2005 No.05
(0124 -0130)

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新時代・新生活・新職業

呉文和

数年前に米国に移民したAさん。しばらく前に北京に一時帰国し、大学時代の友人と夕飯を共にした。友人が運転する車で一緒にレストランに。料理のほか、ビールを数本注文したので「車だから、飲まないほうが」と言うと、「自分の車で送ってもらえるようにしてある」。友人がそう答えたので、奥さんか知人が迎えに来て、運転するのかと思っていたとAさん。頼んでいたのは、実は車運転代行業者だ。費用は80元(1元約13円)。「運転代行業」という言葉を聞くのは、Aさんにとって初めてだった。

この数年来、経済や科学技術、社会の発展に伴って、これまで耳にしたことのない新たな職業が市場のニーズに合わせて次々と生まれている。料理アドバイザーや私立探偵、気象情報商品仲介業者、ガーデンデザイナー、ユーザーサービス・コンサルタント、アニメアーティスト、廃棄物管理者、速記者など。こうした新職業の出現で、人々の生活はより多種多彩になってきた。

マイカー普及で新職業誕生

車運転代行業は、マイカーの普及で生まれた新職業。現在、多くの大中都市で見られる。代行者はサービス会社の職員や、個人経営など様々。料金は距離によって異なる。代行者の多くは運転暦が長く、接客態度もいいと好評だ。名刺を配って顧客拡大に熱心な人もいるという。

マイカー普及で生まれた新職業はこれに留まらない。運転アドバイザーのほか、中古車判定業者や中古車仲介業者……。

運転アドバイザーとは、免許証をとったばかりで、一人で運転する自信のない人の助手席に座っていろいろアドバイスする人のこと。業界によると、料金は1時間100元前後。会社と契約している人や、車に「運転アドバイス」のステッカーを貼って営業する個人などいろいろだ。

中古車判定業者は消費者が新車や中古車を購入する場合、車の検査についてアドバイスする専門家。北京では有名な業者の年収は10万元を超えるという。中古車の仲介や譲渡手続きだけでなく、保険業務代行や車検などのサービスも提供している。

生活の質的向上にプラス

生活レベルの向上に伴い、市民がレストランで食事をする回数も増えてきた。様々なレストランがあちこちにオープンし、メニューも多彩になってきた反面、どんな料理を選んだらいいのか、頭を悩ます市民も多いようだ。そこで登場したのが、そうした煩わしさを解決してくれる料理アドバイザー。

北京や上海、広州といった経済の発達した都市の中高級ホテルやレストランでは、料理アドバイザーの人気は高い。料理に対する造型が深く、客の特性や好みを察知し、親身になってふさわしい料理を選んでくれる。

市場のニーズに合わせるように、料理アドバイザーの養成班も開設されている。重慶観光業界国家職業技能鑑定所が開く養成班では、カリキュラムに顧客心理分析と顧客の認知及び常連客の認定、飲食製品の知識と料理の取り合わせ、料理の知識と注文、販売促進手法とメニューの作成、コスト構成とコスト削減及び定価戦略、栄養配分と衛生知識、礼儀と身のこなしなどが盛り込まれている。

去年秋、北京で初めて約30名が新職業であるSPA芳香療法士として認定された。

芳香療法とは、視覚と嗅覚、聴覚、味覚、触覚の五感に基づいて治療を行う療法。国外では既にかなり普及しており、芳香療法師職業資格基準として水療法や芳香療法、エッセンスマッサージ、音楽療法、石療法、泥療法、光療法、物理療法の一部が設定されている。北京のある美容院では、コースによって費用は100元から1000元。

資格基準関連の養成用教材は現在策定中で、間もなく完成する予定。業界関係者は3年以内には成熟した職業に成長すると予想している。

婚姻に対する質的な要求が高まる中、婚姻アナリストという職業が一部の都市で生まれた。結婚生活における様々な問題を分析し、問題に直面する夫婦の意思疎通を手助けする、という仕事だ。

ハルビンで婚姻アナリストとして働く張麗英さん。「私たちは2つの役割を演じています。1つはサイコロジストとして、いま1つは弁護士として。夫婦のために何かを決定するのではなくて、彼らに決定する能力を持たせるようにしています」

更に張さんは「この数年、相談に訪れる人は増えていますが、内容は前とは違いますね。以前は、目的はただ1つ、いかに速く離婚するかでしたが、今は危機が起きる可能性のある前に相談に来ているのです。これは危機を乗り切りたい、という意識が強まったからでは。それが新しい職業が急成長してきた主因でもあります」と分析する。

社会形態の変化も要因

31歳になるBさんは2003年、8年勤めた列車の運転手を辞めて「上海自強服務総社」の「社工」(コミュニティー職員)になった。薬物の禁止を普及させるのが仕事だ。社工は以前、正式な職業とは言えなかったが、数ヶ月前、Bさんは閘北区政法委員会が発行した社工証明書を受け取った。「以前は、訪問した家の人に社工だと自己紹介する場合、常におずおずしていました。正式の証明書がないので、多くの人が疑心暗鬼になっていたからです」とBさん。

過去長い間、都市の社会管理では基本的に居民委員会が行政を行うモデルが採用され、委員会が政府組織の下で行政業務を行ってきた。1980年代以降、政府が管理型からサービス指向型に転換したのに伴い、民間の性格を備えた社工に行政管理を補助させる方式が徐々に定着していった。

上海はこの面で全国でも先進的だ。1999年12月9日、国内で初めて地域的な性格を帯びた社会事業団体・上海浦東新区社会工作者協会が発足。上海市は2003年、『社会工作者職業資格認証に関する暫定実施法』を公布し、社工の職業化がスタートした。

『実施法』の起草者の1人で、浦東新区社会工作者協会の呉鐸会長は、社工は公共事業に服務する専門の人材だと強調した上で、「関連する職業訓練と資格試験を受けるのはもちろん当然であり、この点で会計士や弁護士と変わらない」と強調する。

規定では、社工は4等級に分類されており、地位的に1級は教授や研究員に相当する。

上海自強服務総社に勤務する社工の中には、大学でコミュニティー学を専攻した者や、Bさんと同様に転職した者も。彼らは社工になって以降、絶えず様々な研修に参加してきた。Bさんは「薬物禁止を普及させる仕事に従事する社工として、私たちは先ず、薬物と医療面に関する知識を身に付ける必要があります。また労働手帳申請の手助けや仕事の手配、労働契約の署名など、煩雑なことにも精通していなければならない。具体的にどうしたらいいか分からない場合には、少なくともその案件については、どの機関に相談すべきか、ということも熟知している必要があります。それぞれの家庭の状況や気持ちを理解して、ケースごとに彼らの問題を解決していきたい」と抱負を語る。

Bさんはもともと内向型だったが、社工になって性格が明るくなったという。「人を助けるのは気持ちのいいものです。こうした仕事をしていれば生涯、味気なさを感じることはないでしょう」

超細分化しつつある職種

新聞『人材市場報』は「社会の分業が細分化されつつある今日、職場での職務も超細分化されてきた」と報じている。

現在、求人広告には販売課長やマーケティング担当者、ユーザー担当課長、販売顧問など、製品やサービスの販売や推進を中心とする職種が目立つが、企業によって重視する人材は異なる。

こうした状況は販売職だけでなく、技術職も同様だ。使用するプログラミング言語やオペレーションシステムの違いによって、UnixやARMシステムエンジニアといった具合に求める人材は違う。アパレル分野でも、婦人・子供・男性向け衣料品デザイナーなど。総じて言えば、求人職種の「超細分化」が進行中だ。

上海専門人材招聘ネットワークの責任者は「職種の細分化は、人材市場が徐々に成熟化していることを示すものだ。企業は今後、個性化を目指して新たな特定な職責や要求を重視しいくだろう」と分析する。

職種の細分化により当然、応募者に対する要求も細分化している。求人は機械設計者と言っても、業種や製品、材料の違いによって人材への要求がきめ細かくなってきた。ダイ業界の技術者が半導体の設計者にはなることはできない。自動車分野のパンチダイ専門家にしても、大型精密機械のダイ技術者になることはできない。物流分野も同様だ。宅配分野ではコスト削減、高級品分野では安全性が強調されている。業界ごとに異なる物流管理と技術が求められており、それに対応して人材のニーズの細分化が進んでいるのが現状だ。