2004 No.51
(1213 -1219)

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西部大開発実施5年の成果と問題点

中国政府の西部大開発への助成の度合が弱まることはないが、西部地域の経済成長パターンには転換するところもあり、特色のある、経済的に優位のある産業が西部地域発展の重点となるだろう。

蘭辛珍

5年間の成果

2000年の初め頃に、中国政府は東部沿海地域と西部地域の経済格差を縮小し、東部と西部の同時発展を実現するために、重慶や四川、貴州、雲南、チベット、陝西、甘粛、青海、寧夏、新疆、内蒙古、広西など西部地域の12の省・自治区・直轄市で西部大開発戦略の実施に着手した。それ以来の5年間、西部地域には新しい大きな変化が生じた。

この5年間に、中国南西部にある広西沿海地域の欽州港は国と地方の財政から投下された30余億元の援助資金を利用してインフラ施設や埠頭、道路、鉄道などの新規建設を行った。政府の優遇政策のおかげで、この往時の小さな漁港は拡張工事によって10万トン級の貨物船が寄港できる現代化した港となり、西部地域の石油中継港として、中国石油化工集団公司や中国石油天然ガス集団公司など大手石油会社の石油タンクが設置され、中東と南アジア地域から海上経由で中国の南西部に輸送される石油の80%がここで中継されている。

欽州港の拡張に伴い、その付近に工場をつくる内外の企業もますます増えている。港湾付近の300余平方キロの丘陵と荒地は新しい臨海型工業ゾーンに変貌をとげ、着工されているプロジェクトの投資総額は400億元を上回り、これは西部大開発前の同港湾の投資総額の200倍に相当するものである。欽州港の経済総量はこの5年間に急速に伸び続けている。

近年、四川省の道路整備の改善に伴い、国内企業だけでなく、インテルやマイクロソフト、モトローラなど、世界ベスト500社のうち88社の大手企業が四川省に進出している。

四川省副省長の王懐臣氏は、「道路の整備はかつてはわれわれを悩まして続けてきた問題であった。5年前からスタートした西部大開発によって、われわれは大開発の前にやりたくてもやれなかったことをやりとげた」と語り、さらに次のように説明している。

四川省は1980年代から道路整備計画に取り掛かったが、資金がなかったため作成済みの建設プランもなかなか実施することができなかった。西部大開発戦略の実施以来、中央財政からの援助により、四川省では道路・鉄道・空輸・内陸水運、パイプライン輸送などのネットワークができあがり、開通した道路の総延長も1999年の4倍増の11万3000キロに達している。90%以上の村には自動車道路が通じており、省内には10カ所の空港があり、150余本の国際・国内航路が開設されている。

「豊かになりたければ、まず道をつくること」という言葉があるように、道路整備状況の改善によって、四川省の経済発展のテンポは加速した。2001年の四川省の国内総生産(GDP)は9.2%に達し、全国の平均水準より1.7ポイントを上回るものとなったが、2003年と2004年9月までにはそれぞれ11.8%と13.1%の上昇となり、2.77ポイントと3.6ポイントを上回ることになった。

国務院副総理の曾培炎氏は次のように述べている。

西部大開発戦略の実施以来、中央財政からの建設のための資金は累計で4600億元に達し、主に西部地域のインフラ施設の建設に向けられた。これによって、一部の重点プロジェクトの建設とインフラ施設の整備が順調に進んでおり、経済の発展も加速している。

統計データによると、西部地域の高速道路の総延長は1999年の2529キロから2003年には1.8倍増の7069キロに増え、ハイグレード道路(国道、省クラス道路、県クラス道路)の総延長は42万9850キロから23.7%増の53万1788キロに増えた。2003年までに80%の村に道路が通じるようになり、都市道路ネットワークが形成され、新規建設された鉄道は4570キロに達し、台湾省以外のすべての行政管轄区域を結び付けている。

この5年間に西部地域の国内総生産は1兆5345億元から46.7%増の2兆2955億元に増え、年平均伸び率は10%に達している。社会固定資産投資総額は1999年の5421億元から2003年には倍増の1兆844億元に増え、年平均伸び率は20%に達している。地方財政歳入は1029億元から60.3%増の1650億元に増えた。国有企業及び「一定の規模」以上の非国有工業企業の利潤総額は72億2000万元から10.4倍増の868億8000万元に増えた。

この5年間に中央財政の資金援助によって、西部地域では農村地区の7000余カ所の中等学校(高校を含むものもある)と小学校の校舎が改築され、260カ所の病院と800余カ所の疾病予防機構が開設され、6万余りのテレビ受信設備が取り付けられている。教育や医療、文化事業も改善された。インターネット利用者数は1999年の26万5000世帯から2003年には25.7倍増の708万7000世帯に増えた。

西部地域の商業も急速な発展を見せている。社会消費財小売り額は1999年の5454億元から2003年には42.7%増の7783億元に増え、年平均伸び率は9%に達した。対外貿易額は1999年の137億2000万ドルから2003年には279億3000万ドルに増え、年平均伸び率は19.4%で、2003年の増加率は5年前より16.8ポイントも上回った。

新しい経済成長ポイント

さる11月18日に開催された「中国西部フォーラム」では、西部各省の企業誘致と資金導入についての資料が配布された。資料を見ても分かるように、外資誘致プロジェクトは数年前と大きく変り、西部地域も外資プロジェクトを選ぶようになった。

広西チワン族自治区桂林市副市長の陳建軍氏は次のように語っている。

これまでは外国企業が合弁相手を選んでいたが、いまはわれわれが合弁相手を選ぶことになっており、プロジェクトの導入もエネルギー資源の消耗が高く、環境汚染がひどいプロジェクトは導入せず、将来性と科学技術の応用度の高い、高度加工型、高付加価値を生み出すプロジェクトを導入することになった。

2002年には、年間納税額が数千万元を超える台湾のある化学調味料企業が桂林で投資し工場を設立したが、操業後、汚染がひどかったため、2004年の初めに桂林市はこの企業を閉鎖せざるを得なかった。それ以来、企業誘致や資金導入は西部地域の持続可能な発展を目指す特色のある、経済的に優位のある産業に限られるようになった。

2003年に入って以来、西部各省はこれまでの経済発展のパターンを変えて、観光業や非鉄金属、水道と電気、医薬、食品など特色のある、経済的に優位のある産業の発展に力を入れ、特色のある、経済的に優位のある産業は西部地域の新しい経済成長ポイントとなっている。

2004年1月から9月までの広西、内蒙古、新疆の3自治区の特色のある、経済的に優位のある産業の経済成長は初めてその経済総量の50%を超えた。

国家発展改革委員会副主任の王春正氏は次のように見ている。

西部地域は特色のある、経済的に優位のある産業を発展させる環境に恵まれている。例えば、クリーンエネルギー産業を発展させ、エネルギー資源工業の規模や技術水準及び市場競争力を向上させるうえで必要な水力や石炭、石油、天然ガス及び風力などのエネルギー資源のほか、非鉄金属やカリ岩塩、リン鉱などにも恵まれている。また、観光資源にも恵まれ、牧畜業も盛んで、高度加工の潜在力が大きい。

西部地域の特色のある、経済的に優位のある産業を発展させることは、西部地域の豊富な資源環境をフルに生かし、盲目的な重複建設を防ぐことにもなる。

今後の難問

国務院西部開発弁公室副主任の李子彬氏は「中国西部フォーラム」で、西部大開発のさらなる推進はまだ多くの困難や問題に直面していると、次のように述べている。

西部大開発の最初の目的は東部と西部地域の経済発展の格差を縮小することにあったが、地域の発展状況から見れば、この格差は大開発の実施によって縮小してはいない。

西部大開発に指定された地域の面積は全国の71.4%を占めているが、地域の人口は全国の28.8%しか占めていない。また西部地域は資源が豊富で市場の潜在力も大きいとはいえ、2003年の国内総生産は2兆2660億元で、全国の16.8%しか占めておらず、一人当たりのGDPは全国平均水準の3分の2に相当し、東部地域の平均水準の40%弱以下であった。

この5年間に西部地域の大開発は一応の成果をあげはしたが、東部地域と比べれば、西部地域のインフラ施設はまだぜい弱で、生態環境は一部には改善の兆がみられるが、全体として悪化している趨勢は根本的に抑制されておらず、教育や医療など社会公共事業もまだ遅れている。西部地域の全般的な市場競争力が低下しているので、いかにして地域経済社会の発展を促進するかは今後の問題点の一つとなっている。

これについて、四川省副省長の王懐臣氏はこう見ている。

これまでの西部地域の開発は主に中央財政の援助に頼って行われてきたが、この援助を今後も続けることは不可能であり、われわれはみずからの競争力を強化しなければならない。西部大開発が直面している主な難問は市場の育成である。西部地域は市場がまだ整っておらず、行政の介入が依然として存在していることは市場の発展にも、企業の競争力の向上にもプラスとならない。

商務部の統計によれば、1999年と比べて、2003年の全国の輸出入総額と外資実際導入額に占める西部地域の割合はそれぞれ0.5パーセントと1.4パーセント下がった。これについては、西部地域の市場の不健全が主因と考えられている。

商務部副部長の高虎成氏は次のように見ている。

西部大開発のいまひとつの難問は経済成長パターンの転換である。一部の既存の中小企業はすでに大開発の需要に適応できなくなっているにもかかわらず、依然として多くの地域の主要な収益源として存在している。エネルギー資源の消耗が高く、環境汚染がひどいという経済成長パターンを転換し、資源節約型と高付加価値の産業を発展させることを今後の西部地域発展の重点とするべきである。