目覚しい進歩を遂げた法整備
新中国における法整備は半世紀の道のりをたどってきた。今では法によって国を治めることはすでに中国の治国の方策となっている。
2003年は中国の法整備にとって並々ならぬ年であった。この一年に、「中華人民共和国憲法改正案(草案)」が全人代常務委員会で全会一致で可決され、これは憲法改正の作業が法定のプロセスに入ったことを示すものである。また、「都市におけるホームレスなど物乞い・浮浪者の救済管理規則」が打ち出されると同時に、もとの「都市部における物乞い・浮浪者の収容・本籍地送還管理規則」が廃止された。「収容・本籍地送還」から「救済管理」への変化は、中国の政治文明、法治文明の中で人権の保障と人文的配慮が重視されるようになった進歩である。そのほか、新たな「婚姻登録条例」が公布、実施されると同時に、もとのいくつかの時代遅れの規定が廃止され、かなり人間味をもつものとなった。
これらの法律の制定は中国の民主法整備に大きな影響を及ぼすだけでなく、人間を中心とした思想と人間性尊重が2003年の立法や司法、法律執行の中で定着したことを物語っている。
治国の方策となった「法によって国を治めること」
1949年の新中国成立以来、中国の法整備は紆余曲折した発展の道を歩んできた。中国共産党第十一期三中総が1978年12月22日に閉幕した後、特に法によって国を治めるという治国の方策が確立された後、中国における法整備はついに正しい軌道に乗るようになったのである。
1954年に第一期全国人民代表大会第一回会議が開かれた。全国人民代表大会はその時から国の立法権を行使し、憲法改正と法律制定の権限を持つ唯一の機関となり、全人代常務委は法解釈と法令制定の権限を持つようになった。
それ以後の50年間に、中国の法整備の仕事は幾多の挫折や失敗を繰り返した。1954年に中華人民共和国の最初の憲法が公布され、その後の法整備の作業もかなり活発になっていた。しかし、1957年の反右派闘争の拡大化から1976年の文化大革命の終結までの約20年間には、中国では政治運動が絶えず起こったため、もともとは望ましい発展ぶりを見せ、その可能性もあった新中国の法整備はその他の多くの事業と同じように多大な損失を被った。この時期において、全人代は1975年に憲法を採択した以外、ほかの法律をひとつも制定しなかった。全人代常務委が採択した条例や規則も非常に少なかった。地方では、民族自治地区を除いて、その他の地方は立法権を持たないこととなり、法整備の仕事はほとんど停滞し、さらには中断されることになった。
20年後の1978年末に開催された中国共産党第十一期三中総は歴史の経験と教訓にかんがみて、社会主義民主の発展と社会主義法体制の健全化を日程に組み入れた。中国の法整備の仕事は新たな歴史的段階に入った。
1979年7月に開かれた第五期全人代第二回会議では一度に七つの法律が公布された。統計データによると、1979年から1998年12月29日に閉幕した第九期全人代常務委第六回会議までの20年間に、新憲法のほか、各回の全人代とその常務委は法律と関係法律問題をめぐっての決定を347件審議、採択した。ここ6年間、全人代とその常務委は法整備を速め、しかも中国のWTO加盟に適応するための関連法律や法規の制定と改正に取り組んでいる。2002年末現在、制定、改正された法律は約400件、行政法規は約千件、地方性法規は約1万件にのぼっている。これらの法律や法規及び規則は社会生活の主要な方面に及ぶものであり、憲法、行政法、民商法、経済法、社会法、刑法、手続法などを含むかなり整った法体系が形成された。
専門家の見方では、まさにここ20年の法整備の作業によって、市場経済の法律の基本的な枠組みが構築されたのである。
特筆すべきことは、1996年3月、第八期全人代第四回会議の採択を経て「法によって国を治め、社会主義法制国家を建設する」方針が「国民経済・社会発展第九次五カ年計画と二〇一〇年までの長期目標綱要」に盛り込まれたことである。1997年の第十五回党大会は「法によって国を治める」という立場を重ねて言明するとともに、「法制国家」を「法治国家」に書き換えた。1999年に全人代は憲法改正案で「法によって国を治め、社会主義法治国家を建設する」を正式に国の憲法に書き入れた。
行政許可法によって法治政府を樹立する
2003年8月27日、七年間も制定作業を続けてきた「中華人民共和国行政許可法」が公布され、今年7月1日から実施されることになった。行政許可法は1989年の行政訴訟法、1996年の行政処罰法の公布、実施に次ぐ中国の行政法分野におけるいま一つの一里塚とされる法規であり、行政許可の合法性や高効率、公正、利便性、政府行為の信憑性や透明性、責任感、理性が強調されたものである。
それまでの行政許可には、行政許可の設定権がはっきりしない、行政許可設定事項が規範に合わない、中間の段階が多すぎる、手続きが煩わしく、期限が長すぎる、「非公開で行う」とか、許可を重視し、管理を無視し、許可のみを行って監督・管理を考えない、市場参入が困難となるが、参入したとしても監督・管理の仕組みが不備であるとか、少数の行政機関では行政許可が権力独占の手段とされたため腐敗が問題になるとか、また行政機関の行政許可実施では権力のみがあって、職責がなかったとかという問題が存在していた。
これらの問題点に対応して、行政許可法は行政許可設定権と行政許可の内容について厳格に定めている。
中国の現行法律の80%は行政機関が執行するものであり、行政許可法、行政訴訟法、国家賠償法、行政再審議法などは行政の法律執行行為を規範化させ、監督するうえで重要な役割を果たすものとなっている。「中華人民共和国行政許可法」の公布によって、政府の行政許可と行政管理の仕事は法制化、規範化の軌道に組み入れられ、政府機能転換の推進、公民や法人及びその他の組織の合法的権益保証に寄与し、中国において大きな影響が生じることになろう。
公民の法律意識が強化された
中国では改革・開放以来、法整備の仕事が速いテンポで進められてきた。法律知識の普及は公民が法律を身につけ、法律で自分の合法的権益を守るとともに、法律を知らないために罪を犯すことを防ぐうえで重要な一環となっている。1985年から、全国では法律普及五カ年計画が3回実施されたが、第四回法律普及五カ年計画も実施され始めた。現在までのところ、法律普及教育を受けた中国公民は8億以上に達するようになった。
中国では、12月4日は「全国法制宣伝デー」と定められている。十数年の法律知識普及によって、公民の法律の資質が向上し、法制意識も強化された。
各クラスの指導幹部、特に中央の指導者が率先して法律を学ぶことは、全人民の法律知識普及のうえで手本と促進の役割を果たしている。1994年12月9日に中国共産党中央が第一回法律知識講座を開いた。それ以後10数回も行われた。1998年から、全人代常務委も仕事の必要に応じて、法律専門家に常務委の構成メンバーのために法律知識講座を開いてもらっている。各省、自治区、直轄市の党委員会、政府、人民代表大会など関係部門の指導者も相前後して法律知識講座を開いたり、法律専門家の講義を聞いたりした。指導幹部が率先して法律知識の教育を受ける行動は、党と政府の法整備強化の決意を表わすものである。
国際慣行とリンク
国際慣行とのリンクを重要視することは、中国のWTO加盟後の法整備の仕事の新たな課題である。WTO加盟後の2年このかた、中国は全面的に関連法律や法規、規則を整理し、社会主義市場経済やWTOのルール及び国際慣行に合致した、統一の、透明な渉外経済法律法規体系を確立した。
2001年末のWTO加盟の前後に、全人代とその常務委、国務院とその所属の各部門、最高人民法院、最高人民検察院、地方の人民代表大会と政府は、WTO加盟の必要に適応するために二つの面から作業を進めた。一つは中国の現行の諸規則をWTOのルールの基本的原則及び関連ルールと合致させるため、WTOのルールと関連する法律や法規、規則、司法解釈などの整理や、一部の条例の改正、補足、廃止を行ったことである。いま一つは中国の関連WTO義務の履行と権利行使に基づいて、一部の行政法規や部門規則の公布、関係法律草案の起草と制定及びWTO関連の法規・措置の国内法への転換の作業などに取り組んだことである。
そのほか、全人代とその常務委は憲法によって与えられた職権に基づいて関連諸決定を行って中国のWTO加盟についての審議と可決を行い、中国のWTO加盟前の2000年7月から2001年12月までに中国の対外的承諾に基づいて中外合資経営企業法、中外合作経営企業法、外資企業法、税関法、特許法、商標法、著作権法などの法律を改正したほか、WTO加盟後にはさらに2002年4月と10月に輸出入商品検査法と保険法の改正を行った。
2001年9月以来、中央の統一的に配置に基づいて、地方の人民代表大会と地方政府はWTOのルール及び関連ある地方的性格の法規や地方政府の規則の整理と改正を行い、この作業は現在ほぼ終了している。
法律制度の公開と透明は、WTOの基本的原則であり、民主法整備の促進、法によって国を治め、社会主義法治国家を建設するという中国政府の基本的要求にも合致している。
国民の意見に耳を傾けるため、行政訴訟法や村民委員会組織法、土地管理法、契約法、婚姻法など、全人代とその常務委によって制定された数多くの法律文書は、新聞に全文掲載されている。全人代が2000年に採択した立法法の基本的原則として、民主を発揚し、人民がさまざまなルートを通じて法整備の作業に参与することを保障し、法律制度の公開、透明を確保するというものである。立法法は、法律と行政法規の起草の段階において、関係機関や組織及び個人の意見を幅広く聴取すべきであり、意見聴取は座談会、論証会、公聴会などの形式で行ってもよいと明確に規定している。そのほか、主要法律案は社会全体に公表し、意見を求めることもできる。
全人代常務委とその法律制定担当機構にとって、これからも制定が待たれる法律がまだたくさんある。例えば、目下制定中の民法典の物権制度、権利侵害賠償制度及び渉外経済貿易活動に適用される国際的な紛争処理規範、全人代常務委に提出され、審議に付される外国為替法草案などがそれである。そのほか、国務院の条例を基礎に、独占法や反ダンピング法、反補助金法の検討と制定、不正競争法の追加と充実、さらには政府の行政行為をいっそう規範化させ、法に基づいた行政を保証するための取り組みも行われている。
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