2004 No.47
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国民経済の発展に伴い、中国人の生活レベルは大幅に向上した。1人平均収入は増加し、食品も充足しかつ豊富となり、栄養状況は絶えず改善されている。栄養不足による疾病率は低下し続けており、5歳以下の児童の成長不良率は1992年に55%低下、3〜18歳の児童・青少年の身長は1992年に比べ3.3センチも伸びた。

だが、住民の栄養不足は改善されてきたものの、同時にこの数年は栄養過多による栄養構造がアンバランスの問題が生じており、関心を呼んでいる。

重視され始めた栄養過多の問題

蘭辛珍

多くの中国人が栄養過多による肥満や高コレステロール、高血圧などの健康問題で悩み始めている。住民の衣食の問題が解決されたばかりの中国で、これは予想すらされなかったことだ。

衛生部は10月12日、「住民の栄養と健康状況調査に関する報告」を公表した。報告書は、栄養のアンバランスとそれに伴う生活習慣病が住民の健康に影響を及ぼす重要な要素だ、と指摘している。

中国社会科学院が1998年に発表した調査報告も、2015年前後に栄養のアンバランスによる健康被害が問題になる可能性がある、と指摘。現在の状況を見ると、この問題は同報告の予想より10年早く出現したことになる。

軽視できない栄養過多

「体重過重で、高コレステロール、軽度の脂肪がんを患っている」。今年38歳になる張宇さんは再度、医師から同様の診断結果を言い渡された。去年の身体検査でも、こうした生活習慣病を患っていることが診断されていた。

張さんは新聞社の編集員で、身長は166センチ、だが体重は89キロ。4階にあるオフィスまで階段を上ると、息切れを感じていた。

張さんを診療した医師によると、油脂性食物の摂取が多すぎ、栄養がアンバランスで、運動不足が原因。この病院でも張さんのような患者が増えているという。

北京市の公衆栄養・発展センターの小冬教授は「先進国に既に見られる栄養分の摂取構造のアンバランスによる栄養不良問題に、中国も直面しつつある」と指摘している。

栄養分の摂取構造のアンバランスとは、飲食を通じて摂取する人体に必要な栄養素分が過多または不足しているということだ。

小冬教授は「こうした栄養不良が今、住民の健康に影響を及ぼす主要な問題となっており、生活習慣病発病率の上昇に最も直接的な影響を与えている」と強調する。

衛生部の統計によると、飲食による高エネルギーや高脂肪に加え、運動不足のために生活習慣病を患う人がこの数年急増している。18歳以上の住民を見ると、高血圧の疾患率は18.8%で、患者数は約1億6000万人と、1991年に比べ31%も上昇。糖尿病は同2.6%で2000万人余り。コレステロールに問題のある住民は率にして31%で、1億6000万人前後。体重過重は22.8%で約2億人、肥満は7.1%で6000万人余り。児童の肥満率は8.1%に達している。

小冬教授は「生活習慣病の発生率は上昇し続けており、一部では先進国を上回っている。これによって、労働力は失われ、同時に医療保険事業にも支障が出ている」と指摘。

小冬教授の説明によると、生活習慣病の疾患が労働力の減少と死亡の重要な原因となっている。中国では1日1500人余りが生活習慣病で亡くなっており、死亡者数の70%以上が生活習慣病で占められており、それによる経済的損失は非常に驚くべき数字だ。

世界銀行の統計によると、発展途上国では、栄養不良がもたらす直接的な経済損失はおよそ国民総生産高(GNP)の3〜5%を占める。現在のGNPが10兆元であることを基礎に推定すれば、中国は1年を通じて3000億〜5000億元の損失を被っている計算になる。20年前にも栄養不良による損失はあったものの、それに比べると大きな「逆差」だ。

飲食のアンバランスが原因

「医師は言いませんが、私の病気は飲食に原因です」と、生活習慣病を患う張宇さんは言う。

張さんが幼いころの中国は食べるものに欠乏していた。当時、彼にとって最大の喜びは肉をお腹一杯食べることだった。その後、経済が発展したことで張さんの生活は様変わりした。肉を食することが多くなってきたのだ。この数年は肉が主体で、ほとんど毎日口にしていたという。それに伴って太り始め、去年の身体検査で医師から、栄養過多が原因で生活習慣病を患っていると、宣告されていた。

「栄養のアンバランスが生じるのは、飲食に対する理解が誤っているからだ。多くの人は食べ物が豊富であることばかりに気を取られ、栄養のバランスを重視してこなかった」。小冬教授はこう指摘する。

更に小冬教授は「お腹一杯に食べる、というのは、かつて中国人が求めていたものだった。60年代から70年代にかけて、食べ物が不足していた時代を経験した中国人にとって当時、最大の願いは将来、ご飯をお腹一杯食べることだった。生活が変化するに伴い、お腹一杯食べたいという願いは実現され、しかも食べ物が豊かになるにつれ、今度はいい物を食べたいという傾向に変化し始めていった」と説明。

その上で、小冬教授はこう強調する。「いい物を食べる、というのは、科学的な飲食、様々な栄養分を合理的に組み合わせる、ということなのだが、多くの人は盛りだくさんに食べると誤解して、鶏肉や鴨肉、魚、豚肉や牛肉、羊の肉など高脂肪の肉類を主食にするようになった。現在、肉類の消費量では豚肉の比重が約70%、牛と羊の肉が15%、鶏と鴨肉が15%を占めている。なかでも脂肪量が最高なのが豚肉だ。このようにして、多くの中国人は次第に肥満化し始め、同時に様々な生活習慣病が際立って見られるようになってきた」

衛生部の「住民の栄養と健康状況調査に関する報告」は、都市部住民の間では肉や家禽、タマゴなど動物性食物の消費量は増大し、1992年の1人平均日間消費量210グラムから現在は248グラムまで増えていると指摘している。油脂消費量は同37グラムから44グラムに。脂肪摂取量は35%と、世界保健機関(WTO)が定める30%の上限を上回る。穀物の摂取量も僅か47%と、WTOが理想的範囲とする55〜65%より低い。カルシウムや鉄分、ビタミンAなどの栄養分の摂取も不足気味だ。

衛生部の王隴徳副部長は「栄養のアンバランスは一面では、人びとの合理的な栄養に対する意識が低い、知識が不足しているのが要因だが、特に都市部住民の間では高カロリーの食物の摂取が過度であり、栄養に対する理解が誤っている。その一方で、政府の指導も不十分だ。50年代から80年代初めに至る30年近くの間、中国は物資の供給にこと欠き、住民は衣食が満ち足りることのみを求めていたため、衛生関連機関は食道器官による伝染病防止を主体とした食品衛生上の仕事を最優先し、栄養や保健の問題に関心を寄せることはできなかった」と振り返る。1980年代になると、特に90年代以降、住民は衣食足りての状態からまずまずの生活が送れるようになる。著しい変化は、物が豊富になったこと、あらゆる食品が供給されるようになったことだが、栄養に関する知識の普及がかなり遅れていることから、栄養過多など栄養に関する構造的な問題が住民の健康を害するまでになってきているのが現状だ。

措置を講じるのが肝要

更に王隴徳副部長は「食物と栄養に関する現状や存在する問題に対処して、今後10年かけて、乳類や大豆、食品加工といった重要な3産業を優先的に発展させていく。また農村部や西部地区、少年・児童、女性や乳幼児、老人を対象に栄養の問題を解決できるよう努力していく」との考えを示している。

住民が毎日摂取するエネルギーについては、その80%が植物性食物、20%が動物性食物であるのが合理的で、数量も穀物類や豆類、野菜、果物、肉類、タマゴ類、乳類、水産物の順に少なくしていくのが理想だとされている。従って、植物性食物の生産と供給を奨励することが肝要だ。

衛生部の組織の下で既に「国家大豆行動計画」や「国家学生牛乳飲用計画」など、栄養改善に関する様々な行動計画が実施されている。

王隴徳副部長は「住民の栄養構造のアンバランスについては、対処療法としてサプリメントを採用していくつもりだ。この数年、豊富なビタミンCやビタミンE、カロチン、セレンなどの栄養分生活習慣病の危険性を低下させる可能性のあることが確認されている。このため、栄養アンバランスの住民に対しては、サプリメントによる補充を提唱していく」と強調。

栄養のアンバランスは、飲食による栄養に関する知識不足が原因。こうしたことから、栄養教育も今後の1つの重点となる。

この問題について、王隴徳副部長は「栄養教育は幼稚園からしっかり始めるなど、幼児のころから合理的に摂取するという習慣を身に付けさせることが大事である。衛生や教育、食品関連機関は共同で幅広い層を対象に栄養教育を実施し、小中学校ではカリキュラムに取り込み、総合大学には食品栄養学部を設置することが必要だ」と指摘する。

衛生関連機関は今後、住民を対象にした食物と栄養に関する指導を強化し、各種のメディアを活用した栄養知識キャンペーンにも力を入れていく計画だ。同時に地方政府も、食物と栄養に関する要綱を制定し、その地区の「国民経済と社会発展計画」に盛り込んでいく方針。

また衛生部は今後数年内に、病院や幼稚園、学校、事業体の食堂や飲食サービス業界で「栄養士制度」を段階的に推進していくという。

◆中国人の10大栄養問題

1.肥満率の上昇

2.脳・心臓血管病患者の増加

3.糖尿病発病率の上昇

4.高コレストロール発生率の上昇

5.カロリー過剰

6.鉄分不足

7.小中高生の栄養素摂取のアンバランス

8.カルシウム不足

9.腫瘍患者の増加

10.食物繊維不足