2004 No.50
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中国に食糧危機は存在するか

        李 子

10月16日は世界食糧デー。食糧問題は世界各国が関心を寄せている問題である。中国は13億の人口を抱えている。近年、中国経済の発展にともない、耕地が減り、食糧生産量が低下し、食糧の輸入量が増えてきている。そこで、中国の食糧は自給できるのかなどと疑問を投げかける人もいる。

9月21日、中国商務部が発表した報告は、中国の食糧供給の情勢は好転し、下半期の食糧需給関係は引き続き緩和するとしている。

中国の食糧作付面積は増え、今年は1億ヘクタールを超え、昨年より1.0%拡大される見込みである。

輸出入面では、今年のとうもろこしの輸出が大幅に減り、上半期、とうもろこしの輸出は163万トンで、75.6%減り、小麦の輸入は273万トンで、857%増えた。

報告は、夏収穫食糧の増産、輸入の増加などで、食糧の供給能力が高くなり、下半期の食糧需給関係は引き続き緩和すると分析している。

中国は人口が多く、土地が少なく、耕地は世界の耕地総面積の7%に過ぎない。しかも自然災害がよく発生し、水資源が不足している。中国は少ない農業資源で膨大な人口を養っているのである。

しかも食糧生産量が5年連続減少し、中国は食糧輸入国となった。

食糧安全の保障

国の食糧安全を判断する要素は主に2つある。食糧生産量・消費需要と国の食糧備蓄量である。

中国の状況はどうか。

食糧作付面積は1998年の1億1300万ヘクタールから1億ヘクタール以下に減り、食糧総生産量は5年連続減少し、総生産量は1998年の5億1000万トンから2003年には4億3000万トンに減った。

中国農業科学院農業文献情報センターの梅方権氏は、2030年の中国の食糧需要総量はおそらく7億200万トン、食糧総生産量は6億9000万トンに達し、不足分はそれほど大きくはないとみている。専門家によると、不足するのは主に飼料用穀物であるという。

中国工程院会員、有名な草原専門家任継周氏は、未来の中国食糧の圧力は人の食糧ではなく、飼料用の穀物であるとしている。

任継周氏は、「中国の食糧需給関係は過去の伝統から離れつつある。統計資料が示しているように、中国農村の一人当たりの必要な食糧は1年間233キロであるのに対し、都市の一人当たり食糧消費量は1978年の160キロから2002年には78キロに減っている。20余年らい、中国の食糧消費量は増えていない。穀物消費量が減ると同時に、肉、卵、ミルクなどの動物産品の消費が増えてきている。このことは中国の食料構成が歴史的に変化したことを物語っている」と述べている。

任継周氏の推算では、2020年に16億人口の食料需要を満たすことを目標とすると、今後15年内に都市化の進展にともない、農村人口がたえず減り、都市人口が増え、都市化による人の食糧の減少幅は新規増加の人口の食糧需要を十分に満たすことができ、人の食糧の需要は増えず,食料構造の改善にともない、2020年の飼料用穀物の需要は倍増して4億トン前後になるという。

食糧備蓄面では、国際的に通用している食糧安全備蓄の最低量は3カ月間の国民食糧消費量である。国連食糧農業機関の規定している食糧備蓄安全ラインによると、穀物在庫は消費量の17−18%でなければならない。中国では、食糧在庫が1億2500万トン前後であるのが比較的ふさわしい。2003年末現在の中国の食糧在庫は1億8000万トンで、農家の一人当たり食糧備蓄は506キロに達している。国の食糧在庫と農民の食糧備蓄を合わせると、5億6900万トンになる。食糧の年間消費量が4億9000万トンであるとして計算すると、2003年末の食糧在庫レベルは消費量を超えており、近年の食糧保障レベルはわりによいと言える。

だが、中国社会科学院農村発展研究所の李国祥氏は、今後数年の食糧需給バランスの圧力が大きく、中国の食糧安全の情勢は楽観視できないと語っている。

国際食糧市場に対する影響は大きいか

近年、中国の食糧輸入量は逐年増え、昨年の食糧輸入量は2220万トン、今年1−7月は1580万トンであった。ちなみに昨年1−7月は1381万トン。中国の税関の統計によると、今年1−6月の各種農産物の輸入額は143億5000万ドルで、昨年同期比62.5%上昇し、同期の農産物貿易は37億3000万ドルの赤字で、中国は農産物輸入国となった。

アメリカの世界観察研究所のライスト・ブラウン所長の予測によると、1990−2030年の中国の穀物総需要量は4億7900万―6億4100万トンに達するが、穀物生産量は2億7200万トンに減り、穀物の不足分は2億700万−3億6900万トンであるという。かれは中国の巨大な穀物不足によって、競争が激化し、世界の穀物価格が上がるとみている。

中国農業科学院の陳錫康氏の予測では、2020年,2030年の中国の食糧の不足分はそれぞれ約3500万トン、5000万トンで、輸入依存度はそれぞれ5%、8%である。

中国農業科学院農業文献情報センターの梅方権氏は、2030年までの中国の食糧の年間輸入量は基本的に2000万−3000万トンのレベルを保ち、輸入依存度は5%以下に抑えることができるとしている。

世界銀行は、中国の食糧輸入は2020年に3200万トンになるだろうと予測している。

各方面の予測はそれぞれ異なるが、大体一致している。すなわち2030年以前の中国の食糧輸入量は5000万トンを超えず、輸入依存度はも10%を超えることがなく、国際市場に影響しない。

国際食糧市場の状況はどうか。世界食糧市場の食糧供給の増加空間はまだ大きく残っている。70年代後期から、食糧の輸入ニーズは長期にわたって停滞し、各主要食糧輸出国は耕地面積を減らしている。現在、主要輸出国の食糧作付け面積は80年代初期のピークより3450万ヘクタール減っており、この土地の生産潜在力は大体1億1500万トンである。つまり世界の農業科学技術が進歩しないとしても、この土地を耕地に回復するだけで、1億1500万トンの食糧を生産することができるのである。もし十分な需要があるなら、これらの潜在力を発揮させることができるのである。例えば1996−1997年、食糧価格が上昇したため、世界の食糧総生産量は7.5%増え、5大食糧輸出国の生産量は20%伸びた。