2004 No.49
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人民元はいつ、自由に兌換できるのか

――これまで資本の流動は外国からの単方向だったが、既に双方向に代わり、しかも益々頻繁になりつつある。人民元が自由な兌換が可能な国際通貨となるのに必要なのは現在、いつが適宜か、といった時機的な問題に過ぎない。

譚偉

あるサラリーマンは最近、ベトナムに出張。出国前に使用に便利にと、多くの人民元をベトナムの通貨ドンに兌換したが、行ってみると、どこでも人民元が使えることが分かった。タクシーやショッピングは人民元が通用するし、運転手や店員は人民元で支払うと格別喜ぶ。人民元は強く安定しているので、利用価値があるからだ。

人民元はベトナムに限らず、周辺の韓国やモンゴルミャンマー、シンガポール、マレーシア、タイなどでも歓迎されている。ショッピングに利便性を図るため、これらの地区の一部商店では価格を現地通貨のほか人民元でも表示している。

現実的に見ると、人民元が海外で流通しているのは、人民元に対する強いニーズがあるからだ。根本的に言えば、これは中国の経済力の強さを示すものであり、その経済力が周辺国・地域に影響を与えている。中国政府は1993年3月1日から、一定数量の人民元の自由な持ち出しと持ち込みを許可した。だが、手続きや金額では厳しい制限が設けられている。人民元が海外の一部の国と地域で流通しているのは、政府の行為によるものではなく、通貨流通メカニズムが自然に形成された結果だ。ある意味で、人民元はこれらの国・地域では既に自由な兌換が実現しているとも言える。

人民元が世界範囲で自由に兌換できる流通通貨となれば、好きな通貨で預貯金ができるようになり、外国製品を買いたいと思えば、人民元を外貨に兌換することもでき、また通信販売商品を購入することも可能となる。

中国の増大する国際貿易や投資規模、発展を続ける金融市場から客観的に見れば、人民元の資本項目での早期の兌換実現が求められている。中国金融学院国際経済学部の賀力平教授は「中国は世界貿易機関(WTO)に加盟したが、今後、人民元が現在の部分的な自由な兌換から更に自由に兌換できるようになるのは間違いない」と指摘する。

だが現在、法律は資本項目での自由な兌換はできない、と規定している。貿易や国が規定する一部の外貨使途(海外留学や観光、親族訪問など)を除けば、一般市民が人民元を外貨に兌換することは許可されていない。同様に外国人も、中国内で外貨を換え使用した残りの人民元であることが証明できなければ、自由に手持ちの人民元を安定通貨に換えて出国することはできない。

段階的な実現に向けて

通貨の兌換は3段階に分類される。第1は兌換できない、第2は国際収支の経常項目での兌換、第3は完全な兌換、即ち経常項目と資本項目でいずれも自由に兌換できる、というものだ。国際通貨基金(IMF)は通貨の兌換について線引きを行い、経常項目での兌換を最低限の兌換にすると、としている。人民元は1996年、経常項目で条件付きながら兌換ができるようになった。

IMFの加盟国である中国は、同規定第8項で規定された具体的要件に従わなければならない。第1は、各加盟国・地域はIMFの同意を得ずに、国際間の経常的な往来による支払いや資金の移転を限定してはならない。第2は、通貨に対する敵対的な措置を講じたり、多種類の為替レートを設定したりしてはならない。第3は、いかなる加盟国・地域もその他の国・地域が持つ経常項目下での本国通貨の残高を引き取る、即ち外国が所有する本国の通貨を兌換する義務を有する、というものだ。資本項目下での兌換では、短期金融資本や直接投資、証券投資による外貨収支による様々な兌換の制限を取り消して、資本が自由に出入りできるようにすることが求められている。IMFはこれに対して厳格な線引きは行っていない。

『中華人民共和国外貨管理条例』の施行に伴い、2003年に経常項目での非貿易、非経常的貿易での外貨制限が取り消された。これに次いで、国家外貨管理局は『国内居民の私的な外貨兌換の運用法』を公布。私的な使用による外貨制限を廃止し、外貨供給範囲が拡大された。また中央銀行である中国人民銀行が『外貨決算、外貨販売及び外貨支払いに関する管理運用法』を公布したことから、外資系企業は外貨決算・販売体制に組み入れられることになり、人民元の経常項目での完全なる自由な兌換に向け障害が取り除かれた。中国人民銀行の戴相竜・前行長はIMFに書簡を送り、「中国はIMF協定第8項の要件を正式に受け入れる」と明言。これは中国が、経常項目での完全なる自由な兌換を実現することを示している。

間もなく過ぎようとしている2004年、中国政府は開放予定の資本項目での自由な兌換に関しても様々な措置を講じてきた。中国人民銀行は11月16日、海外に移民した中国人やその家族が合法的な個人財産を海外に移すことを許可すると発表。この措置は12月1日から実施される。これは政府が個人の合法的財産を着実に保護するため講じた重要な措置であるばかりでなく、資本市場の開放を目指した新たな措置であると広く受け止められており、中国人民銀行は「人民元の兌換可能な目標に向けての第1歩だ」と強調している。

1997年から1998年にかけて発生したアジア金融危機以降、人民元と米ドルとの為替レートは一貫して8.27対1の水準を維持してきた。中国人民銀行は10月29日に利上げに踏み切ったが、その後、人民元高を狙った世界の投機資金の流入が再び増加。そのため、中国人民銀行に大規模な資本の対外流動を許可するよう求める圧力が増大していた。個人の合法的財産の海外への移転について、専門家は「金融面から言えば、これにより人民元に対する切り上げ圧力を緩和することができため、現実かつ切迫した必要性から行われたことは間違いない」と分析する。

国家外貨管理局の馬徳倫副局長は「金融リスクの防止を確保することを前提に、我々は手順を踏んで更に資本項目での制限を緩和し、段階的に人民元の自由な兌換を実現していく」との方針を示している。同管理局は現在、資本項目管理政策の検討を急ピッチで進めており、間もなく公表する予定。この政策以外にも、去年から積極的に検討を進めてきた国内資金の海外市場への投資に関しても、関係機関との間で今、社会保険基金の海外投資や保険会社の資金運用などに関連する草案が制定されつつある。

また馬副局長は「我々が起草した保険会社資金の海外資本市場への投資申請内容は、既に国務院から原則承認されており、現在、保険監督管理委員会と共に具体案を作成しているところだ」と説明。更に同管理局は現在、外国企業が国内の外貨資金に参入するための管理問題についても検討中だ。

実現へのタイムテーブル

1994年に為替レートが米ドルと連動されて以来、人民元はほぼ安定し、米ドル対人民元為替レートは8.27対1を基本的に維持し続けており、この間の国内総生産(GDP)の成長率もほぼ8%前後を推移してきた。今日まで人民元は強い傾向を一貫して維持している。こうした状況を分析すると、人民元の価値は相対的に安定しており、為替レートは基本的にIMFの通貨の自由な兌換に関する要件に合致していると言える。

同時に、経済的基礎が急速に拡充し、特に対外貿易と国際収支面で黒字が続いているため、人民元は長期にわたり安定通貨としての地位にある。現在進められている金融体制改革や、為替制度や外貨市場などで更なる市場化を目指して調整が行われてきたことから、人民元の国際化に向けて徐々に依存できる、また信頼できる体制的な保障が整ってきた。

経済専門家は「現況に基づけば、中国経済は今後10年、依然として急成長を保持するだろう。そのため人民元は各国が安心できる通貨となり、人民元の国際的信用が大幅に向上することから、人民元の国際化に向けて着実な市場基盤が築かれる」と予測している。

だが、人民元が自由に兌換できる通貨となり、一定の範囲内で世界的な支払い手段となるには、多くの難しいかつ複雑な作業を経なければならない。また資本項目での兌換はまだ実現されていない、金融市場がまだ未成熟である、中国経済が持続可能な発展戦略を実現するといった問題、金融管理体制の不備など、こうした一部の障害的な要素も無視することはできない。

国家外貨管理局の郭樹清局長は「改革が安定的に推進すれば、中国の通貨は約5年から6年後には“基本的に”兌換できるようになる可能性がある」との見通しを示している。この“基本的に”という言葉の定義について、郭局長は「資本項目にある43種類のうち、およそ70%が開放されることだ」と説明。だが、「資本項目が完全に開放されることは絶対にあり得ない」とも付け加えた。

国際慣行によれば、人民元の資本項目での兌換が実現した後も、中国政府は依然として短期投機資本の流動など一部の資本項目に対しては制限措置を講じ、条件が熟するのを待って全ての制限を取り消して、人民元の完全なる自由な兌換を実現することになる。

国家発展・改革委員会対外経済研究所の張燕生所長も、実現までにかかる時間的予想はほぼ同じだ。張所長は「政府は金融メカニズムの改革に着手しているが、なお処理し解決しなければならない項目は20件ほどある。実現までの具体的なタイムテーブルは5〜6年以内と予想されるが、概ね2010年までには通貨制限はなくなるだろう」との考えを示した。

ある経済学者は、国際的な通貨になる以前に先ず、人民元を域内で通用する通貨にすることも考えられる、との見解を明らかにしている。

香港の著名な経済学者・張五常氏は「長期的な発展から見れば、マカオと香港の通貨を内地の人民元に全面的に改めることも考えられる。改革開放の初期には、香港ドルが深センを風靡したことがある。商店によっては人民元を受け取らず香港ドルのみを求める現象が起きたが、これは当時、内地と香港との間に経済力で格差があったからだ」と指摘する。

それから僅か20年。香港ドルは深センを含む広東省では徐々に見向きもされなくなり、逆に人民元が香港やマカオで重視され始めてきている。人民元が周辺国・地域で実際に自由に兌換されているという現実は、関係機関に人民元の地位に関する新たな問題の検討を促すことにもなり、最終的に人民元の完全なる自由な兌換に向けたプロセスを速めることになるだろう。

人民元の中国周辺の一部の国・地域での流通は更に、中国経済圏の形成を促進し、中国経済の発展が果たすプラス的な役割の増進にも寄与するだろう。人民元が流通することで、中国企業やビジネスマンがある程度直接的に、人民元でその国・地域の商品や労働力を手にできるようになれば、業務を拡大し、中国経済とその地との経済的連係を強化する上でもプラスとなる。

その一方で、こうした地域での人民元の流通がもたらすリスクも軽視するわけにはいかない。仮に非居住者が海外で取得した人民元を、違法ルートを通じて国内に持ち込んで資本市場に投資し、その後、投資で手にした所得を更に違法なルートを通じて米ドルなどの安定通貨に換え、海外に持ち出すことになれば、中国の資本項目に対する管理に抜け穴がある、ということにもなりかねない。中国政府は現在、人民元を自由に兌換できる目標に向け経済面で良好な環境を整備するため、様々な違法なルートを通じて流入した投機資本を厳しくコントロールすると共に、金融システムのリスクに耐えられる能力の強化に努めているところである。