2004 No.05
(0126 -0130)

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>> 経済

 

 

改革を通じて中小企業の発展を

                  陳乃醒

     (中国社会科学院工業経済研究所中小企業研究センター 主任)

現在、中国の都市では、一時帰休者が大量に現れ、加えて労働力人口が新たに増え、就業問題が深刻である。就業の機会を増やす効果的な方法の一つは中小企業を大いに発展させることである。例えば、陝西省、江蘇省、広東省のように、中小企業の発展を通じて、大量の農業労働力を工業に移転させるべきである。中国では農民が人口に占める割合が大きく、大量の農業余剰労働力が存在している。したがって、中小企業を大いに発展させてこそ、余った農業人口をはやく移転させ、その収入を増やすことができるのである。

中国の最も豊富な資源は労働力である。この資源の開発、利用は小康社会の全面的建設にきわめて重要である。中国は世界総人口の20%以上の13億近くの人口を擁しており、その労働力を十分に就業させるのは経済の発展だけでなく、社会の安定の維持にも大きな意義をもっている。

中小企業は中国経済の重要な構成部分であるだけでなく、中国の就業問題を解決するための主な活路の一つでもある。2003年1月1日から「中華人民共和国中小企業促進法」(以下、促進法と簡略)が施行され、中小企業の発展を推進するうえでの法律的拠りどころとなっている。だが、中国の実状からみると、中小企業をよりよく発展させるには、体制、政策などにかかわる10問題を解決する必要がある。

1、 金融市場の改革を深める。中小企業の融資が難しい根本的な原因は金融市場が健全でなく、企業の融資ルートが単一で、主に銀行の間接金融に依存するしかないことである。金融市場が発達している外国では中小企業が銀行から受ける間接融資は小部分であり、大部分は直接金融、投資企業からの融資、各種の基金からの融資、社会の相互貸借、ベンチャー投資などによっている。

このほか、中国の銀行構造が不合理で、小銀行とくに民間の小銀行が少ない。中小企業が必要とする資本量は小さいので、小銀行がこれに適しており、小銀行も中小企業を取引の対象としている。これに反して、大手銀行は大企業を相手にしているため、中小企業のことがあまり分からない。情勢の圧力で、中小企業と取引する気があっても中小企業界に明るくなく、どうしていいか分からず、資金があっても貸すことができない。これは銀行の不合理な構造がもたらしている問題である。

2、審査・認可制度を改革する。中国では、行政上の審査・認可が多く、中小企業の弾力性のある経営という優位性の発揮を妨げている。市場はめまぐるしく変化し、中小企業は市場需要の項目があっても、多くの手続きをする必要があり、多くの部門に行き、多くの判を押してもらわなければならず、なんとか行政上の審査・認可手続きが終ったときには、すでに時遅しで、市場のチャンスがなくなってしまっている。それに、一部の分野は中小企業とくに私営企業の進出を禁じており、なかには外国企業が進出できるのに、私営企業の進出を許さない分野もある。

関係資料によると、中国には約80余りの業種があるが、外国企業が進出できる業種は60余りを数えるが、私営企業が入れるのはわずか40余りでしかない。そのため、行政上の審査・認可制度の改革の方向は、中小企業が進出するための審査・認可手続きを簡略化するとともに、中小企業が進出できる分野を広げ、とくに私営企業の経営範囲を広げるべきである。現在、世界の一部の国では、小企業は何の許可手続きをしなくても営業ができ、商工管理も開業してから手続きを補うことができる。

3、管理制度を改革し、土地市場を形成する。土地が生産要素であるからには市場がなくてはならず、しかも市場が資源を配分すべきである。中国では、大量の農民が中小企業に従事している。だが、農民が第二、第三産業に従事するには一定の資本が必要である。目下の状況では、土地の流動がこれらの農民が最初の資本を得るための主要な源であるが、中国では、整備された土地市場がまだ形成されていず、土地の流動に秩序がないため、現行の管理制度を改革し、土地集団所有の枷から抜け出し、農民の土地の実有制を実現させるべきである。これは国民経済の全局にかかわる大問題の一つのであり、解決する必要がある。

3、 食糧市場を自由化する。食糧市場は1980年代に自由化されたが、のちに後戻りし、またも国有食糧企業が統一買付け・統一販売するようになった。こうして、農民が食糧を売るのが難しくなり、国の財政負担が大きくなった。同時に食糧・油料加工、食品などの中小企業とくに私営企業の発展が阻まれた。農民の損害を軽減するため、国は備蓄の方式をもって、食糧の市場価格を調節すべきである。こうすれば、財政の負担が大きくならないだけでなく、食糧・油料加工の中小工業の発展にもプラスになる。

4、 商品輸出入管理体制を改革する。商品輸出入管理面で、大多数の企業は貿易自営販売権をもっていず、中小企業の世界市場進出が阻害されている。中小企業が商品を国内のユーザーに売るのも国外のユーザーに売るのも同じことであるので、政府から貿易経営権を取得する必要は全然ないのである。WTO加盟後、中国経済のグローバル化は形式的には一歩前進したが、輸出の審査・認可が厳しく、くわえて貿易管理体制の改革がなかなか進展しないため、実質的には中国経済の世界市場進出が制限を受けている。中国が世界市場に入ったという標識は多くの中小企業が自主的に国際貿易ができるようになったことであるべきである。多くの中小企業が世界市場に進出できるようにするため、貿易の審査・認可制を登記制に改めるべきである。

5、 小企業にとって高すぎる敷居を取り除く。現在、中小企業が開業するには少なくても数十万元の登記資金が必要で、さらに関係の技術者、財務担当者がいることが求められる。こうした条件は緩めるべきである。現在、世界においては、先進国であっても、中小企業を開業するのにこのように高い条件を付けていない。例えば、アメリカのユタ州では、20ドルの登記資金、個人の関係書類だけで、3分で企業の登記ができる。そのため、多くの資金と人材を吸収することができ、ユタ州の経済はここ20年来、大きな発展をとげた。また中国の浙江省を例に挙げると、1978年の改革・開放前、この省の経済レベルは全国の中下であったが、改革・開放の初期、政府は農民が露店を開くこと、小商品を売り歩くこと、家庭単位で生産することなどを許したため、中小企業がいたるところで花を咲かせ、実を結び、なかには大企業に発展したものもすくなくなく、名実ともに生活が良くなった。

6、 政府の職能を転換する。市場経済の条件の下では、政府の職能を「選手」から「審判員」に変え、企業の経営管理に直接介入することから良好な投資環境をつくることに変え、日常の細かなことを扱うことから経済発展の戦略的研究・作成、市場規則・政策の監督、経済発展の方向の誘導などに力を入れることに変え、大政府、小社会から大社会、小政府に変えるべきである。これには、整備された法律制度がなくてはならず、政府は法に基づいて行政を行わなければならない。法に基づいて行政を行わない場合は法律監督部門が厳しく取り締まり、法律にゆゆしく違反する場合は法により制裁を加えるべきである。政府の権限が無期限に延伸し、どんな事にも手を出すのは、市場経済の発展を阻害し、また中小企業の振興をも妨げることになる。

7、 中小企業の民間組織をつくり、それを健全化する。政府の職能が転換するにつれ、一部の業務は中小企業の民間組織が行うことになる。そのため、民間組織をつくり、その健全化をはかることは政府の職能の転換の前提の一つである。中小企業は共通の特徴、利害、要求をもっているので、独立した民間組織をもつべきである。中国の現在の中小企業の民間組織は健全でなく、少数の現有の組織の多くは政府機構から来たもので、独立して仕事を展開することができず、また市場化の要請にも適応できないでいる。

8、 サービス市場を発展させる。サービス市場とは中小企業にさまざまなサービスを提供する社会関係であり、中小企業の文化環境の重要な構成部分である。ここでいうサービスは狭義的、広義的サービスで、法律、法規、行政上の管理、司法などを含んでいる。狭義的サービスは実際には企業の経営管理の具体的な業務をめぐって展開され、例えば、融資、財務、販売、人材の育成、顧客資源の管理、物資の配送、広告宣伝、製品デザインなどである。こうしたサービスに従事しているのもほとんど中小企業であるので、優遇政策でこれらの企業の発展を促進すべきである。

10、中小企業の負担を軽減する。発展がよい地方ほど中小企業の負担が軽く、遅れている地方ほど負担が重いという現象が見られる。浙江省の一部の地方では、早くから税金以外はゼロ徴収を実施している。後進地方においては、企業の負担を軽減して、資金と人材を導入すべきであるのに、財政の不足を補おうと税金以外に多くの料金徴収項目を設けている。これは企業の発展に不利である。これらの地方は長期的な視点を樹立し、発展の促進を通じて税源を育てるべきである。