2004 No.07
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鳥インフルエンザに緊急対応

呉綜之

安徽省広徳県の楊灘郷で1月末、鳥インフルエンザの疑い例が発見された。肖立山さんは発生の中心地で養鶏業を営んでおり、飼育した5000羽を超える鶏は全て処分された。

1月27日に初めて鳥インフルエンザが報告されて以降、発生地また非発生地の政府は緊急対応に乗り出した。

発生地は感染拡大を防止

鶏がすっかり姿を消した養鶏場を前に、肖さんはやり切れない思いだ。鳥インフルエンザによる直接損失額は15万元(1元は約13万円)と、地元で最も深刻。

「ようやく28週目に入ったばかりで鶏卵のピークを迎え、タマゴの販売額は1日、350万元にもなっていた」。肖さんは昨年、7万元の融資を受けて養鶏を始めた。今年は大きな収益を期待していたが、それも空に帰してしまった。

広徳県は江蘇と浙江、安徽3省の省境に位置し、家禽の飼育が盛んなところ。疫病発生の報告を受けて、広徳県政府は動物防疫法に基づいて防止策を講じた。1月29日、発生地点の周囲3キロ以内を緊急封鎖。県政府は公安、道路、農業機関や楊灘郷政府の職員を動員して、発生地唯一の出入り口に消毒・検査所を設置し、通過車両を1台ずつ検査して消毒すると共に、家禽取引市場を封鎖し、発生地内の家禽や製品の流出を禁止するなど、感染拡大の防止に努めた。30日、県は20の処分作業班を結成し、周囲3キロ以内の全ての家禽を国の防疫規定に基づき焼却処分して土壌に埋め、消毒を徹底して無害化処理を厳格に実施。同時に衛生防護服や手袋、マスクなどを調達して楊灘郷に送ると共に、防疫担当者は家禽と接した人を対象に1日2回、体温測定を行い、発生地区・地点を何度も消毒し、人への感染防止に尽力した。

現在、楊灘郷には鶏やアヒル、ガチョウ、ハトは1羽も見当たらない。郷共産党委員会の莫和義書記は「疫病が広がることはなくなった」と強調した。

郷政府は3万羽の家禽を処分するため2カ所に埋立地を設けた。場所選定に当たっては、農民に影響が出ないようにするため農家から遠く離れていること、交通が至便で作業がし易いことなどを考慮した。第1の埋め地は荒地に設置。「鳥インフルエンザ発生地区のため立ち入り厳禁」と、すぐ目に止まるよう赤字で書かれた看板が立っている。広さは約400平方メートル、深さは4メートル近く。発生地区で集めた家禽は麻袋に入れた後、麻袋に消毒液をかけて焼却し、再度消毒して埋める作業を行った。ここで処分された家禽は1万羽余り。

国の養鶏家への補償もほぼ終了している。楊灘郷では全農民に合計35万元の補償金が渡された。実際の損失額を完全に補うことはできないが、農民は今後の飼育に期待が持てるだろう。

広徳県と同様、鳥インフルエンザの発生地では有効な処理と防止策が講じられてきた。感染は完全に食い止められ、人への感染は1人も報告されていない。

非発生地はウイルス浸入を防止

一部の省で鳥インフルエンザが発生した後、各地は感染の防止に乗り出した。

北京では各区・県が家禽の生産地、賭殺・加工や販売する企業の検査と検疫、衛生管理を強化した。1月28日以降、各市場は一律、現場での賭殺や加工、検査と検疫を受けていない家禽食品の販売を禁止。市外からの家禽類に対しても検査報告制度を再開し、輸出品やその他の製品についても監視と検疫を強化している。このため、北京市は検疫所を北京に通ずる全ての道路の入り口に移したほか、鉄道、港湾や空港でも24時間体制で検疫を実施。検査と消毒を強化する共に、疑い例を発見した場合には即刻、一時的に没収し、再検査を行っている。また動物疫病指揮部や獣医衛生監督検査所に専門の電話を設置し、事業所や市民に疫病を発見したら直ちに報告するよう求めている。市農業局は既に400万余りの鳥インフルエンザワクチンを準備しているほか、区や県も用意しているため、感染を防止する態勢は整った。農業と衛生を管轄する牛有成副市長は「我々はワクチンが無駄になり、市民が混乱しないよう望む」と話している。

武漢市は数千万羽の家禽に対し全て免疫接種を施すことを決定。また飼育場や畜産家、市場を対象に全面調査を実施して状況を把握しているほか、飼育場や賭殺場、製品を扱う場所、専業農家に対して毎日、消毒を行っている。武漢に入る交通の要衝5カ所に検問所を設けて、検疫や消毒作業を強化。有効な証明書を持たない場合には、市場での販売は禁じている。さらに疫病報告制度も実施している。

山西省。各地の家畜獣医機関は30万羽以上飼育する78の市・県と、116の飼育場、500の大規模専業養鶏家を重点的に監視している。全省の鶏に対する強制免疫は2月20日までに終了した。

山東省は家禽肉の輸出量が23万―35万トンと、全国の輸出総量の50%以上を占める。現在のところ、鳥インフルエンザは発生していない。省政府は全面調査を実施したほか、市場に出回る家禽類に対して血液検査やワクチン接種を実施。飼育場の管理を徹底し、人や車の進入を制限し、鶏舎や養鶏家、生産設備に対して消毒を行った。ウイルスの浸入を防止するため道路での検査も強化するなど、管理は非常に厳格だ。

黒竜江省では疫病監視システムが日々完備されつつある。ハルビンやチチハル、大興安嶺などに監視センターを設置。市場や飼育場、加工企業、レストランに対する監督と検査を強化しているほか、生きた鶏やアヒルの販売に関しては、20羽ごとに動物製品検疫を実施し、合格した場合には動物の脚にブルーのラベルを貼らせている。冷凍家禽製品についても検疫を課し、合格しなければ販売は許可されない。

福建省でも、空港や港湾での検疫係官による検査を強化しており、旅行者に対し健康検疫カードに携帯品も詳細に記入するよう求めている。同時に疫病発生地からの浸入を未然に防ぐため、携帯品抽出検査の頻度を高めた。発見した場合は廃棄処分される。

このほか、国際郵便の検査や国際船舶や航空機などに対する厳格な検疫、廃棄物や汚水の無害化処理の監督も強化している。

政府は非常に重視

国務院は1月30日、回良玉総理が総指揮を務め、華建敏国務院秘書長が副総指揮を務める「全国高疾病性鳥インフルエンザ防止治療指揮部」の発足を決定した。指揮部は発展改革委員会や財政部、衛生部、農業部、品質検査総局、工商総局、科学技術部、商務部、税関総署などの省庁で構成される。

指揮部の第1回会合が2月1日に開かれた。この席で回良玉総指揮は(1)防止治療作業を円滑に進め、感染の状況を適時、正確に公表すると共に、有効な措置を講じて疫病の感染と蔓延の抑制、特に人への感染を防止しなければならない(2)監督と検疫を強化し、重点地区や重点製品、問題となる人に対して厳格に検疫と消毒を行うと共に、家禽と製品の生産行為を適正化するほか、輸出品の検疫作業を円滑に実施する(3)高疾病性鳥インフルエンザウイルスと防止治療技術の研究を強化する(4)疫病の防止治療に関する政策を制定すると共に、作業措置を検討して提起し、各政策と措置が着実に実施されるようにする(5)保障を強化し、ワクチンや薬品の生産と準備を滞りなく進め、防疫用物質の配給を円滑に行い、防止治療経費の問題を解決すると共に、市場への供給を調節しながら供給を確保して、社会の安定を維持する(6)中国共産党中央や国務院の政策キャンペーンを強化し、防止治療作業措置や疫病予防の科学知識を広める(7)関係する国際組織や周辺諸国との協力を強化し、香港やマカオ、台湾地区との協力にも力を入れる―――の7点に力を入れていく考えを強調した。

衛生部は先ごろ、『鳥インフルエンザの人への突発的感染に関する緊急対策案』を公布した。対策案は、疫病が発生した場合、衛生行政機関は直ちに緊急疫病応急処理技術指導グループを発足させ、各地は疫病に関して上級機関に報告する制度を実施し、省クラスの衛生庁と国家疾病予防センターは報告を受けたら即刻、衛生部に報告し、人への感染例については、衛生部が組織する専門家チームが最終的に確認すると規定している。また各地、市クラス以上の衛生行政機関はその行政区域内で少なくとも1カ所を鳥インフルエンザ感染者を収容する病院に指定すると共に、治療専門家チームを組織するとしている。さらに緊急疫病処理技術指導小グループの総合評価を得て、発生区内の最後の患者が回復して10日以内に新たな発病例が出なければ、省クラスの衛生行政機関はその省の人民政府に報告し、認可された後に疫病の発生を解除し、一般治療に当たると規定。省クラスの衛生行政機関は鳥インフルエンザの人への感染を検出する実験室を設置するほか、疑い例のサンプルを採集する際の防護、輸送についてはSARSのケースを参考して行うことにしている。

国家品質検査総局もこのほど、鳥インフルエンザ拡散防止に関する緊急通達を出した。各地の品質技術監督機関に対し、家禽の賭殺や加工企業の監督管理を強化し、感染地区からの家禽や製品の加工、販売を禁じている。疫病の発生が解除されるまでは、農業機関が確定した感染地区の範囲内にある関連加工企業は直ちに生産を停止し、既に生産した製品は封印し、市場に出荷してはならない。

鉄道部は2月3日、貨物・旅客輸送について新たな規定を設けた。感染地区や危険地区にある駅では、家禽類や製品の輸送を取り扱ってはならない。既に受けた貨物は封印して隔離し、鉄道部に報告すると共に輸送を停止し、当地の防疫所が処分する。非感染地区の駅では、輸送に当たっては、荷主に検疫証明書を提示させると規定。輸送途上で問題が生じた場合は随時、当地の動植物検疫所に報告し、国の関係規定に基づいて処理するとしている。

科学技術部は防止治療技術を開発するため2月2日、「全国高疾病性鳥インフルエンザ防止治療科学技術グループ」を発足させた。同グループの座長を務める科学技術部の李学勇副部長は「防止治療技術や病原の研究、ワクチンの研究開発、鳥から人への感染防止を重点に、全国の技術力を結集して突破口を開きたい。現有の技術成果を応用して作業を進めると共に、国際協力も展開していく」と話している。

国家疾病予防制御センターは、鳥インフルエンザの人への感染が起きた場合に備えて既に応急メカニズムを構築している。24時間態勢でP3実験室を使用できるよう既に準備しており、専門家チームは随時、鳥インフルエンザやインフルエンザの緊急検査ができる。また同センターは4つの専門家グループを鳥インフルエンザ発生地区に派遣し、感染防止の指導に当たらせているほか、WHO(世界保健機関)と防止治療技術面で定期的な交流を行っている。

鳥インフルエンザが発生して以降、農業部と衛生部は直ちにFAO(国連食糧農業機構)とWHOに関係状況を報告すると共に、防止治療作業での交流と協力を歓迎する姿勢を示した。関係機関はさらに香港、マカオに対しても随時状況を報告。WHOの駐中国代表事務所の高官によると、2月2日にオランダ籍のWHO専門家が北京に到着後、中国当局と鳥インフルエンザ感染の調査に当たった。専門家は家禽の処分や感染防止措置、処分の過程での環境保護や動物の免疫、監視システムの評価などで中国側に提言。その中で専門家は「重点は防疫担当者への感染を防止することだ」と強調した。