2004 No.08
(0216 -0220)

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 重要文章

 

「人間性」のある法制

李 南

―――新政権が執政を行って1年、政権の親しみやすさを一般市民は感じ取るようになり、また現実生活の中で数多くの「人間性」のある政策決定、措置、法律や法規が制定された。

就業政策を積極的に実施することは民生の本であり、国家安定の策でもある。関係方面の統計によると、この1年来、国務院は10件に上る就業と再就職を促進する積極的な政策を打ち出した。2003年第4四半期までに、全国で650万人の就業の機会が創造され、823万人の一時帰休者が再就職優遇証明書を取得し、うち350万人の再就職が実現した。

長年にわたり、過度に氾濫した行政による審査・認可は社会と経済に様々な障害をもたらしてきた。2003年8月27日、『行政許可法』を全国人民代表大会(全人代)が採択。『許可法』は行政機関に対し、住民の利便性を原則に事務率を向上させ、良質のサービスを提供するよう求めているが、この法規の制定により政府の行為の適正化、公民と法人、その他の組織の合法的権益を保護する法的基盤が整った。

この数年来、土地収用の問題に関する苦情が相次いでおり、集団的な事件も時に発生し、社会の安定を脅かす要因の1つとなっている。2003年11月、国務院は各地方政府に対し、土地市場秩序の整備を更に強化し、整備の過程では、農民の土地流失による失業問題を確実に解決し、「農民の権益を保障し、土地占有規模を抑制する」原則を着実に貫徹するよう求める通達を出した。

新政権は更に農民出稼ぎ労働者の合法的権益の擁護に特に注視している。2003年11月、建設部と労働・社会保障部などは共同で通達を出し、出稼ぎ労働者の賃金未払い問題を確実に解決するよう求めた。最高人民法院も、農民労働者の賃金未払いに関する訴訟は法に基づいて迅速に立件し、迅速に審理し、迅速に執行するよう求める通達を出している。中国共産党中央と国務院が直接乗り出したことで、この問題は春節(旧正月)前に大きな進展を遂げた。賃金が支払われていなかった多くの農民は熊徳明さん(「人を本とす」を参照)と同様、安心して1年を送れるようになった。建設部の統計によると、春節前に清算された未払い金は215億元に上り、清算率は68%、うち2003年の発生分では89%に達した。

法律の制定と実施の過程で、公民権が益々重視されるようになってきた。

2003年3月、広州で孫志剛氏が殴殺される事件が起きた(2003年25期を参照)。この事件はメディアやインターネットで何度も報じられ、中央政府もこの事件の処理を非常に重視すると共に、6月18日、温家宝総理は国務院常務会議を招集し、『都市に生活するホームレス救済管理運用方法(草案)』を審議して原則採択。同時に、1982年5月に国務院が公布した『都市ホームレス収容送還運用方法』は廃止した。

2003年8月27日、公安部は戸籍管理や交通管理、出入国(境)管理、消防管理など4つの面で住民の利便性を図る30項目の措置を集中して制定することを宣言した。例えば、新生児の戸籍は父方、母方のどちらでも自由に選択できる、70歳の老人も運転免許試験を受けられる、現役軍人も地方の運転免許証を所有できる、判決を受けた人または労働改造が決定された人の戸籍抹消規定は取り消すなど。

2003年に新しい『婚姻登記条例』が制定された。新条例はより「人間的」となっている。婚姻前の身体検査は強制から勧奨となり、結婚には「職場の証明書が必要」との硬直的な規定は取り消され、婚姻は本質的に個人の行為に属するとなった。従来の『婚姻登記管理条例』は『婚姻登記条例』に変わったが、「管理」の2文字が削除されたことは政府の職能の転換を意味している。

2003年10月28日、第10期全人代第5回会議は社会の関心を集めていた『中華人民共和国交通安全法』をほぼ全会一致で採択。人を本とし、公平と利便性の原則がこの4回の審議を経た法律の最大の特徴だ。

人を本とする、が法の執行や司法の中で示しているのは、人間性への回帰である。今年1月21日の農暦の大晦日、北京市刑務所の服役者188人が一時帰宅を許可された。奨励措置として、同刑務所管理局が司法部の『犯罪者の親族訪問と一時帰宅に関する規定』に基づき、服役態度の良い受刑者の一時帰宅を許したもの。

国の刑罰執行機関としての刑務所はこの数年来、犯罪者の合法的権利の擁護を重視するようになってきた。受刑者の改悛に力を入れ、法律で剥奪されていない権利については十分保障する措置を講じ、基本的人格という待遇と関心が受けられるようにしている。

2003年7月28日、四川省成都市の双流鎮に住む女性が新都区の司法局と大邑新源刑務所に結婚申請を提出した。相手は窃盗罪で服役中の男性。8月26日、申請は司法部から許可され、女性は結婚証明書を手にした。服役者との結婚は全国で初めてだ。

法律の専門家は「関係機関が服役者との婚姻を許可したのは、法律の合法的運用、政策の執行上、1つの進歩である。また人身の自由が制限されていない公民が敢えて服役者と結婚すると申し出たのも、法律に対する意識の向上と言えるだろう。結婚の許可は服役者の改悛に有益であり、社会の安定にも有益であり、法治社会の『人間性』の表れでもある」と評価している。

2003年9月17日、殺人罪で死刑判決を受けた受刑者が北京市第1中級人民法院の会見室で妻と面会した。死刑執行前に家族との面会が許されたのは、これが初めて。

決定を下したのは、北京市高級法院。10年以上刑事弁護に従事している弁護士によると、過去、死刑囚は家族と面会できなかった。家庭に何か問題がある場合は先ず、看守所に申請を出し、申請が許可された後に相談したい問題の要点を記述する。そして審査を経てから看守所に渡し、更に看守所の職員が死刑囚に手渡すが、家族には死刑囚から聞いた内容しか伝えることが出来なかった。

中国政法大学の教授で、中国法学会刑法学研究会の梁華仁顧問は「高級法院が死刑執行前に家族との面会を許可したことは、人道主義精神にかなうものであり、司法機関の死刑囚の人権を尊重し、関心を寄せていることを示すものでもある。死刑囚は心理的な慰めを得られるだろう」と話している。

2003年は人権が尊重され具現化された1年だった。社会生活での一連の新たな変化がそれを物語っている。特に中国共産党中央が憲法改正で、「国の尊重と人権の保障」の条項を加えるよう提言したことから、人権は憲法改正でキーワードとなった。人権の「地位」の向上はまさに、この数年、特に2003年に人権の保障と関心が大きく進展した表れである。