2004 No.02
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外国旅行社の現地法人、2年繰り上げ開放

―――国内旅行社との競争が激化することはない

蘭辛珍

2003年12月2日、外国旅行社の中国初の現地法人である日航国際旅行社(中国)有限公司(日航国旅と略称)が北京に設立した。

日航国旅は日本航空システム(JAL)グループの海外旅行会社JALPAKが創設。登記資本は500万元で、主に日本人向けの中国観光業務を取り扱う。2003年7月12日に国家旅遊局と商務部が制定した「外国企業による持ち株、全額出資の旅行社の設立に関する暫定規定」が正式に発効して以来、初めて認可された現地法人。

WTO加盟時の公約に基づき、政府は2005年12月31日までに外国旅行社の現地法人設立を許可することしていたが、2年繰り上げて実施した。

日航国旅は2大戦略をすでに策定。第1は、JALと共同で日本人向けに書道や篆刻、徒歩による長城登頂などをメーンにした「文化・スポーツ」ツアーを2004年4月から販売を開始する。第2は、国内旅行社の従業員を対象に初級、中級、高級別に体系化されたガイド養成コースを同月から開設・実施する。

中国社会科学院観光研究センターの張広瑞主任は「外国旅行社の現地法人設立を繰り上げて開放したことは、国内の観光業を活性化させ、アジア観光業の繁栄を促す上でプラスだ」と評価する。

国内市場に熱い視線を注ぐ外資

日航国旅が設立された前日、ヨーロッパ観光業大手の独TUIグループと中国旅行社(中旅)総社、MB中国投資有限公司による合弁旅行社「中旅途易観光有限責任公司」が北京に設立された。

中旅途易観光有限責任公司は、TUIグループとMBが75%の株式(うちTUIが51%)を所有する中国初の外資持ち株旅行社。同公司の投資総額は1550万ドル、登記資本は610万ドル。

同公司の取締役兼最高執行責任者(COO)であるマーティン・ビューズ氏は「今の中国は、観光業は活力に溢れ、吸引力のある市場だ」と強調する。

国家旅遊局の統計によると、2003年1〜10月までに海外から中国を訪れた観光客数は延べ7456万1900人、外貨収入は139億9800万ドル。観光業の外資利用額は2002年末時点で500億ドルに達し、全業界の約11%を占めた。

外国の全額出資旅行社が繰り上げて設立されたことで、海外の旅行社大手の投資に弾みがつくと予想される。日本ではJALのほか、その他の旅行社も今後2年以内に中国に投資することを決定し、大手のJTBや近畿ツーリスト、HISなどは現地法人設立の申請書を既に提出している。

外国の旅行社は国内で1998年から合弁形式で業務を開始しており、合弁企業数は現在11社。

国内業界:競争が激化することはない

全額出資の外国の旅行社が設立されたが、国内旅行社に緊迫感はない。「外資系旅行社は一部の観光業務を取り扱っているに過ぎず、観光業に最大の収益をもたらすのはやはり中国人の海外旅行であり、われわれに大きな影響はない」。これが多くの国内旅行社の考えだ。

現在、観光市場には3つのタイプの企業がある。1つは中国国際旅行社(国旅)や中旅、広之旅などの大手。いま1つは、ここ数年にインターネットなどのハイテクを十分活用して急速に台頭してきた携程旅行ネットなどの新興企業、そして国旅運通、羅森康輝などの合弁企業。

携程旅行ネットの最高経営責任者(CEO)である梁建章氏は「外国旅行社の現地法人はツアーの全コースに随行することはできず、現地でのサービスはやはり国内の旅行社に頼ることになる」と分析する。

これに対し日航国旅も、国内40社の旅行社を選んで現地サービスを行う方針を示している。梁建章氏は「このような協力方式は、現在と大差ない」と話している。

中旅総社日本入境部の朱鳳群部長は「短期間のうちに現地法人と国内旅行社との協力に変化が起きることはない。中国に進出したばかりの現地法人は、ホテルや観光地、とくに列車チケットの予約などの面ではまだ幅広い人脈、関係を築いていないため、国内旅行社と協力する必要がある」と指摘。

また梁建章氏は「現地法人の進出によって、主に入国・入境観光で競争が顕在化し、新たな競争が引き起こされるだろう。双方が競争する中、外資系旅行社自身は安定した顧客を持っているため、入国・入境観光のパイは益々拡大していき、国内観光市場では3強構造から4強が競争する構造へと変わる可能性がある」と分析する。

中国青年旅行社のCOOである蒋建寧氏はこの分析に賛同すると共に、「現地法人の進出で中国の観光市場の枠組みは変わるだろう。外資が来れば、人材を引き抜く可能性がある。旅行社にとって、人材の引き抜きは顧客の引き抜きに等しい。直接的な影響は業界内での人材流動が激化すると同時に、顧客配分で再構築が行われ、最終的に国内旅行社の実力ランキングが変わることだ」と強調する。

現地法人が大量に出現することはない

中国初の現地法人である日航国旅が設立された情報に、数多くの国内旅行社の責任者は、短期間に全額出資や外資持ち株旅行社が大量に出現することはない、との考えを示している。

国旅総社の張北英・常務副総経理は「世界の旅行社の平均利潤は1%である。現在、中国の旅行社の利潤は2〜3%で、旅行社は中国で暴利を貪る業種ではない。旅行社の利益は薄いため、多くの資本が進出することはない」と話している。

これに対し、中旅総社の李恵陽・副総経理は「旅行社が暴利を貪る業種ではない、というのは主因ではない。国家旅遊局と商務部の規定は、現地法人の登記資本は400万元(人民元)を下回ってはならず、投資側に年間営業総額は5億ドルを上回らなければならないと求めている。持ち株旅行社の場合は4000万ドル以上だ。この参入規定に基づけば、現地法人として中国に進出できる外資は数えられるほどで、世界上位20にランクされていれば可能な範囲となる」と分析する。