2005 No.07
(0207 -0213)

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活発な中国外交

中国の外交が昨年収めた成果は今年の外交活動の幸先よい起点となった。

倪延碩

中国外交は昨年大きな成果をあげ、大国の首脳と国際機構のトップは次々と中国を訪問した。なかんずく50人ものフランス実業家が随行したシラク大統領の10月の訪中、それにつづいてのプーチン・ロシア大統領の訪中、チャンピ・イタリア大統領の12月の訪中、アナン国連事務総長の10月の訪中などがあった。中国はこれらの重要な訪問によって、世界の注目の的となり、中国外交も大国外交としての輝きを放つものとなった。

中国外交に触れて、李肇星中国外交部長は昨年次のように述べた――「複雑に入り乱れた国際情勢の中で、中国は党中央の指導の下で、平和で安定した国際環境や周辺環境、平等互恵の協力環境、客観的で友好の世論環境を積極的につくり出すことに努めた」。

昨年、中国はイラク、スーダンのダルフールなどの問題の解決に積極的に参与し、はじめて民事警察を派遣して国連の平和維持行動(PKO)に積極的に参加し、世界平和の維持と共同発展のために貢献した。「われわれは国連の権威を守り、マルチラテラリズムを提唱し、国際関係の民主化を促すことに努める」と李肇星氏は語る。

「2004年に入っていらい、中国外交はより主動的かつ積極的で、自信のある姿勢を示し、世界各国からより多くの理解、信頼、支持を獲得した」と中国現代国際関係研究院安全戦略研究所の方華副研究員は語る。

2004年における外交の成果

「昨年、中国は世界各国との友好協力関係を全面的に強化し、関係諸国との矛盾、食い違いを適切に処理し、チャレンジをチャンスに転換させ、ややゆとりのある社会を全面的に建設し、社会主義現代化を推進するためによりよい外部環境を作り出した」と中国共産党中央外事弁公室の劉華秋主任は語る。

中米関係 大国外交の重点は依然として中米関係である。昨年のアメリカ大統領選のように「チャイナ・カード」が切られなかったことは稀に見ることがある。中米両国の首脳は昨年いらいほぼ2カ月に1回電話で話し合うことになっているが、胡錦涛主席は10月7日という大統領選の尋常ならぬ時点にブッシュ大統領と電話を通じ合い、しかもこのことは選挙相手に非難される話題とはならなかった。

また、中米両国はハイレベルの話し合いのメカニズムを強化し、しかも軍事関係においてもブレークスルーが見られた。昨年、チェイニー・アメリカ副大統領、ライス米大統領補佐官、バウエル国務長官がつぎつぎと訪中した。軍事の面では、アメリカ軍統合参謀長会議議長のマイルス将軍が1月14日から15日にかけて訪中し、氏は1997年以来訪中したアメリカ海軍の最高首脳であり、中米軍事関係が回復し始めたことを物語っている。2月23日、中国はアメリカ軍の艦艇が上海と香港に寄港することを認めることになり、7月22日、トーマス・ファーゴ米太平洋艦隊司令長官が訪中した。

EUとの関係 ここ数年、欧州連合(EU)は中国に対して熱意を持ち続けているが、中国も積極的それに呼応してきた。胡錦涛国家主席が1月フランスを訪問し、5月の初めに、温家宝総理がドイツなどの国を歴訪し、5月下旬には、呉邦国全人代常務委員長がブルガリアなどの国を歴訪し、6月8日、胡錦涛主席がポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど東欧諸国を歴訪した。EUはアメリカのプレッシャーで中国の市場経済国としての地位を認めないことを決定したが、10月9日に中国科学技術部と「ガリレオ計画(全地球航行衛星システム)」技術協力の取り決めに調印した。これは、EUが対中兵器禁輸措置を解除する可能性があることを意味している。この計画の実施はアメリカのGPSシステム(独立した衛星誘導システム)がマーケットを独占する局面を打ち破ることになり、中国にとってもヨーロッパにとっても大きな戦略的意義を持つものである。

中ロ関係 中ロ戦略的協力パートナー関係が強化された。9月に、温家宝総理がロシアを訪問し、10月、プーチン大統領が中国を答礼訪問した。中ロ両国は国境問題について合意に達し、国境問題に終止符が打たれた。また、両国はオイルガス、金融、麻薬密輸取締りなどの分野で合意に達し、ロシアのWTO加盟交渉を終えることについての包括的取り決めに調印した。プーチン大統領は両国間の貿易額が数年後には1000億ドルに達する可能性があると見ており、今回の訪中が「歴史的な出来事」であり、「転換点としての意義があり、両国間の信頼感の欠如の状態を「徹底的に」終結させるものであると述べている。今後、中ロ関係発展の積極的な要素は非常に明らかであり、両国関係は全面的な協力と発展の新しい段階に入ることになろう。 

中日関係 中日両国の関係は戦略、政治、経済の十字路にさしかかっている。小泉首相が昨年1月に国内の反対を顧みずに中国及びアジアのその他の国の人々に大きな災禍をもたらした第二次大戦のA級戦犯をまつった靖国神社を再度参拝したため、膠着状態に陥っていた中日関係は打開策を見つけることはできなかった。東海のガス田開発、釣魚島など諸問題をめぐる紛争が頻発し、日本政府の対中円借款供与も基本的には終止符が打たれた。両国関係は協調しながら競争し合う時代に入っているという専門家もいる。日本ははじめて中国+の最大の貿易パートナーから3番目に転落することになった。

「中日関係は最も重要であることは疑いないが、最も複雑かつ不正常なものでもある。それは中米関係が安定しているかいないかということに制約されるとともに、国際情勢の影響も受けている。中国の経済力と発展の潜在力がしだいに世界に認められ、中米関係が成熟に向い、協調しながら発展する動きの中で、中日関係は正しい軌道に乗ることになろう」と方華氏は見ている。

新しい外交理念

「平和的台頭、国民本位」という中国の新しい外交理念は中国外交に新たな活力を注ぎ込むものとなった」と方華氏は語る。

2003年12月10日、温家宝総理は訪米の間にハーバード大学で演説を発表し、初めて中国の平和的台頭への自信と決意を国際社会に鄭重に表明した。同年12月26日、胡錦涛主席は毛沢東の生誕110年記念座談会で、「平和的台頭」の道と独立自主の平和的外交政策をあくまで堅持することを再度強調した。これは「平和的台頭」が中国の国家戦略となったことを示している。

「国民本位外交」の思想の確立は少なくとも三つの面から国民の利益を高めることができる、と専門家は見ている。@大国外交を通じて民族の尊厳を確立し、海外在住の中国系の人々の地位を高める。Aグローバル化の中で自国の優位性のある産業の発展を促進し、外貨収益を作り出す。B国内の平和的な生活環境に影響を及ぼさない平和的な方式で領土と主権をめぐる紛争を解決する。アメリカ政府の重要なシンクタンクであるのランド・コーポレーションのエバン・メデイロス博士は「中国の新外交」という著書の中で、中国の外交政策において大国外交の地位が次第に優先するようになり、中国はますます自国の利益を重要な大国の利益と一致させるようにしている。中国は大国に「ともに責任を負う」必要があることを強調し始め、一部の問題で中国が「なすことあり」ということを意識するようになった、と述べている。

「中国の多角的外交活動は未曾有の活発な発展段階に入っている」と中央外事弁公室の劉華秋主任は述べる。胡錦涛主席は第12回アジア太平洋経済協力機構(APEC)首脳会議と上海協力機構のタシケント会議などに出席し、温家宝総理はアジア・欧州首脳会議、中国・欧州首脳会談などに出席し、世界のヒノキ舞台で重要な国際問題と地域問題に対する中国の原則と立場を表明し、大きな反響を呼んだ。

朝鮮の核開発問題についての第2回、第3回北京六者協議は中国の斡旋の下でおしすすめられ、対話を通じて朝鮮の核問題を解決する勢いが保たれている。また、ASEAN+中国(10+1)、ASEAN+中日韓(10+3)のメカニズムを拠り所として東アジアの地域協力と中日韓協力の新しいメカニズムの構築を推進している。上海協力機構の枠組みを踏まえて、安全、経済、貿易の諸分野でより大きな役割を果たしている。国連の活動に積極的に参与し、国連の権威と役割を守ることに努めている。国連人権会議で反中国の提案を再度粉砕した。多国間貿易交渉や世界のマクロ経済政策についての対話と協議に参与し、国際経済新秩序の構築を促している。イラク問題、イランの核問題、スーダンのダルフールなどの問題で原則を堅持し、建設的な役割を果たしている。

今年の中国外交の展望

「中米関係は中国の対外関係における主導的なものである。言い換えれば、中米関係は中国の外交関係の基礎と核心である。中米関係を上手に処理することは中国の対外政策の最も重要な課題である」、と山東財政学院国際経済貿易学院の王蔚副学長は本誌記者のインタビューを受けた際、こうした見解を明らかにし、さらに次のように述べている。

アメリカは現在世界一の強国であり、政治、軍事、外交、経済、文化、科学技術などの面で大きな力を持ち、それと対抗できる国または集団は存在しない。それゆえに、中国は中米関係を首位に置かなければならないことを決定づけている。「2005年の中米関係は経済面ではホットだが、政治面ではごたごたが多いと形容することができる」

2005年は中国の第10次5カ年計画期の最後の年であり、中国はそれに終止符を円満に打つと同時に、次の5カ年計画の幸先のよい起点をつくる考えでいる。中国経済はソフト・ランディングの重要な時期にあり、中国は科学的発展観を打ち出したものの、かなり急速な経済成長を保つことも必要である。2004年の中国の経済成長率には貿易の牽引によるものが大きく、貿易額は世界3位に躍進している。今年も貿易によって経済成長を牽引する方針は変わらず、アメリカが中国の最大の貿易パートナーであるという位置づけも変わらないばかりか、かえって強化されよう。

中米間の最大の障害は台湾問題である。アメリカは台湾問題でずっとうらおもてのある手管をもてあそんでいる。表面的には1つの中国の政策に賛成すると言っているが、裏では台湾の中国復帰を望んでいない。アメリカの「対台湾関係法」が中米関係を損なうものである。

中国とASEAN(東南アジア諸国連合)との関係について、王氏は次のように述べている――ASEANは世界で経済発展が最も速い地域の一つである。1997年にアジア金融危機が起こった後、中国は人民元切り下げをしないことを堅持してきた。これもアジア諸国がいちはやく金融危機を抜け出すことができた要因の一つである。

ところが、ASEANの中にアメリカの同盟国がいくつかあるため、中国はアメリカがASEANを利用して中国を制ちゅうすることに警戒心を保たなければならない。今年は人民元の切り上げ問題で中国が西側諸国からより大きなプレッシャーを受けることになろう。この人民元切り上げの大合唱の中でASEANの声を耳にしてはいないものの、ASEAN諸国はみずからの経済利益から考えて、人民元の切り上げを望んでいることは言うまでもない。中国とASEANの製品の多くは品質が同じであり、貿易の向う地理的方向もおおむね同じであるので、人民元の切り上げはASEAN諸国にとってはメリットがあるのみでデメリットはない。しかし、ASEANは比較的に表立たないやり方をとることになると考えている。

今年は中国とEUの関係がいっそう緊密化することになろう。EUとアメリカは伝統的な同盟国関係があり、中米間の緩衝地帯である。中国・欧州関係は昨年大きな発展をとげたが、今年もそれが続くだろうと王蔚氏は予測している。

王蔚氏は中日関係の改善を楽観視しており、次のように述べている。現在、対日関係の新思考を提唱し、日本とより緊密な経済提携関係を強化するよう主張しているものもいる。こうした主張は経済的には一理があるが、政治的には必ずしもうまく行くとは限らない。今年は、対中円借款、靖国神社、防衛大綱を巡っての中日間のごたごたはあとを絶たないであろう。日本が台湾独立を支持していることはもっとも厄介なことであり、日本の台湾問題への介入が中日関係が冷え込む主因となろう。

「中国が安定した周辺環境を望むならば、決してロシアとの関係を悪くしてはならない」、と王蔚氏は強調している。ロシアと戦略的協力パートナー関係を結ぶため、中国は多大な努力を払ってきた。たとえば、いちはやく国境を画定し、上海協力機構の設立を促進し、国連での両国の協力を強化したなどがそれである。また、胡錦涛主席は国家主席就任後真っ先に訪問した国はロシアであった。現在、両国関係は政治面ではホッとで、経済面では冷え込んでいる。両国は経済・貿易の面で突破をとげるにはまだ時間を必要とする、と王蔚氏は見ている。