2004 No.03
(0112 -0116)

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中国、憲法を再改正

李 子

中国はまもなく建国後に公布した第4部の憲法に対し4回目の改正を行うことになったが、その提案がすでに全国人民代表大会(全人代)に提出され、全人代常務委は憲法改正案を議案として、3月に開かれる第10期全人代第2回会議に提出して審議を要請する。今回の部分的改正は情勢の発展にも適応していれば、憲法の安定性も保っていると専門家たちは見ている。

2003年12月、全人代常務委は会議を開いて、憲法の一部内容改正の提案に関する中国共産党中央の説明を聴取した。これを受けて、全人代常務委は法的手続きに従って憲法改正案の議案を提出し、3月に開かれる第10期全人代第2回会議に審議を要請する。これは同憲法が1982年に公布、施行されてからの4回目の改正であり、14項の内容にかかわっている。

最も注目に値する点

中国政法大学学長の徐顕明教授は、今回の改正は「三つの代表」という重要な思想、政治文明、人権などの問題を憲法に書き入れるため、国家の価値観が変わると語った。

同教授はさらにこう語った。「三つの代表」という重要な思想が憲法に出現してから、政権担当に対する要求が具体的になった。これは重要な変化である。「三つの代表」を終始実行しさえすれば、政権党の政権担当の地位を強固にすることができるが、三つの代表の一つでも失えば、政権担当の地位を喪失する可能性がある。そのため、これは政権党に提出した要求が非常に具体的なものになり、人民大衆が政権党を判断する基準も非常に具体的になった。

同教授によれば、「人権」の概念を憲法に書き入れたことは、人権が国家の価値観となったことを示している。このような変化は歴史的なものである。それは国家機構の活動の一種の基本的または最初の準則となる。これによって、人々の観念、関係ある国家制度、立法を含む指導思想がともに変化する。政権党の政権担当の目的もいっそう明確になる。

同教授は、今回の改正がそれ以前の3回の改正との最大の違いは、それ以前の3回の改正が上から下への改正であったが、今回は下から上への改正であることにある。このような方式は社会各方面の声をいっそう広く聴取することができ、民意の広範性の面でその優位性がいっそう体現されると指摘した。

中国人民大学憲法学教授の許崇徳氏はこう見る。今回の憲法改正の最も注目に値する方面は五つある。一は「三つの代表」という重要な思想がマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論の継承と発展である。そのため、「三つの代表」という重要な思想を憲法に書き入れて、国家の発展を長期にわたって堅持する指導思想とする必要がある。二は中国共産党第16回全国代表大会で行われた報告が、社会変革の中に出現した新しい社会階層がいずれも中国の特色ある社会主義事業の建設者である。この精神を憲法に書き入れたことは、われわれの政権がいっそう強固になり、人民民主主義独裁の同盟の範囲がいっそう広くなり、拡大されたことを示している。三は物質文明、精神文明、政治文明という三つの文明を憲法に書き入れたことが、三つの文明の協調的発展の全面的推進がわが国の重要な任務であることを示している。四は私有財産権の問題では、今回の改正が個人の権利、私有財産権、個人所有権の角度から規定して、私人所有の財産を保護している。五は「人権の概念」を憲法に書き入れたが、これは以前になかったことである。

憲法はなぜ改正するのか

中国共産党中央政治局委員王兆国氏は中国共産党中央の憲法改正提案について次のように説明した。今回の憲法改正の全般的な原則は、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論、「三つの代表」という重要な思想を導きとし、党の第16回全国代表大会の精神を貫徹し、第13期中央委第4回全体会議以来の基本的経験を体現し、第16回全国代表大会の確定した重大な理論、観点と重大な方針、政策を憲法に書き入れることである。この原則によれば、今回の改正は大幅な改正ではなくて、部分的改正であり、実践によって熟していることが証明され、憲法で規範化する必要があり、改めなければならないものを改正するが、改めてもよく改めなくてもよいもの、憲法の解釈を通じて明確にすることのできるものは改めない。

王兆国氏は次のように言葉をつづけた。憲法改正は国の政治活動における大きな出来事であり、党中央は非常に重視している。2003年3月27日、党中央政治局常務委は会議を開いて憲法改正活動を検討し、配置を行い、今回の改正の全般的な原則を確定するとともに、党中央政治局常務委の指導下で作業を進める中央憲法改正グループを発足させた。提案は党中央政治局常務委の直接指導の下で、民主を十分に発揚し、各方面の意見を広く聴取し、半年余りの作業を経て形成されたものである。

全人代常務委の委員たちはこう見る。20年来、現行憲法は安定を保つとともに、実践の中でたえず完全なものになり、中国が改革・開放と社会主義現代化建設を進め、社会主義民主政治を発展させ、法による国家管理と社会主義法治国建設を推進し、最も広範な人民の根本的利益を擁護する上で、重要な役割を発揮してきた。中国共産党第15回全国代表大会以来、全党と全国人民の団結と奮闘を経て、中国の改革・開放と社会主義現代化建設は歴史的進展をとげ、非常に貴重な経験を積んだ。新しい情勢の下で、これらの経験を国家の根本となる重要な法律の形で定着させるのは、非常に必要である。

委員たちはまたこう考える。提案は党中央政治局常務委の直接指導の下で、民主を十分に発揚し、真剣な検討をくり返し、各方面の意見を広く聴取し、半年余りの作業を経て形成されたもので、それには全党と全国人民の集団の知恵が凝集しており、党の主張と人民の意志の統一を体現している。提案に基づいて現行憲法を改正するのは、党の指導の強化と改善に役立ち、社会主義の優越性の発揚に役立ち、広範な人民大衆の積極性を引き出すのに役立ち、国家統一、民族団結、社会安定の擁護に役立ち、経済発展と社会の全面的進歩の促進に役立つ。

憲法改正の過程と論争

憲法改正についての意見を求める作業は2003年3月から繰り広げられた。中国共産党中央弁公庁は3月以前に専従者を指定して憲法改正の検討に着手するとともに、4月に有名な専門家、学者を招集して憲法改正問題について座談会を開いた。中国共産党中央はこのために第4次憲法改正指導グループを発足させた。

全人代法律工作委員会などの部門も多くの人を集めて憲法改正の前期準備を進めた。国務院シンクタンクの一つとしての中国社会科学院も関係専門家に憲法改正問題について研究レポートを提出させた。このほか、中国政法大学、中国人民大学などの大学や研究機構も続々と憲法改正問題を検討した。

2003年6月6日、呉邦国氏はあるハイクラス専門家討論会を主宰して、呉敬l、江平、応松年、許崇徳氏らの経済学者、法学者の憲法改正についての意見を聴取した。

8月26日と28日、党中央は中南海でまたも党外人士座談会を開いたが、その主な目的は「社会主義市場経済体制整備の若干の問題に関する中国共産党中央の決定(意見を求める原稿)」と「憲法の部分的内容改正に関する中国共産党中央の提案(意見を求める原稿)」に対する民主諸党派中央と全国工商業連合会の指導者と無党派人士の意見と提案を聴取することにあった。

第16期中央委第3回全体会議のあと、憲法改正活動は全人代に移った。

意見を求める過程で、参会した専門家は憲法改正の具体的内容に対し論争があったばかりでなく、憲法を改正するかどうか、どの程度改正するかについても論争があった。

一部の専門家は改正しないことを主張した。その理由は次のようなものであった。憲法は安定を保つべきで、ひんぱんに改正すべきではない。わが国の憲法はひんぱんに改正されており、1982年の憲法が採択されたあとだけでも3回改正された。「これは西側諸国と比べて多い方であるが、わが国は自らの国情があるため、二者は比較のしようがない」と許崇徳氏は語った。

ほかの一部分の専門家は1975年、1978年、1982年のように、基本的に現行の憲法を否定して制定しなおすような大幅な改正を主張した。現行憲法がすでに社会の実際とかけ離れているため、大幅な改正を行わざるを得ないというのがその理由である。

最後の一部分は許崇徳氏が主張したような憲法の一部分を改正するという小幅な改正である。理由はこうである。憲法の安定性を配慮しなければならないため、一部分だけ改正すればよい。しかし、改正しないわけにはいかない。というのは、わが国の社会が急速に発展しており、基本法としての憲法の多くのところが社会の現実とかけ離れているため、改正しなければならない。

改正の内容についても、専門家の間に違った見方がある。私有財産を憲法に書き入れることに対する見方が違っているのがその一例である。一部分の政治協商委員は私有財産を憲法に書き入れることを強くアピールしたが、中国社会科学院の喩権域委員はこの主張に強く反対し、「私有財産は神聖にして侵すべからざるものである」という概念はすでに時代によって淘汰されたが、それは絶対に侵すべからざるものではないと強調し、次のように語った。「日本、イタリア、旧西ドイツ、インドなど十数カ国の憲法を調べてみたが、これら諸国の憲法の財産権に対する規定に共通の特徴が三つある。一は私有財産を保護するが、私有財産は『神聖にして侵すべからざる』ものではない、つまり財産権を絶対化していないことである。二は憲法が私有財産にいろいろの制限を設け、私有財産が公共の利益に従うかまたはそれを損なわないように要求していることである。三は必要な場合、政府が法によって私有財産を有償徴集できることである。」

他の一部分の代表は合法的財産を保護する角度からそれぞれ提案を行った。中華全国弁護士協会副会長の楊偉程代表は「現段階では、確かにあれこれの問題がある。たとえば資本の国外流出または国外で一回りしてから外資として舞い戻ってくる。このため、私有財産をどう規定するかは、法による保護の前提である」と指摘した。

中国社会科学院法学研究所研究員の李歩雲教授によれば、中央の確定した「改めてもよく改めなくてもよいものは改めず、改めなければならない重大な問題は改める」というどっちかというと穏当なやり方は非常に正しい。実際に言って、改めるものが多すぎても困るし、いったいどう改めるか意見がなかなか一致しない。一部の問題がかなり長く検討されたにもかかわらず、思想を統一するのは容易ではなく、過程が必要である。

同教授はこう語った。中国では、政権党は大会を開くたびに、一般には憲法を改正する。これに違った見方をもつ人がいる。私は二点考慮する必要があると思う。一つは中国に自国の特色があり、民主に過程があることである。もう一つは西側の政党も自らの綱領を憲法に書き入れることがあり、このようなやり方は一種の通例となっていることである。問題は法律とくに憲法を改正する時、民主立法の原則を貫徹することである。憲法改正は時代とともに前進を体現している。

中国人民大学憲法学教授の許崇徳氏は、憲法の再改正は憲法をいっそう現実に近づかせ、時代とともに前進させるとし、中国共産党第16回全国代表大会の最大な議題は「いくらかゆとりのある社会を全面的に建設し、中国の特色ある社会主義事業の新しい局面を切り開く」ことであり、今回の改正は第16回全国代表大会の提出した理論イノベーション、戦略的な根本的方針・政策を憲法の中に表すことであると語り、今回の改正は一部分の内容に対する改正であり、憲法の全般的な枠組みと基本的内容は変わらない。今回の改正は憲法を情勢の発展にも適応させれば、憲法の安定性も保持するものであると指摘した。

全人代常務委委員、全人代法律委主任委員、法律専門家の楊景宇氏はこう見る。憲法は国家の根本法であり、憲法の安定を守ることは国家の根本制度の安定を守り、国家の長期の安定を守ることである。憲法の安定は国家安定の基礎である。そのため、憲法改正も格別に厳粛、慎重に行い、他の法律と異なる特別な手続きに基づいて行う必要がある。憲法は「憲法の改正は、全国人民代表大会常務委員会または五分の一以上の全国人民代表大会代表が提議し、全国人民代表大会が全代表の三分の二以上の多数で可決する」と規定している。憲法改正はどのような原則にのっとるか。1987年の党の第13回大会以後、党中央と全人代常務委の指導者は現行憲法の最初の改正を検討した時、二つの原則を確定した。一は改革が法律に従い、法律が改革に奉仕しなければならないことであり、二は憲法改正は改正しなければ改革を妨げる条項だけを改正し、改めてもよく改めなくてもよいものは改めず、一部の問題は憲法解釈の方法で解決することである。こうすれば、憲法の安定に役立ち、国家の安定に役立つ。

楊景宇氏の説明によれば、その後の憲法の一部分改正はいずれも同じ原則にのっとり、いずれも改正案の方式を採用した。三つの憲法改正案は全部で17カ所改正したが、そのうちの15カ所は憲法の序言と総綱に集中し、主な内容は次の九つである。一は国家政治と社会生活におけるケ小平理論の指導的地位を確立したこと、二は中国が長期にわたり社会主義初級段階に置かれると明確にしたこと、三は改革・開放の基本的方針を肯定して、憲法にある社会主義初級段階における党の基本路線の表現をいっそう完全にしたこと、四は中国の社会主義初級段階の基本的経済制度(公有制を主体とし、多種所有制経済がともに発展する)と分配制度(労働に基づく分配を主とし、多種の分配制度が共存する)を整備したこと、五は農村経済組織の家庭請負経営を基礎とし、統一と分散を結合する二重経営体制の実行を確定したこと、六は非公有制経済の法的地位を確定したこと、七はわが国における社会主義市場経済実行を確定したこと、八は法による国家管理と社会主義法治国建設の基本的方略を確定したこと、九は中国共産党の指導する多党合作と政治協商制度の長期共存と発展を確定したことである。

憲法の行ったこれらの重要な改正は、いずれも国家の発展と長期安定にかかわる重大な問題であり、わが国の社会主義政治制度と社会主義経済制度の自己整備と発展も反映していれば、社会主義とはなにか、社会主義をどう建設するかという根本問題に対する全党と全国人民の認識の深化も反映しており、これによって憲法をいっそう完全なものになり、改革・開放と社会主義現代化建設の発展の要求にいっそう適応し、時代の特徴を体現し、国情に合致し、時代とともに前進する憲法にし、そのために憲法の安定に影響するようなことがなく、憲法の権威と尊厳を損なうようなこともなかった。2002年11月に開かれた党の第16回大会は、新しい世紀と新しい段階にわが党とわが国が直面する新しい情勢と任務を全面的に分析し、今世紀最初の20年の奮闘目標と重大な方針政策をはっきりと打ち出した。そのため、憲法の部分的内容改正の提案を行うのは、非常に時宜にかなっており、非常に必要であり、全党と全国人民の共同の願いを反映し、重大かつ深遠な意義がある。

中国共産党中央の憲法改正についての14項の具体的内容

一、憲法前文第7段の「中国の新民主主義革命の勝利と社会主義事業の成果は、中国共産党が中国の各民族人民を指導し、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想の導きの下で、真理を堅持し、誤りを是正し、数々の艱難、険阻に打ち勝って獲得したものである。わが国は長期にわたり社会主義の初級段階に置かれる。国家の根本的任務は、中国の特色ある社会主義を建設する道に沿い、力を集中して社会主義現代化建設を進めることである。中国の各民族人民は引き続き中国共産党の指導の下、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論の導きの下で、人民民主主義独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革・開放を堅持し、社会主義の諸制度を絶えず改善し、社会主義市場経済を発展させ、社会主義民主を発展させ、社会主義法制を健全にし、自力更正を旨とし、刻苦奮闘し、工業、農業、国防、科学技術の現代化をちくじ実現し、わが国を富強、民主、文明の社会主義国に築き上げる」を「中国の新民主主義革命の勝利と社会主義事業の成果は、中国共産党が中国の各民族人民を指導し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想の導きの下で、真理を堅持し、誤りを是正し、数々の艱難、険阻に打ち勝って獲得したものである。わが国は長期にわたり社会主義の初級段階に置かれる。国家の根本的任務は、中国の特色ある社会主義を建設する道に沿い、力を集中して社会主義現代化建設を進めることである。中国の各民族人民は引き続き中国共産党の指導の下、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論および『三つの代表』という重要な思想の導きの下で、人民民主主義独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革・開放を堅持し、社会主義の諸制度を絶えず改善し、社会主義市場経済を発展させ、社会主義民主を発展させ、社会主義法制を健全にし、自力更生を旨とし、刻苦奮闘して、工業、農業、国防、科学技術の現代化をちくじ実現し、物質文明、政治文明、精神文明の協調的発展を推進し、わが国を富強、民主、文明の社会主義国に築き上げる」に改める。

二、憲法前文第10段の「長期にわたる革命と建設の過程で、中国共産党が指導し、民主諸党派と各人民団体が参加し、社会主義の勤労者、社会主義を擁護する愛国者、祖国の統一を擁護する愛国者のすべてを含む広範な愛国統一戦線がすでに結成されている。この統一戦線は引き続き強固になり、発展する」を「長期にわたる革命と建設の過程で、中国共産党が指導し、民主諸党派と各人民団体が参加し、社会主義の勤労者、社会主義事業の建設者、社会主義を擁護する愛国者、祖国の統一を擁護する愛国者のすべてを含む広範な愛国統一戦線がすでに結成されている。この統一戦線は引き続き強固になり、発展する」に改める。

三、憲法第10条第3項の「国家は、公共利益の必要のため、法律の規定によって、土地を収用することができる」を「国家は、公共利益の必要のため、法律の規定によって、土地を徴集するかあるいは収用することができるとともに、補償を与える」に改める。

四、憲法第11条第2項の「国家は、個人経済、私営経済の合法的な権利および利益を保護する。国家は個人経済、私営経済を指導、監督、管理する」を「国家は、個人経済、私営経済など非公有制経済の合法的な権利および利益を保護する。国家は非公有制経済の発展を奨励、支持、指導するとともに、非公有制経済に対し法によって監督、管理する」に改める。

五、憲法第13条の「国家は、公民の合法的な所得、貯蓄、家屋およびその他の合法的な財産の所有権を保護する」「国家は、法律の規定によって、公民の私有財産の相続権を保護する」を「公民の合法的な私有財産は侵犯を受けない」「国家は、法律の規定によって、公民の私有財産と相続権を保護する」「国家は、公共利益の必要のため、法律の規定によって、公民の私有財産を徴集するかあるいは収用することができるとともに、補償を与える」に改める。

六、憲法第14条に第4項として、「国家は、経済発展レベルに適応する社会保障制度を確立し、健全にする」を追加する。

七、憲法第33条に第3項として、「国家は、人権を尊重、保護する」を追加する。第3項は相応に第4項に改める。

八、憲法第59条第1項の「全国人民代表大会は、省、自治区、直轄市および軍隊の選出する代表によって構成される。各少数民族は、それぞれ適当数の代表をもつものとする」を「全国人民代表大会は、省、自治区、直轄市、特別行政区および軍隊の選出する代表によって構成される。各少数民族は、それぞれ適当数の代表をもつものとする」に改める。

九、憲法第67条の全国人民代表大会常務委員会の職権第20項の「(二十)全国または個々の省、自治区、直轄市の戒厳を決定する」を「(二十)全国または個々の省、自治区、直轄市が非常事態に入ることを決定する」に改める。

十、憲法第80条の「中華人民共和国主席は、全国人民代表大会の決定および全国人民代表大会常務委員会の決定にもとづいて、法律を公布し、国務院の総理、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長、秘書長を任免し、国家の勲章と栄誉称号を授与し、特赦令を発布し、戒厳令を発布し、戦争状態を宣言し、動員令を発布する」を「中華人民共和国主席は、全国人民代表大会の決定および全国人民代表大会常務委員会の決定にもとづいて、法律を公布し、国務院の総理、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長、秘書長を任免し、国家の勲章と栄誉称号を授与し、特赦令を発布し、非常事態に入ることを宣言し、戦争状態を宣言し、動員令を発布する」に改める。

十一、憲法第81条の「中華人民共和国主席は、中華人民共和国を代表して外国使節を接受する。また、全国人民代表大会常務委員会の決定にもとづいて、外国に駐在する全権代表を派遣または召還し、外国と締結した条約および重要な協定を批准または廃棄する」を「中華人民共和国主席は、中華人民共和国を代表して国事活動を行い、外国使節を接受する。また、全国人民代表大会常務委員会の決定にもとづいて、外国に駐在する全権代表を派遣または召還し、外国と締結した条約および重要な協定を批准または廃棄する」に改める。

十二、憲法第89条の国務院の職権第16項の「(十六)省、自治区、直轄市範囲内の一部地区の戒厳を決定する」を「(十六)法律の規定によって省、自治区、直轄市範囲内の一部地区が非常事態に入ることを決定する」に改める。

十三、憲法第98条の「省、直轄市、県、市、市管轄区の人民代表大会の任期は、毎期5年とする。郷、民族郷、鎮の人民代表大会の任期は、毎期3年とする」を「地方各クラス人民代表大会の任期は、毎期5年とする」に改める。

十四、憲法第4章の名称の「国旗、国章、首都」を「国旗、国歌、国章、首都」に改める。第136条に第2項として、「中華人民共和国の国歌は『義勇軍進行曲』である」を追加する。

中国憲法の発展の経過

 1949年の中華人民共和国成立後の5年内に、新中国は憲法を制定しなかった。当時の客観的条件により、中国に総選挙を実行し、全国人民代表大会を開催して憲法を制定する条件が備わっていなかったため、過渡的措置をとり、「中国人民政治協商会議共同綱領」を全国人民の共同の政治的基礎とすることが決定づけられた。事実上、共同綱領は臨時憲法としての役割を果たした。1954年、中国最初の憲法が制定された。それは「共同綱領」を基礎とし、それをさらに発展させたものである。憲法は中国共産党が打ち出した「過渡期の党の総路線」を国の総任務とし、党が確立した基本制度、制定した基本方針と重要な政策を憲法化、条文化して、その後の民主建設と制度建設のために基礎を打ち固めた。

1975年1月13日、第4期全人代で新中国成立後の第二部の憲法が採択された。同憲法は「四つの存在」、「階級闘争は毎年語り、毎月語り、毎日語らなければならない」という「基本路線」および「プロレタリアート独裁下の継続革命の学説」を理論的指導とする、特殊な時期に、制定された不完全の憲法である。

1978年3月5日、第5期全人代第1回会議で第三部の憲法が採択された。同憲法は1975年の憲法と比べて大きく変わっているが、多くの欠点が存在している。同憲法は「文化大革命」の成果を肯定し、「プロレタリアート独裁下の継続革命」を指導思想とし、依然として公民は「大いに意見を述べ、大いに論議し、大いに弁論し、大字報を張り出す」権利があるなどの誤った見方を固執していた。

1982年12月4日、現行の憲法が第5期全人代第5回会議で正式に採択された。その根本的な特徴は、中国の根本制度と根本任務を規定し、四つの基本原則と改革・開放の基本方針を確定したことにある。憲法は、全国の各民族人民とあらゆる組織は、憲法を根本的活動準則としなければならず、いかなる組織と個人も憲法と法律を超える特権を持ってはならないと規定している。同憲法は1954年憲法の長所を回復させ、それを発展させ、1975年憲法と1978年憲法の誤りと混乱を捨て、新しい情勢の下で過去をしめくくり、未来を切り開いた。

現行憲法に対する三回の改正

 現行憲法は1982年12月、第5期全人代第5回会議で採択されたものである。情勢発展の必要から、1988年4月の第7期全人代第1回会議、1993年3月の第8期全人代第1回会議、1999年3月の第9期全人代第2回会議で前後して三回も憲法の部分的条文が17カ所も改正された。

1988年 「私営経済」の名分を明らかにする

その年の春、第7期全人代第1回会議で二カ所の内容を改正した憲法改正案が採択された。

そのうち、第十一条に「国は私営経済が法律の規定した範囲内に存在し、発展するのを認める。私営経済は社会主義公有制経済の補充である。国は私営経済の合法的権利および利益を保護し、私営経済に対し指導、監督、管理を行う」という内容を増加した。

この改正で、社会主義所有制構成における私営経済の地位が明確に規定され、その積極的な役割が肯定された。この改正は、そのいちだんの健全な発展を促進することに対し疑いもなく大きな影響を及ぼすものである。

1993年 「富強」のために奮闘する

第二部の憲法改正案は第8期全人代第1回会議で採択された。9カ所もの改正の中で、注意に値する点は国家の根本的任務についての表現が変ったことである。

 中国が社会主義の初級階段に置かれていることが明確に書き入れられている。この大きな背景のもとで、憲法は、わが国は中国の特色のある社会主義を建設する理論の導きの下で、力を集中して社会主義現代化建設を進めると規定している。

 国の奮闘目標は、「高度の文明、高度の民主の社会主義国」を建設することから「富強、民主、文明の社会主義国」を建設することに変わった。二字の増加、二語の順位の変化は見たところ大きく変わってはいないが、深い意味が含まれている。

今回の改正では、もう一つの大きな改正がなおさら人目を引いた。それは「市場経済」を書き入れたことと「計画経済」がなくなったことである。

 1999年 「法治」のためにさかんに世論づくりをする

第9期全人代第2回会議で6カ所改正した第三部の憲法改正案が採択された。憲法に増加した四字は、各界で強い反響を呼んだ。

この四字は「依法治国」(法による国家管理)である。改正後の憲法は「中華人民共和国は法による国家管理を実行し、社会主義法治国を建設する」と明確に規定している。「依法治国」が憲法に書き入れられ、「法治」が国家の意志となったことは画期的な意義がある。