2005 No.09
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発展途上国からの津波災害への緊急援助

インド洋大津波・スマトラ沖地震に対する国際救援活動の中で、発展途上国は援助受け入れ国というこれまでのイメージから脱却し始め、積極的な役割を果たすことになった。

丁志涛

今年の元日の朝、瀋陽市在住の6歳の牟奕?ちゃんが、小銭を貯めるための石膏製のブタの形をした貯金箱をしっかり手に抱え、瀋陽市紅十字会(赤十字のこと)にやってきて、3年間貯金である177.71元(22ドル相当)をインド洋津波の被災地の子供たちへの義捐金として手渡し、係の人に「この小ブタも一緒にあげます」と言った。牟奕?君はそれがゆえにアナン国連事務総長にほめられた。

昨年末のスマトラ沖地震およびそれによって誘発された津波が発生した後、国際社会はいち早く史上最大規模の人道援助を展開し、その中で、発展途上国からの援助は格別目立つことになった。温家宝中国総理は災害発生後に、「われわれも同じように悲しみを感じている」、中国は自然災害が頻発する発展途上国であり、多くの友好国から援助を得たことがある、と語った。

今回、中国は隣国に援助の手を差し伸べた。まず、直ちに医療チームを派遣し、しかも最初に2163万元相当の物資と現金援助を提供することを明らかにした。その後また5兆元と2000万ドルを追加した。中国の援助金はすでにほとんどが被災国に渡された。中国の援助金額は中国の農民26万人の年収(03年の政府の統計データによる)に相当するものであった。中国政府の援助のほか、民間からの援助もますます多くなっている。1月15日までに、民間の義捐金は2億8000余万元に達した。また、中国の各宗教団体、とりわけ仏教協会も義捐金募集に参加した。著名な寺である少林寺が募った40万元の義捐金はすでに被災国に交付された。

中国の人々は従来から自然災害に見舞われた国やその国の人々に同情心を抱いてきた。今回の地震は中国の人たちに1976年中国の唐山で起きた24万人の死者が出た大地震を思い起こさせた。しかし、今回の災害救助は決してこうした連想から出発したことだけではなく、中国社会科学院世界経済・政治研究所国際政治研究室の王逸舟主任が語っているように、今回の政府から民間に至るまでの「かつてない」救援行動は、中国が国際社会で責任のある大国の役割を演じ、中国政府と国民の国際意識が日ましに成熟に向っていることを示すものである。 AFP通信の報道によると、中国の救援金は、一度に提供されたものとしてはこの世界最大の発展途上国が提供した史上最大規模のものであり、この世界最多の人口を擁する大国は世界のヒノキ舞台でますます重要な役割を演じていることを示した。アメリカのニクソン・センターの中国問題研究担当のデービッド・ランプトン氏は、「史上空前の規模の義捐金の提供を通じて、中国はその他の国、とりわけ隣国に、急速に力をつけつつある中国は親しい世界公民になれることを示そうとしている」と語っている。

「20世紀60、70年代の中国の対外援助は、大きな度合いにおいて国際共産主義運動推進というイデオロギー面の考慮が含むものであった」、と北京大学国際関係学院国際安全研究項目主任の朱鋒教授は見ており、同教授はさらに次のように述べている――しかし、今回は主に被災国との間で善隣友好、平等協力の関係を発展させ、人道や関心、配慮、同情に基づく援助であり、具体的な出来事に対応することであって、イデオロギーに基づくものではなく、過去のもとは本質的な違いがあるというわけである。つまり、今回の援助は「錦上に花を添えることではなく、雪降っている時に炭を送り届けることである」(美しいものの上にさらに美しいものを加えることではなく、最も困っている時に援助の手を差し伸べるたとえ)。私心をはさまない援助は地域での中国のイメージを改善し、ASEANとの戦略的パートナー関係を発展させることができ、「中国脅威論」を取り除くうえでもプラスとなる。報道によると、東南アジアでは、「中国脅威論」の影響が依然として存在しているが、それと同時に、「中国はチャンスだ」、「中国の貢献」および「中国は責任のある大国だ」こともよく耳にするようになった。

1月25、26の両日、中国とASEANは地震・津波予報シンポジウムを開催し、「地震・津波予報システムの技術フォーラムをつくる行動計画」に調印した。この計画によると、中国政府は国連の要請に呼応し、アジア地域の地震予報施設の整備に、計器、技術サポート、人員の育成、地震予報の研究、災害評価、応急救援などの面で援助を提供することになる。それ同時に、先に約束した最も近い期日に、ASEAN諸国とその他の機構に育成カリキュラムを提供し、ASEAN諸国に災害対応計画、災害対応の需要と能力の評価についてのサポートを提供し、ASEAN諸国がそれぞれの地震センターのレベルを高めることに協力する。先般、温家宝総理も、中国は「風雲2号」衛星の関連データと製品を被災地区と共有し、被災国の気候予測、環境モニター、災害評価などのために情報と技術サポートを提供したいと表明した。

自然災害予報メカニズムのレベルについては、発展途上国と先進国との格差は大きいと中国社会科学院アメリカ研究所の王緝思所長は見ている。中国は災害予報システムと危機管理メカニズムの構築の面で、多くの経験を積み重ねてはきたが、多くの教訓もある。したがって、発展途上国、先進国、ASEAN+3、ASEANおよびアジア諸国はこのメカニズムの整備に力を入れるべきである。そうすれば、今回の津波のような災禍が再度発生したら、より多く、よりよく、そしてそれほど政治的でない国際協力がなされることになろう。

津波が発生した18日後に、国連の環境開発と持続可能な発展プログラムの一環としての島嶼諸国サミットがモーリシャスの首都で開かれた。李肇星中国外交部長は会議で次のように述べた――国際社会の島嶼諸国への政府援助は絶えず減少しており、1994年の23億ドルから2002年の17億ドルに減少することになった。技術譲渡とスキルの強化についての国際協力の進展も鈍化し、これは非常に非論理的なことである。李肇星部長は南北協力、南南協力、地域協力、および政府間協力、企業と民間の協力を展開するよう呼びかけた。今回の津波の発生によって、人々はいっそう、発展途上国の声をこれまで以上に聞き取り、発展途上国の連帯を強化し、友好往来を密接にしようとする努力を意識するようになった。

温家宝総理はスマトラ沖地震・津波被害の復興支援緊急首脳会議に出席した際、インド外相と会見し、中国側は災害救助、災害後の再建、防災などの面でインドと協力を展開したい考えを明らかにした。こう見ると、津波は関係諸国の関係改善、協力強化のチャンスともなっているのである。ワシントンの戦略国際研究センター中国問題担当のドルー・トンプソン氏は、津波はニューデリーと北京の間の友好的な接触を加速する可能性さえ秘めていると見ている。

中国外交学院の曲星副学長の考えでは、中国と津波の被災国には友好的に付き合ってきた歴史があり、その中には短期間の曲折、衝突や言い合うこともあった。今回の国際災害救助活動はまたも、肝心な時に中国が信頼できる友人であることを関係諸国に伝えることになった。「アジア太平洋地域に立脚し、周辺諸国を安定させることは中国外交の重要な戦略的方策である。中国の災害救助活動は、中国の善隣外交の強力な一環であり、中国の積極的外交のメルクマールでもある」。

シンガポール国立大学東アジア研究所の鄭永年氏は、いかなる国の国際的な声望または地域的な声望も、決して一挙にして確立できるものではない。責任のあるアジアの大国としての中国のイメージは、1997年のアジア金融危機の発生後に確立したと言うべきである、と見ている。

そのとき、中国が提供した援助資金はそれほど多くなかったとはいえ、人民元を切り下げないことを約束したため、アジア金融市場の安定に効果的な役割を果たした。それにつぐテロ活動取締り、新型肺炎への対応、津波災害救助などの「危機の際の協力」の中で、中国のイメージは東南アジアでさらに向上した。「9.11テロ事件」とインドネシアのバリ島における爆発事件発生後に、中国とASEANは非伝統的安全保障分野での協力を強化することで合意した。新型肺炎が発生した後、中国とASEANは03年4月に公共衛生分野での協力メカニズムの構築について特別サミットを開いた。毎回の危機が過ぎ去ると、中国と東南アジア諸国の関係は新しい段階に入ることになった。現在、中国は、「善隣(隣国と仲良くする)」を踏まえて、また「安隣(隣国を安定させる)、富隣(隣国を豊かにする)」政策を打ち出した。今回の救援行動がこの政策の具現だと見られている。

中国のほか、インドの救援活動も注目を浴びている。それは深刻な災害に見舞われたにもかかわらず、国際援助を受け入れなかったばかりか、1万人近くの救援軍や船舶、飛行機をスリランカ、モルジブ、タイ、インドネシアなどの国に向わせて救援活動を行った。インドのシン外相はジャカルタ会議で、「インドにはこの地域の困難の解決のために援助する力がある」と強調した。外部からの武装力がインド洋に入ることを防ぐ戦略的考慮のほか、インドのやり方はその政府と国民に大きな自助能力と必勝の自信があることを示すものである。また、その行動の裏にある戦略的考慮は、責任のある大国と国連常任理事国となるための準備でもあると見るアナリストもいる。

インドネシアとスリランカはアメリカ軍が国際救援に参与することに反対し、タイはフランスとドイツの債務減免の好意を断わり、日本にはタイへの援助金をよりひどい災害に見舞われたその他の国に届けることを提案した。災禍の発生後の多角的外交活動の中で、ASEANは被援助者の役柄のみを演じてはいなかった。ジャカルタの救援サミットはASEANの提案によって開かれたものである。ASEANの一部は今回確かに多くの援助を受けたが、正真正銘の被援助国にはならず、ASEANの内部では、相互救援の効果が非常に大きく、しかも国際救援活動の協調センターの地位に立っている。これはASEANという国際機構がかなり実力をもち、行動力も大きいことを物語っている。

国際援助システムの中で、先進国と発展途上国の役割と影響力は一方が衰えるようになると、他方が伸びるという具合になっている。発展途上国は一方的に援助を受ける貧しい国のイメージを一変し始め、国際援助で積極的な役割をも果たすようになっており、客観的には国際社会における先進国の主導的地位を弱めることになっている。こうした新しい動きは国際援助事業全般の発展に重要な、段階的な変化をもたらすことになる、と中国共産党中央党学校国際戦略研究センターの林暁光研究員は見ている。

今回の災害緊急救援では、主役を演じているのは依然として先進諸国であるが、ほとんど世界の隅々からの援助も重視に値するものである。サウジアラビアとカタールは被災地区のために多額の資金を提供し、これまでずっと国際援助の対象となってきたアフリカ諸国さえも被災国に援助を提供している。朝鮮は15万ドル緊急援助を提供するとの声明を発表した。発展途上諸国は経済力の制約があって、先進諸国の援助競争に仲間入りする力がなく、力相応のことをする以外にない。それにしても、それが救援のために払った努力は、同じように国際社会に是認されている。国際援助は人道的目的から出発したものと言っても、政治・外交的目的と長期的な戦略的意図を帯びることも避けがたく、必ず各国政府が自国の意志を表し、国家間の関係を調整し、国際的枠組みのバランスをとり、国際秩序を構築し、国の発展戦略目標を実現する重要な手段と主な方策となるに違いない。

先進諸国は現在、国際関係のシステムと国際政治の枠組みにおいて主導的地位にあるにもかかわらず、発展途上国が国際援助の中で積極的な役割を果たす戦略的動きと政策的行為は、必ずや国際関係の変化と発展に対し否定することのできない役割を果たし、深遠な影響を及ぼすことに違いない。