2004 No.48
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中国は今、エイズの防止・治療事業で重要な時期に置かれている。そのため政府は、世界保健機構(WHO)など国際医療機構との密接な協力を維持すると同時に、感染の危険度の高い特定層から一般市民層でのエイズ流行の抑制を最重要課題に据えた。

社会のエイズに対する見方は大きく様変わりしつつある。エイズ防止キャンペーンなどに参加する市民や非政府組織(NGO)の数は増大しており、北京では最近、エイズ予防が小中高校の教育プログラムに盛り込まれた。一部の地区ではエイズ発病者を医療保障の対象として無料で治療を実施。発病者にとって光明となるのは、中国が独自開発した中薬が2期目の臨床試験段階に入ったことだ。この中薬が市場に投入されるようになれば、患者は巨額の医療費に悩まされることはない。

政府、エイズ蔓延の厳しい状況を直視

――衛生部は現在、過去に献血した者を対象にしたエイズ抗体検査を全国範囲で実施すると共に、エイズ拡大の危険度の高い特定層でのエイズ防止・治療事業を重点の1つに据えている。

剣 伐

10月28日、5日後に17歳を迎えるばかりだった女性のAさんは、エイズの痛みにさいなまれながら亡くなった。エイズと診断されてから僅か13日しか経っていない。大きく眼を見開き、涙を浮かべていたが、彼女は自分がエイズだとは知らされていなかった。

さんは8年前、寛骨の整形手術で輸血を受けた。手術後は順調に回復。だが、この時に既にエイズウイルス(HIV)が幼い彼女の体に潜入していた。

不幸としか言いようがないが、こうしたケースはエイズ発病者の間ではむしろ一般的だ。エイズ感染者の売血や、それによる輸血が原因である。

11月2日、衛生部エイズ防止治療専門家委員会の委員を務める徐天民教授が公表した数字は、実に驚くべきものだった。エイズ症例が初めて報告されたのは1985年。それから今年4月までに、推計でHIV感染者は84万人、発病者は8万人、死亡者は16万人にのぼるというものだ。中国は目下、患者の増加率で世界14位、アジアで2位にある。

10月29日に衛生部が発表したところによると、エイズは麻薬の静脈注射、売春や買春、同性愛などにふける危険度の高い特定層の間で急増しており、一部の地区ではこの層のHIV感染率はかなり高い水準にある。エイズは今や、特定層から幅広い一般層へと拡散する臨界点にあるとも言える。

衛生部の王隴徳副部長は「現有の法律や法規では、現在のエイズ流行の情勢や防止・治療に完全に対応できないため、伝染病防止治療法の改正作業に着手しているところだ。社会的に非常に重視されつつある反差別に関する条項も、既に盛り込まれている」と説明する。

献血者のエイズ抗体検査を実施

衛生部のデータによると、1995年前後に有償献血によってHIVに感染した人は今、発病あるいは死亡するピークを迎えているという。また、これまでエイズの重点地区に指定されていなかった地区や、過去に献血したことのある人の間でもエイズ感染や発病が報告されている。過去の献血者の中で感染、あるいは発病している人を早急に発見し、時機を逸することなく治療を施すことが今、エイズ防止・治療事業にとって焦眉の急でもある。

感染・発病の状況を更に深く把握すると共に、早急な治療活動を行うため、衛生部は過去の献血者を対象にしたエイズ抗体検査を全国範囲で行うことを決定。同時に衛生部は、発見した献血者については1人も漏れることなく抗体検査を実施して、エイズの感染状況を把握するよう求めている。

これを受けて河南省(エイズ多発地区の1つ)政府は7月26日から、約50万人を動員して調査・検査作業に着手。全省5万1187の行政村あるいは居民委員会の28万476人にのぼる献血者について最大規模の検査を実施した。

9月10日午後、河南省衛生庁の馬建中庁長は記者会見し、2万5036人のHIV感染者、1万1815人の発病者を確認したと発表した。同省では1995年3月に初の感染者が確認されて以来、2003年11月27日までに公表されていた感染者数は6524人、発病者数は1940人だった。

エイズ専門家は「僅か9カ月の間に感染者は新たに2万人近く増加した。だが、これは調査が徹底されたことを物語るものだ」と評価する。

高危険度特定層の行為を注視

政府はエイズの一層の蔓延を抑制するため、感染危険度の高い特定層の行為を防止・治療事業の重点に据えた。

中国疾病予防制御センター性病エイズ予防制御センターの呉尊友教授は、7月11日に開かれた第15回世界エイズ大会で「中国はエイズの予防キャンペーンを強化すると同時に、今年上半期にはエイズ重点地区でコンドーム使用を普及させる、麻薬中毒者に対してアミドン治療を行うなどの措置を講じてきた。アミドンは一種の合成品で、高い薬効によりヘロインへの依存を抑えることができ、これによって患者を正常な生活に戻すことができる」と強調した。

深セン市慢性病防止治療院に8月、国内初の公共衛生看護師チームが発足。メンバーは危険度の高い層に属する女性に対し、性病やエイズの症状、コンドームの使用法、発病後の治療に関する説明などの啓蒙活動に従事する。ボランティア性格の強い同チームの運営資金は、国の疾病防止プロジェクトや省・直轄市、衛生局による拠出、自己調達などで賄っていく方針だ。

また11月には全国各クラスの疾病予防制御機関にも、危険度の高い特定層の行為を注視するチームが設置された。

衛生部では「この層でのエイズの流行を抑えこむと共に、一般層への蔓延を防ぐことが現在、また今後の一定期間、重要かつ困難な課題となるだろう。特定層の状況を理解・把握すると同時に、彼らの行為を注視し、彼らの行為を改めさせるのは非常に困難を極めることから、専門チームを結成する必要があった」と説明する。

専門チームは主に(1)管轄内の高危険度層の類別、人数、分布などに関する状況を把握する(2)対面教育や検査、コンドーム使用の普及、アミドンによる治療、性病の防止・治療を展開する(3)その他の関係機関やNGOを動員し、サポートすると共に、協力して防止・治療事業を推進する――などに従事する。

国際協力プロジェクトを積極展開

政府はエイズの防止・治療事業の実施に当たり、以前とは異なり、国際社会の支援を求める方向に転じた。現在、最大のプロジェクトは中米間の国際協力であり、米国政府が出資し、実行責任者は米国疾病予防制御センター。「世界エイズ総合防止治療プロジェクト」の一環として実施するもので、同プロジェクトには中国も含め25カ国が参加している。中米プロジェクトでは、5年間に技術サポートとして1500万ドルが拠出される計画。第1次実施対象地区に選定されたのは、北京と新疆、内蒙古、山東、広東、河南、安徽、黒竜江、貴州、チベットの10省・自治区・直轄市で、4月13日に先ず北京で起動した。

対象地区に指定された河南省。同省では1995年以前に一部地方で違法な献血が行われた結果、幾つかの貧困村で一部村民がHIVに感染した。長い潜伏期間を経てこの数年、感染者は発病期に差し掛かっている。5月28日、この河南省で同プロジェクトが起動。同省衛生庁の馬建中庁長は「プロジェクトは5年間実施され、エイズ監視システムや実験室監視システムの強化、監視の範囲と質的向上による次世代への感染防止に毎年、35万ドルが投入される計画だ。また、エイズ臨床訓練基地を建設して全国の臨床医師を訓練していく」と話している。

雲南省の省都昆明市にある「Futures Group Europe」(ヨーロッパ・フューチャーズ・グループ・ヨーロッパ)駐在事務所は同市健康教育所と連係して7月、同性愛者のエイズ予防・治療プロジェクトをスタートさせた。期間は1年で、性病や男性同性愛者間のエイズ感染を予防するのが目的だ。ヨーロッパ・フューチャーズ・グループ・ヨーロッパは公共衛生と社会発展に尽力する、英国のバスに本部を置く国際組織。

中米プロジェクトは10月に西部の農業地帯、四川省凉山州の3市(県)でも始まった。麻薬中毒者のうちHIV感染者の治療を優先することで、治療成功モデルを確立し、この経験と方法を全国に提供していくことにしている。麻薬中毒者については、感染者や発病者の体内ウイルスの数が一定程度にまで増殖し、医師の検査で治療が必要と診断された場合、現地の医療機関で定期的に抗ウイルス剤を受け取ることができるようにする。また農民はむろん、農村部で基本医療保険などの医療保障制度に加入できないでいる経済困難者も無料で抗ウイルス剤を得られるようにしていく方針だ。