2005 No.08
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政府は世界貿易機関(WTO)加盟に当たっての公約を履行するため12月11日、外国小売企業に課してきた設立地域や株式取得、店舗数の制限を取り消すなど全面開放に踏み切った。外資参入に伴い国内小売業界のこれまでの構図は様変わりし、内外企業は一段と厳しい競争にさらされることになる。今後、小売市場で最後まで生き残れるのはどの企業か。

小売業界の新たな構図

譚偉

Aさん(男性)は週末、近くにあるフランスのスーパー・カルフールで買い物をする。「買い物はずっと便利になりました。スーパーが増え、新鮮な物も増えて、世界各地の食品も並んでいます。値段も安いですね。小売市場の最大の変化と言えば、外国の小売大手が続々と進出してきたことです」と話す。

カルフールのレジ担当者によると、週末にはお客は延べ数万人に上り、レシート用のロール紙を3時間ごとに換えるほどだという。

この数年、小売業界の段階的な開放に伴い外資の進出が加速している。中国は世界最大の人口を擁しており、小売業発展の潜在力に疑いの余地のないことは明らかだ。

全面開放によって、国内企業は外資と平等のルールに基づいて競争することになる。国内小売業の構図は今、大きく変わろうとしている。

国内小売業の数十年にわたる変遷を見てきた商業政策研究会の万典武会長は、全面開放の影響について「一言で言えば、外資がもたらす挑戦は一段と厳しさを増すだろう」と、その語調は重い。

外資企業の位置づけ

1998年に専業主婦となったBさん(女性)。「数年前までは食品はマーケットで買っていました。スーパーには時たま出かけて日用品を買うぐらいで、当時スーパーは少なく、商品も安くはなかったので、しょっちゅう行っていた訳ではありません。でも今は違いますね。近くにカルフールがあるし、スーパーもあるし。中国や西洋料理の食材が揃っているので、我が家の食卓はインターナショナルになりました」と笑う。

Bさんはどちらかと言うと、外資系スーパー派。「規模は大きいし、値段も安いし、品質もいいし、品揃えも豊富だし、設備やサービスも一流だからです。国内企業のスーパーはあちこちにあって、家からも近いけれど、やはりカルフールや、ウォルマートといった外資系スーパーで買い物をしてしまいますね」

政府が1994年に試験的に認可した外資は4社だったが、2003年には34社まで増加している。

全面開放を前に米小売大手メトロは数ヶ月間にわたり、国内ほとんどの都市を調査。先ず遼寧省の省都瀋陽に進出した後、黒竜省の省都ハルビンと江西省の省都・南昌へと展開することを決定。現在は南通(江蘇省)や義烏(浙江省)、深セン(広東省)でも立地場所を選択するなど、勢力図を拡大中。

北京や深センに店舗を構えるウォルマートも拡大戦略に乗り出し、先ごろ上海で新規店舗の建設に着手した。カルフールも市場争奪で負けてはいない。中国地区担当総裁の施栄楽総裁は「2005年には北京と上海、広州、深センの4都市で新たに計12店舗を展開する」方針を表明している。

中高所得層をターゲットにしたブランド専門店が大挙して上海、北京、広州などの大都市に進出し始めたのは2004年後半からだ。上海の南京西路沿いに並ぶ国際ブランド品は458種を数え、2003年に比べ倍増。

商務部のデータによると、2003年の外資系小売業の総売上高は2108億元(1元約13円)に達し、小売業全体の4.6%を占めた。外資進出の多い都市では10%超。うち国内チェーン企業ベスト30社に顔を連ねる外資は6社を数え、30社の総売上高に占める割合は18.3%に上る。

外資の業績はほとんどが良好だ。その原因の1つが現地化戦略。例を挙げれば、カルフールは消費者のニーズを読み取った経営で国内大型店と大差ない。今後進出する外資にとってモデルケースとなる。

英小売最大手テスコは2004年7月、2億6000万ドルを出資して国内「楽購スーパー」の株式50%を取得し、その利用して中国市場に進出。長期にわたり直営店を展開してきたマクドナルドも2005年から、ライセンス経営の大規模展開に乗り出すとの方針を表明している。

専門家は「現在、国内企業の合併・買収(M&A)で外資が占める比率は16%と、それほど高くはない。だが、政策や環境が成熟すると共に、以下の状況が出現すればM&Aのチャンスはより拡大するだろう」と指摘する。その条件として(1)政府が国有企業の再編を継続し、持ち株比率を引き下げる(2)国内の民間大企業が競争力を高めるため、海外に投資し戦略的パートナーを見つける(3)一部民間企業が過激な競争にさらされて、自己資産を特化させる(4)一部外資がグローバル戦略の変更や業績不振などの原因で、国内での一部投資プロジェクトを放棄する――の4点を挙げている。

中国チェーン経営協会の郭戈平会長は「外資が小売市場に参入する方法は直営店やM&A、ライセンス経営など多元化に向け発展している。現在の傾向を見れば、国内企業と外資の間、また国内企業との間や外資との間でも熾烈な競争が生じるのは避けられない」と指摘する。

国内企業の競争対応力

「小売業の中でも、その業態によって競争の圧力は異なる」。郭会長こう強調する。小売業が開放されて先ず、最も圧力を受けたのが建材と家具連業界だ。

「東方家園」や「家世界」「居然之家」など、国内有名家具チェーン店などが外資進出で過激な競争に直面することになった。22のチェーン店を擁する東方家園集団の張宏偉総裁は「2005年に100店舗まで拡大する計画だが、現在の状況下では不可能だ」と話す。建材市場は総体的に赤字状態に置かれている。 

一方、百貨店業界は平静だ。「物美」や「超市発」などのスーパーチェーン店も、吹き荒れる寒風にビクともしていない。ローランベーグ・コンサルタント社の張峰顧問は「総合小売業は国外で既に時代遅れの業態になっているので、国内の小売業界が全面開放されてとしても、すぐに外資が殺到するはないだろう」と分析する。

「百聯集団」の張新生会長も、急速に拡張する外資小売業に対しいささかも憂慮していない。「全面的な開放に向け、外資は様々な方法を用いて中国市場で試験的に経営してきたので、今後2〜3年の間は、国内企業に多大なダメージを与えることはないだろう。ただ、この数年の間に拠点や人材、集客の面での強みを集中させれば、国内企業は外資と太刀打ちできる」と強調。

最も平穏に構えているのが、家電チェーン業界だ。大中電気有限公司北京分公司の金?社長は「現在のところ、競合する外資の家電チェーン店は出現していない。圧力はむしろ『国美』や『蘇寧』といった国内同業他社だ」と指摘。一方、北京国美電気有限公司の王輝文社長は「開放されてからのこの期間は、我々にとって何でもなかった。今必要なのは、競争力そのものを高めることだ」と語る。

外資小売業の市場拡張戦略に対し、国内企業も地域進出に積極的だ。北京に48店舗を展開している大中の金?社長は、地域の強みを強化すると同時に、天津や河北省の保定と石家荘の3カ所に進出するほか、さらに販売ネットを拡大していく経営方針を明らかにした。

蘇寧や国美も改装や、新規開店に乗り出している。蘇寧の北京・馬家堡店が先ごろ開店。投資額は数億元。国美も売場面積6000平方メートルの支店を2004年末までに4店開店させた。

国家統計局によると、小売りチェーン企業関連統計を正式に取り始めて3年近くの間、店舗数は年平均23.6%ずつ増えている。

だが外資の強大な力に対抗するには、新規開店するだけでは不十分だ。東部の上海では、「第一百貨」と「華聯」が合併。再編によって経費を削減し、競争力を高めるためだ。西部の重慶直轄市では、「重慶百貨」の筆頭株主が「重慶商社」との合併を交渉中。再編が成功して誕生する新重慶省社集団は、西部で中核的な商業企業となる。

国内企業の再編が進む中、上海百聯集団が最大手になることは間違いない。2003年に同市の大手数社を統合して誕生。総資産額は274億元、純資産は84億元。2003年の売上高は921億元。20の省・直轄市に約4000店舗を構え、国際的に見ても様々な業態を展開する国内最大の企業だ。

生き残るのはどの企業か

国家情報センター中国経済情報ネットワーク(国家情報センターが各省庁、省・自治区・直轄市の情報センターと共同構築した全国的な情報ネットワーク)は2004年11月7日、小売業は2005〜2010年の間、年率8〜10%のスピードで安定成長すると予測する報告を発表した。

上海チェーン経営研究所の顧国建所長は「今後3〜5年の内に、外資は進出期から全面的かつ急速に拡張する期間に向かうだろう」と指摘。

ある企業は「3年から5年かけて、国内の小売市場の主導権は外資が握ることになるだろう。その60%は世界最大手の3〜5社が占め、30%は国内の最大手、残り10%は地方の大手が手中に収める」と予想の見通しを示している。

外資の勢いはすさまじいが、WTO加盟交渉で首席代表を務めた博鰲アジアフォーラムの竜永図秘書長は「中国には広大な市場がある。外資大手が進出に当たり選択するのは主に大都市だ。中小都市や広大な農村部は依然、国内企業が絶対的にコントロールしている。特に広大な農村市場は、今後20〜30年以内に主導権が外資の手に落ちることはない」と指摘する。

中国人民大学商学院の黄国雄教授は、外資の気色を論じる必要はないと強調。その上で「圧力は確かにあるが、いずれにしても、考え方や管理、経営、サービス面を見れば、国内企業と外資との間には一定の距離がある。国内企業には資金や人材が不足しているものの、地域的な強み、長年にわたる経営を通じて消費者との信頼関係を築いてきた。これは外資が短期間で獲得できるものではない」と強調。

更に黄教授は「外資の進出と共に、国内企業の力も相応に強まった。1992〜1996年にかけて進出した外資の業態は主に総合スーパーだが、この期間、国内総合スーパーも急成長を遂げた。96年から外資は営業面積拡大戦略に乗り出したが、国内企業も同様に規模化を実現した」と分析する。

今後の小売業界について黄教授は◆国有企業が主導する◆民間企業が主体となる◆外資が補完的役割を果たす――との3極分化を指摘。

外資の猛攻撃により小売業界は多方面にわたり圧力やチャレンジに遭遇したが、これを契機に国内資源の再編が促進され、国内小売企業全体の競争力も高まった。

大中の金?社長は「国内小売業界は、例えば、販売促進方法や商品の種類などが一目で分かるようになるなど、かなり透明性を増してきた。外資との直接競争は我々に学ぶチャンスを与えてくれた」と強調する。国内企業が外資の管理ノウハウを更に深く習得することについて、専門家は「海外企業との中味の濃い提携や、こうした海外企業を支援してきたコンサルティング会社などに依頼することで実現は可能だ」と指摘する。

外資とのつばぜり合いは今後必然。とはいえ、その結末がどのようになるかは予測できない。ただ、多くの消費者に豊富な商品が提供されるのは確かだ。