2004 No.06
(0202 -0206)

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(その一)

租税制度の新たな改革

               木 子

北京市華遠グループの任志強総裁はこれまで税金をいったいどれだけ納めたのかは自分でもはっきり言うことができない。「アメリカ大使館の移民官は私に収入がどのぐらいあるのかと尋ねたこともある。私はよく稼いでいるので、毎年数百万元の所得税を完納していると答えた。彼は私の所得税完納証明書を見たいと言うのだが、税務署から所得税完納証明書を受け取ったことがないと答えた。しかし、彼は、とは言ってもお国の税務署は毎年数百万元も納税している人に所得税完納証明書を手渡すべきではないかと不思議に思った」。

所得税完納証明書をもらえないというような納税者がぶつかる問題は今後徐々に解決されることになろう。国家税務総局の謝旭人局長は先般国務院報道弁公室が催した記者会見で、今年は租税制度の改革を段階を追って着実に進めることを明らかにした。

中国社会科学院財政・貿易研究所の高培勇副所長は、「2003年下半期に始まった輸出戻し税の改革によって、中国の新たな税制改革の序幕が切って落とされた。構造調整を特徴とする新たな税制改革はスタートしたと断言できる」と語った。

税制改革の主な内容

謝氏は2003年11月中旬に開かれた「中国財政フォーラム」で、今後の一時期において中国は税制の面で次の7つの改革を進めることになろうと語った――@増値税(付加価値税)の消費型から生産型への転型、A消費税の整備、B企業租税制度の統一、C個人所得税の最低課税限度額の引き下げ、D都市建設税・費用の改革、E地方の租税制度の整備、F農村の税制改革の深化。

また、今年1月中旬の記者会見では、謝氏は次のように語っている――今後の一時期に、中国は税制改革を進めることになる。それには、消費型増値税を実施すること、企業所得税をだんだんと統一すること、総合課税と分離課税を合わせた個人所得税制度をとること、適当な時期に、道路使用料を撤廃し、それに取って代わって軽油取引税の徴収を実施すること、都市建設税・費用の改革を実施すること、条件が整った時に、家屋不動産に対して統一的な物業税を課税し、それにあわせて関連の費用の徴収をとりやめること、地方税制を整備し、税金・費用の改革を合わせて現有の税目を変え、新しい税目を設置するとともに、一部の税目を撤廃し、統一した税務行政を前提に、地方に適当な税務管理権を与えることである。このほか、今年は全国の農村で税制改革を試行し、農民に負担させるべきでない税・費用を逐次撤廃し、条件を整えて都市・農村税制の統一を実現することに移行する。政府はタバコの葉以外のすべての農業特産税を撤廃し、農業税の税率を徐々に引き下げる。それと同時に、一時帰休者や失業者扶助のための三つの特恵租税政策を打ち出すことになる。

――付加価値税の転型によって投資を刺激

今回の構造調整で何よりもまず実行するのは付加価値税の転型であり、つまり、生産型付加価値税を消費型付加価値税に改めることである。高培勇教授は、付加価値税の転型によって企業の投資意欲を刺激し、民間の投資を拡大することが政府の最大の念願であると見ている。生産型付加価値税と消費型付加価値税の違いは、前者は固定資産以外の資産に属する生産手段の付加価値税しか控除できないが、後者は「企業がその年に新しく増やした固定資産の中の機械設備投資の付加価値税を控除することも認めることにある。すなわち企業は上納する付加価値税から固定資産購入税を控除することができるということである。そうすれば、税源を縮小することもできれば、重復課税も免れることができる。

したがって、付加価値税の転型による最大の受益者は固定資産投資額が多い企業であり、例えば、国有大・中型企業とハイテク企業がそれである。付加価値税の転型の意義については、ミクロから見れば、企業の投資拡大や技術革新・改造の原動力を強めることができ、マクロから見れば、基盤産業とハイテク産業の発展を促進し、産業構造の調整を加速することが可能となる。

新たな税制改革の実施は短期間内に付加価値税収入の減少を招くことになるとはいえ、関連産業の発展を強力にサポートし、企業の投資と技術改造を奨励し、産業構造の最適化と企業の競争力の向上にプラスとなる。長い目で見れば、経済の発展と税収の増加も促進されると謝旭人氏は見ている。

──企業所得税の統一は公平な原則を具現

企業所得税の統一には、納税者の範囲、納税前のコストと費用控除の基準、税率、特恵政策の統一など多くの内容が含まれる。

現在、中国は内資企業と外資企業に対し異なった課税基準をとっている。企業所得税の税率では、内資企業は33%であるが、外資企業は15%である。特恵の要因を除いたら、実際の平均課税率は内資企業が約22%であるが、外資企業が約11%である。つまり、外資企業所得税の税率はわずか内資企業の半分ぐらい。

これについて、劉桓氏は次のように指摘している。改革開放の初期段階において、中国は外資導入のために外資企業に対し税収特恵政策を実施してきた。しかし、現在は経済環境が大きく変わり、納税基準の違いは企業の競争に致命的な影響を与えることにもなる。税負担の不公平は長年にわたって内資企業の脱税や見せ掛けの合弁、形骸化した企業の存在などの現象が絶えない誘因にもなっている。このほか、現行の税制はWTOの提唱する自由貿易と平等な競争という原則にも合わないものである。

──個人所得税の最低課税限度額を引き上げる

個人所得税は国民が関心を持つものであり、新しい税制は総合課税と分離課税を合わせた個人所得税制を実行し、税引き前控除項目や基準および税率が適切に調整される。西側諸国では総合課税制度があまねく実行されている。それは、1年間の所得を全部ひっくるめて累進税率で課税する方式であり、政策調節の機能が大きい。中国が実行している分離課税制度は国民の実際の納税能力を反映することができない。ところが、総合課税制度は財務、管理、銀行、社会信用システムに対する要請が高いので、中国はまだそれを実行する条件を備えておらず、現段階で両者を結び付ける税制を実行するほかはない。

個人所得税の最低課税限度額は引き上げられる可能性がある。現行の800元という最低基準は国情に合わなくなっており、引き上げなければならないと見られている。また、各省・自治区の状況が違うので、異なる最低課税限度額をとる可能性も高い。

新たな税制改革を実行する理由

世界では、経済のグローバル化と地域経済の発展すう勢が徐々に顕在化しており、国際貿易の急速な発展、国際間投資の激増、各国間経済協調の増強は、中国経済の発展にますます影響を及ぼしている。国内では、社会主義市場経済体制が構築されたばかりで、まだ整備されておらず、生産と発展は依然として体制の制約を受けており、国内外の情勢の発展に順応するため、租税制度が中国の経済成長と経済体制改革を促進できるものとなるようにしなければならない。中国の現行税制には、あまり簡略化されておらず、税源がそれほど広くなく、税率が高すぎ、管理に手落ちがあり、対外開放の拡大や改革深化および経済発展の要請に適応できないといった整備が待たれる問題が存在するため、現行の租税制度を調整する必要がある。    

改革開放後の25年間に、中国は重要な税制改革を2回も行った。最近の一回は1994年に行われたもので、主に中央と地方の分税制の実行と付加価値税の徴収を実行することになった。

2003年11月に開かれた中国共産党第16期3中総で採択された「社会主義市場経済体制整備の若干の問題に関する党中央の決定」には、中国は「税制の簡素化、税源の拡大、税率の引き下げ、厳格な徴収の原則に従って、租税改革を着実に進める」ことが明確に打ち出されている。2003年12月、「中国の財政政策報告2003、2004」という本が出版され、中国の新たな税制改革のトータルな構想が打ち出された。2004年には構造的減税政策が全面的に実施されることが決まっている。「いわゆる構造的調整とは、簡単に言えば、税収総量が変わらないことを前提に、税目を調整し、つまり税目によっては増税するものもあれば、減税するものもあるということである」と高培勇教授は語る。国の経済構造を最適化する最も有効な方式としては、異なる業種に対して異なる課税を実行することである。

新たな税制改革はいつ始動するのか、どれぐらいの期間で完成するかについては、中国人民大学財政経済金融学院の安体富教授は、5年もあれば済むと考え、次のように語っている。付加価値税の改革について、中央はすでに東北で8つの業種を選んで改革を試行しており、経験を積んだ後に全国で普及することになっている。企業所得税の統一は早くから下準備が行われており、今年は統一案が打ち出されることになる。農業税の撤廃は5年間を必要とするが、社会保障税と相続税の徴収などは、5年以後になると思う。これまで主に国務院条例の形で打ち出されてきた税制規則は今後全人代を通して立法を行うことになろう。財務・税務にかかわるさまざまな法規の改正は2004年に全面的に展開されることになろうが、各方面の利益にかかわる問題なので、長い期間がかかると思う。

減税が改革の核心

安体富教授は語る――今回の税制改革の核心は減税であり、減税という世界的な動きに順応するものでもある。経済のグローバル化が急速に発展している中、政府と税収からの経済面での干渉を減らし、税収の中性原則を実行するようにとの世論が高まる一方である。今世紀に入ってから、西側諸国はつぎつぎと大幅な減税を打ち出した。アメリカ議会は昨年末に10年で1兆3万5000億ドル減税する計画を可決し、イギリス、フランス、カナダ、イタリアなどの国々も相次いで減税に乗り出した。WTOに加盟した中国は、企業の競争力を高め、さらに外資を導入しようとするなら、こうした世界の動きに無関心ではいられない。

「私の予測では、全般的な減税規模は1500億元となろう。付加価値税の転型では、600〜800億元の減税となり、段階的に減税を実行すれば、その額は少なくなる。企業所得税の統一では、外資企業の納税基準に近寄るようにするため、200〜300億元の減税となる。農業税の改革が完成した後、農業税およびその他の収入は合わせて約600億元となり、これも減収に計上される。輸出戻し税率引き下げでは、200億元の増収がある。その他の税収は改革後に増減のバランスがとれる。それゆえに約1500億元の税収減が予測される。租税改革の期間を5年とすれば、毎年約300億元の減税となり、これは今年の税収増加額の約10%を占め、財政にとってプレッシャーとはならない。また、税制整備後、減税額は1500億元より少なくなる可能性もあり、長期的視点で見れば、税収は増えるに違いない。