出奨励措置や輸入規制措置など貿易政策の失策については、生産者の利益のみを重視し、消費者の利益を無視することが重要な要因として挙げられる。これは経済発展の初期段階には納得することができるが、経済発展の度合いが一定の段階に達すれば、全面的に消費と生産の相互促進の作用を考慮しなければならない。輸入規制を緩めることによって規模を拡大し、輸入コストを引き下げ、消費者の福利水準を向上させることが可能となる。

次に、輸入を重視することは後発の優位性を生かすうえでプラスとなる。発展途上の経済体(後発開発国)にとっては、後発の優位性の主な現われは、技術導入を通じて先進諸国との格差を縮めることで先進諸国へのキャッチアップを実現することに見られる。中国では1980年代の貿易赤字も機械設備や技術など大規模な輸入によってもたらされたものであり、そのプラス的役割は過小評価してはならない。

また近年、中国が貿易摩擦のケースが最も多い国となったのは、輸出の伸びが急速で、しかも巨額の貿易黒字が続いていることも重要な一因と考えられる。このような現状の下で輸入を拡大することは輸出のためにより広いルートを切り開き、より望ましい輸出環境を創り出すためである。

輸入を重視することは世界で資源の最適化配置を実現し、国内の産業構造調整を推進することにもプラスとなる。いかなる国の資源も限りのあるものであり、自らですべての製品を生産することは不可能であるため、優位性のない製品は輸入に頼って補足する必要がある。たとえ自ら生産することができ、ひいては競争の優位性を持つ製品だとしても、輸入すれば市場を活性化させ、資源利用の効率を高めるという役割を果たすこととなるので、輸入を禁止してはならない。

最後に、輸入を重視することはオープンな市場システムと鋭敏な市場メカニズムの導入にプラスとなる。輸入規制を緩めることは中国市場を国際市場と密接に結びつけるだけでなく、国内の地域市場の独占を打破し、統一した市場システムを確立し、市場経済メカニズムを整備することにもなる。これは中国の長期的利益と無形の利益にとっては、目に見える目先の収益よりずっと大きなものであるはずである。