2004 No.02
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困難な状態の中で25年続けてきた中米軍事交流

中国軍事科学院戦略研究部第二室主任  羅援

中米両国は1979年に国交樹立して以来、各分野で全面的な交流と協力を展開してきた。その中で、軍事交流は中米関係の最も特殊かつ敏感な部分であり、また最も破壊されやすいものでもある。それが両国関係の状況を最もよく体現できるため、一般に両国関係発展の「晴雨計」または「風向計」と称されている。

中米軍事交流は今年で25年間続けてきた。その発展の経過から見ると、両国の軍事関係は政治関係の変化に大きく制約され、明らかな段階的に起伏する特徴がある。一般的に言って、中米関係に曲折が現れた場合、真先に影響を受けるのは両国の軍事交流であり、たとえ両国の政治関係が正常に回復しても、軍事の関係は依然として発展の最も遅い分野に属す。25年来の両国の軍事交流はおよそ次の三つの段階に分けることができる。

1980年〜1989年 これはめったにない「蜜月期」である。

この期間では、1980年のブラウン米国防長官訪中の「破氷の旅」を起点として、両国の軍事交流は成果が著しく、雰囲気が最もすばらしい「蜜月期」を経歴した。この期間に、両軍の高級指導者が十数回も相互訪問し、両軍の各軍種、各クラスの軍事代表団の交流がひんぱんに行われた。最も実質的な兵器と軍事技術の協力の面では、アメリカは何回か対中兵器売却と技術輸出の制限を緩め、「ダーク・イーグル」ヘリコプター、対潜水艦魚雷、高性能火砲レーダーなどの先進装備を提供した。1989年以後、アメリカ側が中国の情勢を誤って判断し、それに以前に積み重ねた諸々の不安定な要素を加えて、アメリカは率先して対中国制裁を発動し、すべての対中兵器売却と協力プロジェクトを凍結し、ハイクラスの軍事接触を停止すると発表した。こうして、中米軍事交流は谷底に落ち込んでしまった。

1990年〜2001年 これはいろいろのことが起きた「変化期」である。

1990年からブッシュ氏が登場する2001年までは、中米軍事交流が変化、起伏する時期で、何回か重大な事件の衝撃を受け、両軍の関係は回復してからまたも揺れ動き、ついには氷点にまで落ち込んで、脆弱かつ不安定の特徴を示した。

90年代初期、中米関係が好転し、ペリー米国防長官が1994年に中国を訪問し、5年間中断した両軍のハイクラス往来を回復した。1995年以後は、クリントン政府が李登輝の訪米に同意し、それにアメリカ側が空母編隊を派遣して台湾海峡危機に介入したため、中米関係は国交樹立後の最低点に落ち込み、回復したばかりの両軍往来も再び中止した。

1996年、クリントン政府の第二任期が始まってから、双方の共同の努力の下で、両国関係は「曇り」から「晴」に転じ、両軍交流も和を主とする良好な趨勢を呈するようになった。1997年10月、江沢民主席は訪米期間に両軍年度防衛協議メカニズム確立についてアメリカ側と意見の一致を見た。その時から、両軍のハイクラス往来がひんぱんに行われ、1998年に最初の「海上軍事安全協議強化メカニズム確立に関する協定」の信任措置協定が結ばれた。これは両軍関係が実質的進展をとげたことを示している。1999年、アメリカがユーゴラスビア駐在中国大使館を爆撃する事件が発生したあと、中国側は中米両軍のハイクラス往来および核拡散防止、軍縮問題についての協議の延期を決定した。

2000年、中米両国と両軍関係がちくじ回復し、改善され、中米は第三回国防次官クラス防衛協議と中米海上軍事安全協議メカニズム年度会合を行った。しかし、ブッシュ二世政府が2001年に登場してから、中国に対し強硬な政策を実行し、両軍関係と軍事交流計画を全面的に審査するように命じ、その年に「軍用機衝突事件」が発生し、ブッシュ政府が先進兵器を台湾に大量売却すると発表して、再び両軍関係を新たな緊張の中に突き落とした。

2001年以来 これは過去を受けて未来を開く「重要な時期」である。

「9・11」事件後、国際情勢に大きな変化が生じ、アメリカの外交と安全戦略はそれにつれて調整された。テロ反対、地域安全、核不拡散などの問題で中国側の支持を得るため、ブッシュ政府は実務的な対中国政策を実行して、多くの分野での両国の協力を促進した。こうして、長期以来両国関係の「風向計」としての軍事交流も再開した。2002年10月、江沢民氏はブッシュ氏と会談し、双方は両軍往来回復、軍事交流強化に同意した。12月、中米は第5回防衛協議を行って、2年間中断したこの定期会合メカニズムを再び始動させた。この段階では、中米両軍は交流回数を増やし、接触のクラスを高めたばかりでなく、それと関係ある内容と分野も大いに増加し、拡大した。2003年以来、両軍の往来はいっそうひんぱんになり、中米両軍の艦艇はそれぞれグァム島と湛江港を訪れ、米軍の太平洋領地と中国南海艦隊本部に対する最初の訪問を実現した。10月28、29の二日、曹剛川国防部長はアメリカを公式訪問し、両軍交流の新しい一ページをめくった。これは1996年以来の中国国防部長の最初の訪米であり、ホワイトハウス入りしてから外国の国防相と2、3人しか会っていないブッシュ大統領は曹剛川国防部長と会見した。これはアメリカが両国の軍事関係を高度に重視していることを表明している。曹剛川国防部長はラムスフェルト米国防長官と会談した際、「友人は付き合えば付き合うほど近くなり、親戚は付き合えば付き合うほど親しくなる」という中国の俗語で両軍交流の重要性を形容した。双方の積極的な態度は、中米軍事交流がすでに90年代以来の最高レベルに回復し、しかも引き続き新たな高度に上がっていくことを物語っている。

中米軍事交流は双方にとって有利である

両軍の交流と協力が両国関係の影響を受けて長い間曲折をたどってきたにもかかわらず、全体から言って、中米両国間の軍事交流は完全に互恵のものであり、両国軍隊の建設、両国関係の発展および国際情勢の平和と安定に対し大いに裨益があり、その協力と交流の必要性と潜在力は肯定に値するものである。

両軍の交流は両軍の発展と建設の必要に合致する

中国側について言えば、軍事交流の増強を通じてアメリカ側に中国の軍事状況をもっとよく理解させるのは、「中国脅威論」の影響を取り除くのに役立ち、またアメリカが対中軍事輸出管制を解除するように促し、中国の軍事現代化の必要を満たすことができる。しかも、アメリカは世界一の軍事強国として、その軍事学説と装備がとても科学的、先進的で、中国に多くの啓発を与える。もちろん、アメリカ側も交流を通じて中国の自衛的な国防政策、軍隊の組織構造、兵器・装備および作戦能力に対する適切な理解を増加した。これはアメリカ側が軍事交流を積極的に推進する重要な動因である。

両軍交流は両国関係の発展を推進する重要な要素である

国の総体的外交の欠くべからざる構成部分として、軍事外交は両国関係の中で消極的で受身の役しか演じられないのではなく、それとは逆にますます重要な役割を発揮している。軍隊のハイクラスの相互訪問、定期安全協議、人的交流は、信任を増やし、食い違いを減らし、両国関係の良性発展の弾力性を増大するのに役立つ。中米関係を木の桶にたとえるなら、軍事交流はこの桶の最も短い木の板で、この桶に最終的にどのぐらい水を入れられるかを決定づける。

両軍の交流は国際情勢の平和と安定の促進に役立つ

当面、中米はともに世界に重要な影響を及ぼす国であり、両国関係は世界の最も重要な二国間関係の一つとなっており、アジア太平洋地域ないし世界の平和、安定、発展に重要な影響を及ぼしている。アジア太平洋地域では、中米は朝鮮半島の情勢悪化と南アジアの衝突を防止する面ではともにある程度利益がある。交流ルートがとどこおりなく通じるように保つのは、アジア太平洋地域の平和と安定の強化に役立つ。重大な国際問題については、中国は国連安保理の常任理事国であり、第三世界では広い協力の空間がある。とくに反テロ分野では、反テロ戦争が人員分散、行動不確定、作戦不対称などの特点から、この分野における両国の軍事協力強化が求められている。

これを見てもわかるように、軍事交流が一方にだけ利益をもたらすものではなくて、両国の共同の必要であり、両軍関係の歴史は、和すれば両方に利益をもたらし、戦えば両方とも傷つくことをくり返し立証しており、中米軍事交流の引き続き発展は大勢のおもむくところである。

中米の軍事交流は依然として温かさの中に冷たさがある

近年、中米関係が「最良の時期」に入るにつれて、両軍関係はいちだんの発展という歴史的チャンスに直面している。しかし、中米関係の複雑性と両軍関係の敏感性、脆弱性により、両国の軍事関係の発展に影響する不利な要因が依然として存在し、両軍関係が依然として温かさの中に冷たさがあり、順風満帆というわけにいかないことを見てとるべきである。

台湾問題は中米軍事交流の「試金石」

台湾問題は従来から中米関係の最も重要な問題であり、中米軍事交流の「試金石」でもある。ブッシュ政府が一再ならず台湾の独立を支持しないと表明しているとはいえ、同政府と台湾との各種正式の軍事協力と交流が日ましにひんぱんに行われ、中米軍事関係発展に影響する最大の障害となっている。2003年、米国会は相前後しえ「2003年国防授権法」と「2003年国務省授権法」など一連の台湾にかかわる法案を採択して、対台湾防衛と兵器売却への支持を引き続き強化した。中国側によれば、中米の三つの共同コミュニケの原則を厳守し、台湾問題を善処することは、両軍関係発展の重要な基礎と前提であり、この問題をきちんと処理してのみ両軍関係ははじめ健全、順調に発展することができる。

アメリカは中国に対しなおも警戒心を保っている

中米関係の発展に影響する重要な要因の一つに、アメリカが中国の力とその性質をどう見るかがある。「9・11」事件以来、アメリカは中国との協力を強化したとはいえ、アメリカの一部の定着した考え方が変わっておらず、2001年の「四年防衛評価レポート」は依然として中国をアメリカの利益に挑戦する可能性最大の「地域的資源大国」に位置付けている。そのあとアメリカがつづけて発表した「国家安全戦略レポート」、「中国軍事力年度レポート」、「米中安全評価レポート」はいずれも中国の台頭に対する警告と防備の内容が盛り込まれている。このため、米軍は両軍交流を発展させる時、交流を通じて中国軍部の動向を掌握し、それに影響することを望むが、この種の交流が中国軍隊の技術進歩を速めることも憂慮するという苦境に直面している。そのため、対中兵器売却と技術輸出の面で、アメリカは終始、米軍とその同盟国の安全を脅かす中国の能力を増強してはならないことを最低線として、対中差別的技術輸出規制措置を延長、継続し、両軍交流を初級人員交流段階にとどまらせており、その結果より突っ込んだ軍事貿易などの面の交流を行うのは困難である。

アメリカは「損する」ことを心配

技術面では、当面両軍交流の主要な矛盾はいわゆる「対称と互恵の原則」の問題に集中している。アメリカ側はずっと、軍事交流の面では双方は対等でなく、中国は交流の面では「透明度が足りない」と考えている。ラムスフェルト米国防長官は中米軍事交流プロジェクトに対し、アメリカは軍事交流プロジェクトからなにを得られたか、双方が実施した交流プロジェクトをアメリカはどう評価すべきか、このような交流は中米双方にとって有利なのか、アメリカは今後これに対し異なるやり方をとるべきかどうか、それを多くとるかそれとも少なくとるかといういくつかの「基本的問題」を提出した。両軍交流の面ではアメリカがいくらか「損している」とアメリカ軍部が思っているのは明らかである。公平に言うなら、当面の両軍関係の実質的状況および双方の軍事実力の差異から見ると、中国がその最も敏感な軍事機密を残らずアメリカに公開することを期待するのは不可能である。米軍が交流の中で公開した若干のものは、中国から見て先進的であるかもしれないが、米軍からすればそうではない。米軍が中国側に提出した要求の中に、中国側にとって最も敏感なものがたくさんある。アメリカ側の専門家でさえ、このような「対等」の方式で中国側に要求するなら、アメリカ軍部の「期待が高すぎ」、「あせりすぎる」としか言えないと見ている。

中米両軍に長期協力の「ソフト・メカニズム」を欠いている。

予見できる将来に、アメリカの対中国政策は相変わらず封じこめと接触の中でバランスを保ち、両軍の協力はかなり長い期間内において「予防的な安全協力」でしかありえない、つまり不必要な危機または衝突を避けることであって、「同盟協力」ではない。そのため、アメリカが中国との軍事交流に示した熱情は策略的な調整にすぎず、戦略的調整ではない。いったん国際環境が変わるかまたは突発的事件が発生した場合、両国関係はそれにつれて変わり、長期協力メカニズムの保障を欠く状態の下では、両国の軍事交流は異常に脆弱なものになる。

これを見てもわかるように、中米軍事交流の中に存在する問題と障害がまだ少なからずあり、両軍関係の発展は依然としていばらがいっぱいある道である。両軍関係をいちだんと深く発展させるには、高いところに登って遠方を眺める大国の気概が必要で、相互尊重、相互信頼、互恵を基礎として、既存の成果を大事にし、いっそう積極的に自ら進んで共通の認識を求め、協力を拡大しなければならず、アメリカ側が誠意をもって両国と両軍関係発展の中で直面する問題と障害を解決するのはとくに必要である。こうしてのみはじめて両国の軍事交流がいっそう明るい未来を迎えることができるのである。これは中米両国と両軍および全世界にとって、いずれも得がたい「福音」である。