2005 No.03
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クレジットカードによる“困惑”

――クレジットカードの登場で、買い物の際に現金を使用せずに支払いが済ませるようになった。それだけではない。従来から「少収入・多消費」傾向の中国人は、「借り入れる」楽しみも享受できるようになった。ただ、その背後には面倒なこともある。

譚偉

Aさんの趣味は旅行。年に数カ月間、車で旅行に出かけているが、必ずクレジットカードは携帯する。「沢山の現金を持っては安心して旅行できない。多くの場所でクレジットカードが使えるようになったし、現金よりずっと便利だ」

国内では一般にクレジットカードを使用する場合、約100元(1元=約13円)の年会費を取られるが、銀行が規定する利子免除期間内に借入金を返済すれば、利子は免除される。今、「先ず消費、後で返済」の消費スタイルが定着しつつある。

北京では1998年と1999年、デパートでのカードによる消費が小売総額に占める割合は5%未満だったが、現在では30〜40%まで拡大している。ある調査によると、2003年に発行されたクレジットカード総数は480万枚余り。世界最大のクレジットカード会社VISAが行った中国市場の調査結果では、低めに推定しても、カード所有願望者は3000万〜4000万人に達しており、2010年までに中間所得層は2億人を超えると予想している。

「カード1枚あれば、何の心配もない」。あるクレジットカード会社の広告のキャッチフレーズだ。だが日常生活を見ると、実際は広告のうたい文句とは異なるようだ。非現金支払いは利便性をもたらしたとはいえ、カードによる消費には更に完備すべき問題点が存在している。 

待たれる条件の改善

「カードは便利だが、どこでも使えるというわけではない。これがカードの利便性を低めている」とAさん。昨年10月、東部沿海部のある都市を旅行した時のことだ。ホテルに泊まろうとしたがカードが利用できず、別の街でホテルを探さざるを得なくなった。

彼は「旅行に持っていく現金は限られる。カードで現金を引き出せば、高い利子を払うことにもなる。カードの支払いはダメだというのは、所有者の気分を悪くする」と不満を示した。カードが利用できるホテルは見つかったとはいえ、意外な出来事に旅行の楽しみは消えてしまったと話す。

先進国の成熟したクレジットカード市場に比べ、国内の使用環境はまだ整備されていない。広東発展銀行北京支店クレジットカードセンターの朱珍珍副社長は「使用面を見ると、外国では小規模の店でお酢を買った場合でもカードの利用は可能だが、国内ではまだそこまでいっていない。返済方法を見ると、国内では条件的な制約から、クレジットカードを発行または指定された銀行で支払いや返済をしなければならない。外国ではクレジットカードを処理する際に銀行が所有者に口座番号を提供し、所有者は電話またはインターネットで銀行に連絡しさえすれば、返済の手続きをしてもらえる」と話す。

更に朱副社長は「こうした個性あるサービスや、クレジットカードの使用上のバリアフリーが実現するまでにはまだ時間がかかるだろう。これは1、2銀行の問題ではないからで、政策上のサポートが必要であり、また全銀行が共同で業務に当たって初めて実現されるからだ」と説明する。

存在する隠れたリスク

大多数の銀行が発行するクレジットカードは国際慣例に基づいて、署名方式が採用されている。だが、これを懸念する声もある。「レジ担当者は筆跡の鑑定家ではない。カードを紛失すれば、他人に盗用され面倒なことになる」と言うのだ。

新聞記者のBさんも、署名の安全性にずっと疑心を抱いている1人だ。彼はレジ担当者の識別能力を試そうと、友人に大型デパートで自分のカードを使用させてみた。残念なことに、筆跡の違いは判別されなかった。「このカードは失くせませんよ。失くせば誰にでも利用されてしまう。クレジットカード使用のリスクは本当に大きい」と苦笑いする。

ある調査によると、カード所有者が被った損失の約9%は盗用によるものだという。盗用を巡る紛争に所有者と銀行が費やす時間と精力も、極めて多大だ。

外国では、この種の損失の大多数はカード発行機関が負担している。国内では、カードの紛失について大多数の銀行はほぼ同じ姿勢を貫く。書面による紛失届を提出する前と、発行機関が届け出を受理してから24時間以内に発生した経済損失に関しては、銀行はいかなる責任も負わない、というものだ。

中国社会科学院法学研究所の劉俊海博士は「こうした規定は不公平な点がある。銀行カード管理方法の規定に基づけば、紛失届を出す方法は2種類ある。1つは電話、いま1つは書面によるもので、電話による届け出が最も有効、かつ最も時宜にかなった方法だ。だが口頭で紛失を知らせても、すぐ書面で届け出しなければ、仮に経済損失が生じても自分で負担するしかない」と指摘する。

最近、数行の銀行が暗証番号と署名による認証を自由選択できるクレジットカードを発行。暗証番号を選んだ場合には、銀行の顧客サービスホットラインに電話を入れ、担当者がその暗証番号に基づいて設定すれば、すぐ使用が可能となる。国内で消費する際には一律、暗証番号で認証される仕組みだ。

理性的な消費が肝要

「最も愉快な日は月給日、最もイヤな日は、クレジットカードの清算書が来る日」とBさんは笑う。「カードを持つようになってから、明日使うお金は今日中に心の準備をする、という習慣ができた。カードは3枚持っているが、普段使うのは1枚だけ。こうすれば、毎月の消費額を計算し把握するのに便利だからだ。何枚も使っていたら、覚えられない。返済が間に合わなくなった場合に、他の2枚を使って応急的に支払うことにしている」

更にBさんは「それでも、クレジットカードを持ってからは、消費にブレーキが掛からなくなってしまった。毎回300元未満なのに、月末に来る清算書の額は膨大になっていて、まるでお金が知らず知らずのうちに使われているような感じ」と困惑した顔になった。

クレジットカードによる消費では、お金の姿は見えない。だからこそ錯覚に陥りやすい。お金を使っているという感覚がなく、その月にいくら使ったかさえ分からないこともあり得る。そのため専門家は、その月に購入した商品の領収書を残しておき、清算書と突き合わせるよう提言している。こうすれば、理性をもって消費したかどうかが分かる。その一方で、購入した商品を返品した際など、所有するクレジットカードの銀行がいかに処理したかも理解できるほか、支出の超過を避けることも可能。貸し越し現金に課される利子は相対的に割高(年利18%)だ。

VISAが先ごろ公表した調査統計では、2003年世界カード平均消費金額10位の国・地域の中で、中国が2090元、当時のレート換算で235米ドルとトップにランクされた。昨年10月27日に国家統計局が発表したデータによると、第3・四半期までの都市部住民の平均可処分所得は僅か7022元。

熊安平・VISA中国地区代表が語るように、この調査結果は決して全中国人の消費特性を表しているわけではない。「海外に行ける」「カードが持てる」、などの2つの条件を備える中国人はまだまだ少数派だからだ。だがある程度、中国人が「スマート」になったことを物語るものだとも言えるだろう。専門家は「クレジットカードを持つ人は、消費に対する過度な欲望や浪費を自己コントロールし、健全に消費するよう心がけるべきだろう。将来の生活に備えて消費や貯蓄、投資など、計画的に収入を割り振ることが肝要だ」と警鐘を鳴らす。