2004 No.07
(0209 -0213)

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教育が「暴利をむさぼる」のを
中国は絶対に許さない

唐元ト

6歳の胡引君は今年9月小学校に入学したばかりだが、彼の両親はすでに彼が将来運よく大学に入れるかどうかに心を砕いている。

彼らはまずどうやって息子を北京の有名な小学校に入らせるかと頭をひねり、知人に頼んだものの、ほかに人民元8万元(約1万ドル相当)もの「学校選択費」を出さなければならなかった。その額は昨年と比べてまる1万元増えた。毎月の賃金が8000元前後の夫婦にとって、8万元はもちろん小さな金額ではない。

胡引君の父親胡羽さんはいかんともしがたく、「公表された学校選択費は最低額にすぎない。それに付随する賛助金の方がびっくりするほど高い」と語った。彼によると、その兄さんの子供が中学校の入学試験の点数がある有名校の合格点数より6点低いため、1点につき1万元、合計6万元を余計に出さざる得なかったという。

「しかし、わたしたちのような保護者が悩んでいるのは、どうやって人に頼んで賛助金を出すかということだ。優良校の生徒募集数は限られており、みんながそこに入ろうとする」、「昔は子供が学校に入れさえすればそれでよかったのだが、いまは就職の競争がこんなにも激しいのだから、たとえ親戚や友人から金を借りても、子供を有名校に入らせたい」と胡羽さんは嘆いた。

教育はいまや中国の家庭で最も高い支出の一つとなりつつある。学校選択と関係のある「費用をでたらめにとる」現象は、少なからずの小中学校で見られる。つまり義務教育の段階から、すでに中国の3億人を越える児童とその家庭の利益が損なわれているのである。一部教育専門家の控え目な推算によると、ここ10年来全国の教育部門がでたらめな費用徴収で小学生と中学生のポケットから2000余億元も巻き上げたという。

昨年末、「2003年の中国の10大暴利業種の中で小中学校教育が上位を占めている」と題するニュースが国内の各大手メディアの目立つ位置に載った。不動産が相変わらず暴利業種のトップを占めているほか、教育部門がでたらめな費用徴収で、2002年の「暴利10大業種」の末位から一躍第2位にのし上がったのである。

今年1月初め、周済教育部長は国務院報道弁公室の行った記者会見で昨年の全国教育部門のでたらめな費用徴収とその処理状況を公表した。それによると、調査して明らかになった規則に違反してでたらめに徴収した費用は合計8億5300万元に達し、そのうちの6億3900万元を返還し、2488人の関係責任者を処分し、そのうち359人の校長を免職した。

昨年は中国が10年来教育部門のでたらめな費用徴収に対し最も厳しい処分を行った年である。中央政府の厳しい処分で教育部門のでたらめな費用徴収がいくらかよくなったとはいえ、同時にそれがいっそう隠れてするようになり、そのため、法律執行部門の取調べ作業はますます難しくなっているというのがその実情である。

現在、中国に各級と各種の学校が100余万校あり、在校生は3億1800万人以上で、そのうち義務教育を受ける生徒数は1億9000余万人おり、彼らは教育を受ける主体でもあれば、最も安定した消費者の群れでもあり、そのため一部の部門は彼らを消費対象として奪い合っている。

一部の農村地区では、末端の組織化程度が低いため、地元の政府は生徒という安定したルートを通じて各種の費用を徴収しており、はなはだしい場合は計画外出産罰金、道路建設費調達を生徒に割り当てるところもある。

周済部長はでたらめな費用徴収問題がいくら禁止してもやめない原因を分析した際、「教育への投入がはなばたしく不足している」ことをその最も重要な原因に挙げた。同部長によれば、教育への投入は中国の「良質の教育資源と日ましに増大する人民教育の需要との間に依然としてかなり大きな格差が存在している」という根本矛盾を解決するカギである。

指摘すべきなのは、中国の教育への投入が過去5年の増加がわりに早く、国民総生産(GNP)に占める教育経費の比率は昨年は2.5%から3.41%に上昇したが、中国のGNPの成長自体が非常に早いことと考え合わせて、教育への投入が増えたと言うことができる。しかし、先進国と比べると大きな格差があり、発展途上国の平均レベルより低く、「中国の教育改革と発展綱要」の中で明確に打ち出された財政の支出する教育経費がGNPの4%を占めるという目標よりも低いものである。中国は発展途上国の平均レベルに達するには、さらに800億ないし1000億元を投入する必要がある。これと同時に、近年の全国財政予算内の教育経費支出の増加幅が教育発展の必要に追いつかず、その増加部分の多くが賃金として使われたため、学校の公用経費の増加幅が非常に小さく、農村の一部の小中学校では公用経費が一銭もないところさえある。この経費の大きな不足額は多くの末端政府と部門のでたらめな費用徴収の理由、口実となったのである。

中国の「教育法」第54条は、国の財政から支出する教育経費がGNPに占める比例は国民経済の発展と財政収入の増加につれてちくじ上昇すべきであると明確に規定している。だから、GNPの増大につれて、各級政府は財政から支出する教育経費を増加しなければならない。これは法律が定めた不変の指標である。しかし、中国の経済発展がきわめてアンバランスなため、一部地区の県クラス財政が長期にわたって赤字状態にあり、教育に投入する力が全然ないのである。統計によると、1990年代の中国の県クラスの財政赤字は40%にも達し、中・西部地区ではその比率はなおさら60%以上にも達したのである。「義務教育法」のいう通り、授業料をとらず、貧しい生徒の雑費を減免するなら、中・西部地区の農村の義務教育の追加投入が30億元必要であり、まだ9年制義務教育を実施していない地区が必要とする基準に到達するための費用を加えると、中国の義務教育の資金不足額は全部で370億元に達する。義務教育の総支出が1500億元前後しかない中国にとって、これは非常に大きな負担である。中国では義務教育を受ける人口がたえず増えていることから、政府が果断な措置をとり、支払移転を通じて投入を増やさなければ、中国が引き続き義務教育を推進するのは困難になるだろう。事実上、「義務教育法」はこのような状況を考慮して、「国は経済困難地区に義務教育を実施する経費を補助する」と明確に規定している。

廈門市檳榔中学副校長、特級教師の梁婉卿さんは、「いま政府の教育への投入が足りないだけでなく、財政投入の実施率でさえ統計上の数字と格差がある」、学校をりっぱに運営するには、日常の運営費用のほか、整った教学条件と設備がなければならない。これは主な問題である。「この時、上級から資金が支出されないか足りなかったら、一部の学校はさまざまな名目で生徒から費用をとる可能性がある」と指摘した。

政府の教育への投入不足の問題に照らして、一部の人は教育産業化のスローガンを打ち出し、市場化の手段で教育資源を配置しようとしている。これに対し、周済部長は次のように語った。中国政府は従来から教育産業化を政策としたことがない。教育は公益性のものであり、これはその本質によって決定づけられた性質であり、したがって教育の本質が崇高な社会公益事業であると規定されている。「中華人民共和国教育法」はこの性質について明確な規定を行っており、そのため各級政府は教育と経済政策を制定する時教育産業化という概念を用いないようにすべきであり、教育産業化の思想で教育の発展を指導してはならず、それを政府が収入を増やし、財政困難から脱却する手段とするのをなおさらしてはならない。「教育をその他の産業、企業と同一視してはならない。政府が教育産業化を提唱すると、教育投資の最高利潤を追求するようになり、教育の社会機能にマイナスの影響を及ぼし、マクロ規制と社会公平保証という政府の役割を弱くするおそれがある」。

中央政府がこれまで教育を産業化させなければならないと提出したことがないにもかかわらず、現実の中では早くからかなり多くの地方政府は教育を利潤のすこぶる多い産業と見なしており、「教育産業化」を地方人民代表大会または政府の文書に書き入れ、学校が収入をあげて財政不足をカバーするのを期待するところさえあるほどだ。

専門家たちはこう指摘している。教育産業化に駆けられて中国の教育は別の道を歩んでいる。つまりその多くが寄付や各種教育奨励基金設立の形式をとるのではなく、企業と個人が財物で投資する方式で教育に参与する方法をとっている。投資である以上、リターンを求めるのは当然であり、コストを投下すれば、費用を徴収し、ある程度営利を実現する。「教育産業の自己経営と利益獲得の実現ばかり強調すると、どうしても教育業のもつべき社会公益性を弱めてしまう」。

中南財経政法大学の喬新生教授はこう見る。当面の急務は国の財政手段を運用し、法によって経済困難地区の義務教育に経費を補助し、国の教育経費を着実に計画、按配し、法律の定めた政府の諸義務を実行に移し、基礎教育の改善から着手して、公平かつ合理的な教育経費支出システムを確立することである。同教授は、全国人民代表大会が全国の教育経費の支出と使用を統一的に評価する教育統一計画按配委員会を設立することを提案してはどうか。、こうすれば全国の教育への投入問題の妥当な解決をよりよく保障することができると語った。

これに対し、周済部長は次のように表明した。現在、中国政府の教育経費投入面の目標は、わりに短期間に国が財政から支出する教育経費がGNPに占める比率の4%への上昇を目指すことである。「いかにして教育への投入体制を改革、整備するか」という課題については、教育部が制定し、国家科学技術教育指導グループが可決した「2003-2007年教育振興行動計画」は、公共財政体制にふさわしい教育財政制度を確立し、各級政府の教育への投入の責任を強化して、@政府の教育のための財政支出の増加が財政の経常的収入の増加より多くなるべきである、A在校生の一人当たり教育費用をちくじ増やす、B教師の給料と生徒の一人当たり公用経費のちくじ増加を保証するという教育経費の「三つの増加」を保証しなければならないことを明確に打ち出している。

周済部長はまた、昨年中央政府は中国教育史上初めての農村教育工作会議を開き、@農村教育を農村活動の中で優先的に発展させる戦略的地位におく、A農村教育を教育工作の重点の中の重点という戦略的地位におくという農村教育の二つの戦略的地位を確立し、このために100億元もの特別資金の投入を含む一連の重大な措置を講じたと強く指摘した。

周済部長の説明によると、非義務教育の段階では、政府と教育を受ける者が学校運営経費を分担する比率をいっそう合理的に確定し、費用徴収基準を一般家庭の受入れ能力に適応するようにする。「経費調達ルートを広げ、教育への社会投資、出資、寄付の効果的な激励メカニズムを確立しなければならない。これと同時に、政府の投入を主として、都市と農村の家庭経済が困難な義務教育段階の生徒の学習援助システムを確立し、健全にする。大学では、学習援助貸付管理システムをいちだんと整備し、また奨学金、バイトによる学習維持、特殊困難補助、授業料減免などの措置をとって、家庭経済の困難な学生が貧しくても学習をつづけられるように保証するとともに、社会団体と個人が貧しい学生を資金面から援助することを奨励する」。

周済部長は「われわれは民営教育の大発展と教育経費の分担をいちだんと推進する必要がある」と語り、また「これは教育産業化の概念とまったく違うものである」とつけ加えた。