2004 No.03
(0112 -0119)

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人材――経済、社会の発展のキーワード

国家人事部行政科学研究所副所長 呉徳貴

新中国成立後初めての全国人材会議が2003年12月下旬に北京で開かれた。これは国が新しい時期において人材戦略を非常に重視し、しだいに将来に影響を及ぼすものである、と見られている。

顕在化した人材問題

昨今の知識経済の台頭やややゆとりのある社会を築き上げるという目標の確立と中国のWTO加盟などの背景のもとで、人材問題は差し迫ったものとなった。

21世紀は知識経済の世紀である。人類社会は農業経済から工業経済へ、さらに知識経済へと発展することは歴史的必然である。農業経済は労働力と土地が緊密に結びついた経済であり、工業経済は資本と設備が緊密に結びついた経済であり、知識経済は知識と人材が緊密に結びついた経済である。知識経済の本質は人材の経済である。未来学者の予測では、世界各国は21世紀の30年代以降相次いで知識経済の社会に入るということである。中国では、知識経済の兆しがすでに現れており、人材に対する必要が膨れ上がり始めている。

2020年までに中国をややゆとりのある社会を全面的に築き上げるという目標が中国共産党第16期全国代表大会で打ち出され、その実現には、党と政府の人材、企業の経営と管理の人材、技術面の人材を主体とし、規模が大きく、人材の構造が合理的で、すばらしい資質の人材陣を必要としている。

中国のWTO加盟は、中国がいっそう幅広く、深く国際間の競争と協力に参与し、中国経済と世界経済がますます依存しあい、中国の国際交流が日ましに増えることを意味している。このため、人材の国際交流が盛んになり、人材面での競争では「国際競争の国内化、国内競争の国際化」の特徴を呈することになる。いかに人材を育成するか、どうのように人材を引きとめるか、どういうふうに人材を導入、活用するかは事業の盛衰成敗にかかわる重要な戦略問題となっている。

ハイレベルの人材の不足、人材の流出が深刻

中国の人材の現状にはまだ多くの矛盾と問題が存在している。例えば、人材に対する必要は倍増したが、人材の数が不足していること、中・高級人材に対する必要は増えたが、人材の全体としての資質が低いこと、人材の種類に対する必要は増えているので、人材構造の調整が待たれていることである。そのうち、経済社会の発展を抑制するボトルネックとなっているハイレベルの人材の不足はとりわけ重要視されるべきである。

国内であろうと、国外であろうと、ハイレベルの人材が最も不足している資源である。ある意味から言えば、最も激しい人材争奪戦はハイレベルの人材をめぐって展開されている。当面と今後の一時期において、中国は5種類の人材が深刻に不足すると見られている。つまり、ハイレベルの人材、ハイ・テク関連の人材、金融・保険業のハイレベルの人材、ハイレベル経営管理人材、資質の高い行政管理人材のころである。

中国は6000万人以上の人材を擁しているが、ハイレベルの人材は非常に少なく、しかも高齢化が深刻である。ハイレベルの技術人材の中の政府特別手当が給付されている人たちを例に挙げると、2001年末現在、全国には14万3000人いるが、そのうちの11万人は定年退職の年齢に達した人たちである。著名な専門家の定年退職年齢を引き上げる措置をとってはいるが、在職専門家の人数は5万人足らずで少なく、経済と社会が急速に発展している中国の13億もの人口と比べると話にならない。

科学研究の人材だけでなく、ハイレベルの管理人材も非常に不足している。現在、上海だけで企業経営管理分野のハイレベル人材を約1万人必要としているが、上海の商業企業の経営者1000人を対象に行った調査によれば、90%以上は外国語ができず、75%はパソコンを使えないという近代のビジネス・ウォーに適応しがたい状況にある。

人材流出の深刻化により、中国にはその他の発展途上国と同じように大きな危機が潜在している。専門家の話では、人材流動の合理的な比率は2対1以内に抑えるべきであるが、中国は現在4対1にも上っている。多くの一流大学を卒業したエリートと一流科学研究院(所)の主力人材は国外に出ている。中国の1025件のハイテク研究プロジェクトの責任者の一部はすでに国外に出ており、そのうち、大学院修了の学歴をもつものが半分以上を占めていることが調査でわかった。中国科学院物理研究所の在職人数はここ数年700余人から400余人に減り、流出先はほとんどアメリカである。WTO加盟後の人材をめぐっての競争の激化につれて、人材資源の占有におけるマタイ効果(マタイ効果とは、持てる者はますます富み、持たざる者はますます奪われるという意味)はさらに深刻化する可能性がある。

人材育成の環境を最適化

人材育成は高い資質のある人材陣を形成するための前提である。物的資本の投入と比べて、中国の人的資本の投入は非常に不足し、人材育成、とりわけハイレベルの人材の育成はまだまだ不足している。関係資料によると、アメリカの人的資本の投入と物的資本の投入はそれぞれGDPの5.4%と17%を占めており、後者は前者の3.15倍である。韓国の人的資本の投入と物的資本の投入はそれぞれGDP総額の2.5%と30%を占めており、後者は前者の12倍である。人的資本の投入が極めて不足し、人材育成への取り組みの度合いが小さいため、人材総量は経済と社会の発展に適合せず、人材全体の資質は低いものとなっている。今後、国は絶えず人的資本の投入を増やすべきである。

人材育成のほか、人材を引き付けることと活用することも重要である。現行の人材メカニズムと人材政策にはまだ新しい情勢に適応していないものがある。

体制の問題はいつまでも第一義的問題となっている。十数年来、中国の市場経済体制の確立にともなって、人事・人材管理体制の改革も積極的に進められてきた。しかし、人事・人材管理では、政府と企業・事業体、政府とその他の社会組織との関係にはまだ問題が存在しており、新体制づくりはまだ非常に困難な課題である。人材資源の開発を妨げる体制を撤廃し、生気と活力をもった、さまざまな人材の育成や流動にプラスとなり、社会主義市場経済にふさわしい人事・人材管理の新体制をつくることは、人材を引き付けることと活用することにとって非常に重要である。したがって、新しい人材体制は、次の六つの特徴を持つべきである。@すっきりした諸関係 A明晰な職責 B正確な分類 C弾力的なメカニズム D健全な制度 E一体化した政策。

また、人材政策の調整も必要である。近年、各地では人材を争奪するため、一連の政策を打ち出している。北京市は勤務・居住証明書制度をとり、帰国留学生のために「グリーンルート」を開設し、香港・澳門や国外のハイレベル人材が北京へ来て起業することを奨励する措置をとっている。これらの措置には著しい効果が見られる。しかし、全国から見るならば、人材をめぐっての政策には改善すべきところがまだたくさんある。

また、人材にかかわる法体制と社会環境の改善も待たれている。

中国では、人材資源の浪費が非常に深刻である。それは、登用を重視するが育成を軽視していること、知識教育を重視するが能力の向上を軽視していること、人材の導入を重視するが有能者の素晴らしいアイデアの採用を軽視していること、学歴や年齢を重視するが能力を軽視していること、帰国留学生を重視するが留学経験のない人材を軽視していること、国有部門を重視するが非国有部門を軽視していることなどに現れている。