2004 No.04
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>> 経済

 

 

急を告げるエネルギー

―――昨年の冬以来、電力や石炭、石油が相次いで大規模、持続的な不足状態に陥っている。政府は将来のエネルギー安全確保のため現在、現行のエネルギー体制と戦略の調整を行っており、外資のエネルギー分野への進出が拡大する可能性がある。

馮建華

政府は1月1日、石油製品に対する輸入割当額許可証の管理を撤廃した。その半年前に政府は、国内航空石油製品価格の変動に対応するため、国内航空券に含まれる燃料石油料金を3ポイント引き上げた。こうした状況から、誰しもが「石油製品の供給は不足している」と考えた。

確かに、去年10月以降、石油製品不足にある省は経済の発達した華東、華南地区から北部地区へと広がり始めている。国内でエネルギー消費最大の広東省。全省で約5000あるガソリンスタンドのうち1000カ所余りで供給が確保できず、多くが次々と休業、スタンドには多くの車が長い列をつくった。

経済発展の命脈である石油は、重工業が経済成長を主導する今の中国にとって非常に重要な地位を占める。

2003年の石油輸入量は前年に比べ2000万トン増えて1億トンとなり、米国に次いで世界第2の石油の輸入・消費国となった。

大規模な石油不足は政府の強い関心を呼んだ。だが、不足しているのは石油ばかりでなく、電力と石炭もそうであり、なかでも電力不足が最も深刻だ。

昨年の夏(7−9月)、まれに見る高温が続いたことから電気使用量が急増し、31の省・自治区・直轄市のうち19で供給が制限された。冬を迎えても電力不足は想像していたまでには軽減されず、むしろ逆により深刻化し、供給制限はほとんど全国各地に拡大した。

150万都市の湖南省の省都・長沙市。11月30日より電力供給は1週間に連続3日に制限され、一部市民は暗闇の中で24時間過ごしている。電力負荷を最大限低減させるため、浙江省の省都・杭州市は道路信号の点灯を止めた。

国家電力監視監督委員会は「電力需給は2002年に一部で逼迫していたものの、総体的にはバランスを保っていた。2003年に入って需給は一段と逼迫し始め、一部の地区では使用のピーク時に不足が深刻化した。今年と来年はさらに厳しくなるが、2006年以降には徐々に緩和される」と予測する。

中国は石炭火力発電を主要エネルギーとしているため、石炭不足が電力不足にかなり影響を与えている。華北地区10の発電所、華東地区12の発電所では石炭備蓄が安全警戒ラインを下回っており、2−3日分の備蓄しかないところもある。昨年11月、全国最大の石炭産出地である山西、河南、陝西などの各省は石炭価格を1トン当たり15元引き上げた。それでも、多くの発電所が資金はあっても手に入らない状態にある。

石油と電力、石炭が同時に不足していることに、エネルギー危機が起きるのでは、との懸念が募っている。

市場関係者は「エネルギー危機にあると現段階で判断するのは時期尚早だ」と指摘する。一方、新政権は長期的な観点から、エネルギー安全を強化するための適切な措置を講じ始めた。国務院発展研究センター産業経済研究部の劉世錦部長は「現在の兆しから見れば、突如襲ったエネルギーの“危機”は恐らく、新政権が新たな長期エネルギー戦略を構築する契機となるだろう」と話している。

“禍”が引き起こした電力・石炭価格競争

今回のエネルギー問題は電力不足が発端となり、それが石炭と石油不足へと連鎖反応を起こした。中国の現在のエネルギー構造では、石炭火力発電が大半を占めている。電力が逼迫したのは設備容量不足のほか、かなりの程度、石炭供給チェーンが人為的に断ち切られたためだと言える。こうした問題が生じた主因は電力、石炭価格が合理性を欠いていたからだ。

国内の石炭価格は計画内と計画外の2ブロックに区分されている。電力用石炭については長年にわたり国の指導価格が適用されていたため、電力会社には市場より約30%安い値段で売らなければならない。電力用が石炭総生産量に占める比率は6割に達しており、低価格は長い間、独立採算の石炭企業にとって重い負担となっていた。

2002年に指導価格は廃止された。その年、石炭企業は引き上げで前年同期より80%増の利益を計上し、多くの企業が黒字に転じ始めた。ただ、石炭価格が引き上げられた後も電力価格は依然、国が設定しているため、電力部門が石炭価格の上昇分を消化するのは難しい。

電力と石炭価格との間の矛盾は、2002年末に開かれた「2003年度全国石炭発注会」で顕在化した。当時、電力部門は価格を引き上げていない企業と全体の僅か40%、約1億トンの購入契約を結んだだけで、不足分は1億5000万トンに達した。こうした膨大な不足が電力逼迫をもたらした直接原因の1つだ。

電力不足が深刻化したため、一部の企業は生産を維持する必要からガソリン、重油などで自家発電を開始。それが石油製品の市場での急速は逼迫をもたらし、今後に備えて買いだめする企業も現れた。

石油製品価格制度の欠陥も多くの投機行為を招いた。政府は2001年以降、国内石油製品価格の小幅な変動を許可することにしたものの、依然として大きな制限を受けているため、こうした体制の下で形成された価格では国内石油製品の需給状況、国際市場価格の変化に速やかに、また正確に反映するのは難しい。そのため、石油製品の卸売価格が国際市場の変化を受けて値上がりしても、政府は市場の安定を維持するためむしろ小売価格を相応に調整することはしなかった。こうしたことからこの数年、一部のガソリンスタンドで利益が大幅に減少してきた。

ある石油関連証券アナリストは「価格上昇が予測されれば、市場には必ず生産者の売り惜しみや流通段階での出し惜しみ、消費者の買いだめや買いあさりといった行動が出てくる。こうした中で真の需給状況を判断するのは難しい。政府もマクロ調整が非常に難しくなる」と強調する。

ある専門家は「今回の大規模範囲のエネルギー逼迫は、エネルギー生産或いは供給の総体的水準が低いことが主因ではない。現在のエネルギー体制の耐リスク能力が過度に脆弱であることが主因だ。慣性作用が働いて、現行のエネルギー政策は依然として計画経済の色彩が濃い。今回のエネルギー逼迫は意外なことではなく、情理に合ったものだ」と指摘する。

エネルギー新政策を実施

広範囲なエネルギー不足に対処するため政府は即刻、世界を視野に入れた新しいエネルギー政策を実施し始めた。

政府は既にこの4年来抑えてきた電力関連の投資比率を引き上げて現在、大規模な電力資源と電力網の整備を急ピッチで進めると共に、大型石炭基地の建設を強化しているところだ。同時に、電力価格と石炭価格の矛盾を解決し、市場メカニズムの電力価格形成への役割を発揮させ、電力価格の管理方法を絶えず改善していく方針を示した。

石油はエネルギー安全問題で最も重要であるため、政府は石油の安全問題により多くの関心を寄せている。国内石油市場の安定については、価格による動揺を和らげるため石油戦略の準備作業を急ピッチで進めているほか、エネルギー局を再編すると共に、石油戦略を推進するための国家石油備蓄弁公室を発足させた。同弁公室は60億元を拠出して国内4つの港湾に備蓄基地を建設する計画を作成。1つの基地は既に建設を始めており、大慶油田年間産出量の5分の1に相当する1000万立方メートルを備蓄できる。

石油・天然ガス資源の埋蔵量を確認するための新たな評価作業も全国で起動した。国土資源部の孫文盛部長は「国の石油・天然ガス資源評価システムを構築し、資源を正確に把握すると共に、資源の発展傾向を予測することで、国が制定する重大戦略や経済発展計画に科学的なデータを提供することが作業の目標だ」と説明している。政府はまた石油製品価格の形成メカニズムの弊害についても深く認識し現在、価格改定前の市場調査を行っているところ。

国際社会の高い関心を集めているのは、中国が国内石油市場の安定化を加速すると同時に、積極的な外交姿勢で国際石油市場への参入を開始したことだ。政府は国内の石油産出量が緩やかになった状況下では、世界に新たな石油供給ルートを開拓することが益々重要になってきたと認識している。

中国海洋石油総公司は2003年11月11日、フィリピンの国営石油探査会社と南中国海での石油・天然ガス資源の共同開発に関する覚書きに調印。

同公司は政府の支援を受けて、世界各地で安定かつ長期的な石油供給ルートを模索している。証券会社メリルリンチ社の中国本部の劉二飛代表は「エネルギーの国際競争が激化するに伴い、中国もいやがおうにもこのエネルギー争奪戦に引き込まれている」と分析する。

電力投資は巨大なビジネスチャンス

エネルギー不足は次第に中国経済の発展を阻害する一大“ネック”になりつつある。経済の持続的かつ健全な成長を維持するため、政府がエネルギーの開発と導入を強化するのは確かであり、エネルギー分野は徐々に国内で一大投資分野になっていくだろう。今でも電力投資は巨大なビジネスチャンスを孕んでいる。

国家電力網公司の予測によると、電力業界は今後10年間、年平均6.6%−7%の成長が見込まれる。需要が旺盛であるため、業界は大量投資が必要となる。2004年から2020年にかけて新規に増加する発電設備容量は年平均3000万キロワットを上回り、投資額は1200億元に達する見通しだ。

国際エネルギー機関(IEA)が最近公表した報告では、今後30年間に個人投資家や政府による電力産業への投資額は全世界で10兆ドルに達し、うち中国は2兆ドルを超えるという。

電力業界が必要とする巨額の投資について、新発足したばかりのエネルギー局のある高官は「今後は従来のような財政資金による電力への直接投資は行わず、民間資本や外資の投資を奨励していく」との考えを示した。

業界の専門家は「電力市場は依然として成長市場であり、投資のリスクは相対的にその他の業界より小さい。投資が適切であれば、資金回収率は10%−12%に達するだろう。外資は既に火力や水力、原子力発電の分野に投資している。なかでも原子力発電では外資は優位性があり、シェアは55%に近い」と話している。

中国はエネルギー資源で石炭を主体にしており、少なくとも2020年まで火力発電は安定発展の段階にあるだろう。だが、環境保護が強化されるに伴い、火力発電への投資に当たっては環境保護コストを十分考慮する必要がある。また火力発電は工期が短く、即効性があるため、単独出資や合弁による経営に適している。

水力発電はクリーンで良質のエネルギーであり、優先的な発展が期待される。今後の開発では長江の上中流、チベット自治区・ヤルザンポ江の中下流など7本の大河が重点となるだろう。2020年までに水力発電の設備容量は2億キロワットと、現在の倍以上となり、開発の潜在力は非常に大きい。水力発電は長期投資プロジェクトであり、必要とする資金も膨大だが、市場リスクは小さく、持ち株や株式購入、債券方式での投資に適している。

政府はまた原子力発電を適度に発展させる政策も講じる計画だ。投資規模は火力発電の2倍前後だが、運行コストが低く、長期にわたり安定した利益が見込まれる。