2005 No.07
(0207 -0213)

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「新型携帯に替えましたか?」

封せい

雑誌社に勤めるAさんはクリスマス前に携帯電話で友人からショートメッセージを受信したが、開いてみると文字化けしていた。そこで彼女は「文字化けで読めない」と返信。再送信されたメッセージにはこう書かれていた。「送ったのはクリスマスの写真。まだカラー液晶携帯に替えていないの?」

Aさんは2年前に携帯を失くし今の機種を購入。当時、売り出されて間もないこの携帯は最新機種で、有名女優がコマーシャルに出演していた。だが2年後の今では、デザインから機能まで既に“時代遅れ”になってしまった。

市民生活に携帯電話が登場したのは80年代末。当時は携帯を買える人は少なく、豊かさのシンボルだった。それから十数年、携帯は驚くほどの速さで発展。特にこの数年は、所有台数が急増するに伴い、流行の傾向や市場のスポットはまるでパリのファッション界を思わせるほどの勢いで変化し続けている。携帯は単なる通信工具、という感覚はなく、市民、特に若者の間では、選択する際に重要視されているのがそのファッション性とデザイン性、多機能化だ。

都市生活の必需品

情報産業部の統計によると、2004年8月時点での携帯電話所有台数は3億2000万台、4人に1人が持っている計算になる。

携帯の普及を地域別に見ると、農村部はまだ低いものの、都市部では既にほぼ生活に欠かせない必需品となっている。老齢者や小学生の間では限られた一部、中高生でも一部しか所有していないものの、これ以外の層では非所有はほぼいないというのが現況だ。仮に携帯は必要ない、と言う若者がいるとすれば、それは恐らく、例えば、現代的な生活にどこかで歯止めを掛けたい、といったような別の考えがあるのかも知れない。携帯を買えないわけではないのだ。

携帯にはもはや、出始めの頃にイメージされていた富裕層というシンボル性はない。低所得層でも手軽に購入できるようになったからだ。100元以下から5000元と、各層に合わせた価格が設定されており、サービスや料金計算方式も通信業者によって様々なので、消費者は必要性やその収入に応じて事業者を選択できるようになった。

上海の化粧品会社の北京支店首席代表を務めるBさんは、こう話す。「携帯を持たないなんて、想像できないですよ。顧客と常にコンタクトしなければならないから」。彼が今使っている携帯は6機種目で、全世界への通話が可能。リース料は毎月50元(1元=約13円)、通話料は1分間0.4元。それでも国内はもちろん、全世界をカバーし、音声信号も良好なので、彼のように外国企業との間で頻繁に連絡を取り、しかも出張の多い企業マンには最適の選択だ。1カ月にかかる電話代は700元前後だという。

Cさんは北京のインテリア会社のチーフエンジニア。市内にある家庭の内装工事などがメインなので、市内専用の携帯を選んだ。リース料は無く、通話料は1分間0.1元で、特別サービスも無料で利用できる。「無料サービスが魅力ですね。それに、顧客が携帯で内装について長々と話すことがあっても、こちらから切るわけにいかないので、通話料が気になることがあります。毎月の電話代は大体70元で、以前の双方向の携帯に比べると節約できます。会社の同僚もこの種の携帯に切り替えたので、電話代は大幅に削減された」。

通話以外の機能として頻繁に利用されているのが、ショートメッセージの送受信だ。しかも事業者にはかなりの利益がもたらされる。Aさんは「友人や仕事仲間との間では、報告や挨拶、それにプライベートなことなど、ショートメッセージを交わす機会は非常に多いですね。伝統的な祭日になると、交信量が増えて通じなくなることもあります。去年の春節には、友人宛に午前発信したメッセージが午後にやっと届くほどだった」と話す。

今の携帯は、通信のほかニュースや天気予報の配信、電話代など諸経費の銀行振り込みやその確認通知などの機能を備えている。

Aさんは言う。「出かける前には必ず、家のキーと財布、それに携帯は忘れないようにしています」

個性とインテリジェンスを追求

多くの販売店はカラーケースやアクセサリーなど、携帯グッヅ専用カウンターを設置している。一部若者の間には、こうしたグッヅで携帯を飾り、自分なりの個性ある携帯づくりを求めようとする傾向があるようだ。最近では、宝石をちりばめた携帯やペンシル型携帯、横向き携帯など、外観に特徴を持たせた携帯も登場。

カラー液晶携帯が急速にシェアを占めるようになったのは、2003年以降だ。モノクロ携帯は時代に別れを告げつつある。北京のあるデータ会社が今年12月7日に発表した調査報告によると、カラー液晶携帯所有者は昨年の45.6%から76.36%まで増加した。

また女性用やビジネス用、子供用など、各層をターゲットにした携帯が市場に出回るようになってきた。

この数年の市場で最も成功を収めたのが、女性用の携帯だ。既に独立した市場が形成されている。実際、機能的には格別目立ったところはないものの、外観がスマートでカラフル、コンパクトというのが最大の特徴。メーカーのホームページにはリニューワルされた女性用携帯の広告が満載だ。「外形のラインが美しい貝殻状の作り。外周が半透明のライトデザインで、スイッチを入れると七色に光り輝き、あなたを魅了する」とか、「キュートで精巧な、折り畳み式パネル携帯。バラの鮮紅がブレンドされた秀麗でピュアな銀色。貴女が手にすれば、非常に高貴で典雅な雰囲気を醸し出す。内蔵パネルは今流行のコンパクト設計、いつでもメーキャップがOK」等々。

「女性携帯市場の成功は言えば、水を掘りに導いたようなもの」。ある青年新聞社文化面の編集長を務めるDさんはこう話す。「女性が美しいものを愛したり、ファッションを追い求めたりする特性に迎合したものです。この面では、相対的に言うと、男性の方が保守的ですね」。Dさんは2カ月前、いわゆる女性用携帯を購入し、4年間使用していた“中性的”な携帯は知人の男性に使ってもらうことにした。この男性は、数年前に携帯が壊れて中古品を購入したが、カバーの部分が本体からはずれてしまい、ボンドでつなぎ合わせるしかなかった。「彼はメーカーに絶望していました」とDさんは笑う。

だが、メーカーはそうやすやすと絶望してなどいられない。絶対多数の人々を魅了しているのが携帯であり、しかもDさんの知人のように、機能の変化に今は興味を抱かない人であっても、日毎に増大する機能に魅せられる日が来るとも限らないからだ。

雑誌社勤務のAさんは「今の若い人のように、頻繁に携帯を替えることに夢中になることはないけれど、もし今使っている携帯が壊れて替える必要があれば、カラー液晶携帯といった、もっと良いものを買おうと思いますね。カメラ付きやMP3機能を備えた機種を選ぶかも知れません」と話す。

上述したデータ会社の調査は「機能の刷新はまさに企業が追求すべき焦点であり、また消費者にとっても関心の的となっている」と報告している。ビジネスインテリジェント型携帯にカメラ搭載型携帯、音楽再生・ゲーム機能搭載型携帯が既に消費の流行になっているのだ。

更に報告では、2004年の携帯市場でカメラ搭載型携帯が最大の関心を集めたことが分かった。所有者の34.2%が既にカメラ搭載型携帯を使用しており、性能の向上や応用・開発の強化がメーカー共通認識となっている。

前記データ会社の賈忠紅・総裁補佐は「中国の携帯市場は既にマルチメディア時代に突入した。しかもカラーメッセージやカラー映像の着メロ、ゲームといった付加価値のある業務が新たなスポットとして市場をけん引しているのが特徴だ」と強調する。

社会・文化を表す「符号」

「携帯電話は社会と文化を示す『符号』です。その時代の中国の社会や経済など、様々な面での特徴を映しています」と、新聞社勤務のDさん。

更に彼女は「先ず携帯は、社会や経済、科学技術の進歩を体現したものです。1996年でした。シカゴ大学から中国を訪れたある教授から、私が携帯を使っているのを見て、いぶかしがりながら、多くの中国人が使っているのかと聞かれたのです。そのころは携帯やインターネットは、多くの人と無縁でした。でも今では、中国は携帯、インターネットの大国になっています。こんなに急スピードで発展するなんて、中国人も外国人も想像できませんでした」と話す。

さらに彼女はこう続けた。「携帯の普及によって、中国人の生活スタイルは大きく様変わりしました。人間関係はより緊密になり、便利になり、ブッシュ大統領の再選や、中国のサッカーナショナルチームが敗退したといった情報を、歩いている時に友人からショートメッセージで受信できるなど、情報は以前よりずっと速く伝わるようになりました。同時に、携帯は人々の生活に楽しみをもたらしてくれました。例えば、心地よい着信メロディー、インターネットゲーム、友人との間で交わすユーモア溢れるショートメッセージ、祭日を祝うメッセージなどは、人々を楽しい気分にしてくれるし、人間の温かさを感じさせてもくれます。こうした人々の心を引き付けるもの、人間的なものが、プレッシャーの大きな今の生活の中で渇望されているのです」。

その上で彼女は、多くの現代的な科学技術製品と同様、携帯の出現と、携帯の目まぐるしい世代交替が社会にマイナスの効果をもたらしているとも指摘する。「携帯のファッション性を過度に追求し、頻繁に交換する人も一部にあるので、メーカー側にも一部でメディアを通じて、それを助長しようとする傾向があります。これは実を言うと、都市住民の間で普遍的に見られる浮かれ気分とか、未成熟な消費心理にメーカー側がうまく反応したと、いうことではないでしょうか。それによって電子ゴミは増え続け、その処理問題は将来、環境に大きな負担を残すことになるでしょう」

「消費の観点から言えば、欧米は成人のようであり、落ち着き払い成熟していながらも、やや保守的。中国は子供のようであり、活力に溢れ、進取の気象に富んでいながらも、衝動的で、未成熟」と、Dさんは情趣に富む比喩を紹介してくれた。

そして彼女はこう強調した。「これは過度的なものです。中国は豊かさの道を歩み始めたばかりで、社会が今後更に発展していけば、中国人は浮かれたり、新奇なものや贅沢品を追求したりすることから、平和や自然崇拝、素朴さを再び求めていくようになるでしょう。同時に、科学技術の更なる進歩によって生活はより豊かになっていくと信じています。でも、両者は決して矛盾するものではありません」