2005 No.08
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津波政治

津波とそれをめぐっての援助は国際政治関係に影響を及ぼしてはいるが、国際政治秩序が根本的に変えることはない

丁編

「9.11」対米テロ事件のほかに、世界を震かんさせたのはインド洋の大津波以外にない。「9.11」事件と同じように、2004年末に発生した大津波と国際社会が行なった未曾有の援助活動は、必ず国際政治関係に深い影響を与えることになろう。

専門家たちは今回のインド洋地震によって次の国際政治関係分野に変化が起こると見ている。

まず、今回の津波をめぐっての救援活動で、西側諸国の役割と影響がいくらか少なくなったことである。大津波発生後、一部の西側の国は国際援助を主導しようとしたが、実現しなかった。アメリカはいったんは国連を無視して、「自由意思による協力」の形で、アメリカをはじめとする「国際援助中核グループ」を結成しようとしたが、国際社会に反対された。アメリカは国連がこの大がかりな国際援助を主導することに同意せざるを得なかった。一部のヨーロッパの国は国際援助の中で行動が緩慢であったため、国際援助メカニズム確立の政治指導能力に欠けていると見なされた。これまで非難されていた国連の地位が向上するようになった。津波の発生によって国際社会がグローバルな危機にともに当たる必要性が急増し、国連の指導、指揮、協調、組織の役割にはとって代わることができなくなった。国連の重要性は世界各国に認められることになった。

二、非伝統的安全の脅威が当面かなり大きな緊迫性と突発性をもつことになり、防ぎきれなくなったこと。非伝統的安全の脅威の挑戦への対応と表面化した問題とその根本をなす問題を同時に解決する危機管理は国際安全の議事日程と各国の国家安全戦略において重要な地位を占めるに至った。これに対し、津波発生以前に公布された「国連改革知名人グループレポート」が明らかにしているように、21世紀において国際安全は六つの脅威に直面している。まずは貧困、伝染病及び環境の劣化、大きな自然災害を含む経済と社会面の脅威である。今日の安全の脅威に独自に対応できる国は存在しない。唯一の解決策はより幅広く、より効果的な集団安全メカニズムを確立することである。  

三、災害は当面のグローバル化がさらに深まったことを明らかにしている。津波による破壊と影響の範囲の広さにしても、マスメディアが集中して報道したことにしても、各国のそれに対する反応の迅速さと広さにしても、世界各国政府と人びとが救援活動の中であらわにした世界じゅうの人々が一つの家族のように困難があればともに克服する精神が具現されている。グローバル化は客観的に存在しているばかりか、主観的意識の一種として人心にしみ込んでいることも示している。

今回の援助においての先進諸国の政治的意図は顕著に現れており、国際社会は国際援助の政治性をよりはっきりと認識するようになっている。専門家たちは多くの面からアメリカの援助の政治と戦略的意図を分析している。安全の視点から見れば、米軍は自らの力を誇示し、「不安定な地域」に対する戦争の計画を推進し、救援を通じて米軍が主導する合作作戦をシミュレーション演習を行なおうとした。中国社会科学院世界経済・政治研究所国際戦略研究室の沈驥如主任は、アメリカはかつて何度もマラッカ海峡に軍隊を進出させることを望んでいたが、インドネシア、マレーシアに拒否された。今回の津波の震源域はちょうどマラッカ海峡に近いスマトラにあった。そのため、アメリカの軍艦が急派された。「これは南アジアのインド洋地域に対する浸透の一種である」。アメリカのパウエル前国務長官は「救援はアメリカの安全への投資である」と公言した。そのほか、イラク戦争でイスラム諸国とアメリカの関係が悪化しており、アメリカは人道主義援助を通じて、イスラム諸国の人たちのアメリカに対するイメージを変えようとしている。政治と外交の面で、アメリカは衆人環視のもとで行なわれる貢献によってイメージアップをはかろうとしているのである。しかし、米ワシントングロバール発展センターの統計データによると、インドネシア、インド、タイ、スリランカなどの国はアメリカの援助を受けたあと、アメリカ製品を輸入するために巨額の関税を支払わなければならなくなっているのである。

日本にとっても今回の津波災害はチャンスとなった。マラッカ海峡は日本の海運にとって非常に重要な意義があるため、国益を守るため、日本政府はこれまでで最大規模の自衛隊を派遣して救援活動に参加させると公明した。以前にも、日本は2001年に自衛隊をインドの震災地に救援に派遣し、2003年にはイランの震災地に自衛隊を派遣したことがあり、議論の的となった。沈驥如氏は、日本が災害地に派遣したのは「自衛艦」である。自衛艦では物資を積み込むスペースがそれほど広くない。これは日本が自衛隊の海外派遣を経常化させることをねらい、それに慣れさせることを示している。中国社会科学院世界経済・政治研究所の王逸舟副所長は、2005年に国連創建60周年を迎え、安理会常任理事国のメンバー増加が日程にのぼっており、日本が気前よく援助を行なうのは、人道主義のほか、票の獲得も念頭にある可能性がある。

それと同時に、ドイツの約7億ドルの援助も国連安理会常任理事国入りのためにASEAN諸国の支持を得ようと意図がある。約8億ドルを寄付したオーストラリアは、インドネシアとの関係を固める意図を明らかにした。

大多数の専門家は津波が「9.11」事件発生後に形成した国際政治の枠組を変えるかどうかについて疑問を抱いている。王逸舟氏は、「9.11」事件は今の国際体系の寄生したものであり、現有の不合理な国際秩序へのリバウンドであり、ブッシュ・ドクロリンの強力な攻撃・抑え付けは新たな国際テロリズムの発生を促すことにもなっている。「今回の津波は天災である。グローバルな衝撃をもたらしたにもかかわらず、性格はまったく異なるものである」と見ている。災害救援は重要な事柄であり、相対的に言えば短期的行為であり、「9.11」事件のように国際政治に大きな衝撃をもたらすことはないし、世界の枠組を根本的に覆えし、それに挑戦するものとはなりえない。