2005 No.09
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中国の民族区域自治

中華人民共和国
国務院報道弁公室
2005 年 2 月・北京

前書き

中華人民共和国は統一した多民族国家であり、今までに識別を通じて中央政府に確認された民族は 56 ある。中国の各民族の人口の差は非常に大きく、そのうち漢民族の人口が最も多く、他の 55 民族の人口が相対的に少なく、習慣的に「少数民族」と称されている。 2000 年の第 5 回全国国勢調査によると、 55 の少数民族の人口は 1 億 449 万人で、全国総人口の 8.41 %を占めている。中国の各民族人民はともに統一した多民族国家を樹立し、悠久の光り輝く中華文明をつくり上げ、中国の歴史の発展と進歩を推し進めるため、自らの重要な貢献をした。

中国では、民族区域自治とは国の統一的指導の下で、各少数民族が集まり住む地方が区域自治を実行し、自治機関を設立し、自治権を行使することを指す。中国が民族区域自治を実行することは、各民族の平等、団結、互助の関係を強化し、国家の統一を守り、民族自治地方の発展を速め、少数民族の進歩を促す上で、大きな役割を果たしている。

一、統一した多民族国家の国情と民族区域自治

中国共産党は 1921 年に創設されてから、中国の民族問題を解決する正しい道を積極的に模索し、民族政策を成功裏に制定、実行し、全国の各民族人民を結集、指導して新民主主義革命の勝利を勝ち取った。 1949 年 9 月、新中国成立直前に招集された中国人民政治協商会議では、中国共産党の提案により、各民族、各党派の代表は共に協議して、統一した多民族の中華人民共和国を樹立することを決定し、当時臨時憲法の性質をもつ「中国人民政治協商会議共同綱領」を可決した。同綱領は特に一章を設けて、新中国の民族政策を詳しく述べ、民族区域自治を基本的国策に明確に確定している。新中国がこの重要な歴史的選択を行ったのは、主に中国の国情を把握しているからである。

(一)統一した多民族国家の長期にわたる存在は、民族区域自治を実行する歴史的根拠である

中国は長い歴史を持つ統一した多民族国家である。早くも前 221 年(西暦、以下同じ)に、中国史上の最初の封建王朝である秦朝(前 221 年〜前 206 年)は国家の最初の大統一を実現し、そのあとに樹立された漢朝(前 206 年〜 220 年)は統一の局面をいちだんと発展させた。秦朝と漢朝は全国で郡県制を実行し、法律、文字、暦法、車の軌間、貨幣、度量衡を統一し、各地区の各民族の交流を促進し、中国という 2000 余年間続いた統一した多民族国家の政治、経済、文化などの面の基本的枠組みの基礎を築いた。その時から、漢民族の樹立した隋( 581 年〜 618 年)、唐( 618 年〜 907 年)、宋( 960 年〜 1279 年)、明( 1368 年〜 1644 年)など王朝の中央政権と少数民族の樹立した元( 1271 年〜 1368 年)、清( 1644 年〜 1911 年)など王朝の中央政権を問わず、いずれも自ら中国の「正統」をもって自任し、統一した多民族国家の樹立を最高の政治的目標とした。

中国歴代の中央政権のほとんどは、少数民族地区に対し「習俗に従って管理する」政策を実行した。つまり政治的統一を実現する前提の下で、民族地区の既存の社会制度と文化形態を保つことである。漢朝が今の中国の新疆地区に設けた西域都護府、唐朝が同地区に設けた安西と北庭の二大都護府は、いずれも軍事と行政の重要な活動を管理するだけであった。清朝の中央政権は異なる民族地区の特徴に照らして異なる管理措置をとり、蒙古族地区では盟・旗制度を実行し、チベットには駐蔵大臣を派遣し、ダライとパンチェンの二人の活仏への冊封を通じて行政宗教合一制度を実行し、新疆のウイグル族が最も集中している地区では伯克(清朝が新疆ウイグル地区に設けた官吏――訳注)制度を実行し、南部の若干の少数民族地区に対しては土司(中国が元・明・清時期に西南地区に設けた少数民族を統治する施政官――訳注)制度を実行した。古い社会制度の下では各民族の間に近代的意義をもつ平等な関係が形成される可能性がなく、民族の間にも矛盾、衝突ひいては戦争の発生が避けられないにもかかわらず、中国歴史上の統一した多民族国家の長期にわたる存在は、各民族間の政治、経済、文化の交流を極めて大きく促進し、各民族の中央政権への求心力と認知感を絶えず増進している。

(二)近代以来外部からの侵略に反抗する闘争の中で形成された愛国主義精神は、民族区域自治を実行する政治的基礎である

1840 年のアヘン戦争後の 110 年間に、中国はたびたび帝国主義に侵略、侮辱され、中国の各民族人民は抑圧され、奴隷のように酷使される状態に陥った。国家の四分五裂と民族の生死存亡の緊急な瀬戸際に、中国の各民族人民は一致団結して共に外国の侮辱に抵抗し、国家の主権と統一を守り、民族の独立と解放を勝ち取るために堅忍不抜な闘争を行った。特に抗日戦争( 1937 年〜 1945 年)期に、中国の各民族はいちだんと連合し、敵愾心を燃やして、侵略に抵抗し、家と国を防衛した。回民支隊、内蒙古抗日遊撃隊など少数民族を主とする多くの抗日勢力は、反ファシスト戦争の勝利を奪い取るため、歴史に感動的な一章を書き記した。中国の各民族は帝国主義の侵略に反対すると同時に、ごく少数の民族分裂分子が帝国主義勢力の支持の下で、「チベット独立」、「東トルキスタン」、かいらい「満州国」などを画策し、つくり出す分裂行為に対し断固たる闘争を行った。外部からの侵略に反抗する闘争の中で、各民族人民は、偉大な祖国が各民族が共有する故郷であり、国家の主権と統一、領土保全がなければ、各民族が本当の自由・平等と発展・進歩を実現することができず、中国の各民族人民がいちだんと固く団結、連合してのみはじめて国家の主権と統一、領土保全を守り、国の繁栄と富強を実現できることを深く体得した。

(三)各民族が大面積に雑居し、小面積に集まり住むという人口の分布状態、各地区の資源条件、発展の格差は、民族区域自治を実行する現実的条件である

中国の各民族の形成と発展の歴史は、各民族が互いに融け合う歴史でもある。長期にわたる歴史的発展の過程で、各民族は頻繁に移動し、次第に大面積では雑居し、小面積では集まり住むという分布の枠組みを形成した。漢民族は中国の人口の最も多い民族として全国にくまなく分布している。少数民族の人口は少なく、しかも主に広大な辺境地区に住んでいるとはいえ、内陸部の県クラス以上の行政区域にはいずれも少数民族が住んでいる。このような民族が混合し合い、互いに依存する人口の分布状況は、少数民族が集まり住む地方を基礎として、類型と行政等級の異なる民族自治地方を設置することを決定付けている。これは民族関係の調和、安定と各民族の共同の発展にとって有利である。

少数民族が集まり住むところは面積が広く、天然資源が豊富であるが、その他の地区特に発達地区と比べて、経済と社会の発展レベルは相対的に立ち遅れている。民族区域自治を実行すれば、少数民族地区の強みを十分に生かすと同時に、少数民族地区とその他の地区との交流と協力を促進し、それによって少数民族地区と国全体の現代化建設を速め、各地区の共同の発展と各民族の共同の繁栄を実現することができる。

二、民族区域自治の政治的地位と民族自治地方の設置

(一)民族区域自治の政治的地位

1954 年に開かれた第 1 期全国人民代表大会は、民族区域自治制度を「中華人民共和国憲法」(以下、「憲法」と略称)に記載した。その後、中国が「憲法」を改正するたびに、この制度をあくまで実行することを明記した。 2001 年に改正、公布した「中華人民共和国民族区域自治法」(以下、「民族区域自治法」と略称)は、「民族区域自治制度は国の基本的な政治制度である」と明確に規定している。

早くも 1952 年に、中国政府は「中華人民共和国民族区域自治実施綱要」を発表し、民族自治地方の設置、自治機関の構成、自治機関の自治権利など重要な問題に対し明確な規定を行っている。 1984 年 5 月 31 日、民族区域自治実施の経験を総括した基礎の上で、第 6 期全国人民代表大会第 2 回会議は「民族区域自治法」を可決するとともに、同年の 10 月 1 日から正式に施行することを決定した。 2001 年、社会主義市場経済の条件下で民族自治地方の経済・社会事業の発展をいちだんと加速する必要に応え、民族自治地方の各民族人民の願望を十分に尊重、体現する基礎の上で、全国人民代表大会常務委員会は「民族区域自治法」を改正し、同法をいっそう完全なものにした。

「民族区域自治法」は「憲法」の定めた民族区域自治制度を実施する基本的法律であり、その内容は政治、経済、文化、 社会 などの各方面をカバーしている。同法は中央と民族自治地方の関係および民族自治地方の各民族間の関係を規範化させており、その法的効力は民族自治地方に限られるだけではなく、全国の各民族人民とすべての国家機関も同法を遵守、執行しなければならない。

(二)民族自治地方の設置

中華人民共和国成立前の 1947 年、中国共産党の指導の下で、すでに解放された蒙古族地区に中国最初の省クラスの少数民族自治地方――内蒙古自治区が設置された。中華人民共和国成立後、中国政府は少数民族が集まり住むところで民族区域自治を全面的に推し広め始め、 1955 年 10 月には新疆ウイグル自治区が、 1958 年 3 には広西チワン族自治区が、 1958 年 10 月には寧夏回族自治区が、 1965 年 9 月にはチベット自治区がそれぞれ設置された。 2003 年末現在、中国に合計 155 の民族自治地方が設置され、その内訳は自治区 5 、自治州 30 、自治県(旗) 120 である。 2000 年の第 5 回国勢調査によると、 55 の少数民族のうち、自治地方を設置した少数民族は 44 あり、区域自治を実行する少数民族の人口は少数民族総人口の 71 %を占め、民族自治地方の面積は全国国土総面積の約 64 %を占めている。

中国の若干の少数民族が集まり住む地域がわりに小さく、人口がわりに少なくしかも分散して、自治地方の設置に適しないことにかんがみて、「憲法」は民族郷設置の方法を通じて、これらの少数民族も主人公となって、自民族の内部事務を管理する権利を行使できるようにさせると規定している。 1993 年、民族郷制度の実施を保障するため、中国政府は「民族郷行政工作条例」を公布した。 2003 年末現在、中国は郷に当たる少数民族が集まり住むところに合計 1173 の民族郷を設置した。人口がわりに少なくしかも集まり住む区域がわりに小さいため区域自治を実行していない 11 の少数民族のうち、民族郷を設置した少数民族は九つある。

中国の民族自治地方は自治区、自治州、自治県の 3 クラスに分かれている。この 3 クラスの行政的地位を区分する根拠は、少数民族の集中的居住区の人口の多少、地域面積の大小である。各民族自治地方はいずれも中華人民共和国領土の不可分の一部である。民族自治地方の自治機関は国家の統一を守り、憲法と法律が当地で遵守、施行されるのを保証しなければならない。上級の国家機関と民族自治地方の自治機関はいずれも平等、団結、互助の民族関係を守り、発展させなければならない。

少数民族が集まり住む地方は、当地の民族関係、経済発展などの条件に基づき、歴史的状況を参酌して、チベット自治区、四川省涼山イ族自治州、浙江省景寧シェ族自治県などのような少数民族の集まり住む区域を基礎とする自治地方を設置することができる。また青海省海西蒙古族・チベット族自治州、甘粛省積石山パオアン族・トンシャン族・サラ族自治県などのようないくつかの少数民族が集まり住む区域を基礎とする自治地方を設置することもできる。

一つの民族自治地方にあるその他の少数民族の集まり住む区域では、相応の自治地方あるいは民族郷が設置され、例えば新疆ウイグル自治区内に設置されたイリ・カザフ自治州、イェンチー回族自治県などがそれである。民族自治地方は地元の実情に基づいて、漢民族あるいはその他の民族の住民区と町を一部分含むことができる。

一つの民族に大小さまざまな集まり住む区域がたくさんあり、行政的地位の異なる自治地方を設置することができる。例えば回族は全国に寧夏回族自治区、甘粛省臨夏回族自治州、河北省孟村回族自治県など行政的地位の異なる民族自治地方をたくさん設置している。

民族自治地方の名称は、特殊な状況を除き、地方の名称、民族の名称、行政的地位の順で構成される。例えば広西チワン族自治区は、「広西」が地方の名称、「チワン族」が民族の名称、「自治区」が行政的地位である。

民族自治地方の設置、区域境界線の画定、名称の構成は上級の国家機関が関係ある地方の国家機関や関係ある民族の代表と十分に協議して立案し、法的手続きに基づいて上級に報告し、認可を申請する。自治区の設置は全国人民代表大会が認可する。自治区の区域画定および自治州、自治県の設置と区域画定は国務院が認可する。民族自治地方を設置したあと、法的手続きを経なければ、撤廃または合併してはならない。民族自治地方の区域境界線を確定したあと、法的手続きを経なければ、改変してはならない。確かに撤廃、合併あるいは改変する必要がある場合は、上級国家機関の関係部門と民族自治地方の自治機関が十分に協議して立案し、法的手続に基づいて上級に報告し、認可を申請する。

(三)民族自治地方の自治機関の結成

民族自治地方の自治機関は自治区、自治州、自治県の人民代表大会と人民政府である。民族自治地方の人民代表大会には、区域自治を実行する民族の代表のほか、本行政区域内に住むその他の民族も適切な人数の代表をもつべきである。民族自治地方の人民代表大会常務委員会では、区域自治を実行する民族の公民が主任あるいは副主任を担当すべきである。自治区主席、自治州州長、自治県県長は区域自治を実行する民族の公民が担任する。民族自治地方の人民政府のその他の構成メンバーは、区域自治を実行する民族とその他の少数民族の人員を合理的に配備すべきである。自治機関所属の活動部門の幹部に、区域自治を実行する民族とその他の少数民族の人員を合理的に配備すべきである。

三、民族自治地方の自治権

民族自治地方の自治機関は「憲法」第 3 章第 5 節で定められた地方国家機関の職権を行使し、同時に「憲法」、「民族区域自治法」とその他の法律の規定に基づいて自治権を行使し、地元の実情に基づいて国の法律、政策を貫徹、実行する。上級の国家機関は民族自治地方の自治機関の自治権行使を保障する。

(一)自民族、自地区の内部事務を自主的に管理する

民族自治地方の各民族人民は憲法と法律から与えられた選挙権と被選挙権を行使し、人民代表大会代表の選出を通じて自治機関を結成し、自民族、自地区の内部事務を管理する民主的権利を行使する。中国の 155 の民族自治地方の人民代表大会常務委員会は、いずれも区域自治を実行する民族の公民が主任あるいは副主任を担任し、自治区主席、自治州州長、自治県県長はいずれも区域自治を実行する少数民族の公民が担任する。

自治機関が自民族、自地区の内部事務を管理する政治的権利を十分に行使するのを確実に保障するため、上級の国家機関と民族自治地方の自治機関はさまざまな措置をとって、少数民族の各クラスの幹部と科学技術、経営管理など各種の専門人材を大量養成している。 2003 年末現在、少数民族の幹部と各種専門人材の総数は 290 余万人に達した。

それと同時に、各少数民族はまた自民族の全国人民代表大会代表の選出を通じて、国家事務管理の権利を行使する。第 1 期全国人民代表大会以来の各期の全国人民代表大会の少数民族代表の比率はいずれも少数民族人口の比率より高いものである。例えば、第 10 期全国人民代表大会に少数民族の代表が 415 人おり、代表総数の 13.91 %を占めているが、人口の比率より 5.5 ポイント高いものである。どの民族にも全国人民代表大会代表がおり、人口が 100 万以上の民族にはいずれも全国人民代表大会常務委員会委員がいる。

(二)自治条例と単行条例を制定する権力を享有する

「民族区域自治法」は、「民族自治地方の人民代表大会は一般の地方国家権力機関の権力を享有するほか、当地の民族の政治、経済、文化の特徴に基づいて、自治条例と単行条例を制定する権利もある」と規定している。「中華人民共和国立法法」は、「自治条例と単行条例は当地の民族の特徴に基づいて、法律と行政法規の規定に対し臨時応変の規定を行い」、「自治条例と単行条例は法に依って法律、行政法規、地方的法規に対し臨時応変の規定を行う場合、本自治地方では自治条例と単行条例の規定を適用する」と規定している。「民族区域自治法」はまた、「上級国家機関の決議、決定、命令、指示は、民族自治地方の実情に適しない場合、自治機関は当該上級国家機関に報告し、認可を得て臨時応変に執行するか執行を停止することができる」と規定している。 2003 年末現在、民族自治地方は合計 133 の自治条例、 384 の単行条例を制定し、民族自治地方が地元の実際に基づいて婚姻法、相続法、選挙法、土地法、草原法などの法律に対し臨時応変の規定と補足規定を行ったものが 68 件ある。

(三)自民族の言語と文字を使用し、発展させる

民族自治地方の自治機関が公務を執行する時、自民族の自治地方の自治条例の規定に基づいて、当地に通用する 1 種あるいは数種の言語と文字を使用し、同時に数種の通用する言語と文字を使用して職務を遂行する場合は、区域自治を実行する民族の言語と文字を主とすることができる。内蒙古、新疆、チベットなどの民族自治地方は、いずれも自民族の言語と文字の使用、発展と関係ある規定あるいは実施細則を制定、実施している。

新中国の成立後、国は 10 余りの少数民族が文字を改良、制定するのを援助した。 2003 年末現在、中国では 22 の少数民族が 28 種の自民族文字を使用している。中国では、司法、行政、教育などの分野でも、また国の政治活動と社会活動でも、少数民族の言語と文字が広く使用されている。いまでは、中国共産党全国代表大会、全国人民代表大会、中国人民政治協商会議などの重要な会議はいずれも蒙古、チベット、ウイグル、カザフ、朝鮮、イ、チワンなど各民族の言語・文字で印刷した書類と同時通訳を提供している。

(四)少数民族の宗教信仰の自由を尊重、保障する

中国の少数民族の大衆はほとんど宗教信仰があり、チベット族の大衆がチベット仏教を信仰し、回族、ウイグル族などがイスラム教を信仰するように、多数の大衆がある種の宗教を信仰する民族もある。民族自治地方の自治機関は憲法と法律の規定に基づいて、少数民族の宗教信仰の自由を尊重、保護し、少数民族公民のすべての合法的かつ正常な宗教活動を保障している。 2003 年末現在、チベット自治区にチベット仏教の活動施設が 1700 余カ所あり、寺院に僧侶と尼僧が約 4 万 6000 人おり、新疆ウイグル自治区にモスクが合計 2 万 3788 カ所あり、神職者が 2 万 6000 余人おり、寧夏回族自治区にモスクが 3500 余カ所あり、神職者が約 5100 人いる。各種の宗教活動は正常に行われ、少数民族大衆の宗教信仰の自由は十分に尊重、保障されている。

(五)自民族の風俗と習慣を保持するか改革する

民族自治地方の自治機関は各少数民族の在来の風俗と習慣に基づいて生活し、社会活動を行う権利と自由を保障している。それには少数民族の生活習慣を尊重し、少数民族の祝祭日の習俗を尊重、配慮し、少数民族の特殊な食品の経営を保障し、少数民族の特に必要な用品の生産と供給を助成、保証し、少数民族の婚姻、葬儀、埋葬の習俗を尊重することなどが含まれている。それと同時に、少数民族が衣食住行、冠婚葬祭の各方面で科学的、文明的で健康な新しい習俗を推し広めることを提唱している。

(六)経済建設事業を自主的に配置、管理し、発展させる

民族自治地方の自治機関は法律の規定と自地方の経済発展の特徴に基づいて、生産関係と経済構造を合理的に調整し、国家計画の導きの下で、自地方の資金、物資とその他の具体的条件に基づいて、地方のインフラ建設プロジェクトを自主的に按配し、自地方に所属する企業、事業体を自主的に管理している。民族自治地方は国の規定に基づいて、対外経済貿易活動を展開することができ、国務院の認可を経て、貿易港を切り開くことができ、民族自治地方は対外経済貿易活動の中で、国の優遇政策を享受する。各民族自治地方はいずれも国の国民経済と社会発展の総体的計画に基づき、実際と結び付けて、経済・社会発展の計画、目標、措置を制定している。

民族自治地方の自治機関は生活環境と生態環境を保護、改善し、汚染とその他の公害を防除している。法律の規定に基づいて、自地方にある草地と森林の所有権と使用権を確定する。法に依って自地方の天然資源を管理、保護し、法律の規定と国の統一的計画に基づいて、自地方が開発できる天然資源を優先的かつ合理的に開発、利用する。例えば、四川省アバ・チベット族・チャン族自治州は世界自然遺産である九寨溝、黄竜の強みを十分に生かして観光資源を観光産業に転換し、保護の中で開発し、開発の中で保護している。

民族自治地方の自治機関は地方の財政を管理する自治権がある。およそ国の財政体制に基づいて民族自治地方に属する財政収入は、いずれも民族自治地方の自治機関によって自主的に按配、使用される。民族自治地方の財政予算の支出は、国の規定に基づいて、予備資金を設立し、予算に占める予備金の比率は一般の地区より高い。民族自治地方の自治機関は財政予算を実行する中で、収入の超過分と支出の節約分の資金の使用を自ら按配する。それと同時に、民族自治地方の自治機関は国の税法を実行する時、国が統一的に審査、認可すべき税金減免プロジェクトを除き、地方の財政収入に属し、納税面から配慮、奨励する必要のある若干のものに対し、減税あるいは免税を実行することができる。

(七)教育、科学技術、文化などの社会事業を自主的に発展させる

民族自治地方の自治機関は国の教育方針に基づき、法律の規定によって、自地方の教育計画、各級各種学校の創設、学制、学校運営形式、教育内容、教育用語、生徒募集方法を決定する。少数民族の放牧地区と経済が困難で居住が分散している少数民族の山岳地帯では、寄宿と奨学金を主とする公立民族小学校と民族中学を創設し、勉学する生徒が義務教育段階の学業を終えるのを保障する。主に少数民族の生徒を募集する学校(クラス)とその他の教育機構は、条件があれば少数民族文字の教科書を採用するとともに、少数民族の言語を使用して授業すべきであり、また異なる状況に基づいて、小学校の低学年あるいは高学年から漢語課程を開設し、全国に通用する標準語と規範化した漢字を推し広める。

民族自治地方の自治機関は民族の形式と民族の特徴を持つ文学、芸術、報道、出版、放送、映画、テレビなどの民族文化事業を自主的に発展させ、関係機構と部門が民族の歴史と文化方面の書籍を収集、整理、翻訳、出版し、民族地区の名所古跡、貴重な文化財とその他の重要な歴史文化遺産を保護し、優秀な民族の伝統的文化を受け継ぎ、発展させるのを組織、支持している。 2004 年 8 月末現在、中国に世界文化遺産、自然遺産、文化と自然遺産が 29 カ所あり、そのうち民族自治地方にある文化遺産はラサのポタラ宮、麗江古城の2カ所あり、自然遺産は九寨溝、黄竜風景名勝区、「三江並流」自然景観など 3 カ所ある。そのほか、ナーシー族のドンバ古典文献が「世界記憶遺産リスト」に組み入れられている。

民族自治地方の自治機関は自地方の科学技術発展計画を自主的に決定し、科学技術知識を普及させ、また自地方の医療衛生事業の発展計画を自主的に決定し、近代的な医薬と民族の伝統的医薬を発展させている。 2003 年末現在、全国に民族病院が 157 カ所あり、そのうちチベット族の病院が 55 カ所、蒙古族の病院が 41 カ所、ウイグル族の病院が 35 カ所、タイ族の病院が 1 ヵ所、その他の民族の病院が 25 カ所あり、ベッドは 5829 床ある。

民族自治地方の自治機関はスポーツ事業を自主的に発展させ、民族の伝統的スポーツ活動を展開している。 2003 年末までに、中国は全国的な少数民族伝統的スポーツ大会を 7 回催した。 2003 年、寧夏回族自治区で催された第 7 回全国少数民族伝統的スポーツ大会では、 14 種目の競技と 125 種目のエキジビションが行われた。

四、民族自治地方に対する国の支持と援助

「憲法」は「国はあらゆる努力を尽くして、全国各民族の共同の繁栄を促進する」と規定している。「民族区域自治法」は一歩進んで上級国家機関が民族自治地方の発展加速を支持、援助することを法的義務と明確に規定している。中国政府は一連の措置をとって、「憲法」と「民族区域自治法」の規定を貫徹、実行している。

(一)民族自治地方の発展加速を際立った位置におく

国は国民経済と社会発展計画を制定する時、民族自治地方の特徴と必要を十分に尊重、配慮し、全国の発展の全体的配置と総体的要求に基づいて、民族自治地方の発展加速を際立った戦略的位置においている。西部地区と民族自治地方の発展を加速するため、中国政府は 2000 年から西部大開発戦略を実施しはじめ、全国の 5 つの自治区、 27 の自治州および 120 の自治県(旗)の中の 83 の自治県(旗)は西部大開発の範囲に組み入れられ、ほかに三つの自治州が国の西部大開発優遇政策を参照、享受している。西部大開発戦略実施 5 年来、西部地域は陸続と 60 件の重点プロジェクトを新規建設し、投資総額は約 8500 億元に達する。これは民族自治地方の経済・社会発展を促す上で重要な役割を発揮した。

(二)民族自治地方のインフラ建設プロジェクトを優先的かつ合理的に配置する

国は民族自治地方にインフラ建設と資源開発を配置する時、投資の比率と政策的銀行ローンの比率を適宜に高めている。民族自治地方の関係資金を必要とする場合は、異なる状況に基づいて関係資金の減免を配慮する。中国政府は第 1 次 5 カ年計画( 1953 年〜 1957 年)から、民族自治地方で一部の重点建設プロジェクト、例えば内蒙古の包頭鋼鉄基地、寧夏の青銅峡水力発電所、新疆の石油探査など、および四川=チベット、青海=チベット、新疆=チベットなどの幹線自動車道路と包頭=蘭州、蘭州=西寧、蘭州=ウルムチの主要鉄道幹線を配置した。 1990 年代には、寧夏の中衛から陝西の宝鶏までの鉄道、新疆の南疆鉄道、ターチョン空港など多くの大型交通施設を建設した。 2000 年以来、国は投資して「西部の天然ガスを東部に送る」、「西部の電力を東部に送る」、青海・チベット鉄道など多くの重要なプロジェクトを建設することを通じて、民族自治地方がいちだんと資源の強みを経済の強みに転化するように援助している。

国はチベットのインフラ建設と基礎産業の発展に対し特殊な按配を行っている。 1984 年から 1994 年にかけて、国はチベットの 43 件のプロジェクトに投資し、全国の 9 省・直轄市がその建設を援助し、投資総額は 4 億 8000 万元に達した。 1994 年から 2001 年にかけて、中央政府は 39 億元を直接投資して、 30 件のプロジェクトを建設し、東部の発達地区は対応支援として 9 億 6000 万元を投資して、 32 件のプロジェクトの建設を援助した。第 10 次 5 カ年計画( 2001 年〜 2005 年)期に、中央政府はチベットに 312 億元を投資して、 117 件のプロジェクトを建設している。

1999 年から、中国政府は相継いですべての民族自治地方に恩恵が及ぶ「貧困県の県外に延びる道路建設」、「西部の各県を結ぶアスファルト道路工事」、「県と県の間および農村の道路建設」などの交通インフラ建設を大規模に実施し、総額 1000 億元近くを投資して、 22 万 5000 キロの農村と県クラスの道路を新規建設、改造して、一部の少数民族地区の立ち遅れた交通条件を著しく改善した。

(三)民族自治地方への財政支持を強化する

国民経済の発展と財政収入の増加に従って、各クラスの政府は民族自治地方への財政転移支払いを強化している。国は一般的な財政転移支払い、特別財政転移支払い、民族優遇政策の財政転移支払いおよび国の確定したその他の方式で、民族自治地方への資金投入を増やし、民族自治地方の経済発展と社会進歩を促し、発達地区との格差をちくじ縮小している。 1955 年から、中国政府は「民族地区補助費」を設立し、 1964 年に「民族地区予備資金」などの特別資金を設立するとともに、少数民族地区の財政予備費の設立比率を高めるなどの優遇政策をとって、民族自治地方が経済を発展させ、人民の生活レベルを高めるのを援助している。 1980 年から 1988 年にかけて、中央の財政は内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの 5 自治区および雲南、貴州、青海など少数民族が比較的に集中している 3 省に対し、財政 10 %逓増の定額補助制度を実施した。 1994 年、国は分税制を主とする財政管理体制改革を実施したが、もとの少数民族地区への補助と特別資金給付政策はすべて保留されている。国は 1995 年から実行した過渡期の転移支払い規則の中に、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの 5 自治区と雲南、貴州、青海など少数民族が比較的に集中している 3 省およびその他の省の少数民族自治州に対し、少数民族地区を対象とする政策的転移支払いの内容を特に増設して、政策的傾斜を実行している。

(四)民族自治地方の生態建設と環境保全を重視する

中国政府の確定した「全国生態環境建設計画」の四つの重点地区と四つの重点プロジェクトはすべて少数民族地区にある。国の「天然林保護プロジェクト」、耕地を森林に戻し、牧場を草地に戻すプロジェクトは主に少数民族地区で実施されている。四川のルォルガイ湿地自然保護区、雲南のシーサンパンナ自然保護区など全国に 226 カ所ある国家クラス自然保護区のうち、半数近くが少数民族地区にある。このほか、国はまた新疆で「タリム盆地総合整備プロジェクト」、青海の玉樹チベット族自治州で「三江源保護プロジェクト」を実施するとともに、南部のカルスト地区の生態整備を非常に重視している。

(五)特殊な措置をとって民族自治地方の教育事業発展を援助する

国は民族自治地方が 9 年制義務教育を普及させ、各種の教育事業を発展させるのを援助している。民族自治地方は国が 9 年制義務教育を基本的に普及させ、青壮年の非識字者を一掃する難関突破計画を実施する重点的地区である。国が実施している「貧困地区義務教育プロジェクト」も、主に西部の少数民族地区を対象としている。同時に、国は民族大学および民族クラス、民族予科を創設して少数民族の学生を募集している。大学と中等専門学校が新入生を募集する時、少数民族の受験生に対し採用の要求と条件を適度に緩め、人口の特に少ない少数民族の受験生に特殊な配慮を与えている。現在、中国に民族大学が 13 校あり、主に少数民族の人材を育成している。同時に発達地区で民族中学校を開設するか普通中学に民族クラスを設けて、少数民族の生徒を募集している。中国政府は少数民族の高級中堅人材の育成を強化するため、 2005 年から少数民族地区で修士コースと博士コースの大学院生 2500 人を試験的に募集することを決定し、 2007 年までに年間募集人数が 5000 人、在校生総数が 1 万 5000 人の規模に達するように努める。

(六)少数民族の貧困地区に対する扶助を強化する

中国政府が 1980 年代中期から組織的、計画的な貧困扶助活動を大規模に展開して以来、少数民族と民族地区は終始国の重点的な扶助対象である。 1986 年に初めて確定された 331 の国家重点扶助貧困県のうち、民族自治地方の県は総数の 42.6 %を占める 141 県ある。国は 1994 年から「八・七貧困扶助難関突破計画」を実施し始め、その確定した 592 の国家重点扶助貧困県のうち、民族自治地方の県は総数の 43.4 %を占める 257 県ある。 2001 年から実施し始めた「中国農村貧困扶助開発綱要」は、またも民族地区を重点的な扶助対象に確定し、新たに確定された 592 の国家貧困扶助開発重点県の中で、民族自治地方(チベットを含まない)の県は総数の 45.1 %を占める 267 県に増えた。同時に、チベット全域は国の貧困扶助開発の重点的扶助範囲に組み入れられた。

1990 年、国は少数民族の貧困県を重点的に扶助するため、「少数民族貧困地区衣食扶助基金」を設立した。 1992 年、国は主に民族自治地方の発展と少数民族の生産と生活面の特殊な困難の解決に用いる「少数民族発展資金」を設立した。国は 2000 年から「辺境地区を繁栄させ、人民を富裕にする行動」を組織、実施し、人口がわりに少ない( 10 万人以下) 22 の少数民族に対し特殊な扶助措置をとって、重点的に辺境地区、人口のわりに少ない民族の集まり住む地区のインフラ建設および貧しい大衆の衣食問題を解決している。

(七)民族自治地方の社会事業への投入を増加する

国は民族自治地方の医療衛生事業への投入を強化し、少数民族地区の人民大衆の医療保障レベルを高めている。 2003 年、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットなどの 5 自治区に投入した医療衛生特別資金は累計 13 億 7000 万元に達し、主に公共医療衛生システム建設、農村の医療衛生インフラ建設、専門病院の建設、農村の合作医療、重大な疾病の予防・治療などに用いられている。

1998 年、中国政府はどの村もラジオを聴取し、テレビを視聴できるプロジェクトを実施し始め、中部地区の国家貧困扶助重点県と西部地区に特別補助を与えて、少数民族地区のラジオ・テレビ事業の発展状況を大いに改善した。 2003 年末までに合計 4 億 5000 万元の資金を補助し、 11 万 7345 の行政村の 7000 余万村民のラジオ聴取とテレビ視聴の問題を解決した。そのうち、内蒙古、新疆、広西、寧夏、チベットの 5 自治区と青海、甘粛、雲南、貴州、四川など少数民族がわりに集中している省では、 5 万 4365 の行政村がラジオ聴取・テレビ視聴プロジェクトを実施した。 2004 年、国はまた全国のすでに電力が通じている 50 世帯以上の自然村で、ラジオを聴取し、テレビを視聴できるプロジェクトの実施を始めたが、 2 年内にプロジェクトが 9 万件完成する予定で、そのうち、上述の少数民族地区の建設任務は 5 万 9000 件ある。

(八)民族自治地方の対外開放拡大を助成する

国は民族自治地方の生産企業の貿易自主経営権を拡大し、地方の強みをもつ製品の輸出を奨励し、優遇の国境貿易政策を実行している。国は民族自治地方が地理的位置と人文面の強みを生かして、陸地周辺諸国に対する開放と協力を拡大するのを奨励、支持している。 1992 年、中国政府は辺境沿い開放戦略を実行し始め、 13 の対外開放都市と 241 の 1 類開放港を確立し、 14 の辺境経済技術協力区を設置したが、そのほとんどは民族自治地方にある。

(九)発達地区と民族自治地方の対応支援を組織する

中国政府は先に富裕になった地区と民族が遅れた地区と民族を援助し、最終的には共に富裕になるように力を入れている。 1970 年代末から、中国政府は少数民族地区の経済・社会事業発展を援助するため、東部沿海の発達地区と西部地区の対応支援を組織し始めた。 1996 年は対応支援をさらに明確にし、北京が内蒙古を、山東が新疆を、福建が寧夏を、広東が広西を、全国がチベットをそれぞれ支援することを確定した。 1994 年から 2001 年にかけて、 15 の対応支援省および中央各部・委員会は 716 件のプロジェクト建設を無償援助し、 31 億 6000 万元(中央政府の投資を含まない、以下同じ)の資金を投入した。第 10 次 5 カ年計画期に、全国各地がチベットの建設プロジェクト 71 件を支援し、 10 億 6200 万元の資金を無償投入した。

(十)少数民族の生産と生活面の特殊な必要を配慮する

少数民族の風俗習慣を尊重し、各少数民族の生産と生活面の特殊な用品の必要に適応し、それを満たすため、国は特殊な民族貿易と民族特需用品生産供給政策を実行している。国は 1963 年から民族貿易企業に対し、利潤留保、自己資金、価格補助金を配慮するという「三つの配慮」政策を実行し始めた。 1997 年 6 月、国は第 9 次 5 カ年計画( 1996 年〜 2000 年)期に毎年中国人民銀行が民族貿易施設の建設と民族用品の指定生産企業の技術改造に用いる 1 億元の利息控除貸付けを提供し、県以下(県を含まない)の国有民族貿易企業および末端の供給販売協同組合の付加価値税免除などを含む民族貿易と民族用品生産面の新しい優遇政策を実行し始めた。 2003 年末現在、全国に少数民族特需用品の指定生産企業が 1378 社あり、これらの企業は流動資金貸付け利率、技術改良貸付け利子控除、税金減免などの面で優遇政策を享受している。少数民族の日常生活における茶などの特需用品の重要性にかんがみ、辺境販売茶などの少数民族特需用品の安定供給を保証するため、国は第 8 次 5 カ年計画( 1991 年〜 1995 年)期に辺境販売茶備蓄制度を確立した。 2002 年に、辺境販売茶の原料と製成品の備蓄管理を実行し、備蓄代理部門に貸付けを提供してそれを助成し、中央財政が備蓄に用いる貸付けの利息を負担するなどを内容とする「辺境販売茶備蓄管理規則」を制定した。

五、民族自治地方の諸事業の歴史的発展

新中国の成立前、少数民族地区の生産力レベルが低く、経済、社会、文化の発展がかなり立ち遅れ、近代的な工業・教育・医療がほとんどなく、インフラ建設が悪く、非識字者が人口の圧倒的多数を占め、ペスト、天然痘、マラリアなど各種の伝染病が流行した。少数民族の大衆は主に在来の農業と牧畜業に従事し、一部の地区はまだ焼畑耕作の原始的状態にあり、鉄器が広く使われない地区が一部あった。大衆の生活は非常に苦しく、特に広大な山岳地帯および砂漠・アルカリ地区の少数民族は、ほとんど毎年のように数カ月間食糧が尽きることがあった。少数民族の発展はひどく阻害され、絶滅に瀕する民族もあった。

新中国の成立後、特に改革・開放以来、民族自治地方の各民族人民は、国と発達地区の大きな援助と支持の下で、自らの強みを生かし、自力で事を運び、大いに奮起し、自己発展能力をたえず増強している。 50 余年の努力を経た今日では、中国の民族自治地方の各民族人民の生存と生活環境が明らかによくなり、経済と社会諸事業が急速に発展し、民族自治地方の各民族人民は全国人民とともに国の現代化建設のもたらす発展の成果を享受している。

(一)経済が急速に成長する

2003 年、中国の民族自治地方の国内総生産( GDP )は 1 兆 381 億元に達し、初めて 1 兆元の大台を突破した。 1994 年から 2003 年までの民族自治地方の GDP の年平均成長率は全国平均水準より約 1 ポイント高い 9.87 %に達した。民族自治地方の GDP が全国の GDP に占める比重は、 1994 年は 8.5 %だったが、 2003 年は 8.9 %に上昇した。 1994 年の民族自治地方の 1 人当たり GDP は全国の 1 人当たり GDP の 63.5 %であったが、 2003 年は 66.3 %に上昇した。 2003 年、民族自治地方の完成した地方財政収入は 1994 年比 2.3 倍増の 674 億元に達した。

2003 年、新疆地区の総生産は 1993 年比 0.06 ポイント増の 1877 億 6100 万元に達し、全国 GDP の 1.60 %を占め、チベット地区の総生産は 1993 年比 0.04 ポイント増の 184 億 5000 万元に達し、全国 GDP の 0.16 %を占めた。新疆の 1 人当たり GDP は 9700 元で、全国の 1 人当たり GDP の 106.58 %に相当し、チベットの 1 人当たり GDP は 6871 元で、全国の 1 人当たり GDP の 75.5 %に相当するものであった。

(二)人民生活水準が著しく向上する

2003 年、民族自治地方の農民家庭の 1 人あたり純収入は 1895 元に達し、 1994 年より 1.31 倍増加した。新疆の農民家庭の 1 人あたり純収入は 2106.19 元で、全国農民家庭の 1 人当たり純収入の 80.32 %に相当し、チベットの農民家庭の 1 人当たり純収入は 1690.76 元で、全国農民家庭の 1 人当たり純収入の 64.48 %に相当するものであった。

2003 年、民族自治地方の住民の住宅条件は引き続き改善され、都市部住民の 1 人当たり居住面積は 19.8 平方メートル、農村部住民の 1 人当たり居住面積は 22.9 平方メートルに達した。 2003 年末現在の民族自治地方の各種の預金残高は 1 兆 1750 億元に達し、そのうち、都市・農村住民の貯蓄預金の年末残高は 7353 億元で、 1994 年より 3 倍増加した。

(三)インフラ施設が著しく改善される

2003 年、民族自治地方の社会固定資産投資は 4734 億元を完成し、 1994 年より 2.7 倍増加し、そのうち、基本建設投資は 2837 億元を完成し、 1994 年より 3.2 倍増加した。 2003 年末現在、民族自治地方の固定電話ユーザーは 2273 万戸に達し、そのうち、都市部住民の電話ユーザーは 1532 万戸、携帯電話ユーザーは 2307 万戸に達した。 2003 年の民族自治地方の国有鉄道の営業距離は 1 万 5100 キロで、 1952 年より 3 倍近く増加し、道路の開通距離は 54 万 7800 キロで、 1952 年より 20 倍増加した。内蒙古、寧夏、新疆などの都市化レベルは全国平均レベルを上回っている。

(四)伝統的文化が保護、発揚される

1950 年代から 1980 年代にかけて、国は 3000 余名の専門家と学者を組織して、『中国の少数民族』、『中国少数民族略史叢書』、『中国少数民族言語簡誌叢書』、『中国少数民族自治地方概況叢書』、『中国少数民族社会歴史調査資料叢書』など 5 種類の少数民族叢書の編集・出版作業を完成した。叢書は合計 403 冊、 9000 余万字に達し、合計 50 余万冊を発行した。現在、中国の 55 の少数民族はいずれも自民族の文字で記載された略史がある。

中国の 55 の少数民族のうち、回族、満州族が漢語を使用するほか、残りの 53 の民族はいずれも自民族の言語がある。蒙古、チベット、ウイグル、朝鮮、イなどの少数民族文字はコードアルファベット、フォント、キーボードの国家基準がある。蒙古、チベット、ウイグル、朝鮮などの少数民族文字ソフトはすでに Windows システムでの運行とレーザー製版を実現した。民族文字を応用した各種のソフトウェアが次々と開発され、民族文字の識別とコンピューターによる補助翻訳も多くの科学研究成果をあげている。

国は専門機構を設けて、「ゴザール」(チベット族民間の講談体の長編英雄史詩)、「ジャンゴール」(蒙古族の英雄史詩)、「マナス」(キルギス族の伝記史詩)など少数民族の三大英雄史詩について、計画的、組織的に収集・整理・翻訳・研究作業を行っている。ここ 10 年来、国はチベット語の『大蔵経』合計 160 冊の校勘、出版を支持するため、 3000 余万元を支出した。国は多額の資金を投じてラサのドブガイ寺、セラ寺、カンタン寺、青海のタル寺、新疆のキズル千仏洞など多くの国家級重点文化財・古跡を修繕している。 1989 年から 1994 年にかけて、国は資金 5500 万元、金 1000 キロを投じて、有名なポタラ宮に対し第 1 期の修繕を行った。 2001 年から、国はまた 3 億 3000 万元の特別資金を支出して、ポタラ宮の第 2 期修繕などのプロジェクトを実施した。

国の援助と民族自治地方の努力の下で、 2003 年現在、少数民族文字で出版された図書は 4787 種、印刷部数は 5034 万冊、雑誌は 205 種、印刷部数は 781 万冊、新聞は 88 種、印刷部数は 1 億 3130 万部に達し、民族自治地方所属の芸術公演団体は 513 、図書館は 566 、博物館は 163 ある。 2003 年、民族自治地方に民族言語で放送する放送局が 122 、民族言語で放映するテレビ局が 111

あり、これらの放送局とテレビ局はそれぞれ 15 種と 11 種の少数民族言語で番組を放送、放映している。ほかに放送局が 73 、ラジオ送信所が 523 、テレビ局が 94 、テレビ送信所が 830 、ラジオ・テレビ衛星受信中継システムが 25 万 4900 ある。

(五)教育レベルが著しく向上する

2003 年、民族自治地方に各級と各種の学校が 8 万 3726 校あり、在校生が 2943 万人で、 1952 年より 5 倍、 1984 年より 29.7 %、 1994 年より 10.6 %それぞれ増加し、各種の専任教師が 154 万 1000 人で、 1994 年より 16.0 %増加した。教育事業の発展で、少数民族が教育を受ける年限は著しく長くなった。 2000 年の第五回全国国勢調査によると、朝鮮族、満州族、蒙古族、カザフ族など 14 民族の教育を受ける年限は全国平均レベルより長いものである。

(六)医療衛生事業が持続的に進歩する

2003 年末現在、民族自治地方に医療衛生機構が 1 万 5230 カ所、ベッドが 38 万床、医療衛生技術者が 46 万人あり、 1952 年と比べてそれぞれ 12 倍、約 66 倍、約 25 倍増加し、衛生防疫機構と特別予防治療施設が 934 、婦女子保健所(ステーション)が 371 ある。 2003 年現在、民族自治地方の農村に郷診療所が 7234 カ所、ベッドが 5 万 5000 床ある。医療事業の発展により、少数民族人口の予想寿命が著しく長くなり、そのうち全国の平均水準 71.40 歳より長い少数民族が 13 あり、漢民族の 73.34 歳より長い少数民族が 7 つある。

(七)貿易と観光業が急速に発展する

2003 年、民族自治地方の輸出入総額は 136 億ドルに達し、そのうち、輸出額は 79 億ドル、輸入額は 57 億ドルであり、外資企業は 3263 社あり、年間の外資実際利用額は 20 億ドルに達した。国内観光者数は延べ 1 億 2333 万人で、観光収入は 563 億元に達し、国際観光者数は延べ 215 万人で、観光による外貨収入は 6 億ドルに達した。

結語

50 数年来の実践が証明しているように、中国の民族区域自治制度とその実践は巨大な成功を収めた。民族区域自治を通じて中国の民族問題を解決することは、中国の国情と各民族の共通の利益に合致する正しい選択である。

中国は 13 億の人口を擁する発展途上の大国である。改革・開放と現代化建設の過程で、国と民族自治地方がすでに多種の措置をとって、少数民族地区の経済と社会の発展を推進しているにもかかわらず、歴史的基礎と地理的条件など諸々の要素の制約と影響を受けて、少数民族がわりに集中的に分布している西部地区では、経済と社会の発展レベルは東部の発達地区より低く、特に一部の辺ぴな地区ではわりに立ち遅れている。民族区域自治を堅持し、それを完全なものにし、制度の強みを十分に生かし、絶えず民族地区の経済と社会の発展レベルを高めることは、新しい世紀に中国がいくらかゆとりのある社会を全面的に建設するにあたってとくに力を入れて解決しなければならない問題である。

中国政府は自国の国情から出発し、人間を本とする全面的、協調的、持続可能な科学的発展観を堅持し、民族区域自治制度の具体的な実現形式をさらに一歩進んで模索し、健全にし、「民族区域自治法」の関係法律・法規を整備し、民族区域自治制度を実行する物質的基礎をたえず充実させ、少数民族と民族地区の経済と社会の全面的発展を促進するだろう。