相互にメリットをもたらす経済構造
--中国、世界が互いに新しい経済の原動力を提供することに
徐建国(中国国際問題研究所)
世界経済はここ二年余りの低迷状態を経た後、ついに強い成長の勢いが現われるようになった。IMF(国際通貨基金)のレポートによれば、2004年度の世界の経済成長率は5%に達し、ここ30年来の成長が最も速い年度となり、世界の貿易の伸び率も2003年の5.1%から2004年には8.8%に達することになり、石油価格の変動やテロによる襲撃、為替レートの変動など潜在的な危険がなお存在し、今後2年間に世界経済の伸び率がやや鈍化するかもしれないが、全体的には新たな成長期に入りつつあると予測している。
2004年の中国経済はマクロ調整政策の導きの下で9%の成長率を維持した。貿易額は初めて一兆ドルの大台を突破して36%の伸びとなり、世界第三の貿易大国となった。世界経済の堅調な推移は中国経済と対外貿易の安定した急速な発展にとって重要なチャンスとなるものであり、中国経済の持続的な高度成長は世界の経済成長の重要な原動力ともなっていると言えよう。中国と世界経済の相互促進という局面がすでに形成されている。
新たな成長期
2003年の下半期に入って以来、先進諸国が景気回復のテンポを速め、発展途上国も比較的高い成長率を保ち続け、世界の経済成長の勢いは強まってきた。IMFの予測によれば、2004年の世界の経済成長率は2003年の3.9%から5.0%となり、その内訳は先進国が2.1%から3.6%、新興市場と発展途上国が6.1%から6.6%に上昇するということになっている。
一方では、世界の三大経済体といわれるアメリカ、EU、日本の経済成長が全面的に加速した。アメリカ経済は減税と金利引下げという景気浮揚策によって衰退から抜け出し、堅調な景気拡大が続いている。2003年下半期から工業生産の上昇や企業投資の拡大、会社の利潤水準の向上、消費者支出の堅調な上昇ぶりなどの要因によって、国内需要が大幅に増え、経済の回復が促された。GDPの伸び率は2003年の3.0%から2004年には4.3%に上昇することになった。日本経済は2003年に10年間も続いた停滞期から脱し、企業倒産数が減少し、雇用や消費者支出及び企業の設備投資がいずれも増えるといった景気回復の兆しが見えてきた。2003年のGDP伸び率は2.5%であったが、2004年には4.4%に増えることになった。EUの経済成長率も2002年の1.2%と2003年の1.1%前後という水準から2004年の2.6%に、なかでもドイツとフランスは2003年の-0.1%と0.5%から2004年には2.0%と2.6%に増えることになった。
他方、多くの発展途上国の経済成長テンポは先進国より高いものとなった。東アジア・南アジア地域経済は内外の需要拡大によって力強い成長を続けている。UNCTAD(国連貿易開発会議)の分析によれば、同地域の複数の国はインフラ整備と域内貿易を通じて投資とGDPの拡大が続いている。中国は9%前後の成長率を保ち続け、インドは前年度の8.2%から2004-2005年度には7%前後の成長率を維持し、いずれもアジア地域の経済と貿易伸び率を牽引する重要な原動力となっている。ロシアの経済改革にも成果が見られ、しかも石油価格の高騰と石油輸出量の増大が見られ、2004年のGDP伸び率は7.3%を記録することになった。ラテンアメリカは一人当たりの収入の下落を二年間にわたって経験した後、2003年下半期から改善が見られることになった。一部の国では為替レートの調整を通じて再び国際競争力を強化し、輸出拡大によって経済の回復が促され、全般的な経済成長率は2003年の1.8%から2004年には4.6%に上昇することになった。アフリカの経済成長率も2003年の4.3%から2004年には4.5%に上昇し、特にサハラ地域の成長率は3.7から4.6%に加速した。中・東欧移行経済圏の2003年の経済成長率は4.5%であったが、EUの輸出拡大と国内の需要拡大に伴い2004年には5.5%に上昇した。
世界経済の中国経済への影響
中国経済は国際化に伴い、世界経済と一体化しつつある。WTO加盟に伴った全方位、多段階、広い分野に及ぶ対外開放の枠組みが形成された。中国の対外貿易額は1978年の206億ドルから2003年には40倍増の8512億1000万ドルに急増した。貿易規模はWTO加盟以来の三年間で倍増し、2004年の1月から11月末までに1兆383億8000万ドルに達した。GDPに占める輸出入貿易総額の割合は1980年の12.63%から2003年には60.3%に上昇した。中国はすでに世界の多国籍企業の重要な生産拠点となっている。中国の外資実際利用額は1989年以来年平均20%以上の伸び率を保ち続け、2002年には500億ドルの大台を突破し、2003年には535億500万ドルに達した。加工貿易は中国の対先進国貿易の主要な構成部分となっている。三資(独資・合資・外資)企業の輸出入総額はいずれも全国の50%を上回っている。したがって、世界経済のグローバル化と中国の改革開放の深化に伴い、中国経済全体の半分以上はすでに世界経済の循環メカニズムに組み込まれることになった。
次に、中国経済を牽制する外的要因も強まることになった。石油価格の変動が中国経済に影響が与えたことがそれである。製造業の中国への移転により、中国のエネルギー消費量はすでに世界のトップにランクされるようになり、原油消費の対外依存度は40%に達している。経済の成長と産業の発展に伴い、中国のエネルギー消費量と原材料消費量は引き続き伸び続け、国際市場価格の変動による影響もますます大きくなるだろう。そのほか、貿易保護主義の中国対外貿易への影響が顕在化している。中国は先進国からのアンチダンピングや技術封鎖などに直面しているばかりでなく、発展途上国からのさまざまな制限にも直面している。中国の貿易相手国の中では対中貿易赤字国が貿易障壁を設けているだけでなく、一部の対中貿易黒字国も中国の商品を非難する列に仲間入りしている。世界経済にあれこれの問題が生じた時には、いつも中国のあらさがしをする国が一部にはある。人民元切り上げを要求することもこうした口実の一つである。
最後に、世界経済の新たな成長は中国経済の持続的高度成長に有利な外的環境をつくり出している。今年上半期からの新たなマクロ調整が行われた後、IMFは2004年4月に、中国のGDP成長率は2003年の9.1%から8.5%に低下すると予測することになったが、米日欧の経済と世界経済の景気回復が加速するにつれて、9月には中国のGDP成長率を9.0%へと上方修正した。中国経済に世界経済の循環局面がすでに形成され、特に米日欧経済が対中輸出入の半分を占めることになっているため、その経済情勢や世界経済の行方が中国の対外貿易と経済成長に及ぼす影響はかなり大きいものとなっている。IMFの予測では、石油価格やドルの為替レートの変動及び各国の金利引上げなどの要素に左右されて、今後二年間の三大経済体と世界経済の成長率はいくらか低下するとともに、2005年の世界貿易総額の成長率と中国のGDP成長率も7.2と7.5%に低下することになると見られている。
世界経済への中国の影響力が高まる
世界銀行とIMFなど国際機関の予測では、中国は世界経済発展の新たな原動力となりつつあり、そのGDP成長率は長期的に世界の平均レベルを上回っているだけでなく、貿易の伸び率も世界の平均レベルをはるかに上回っており、世界経済と貿易の発展を牽引している。
中国は世界各国に巨大な市場を提供している。中国のGDPは1978年の1400億ドルから2003年には1兆4000万ドルに上昇し、年平均成長率は9.4%程度となった。経済規模はすでに世界の七位にランクされている。2003年の社会消費財小売り総額は5560億ドル、社会生産財売上げ総額は1兆ドルに達した。GDPに占める輸入総額の割合は2000年の20.8%から2003年には29.3%に増え、2004年1月から11月までの輸入額は37.3%増の5087億7000万ドルにとなった。ちなみに、2001年と2002年の世界輸入総額の伸び率はわずか-1.0%と1.6%であったが、中国の輸入額は依然として8.2%と21.2%となり、一部の国にとっての重要な輸出相手国となり、また、2010年には1兆ドルに達すると見込まれている。IMFは2004年の先進国と発展途上国の輸出伸び率はそれぞれ8.1%と12.8%に達すると予測しているが、大多数の国の1月から10月までの対中輸出伸び率は30%以上に達し、オーストラリアとブラジルなどの対中輸出伸び率は50%以上にも達している。
中国は世界経済の共同発展のためにビジネスチャンスを提供している。中国は21世紀の最初の20年間で国民経済の4倍増を達成するには、7.2%以上のGDP年平均成長率を維持しなければならない。中国はこれによって世界にとって望ましい投資先となるだろう。中国の外資利用は11年間連続して発展途上国のトップにあり、2003年末現在の外資企業数は46万5277社に達している。2004年6月末までの外資実際利用額は5300億ドルに達している。一部の業界では外商がかなりの市場シェアを占めており、高いものは三分の一にも達している。米モトローラの中国の移動通信設備市場での販売シェアは10%を上回っている。外資企業の輸出入額はすでに中国の対外貿易総額の半分以上を占めている。中国は「2つの市場」と「2種類の資源」を利用して経済を発展させると同時に、世界も中国の市場と資源を利用して共同発展の道を歩んでいる。
中国経済の発展は世界経済構造の変化を促している。まず貿易構造が変わったこと。UNCTADは、アジア域内とアメリカとの間の貿易の形態が変わり、「新たな貿易地理的パターン」が形成されたことを認めている。世界経済と貿易はかつて欧米など発達した市場によって牽引されていたが、ここ数年来対中貿易は多くの国の経済成長の原動力となっている。日本を例として見よう。1990年の対中輸出はその輸出総額の2.14%しか占めていなかったが、2000年は6.33%、2003年は12.18%に達した。2003年の日本経済の回復は主に中国からの強い需要に支えられるものであったが、対米輸出は下がる一方であった。東アジア発展途上国の持続的な成長やラテンアメリカ経済の回復はいずれも対中輸出の大幅な成長と関係がある。次に世界経済の成長の態勢と力の配置が変わった。中国経済と対外貿易規模の拡大及び地位の上昇は世界経済構造の変化の一側面でもある。特に大多数の発展途上国の対中貿易は輸出超過が続いている。中国の牽引は発展途上国の全般的な経済成長のレベルと力を向上させるとともに、地域化の潮流に伴った中国と外国の経済協力も世界経済の構造を変えている。2010年に創設される中国-ASEAN自由貿易圏は18億人口を擁する世界最大の自由貿易圏となる。2020年には、自由貿易圏の経済規模と対外貿易の規模はアメリカとEUと並ぶものとなり、世界の三つの経済力の中心の一つになると見られている。
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