2005 No.10
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――中国は13億の人口を抱え、うち9億が農民という農業大国であり、農業の発展が政府の基本国策である。だが、長年にわたり先送りされてきた三農(農業・農村・農民)問題に政府は頭を悩まされている。中でも、主要な問題となるのが農民の問題だ。この問題を円滑に解決することは経済の発展、更には社会の安定と国の富強に係わっている。農民問題が出現したのは何故か。この問題のカギとなるのは何か。解決の難しさはどこにあるのか。

政府は現在、農民問題の解決に全力を挙げている。実際的な成果を重視すると共に、農民に実益をもたらし、農民の様々な問題を着実に解決するため一連の政策・措置を打ち出した。

農民問題が政府の心痛

李子

国家統計局の李徳水局長は年初、「農民の1人平均純収入は2004年に前年比314元増の2936元に達した。実質伸び率は6.8%と、初めて都市部住民の伸び幅を上回り、1997年以来最も速い伸びを記録した」と発表。このニュースは、農民問題に一貫して関心を寄せてきた温家宝総理の心を多少なりとも癒すものとなった。

中国は13億の人口を抱え、うち9億が農民という農業大国であり、農業の発展が政府の基本国策である。1978年に実施された改革開放は農村から始まった。20年余りの改革開放を経て経済は急成長を遂げ、総合国力も日増しに増強されている。だが、農業は改革開放と歩調を合わせて発展してはこなかった。目覚しい成果を収めたものの、問題は依然として少なくなく、三農問題は長年にわたり政府の頭を悩ませてきた重要な問題だ。毎年のように政府の議題に上るなど、全国人民代表大会(全人大)代表や全国政治協商会議(政協)委員が最も関心を寄せる話題の1つでもある。

問題出現の原因は

中国は農業大国であり、改革開放は当初、農村から開始された。1982年、政府は農村で共同生産請負制度を実施した。土地所有権と経営権とを分離することで、農民に生産・経営自主権を所有させることを決定。この政策によって農民の積極性が引き出され、農村経済に活力がもたらされたことから、農業生産と農民の収入は短期間に爆発的に増大した。農業は改革開放後、長期にわたる不足状態から農作へと歴史的転換を実現し、大多数の農民がこれにより実益を得ることができた。

だが、農業と農村の発展をそれまで制約していた深層的な問題が解決されてこなかったため、短期回復的な増大が続いたのは僅か7年に過ぎない。以後、長期にわたって都市部と農村部の収入の格差が拡大し続けたことから、都市と農村という二元化構造の問題が益々顕著になっていった。農業は依然として国民経済の発展にとってネックであり、農村経済と社会発展が著しく遅れた局面は根本的には変わっておらず、農村の改革と発展は今尚、困難かつ解決すべき段階に置かれている。

国務院発展研究センター副主任で、著名な農業問題専門家である陳錫文研究員は「特定の歴史的条件の下だが、国が都市を発展させると共に工業建設を進める過程において、農民が果たした役割は非常に大きい。金額にすれば、専門家の推算では6000億から8000億元に上るほど、農民は都市化と工業化に貢献したが、農民は長年にわたりその成果を十分に享受することはなかった」と強調する。

中国科学院農業政策研究センターの黄季焜教授は「農業社会から工業社会へと転換する過程においては、経済が成長するに伴い農業比率は徐々に低下し、また農業人口も減少し続けていく」と指摘。

経済転換の過程において、多くの農民が土地を捨てて都市に進出し労働者となったが、都市と農村という二元化構造の制約を受けて彼らは依然として「農民」労働者のままである。人口統計上、今も農民だ。

分散経営という農村体制のため、農民は市場において劣勢に置かれている。労働コストは高く、労働効率は低く、経営の規模化は進んでいない。多くの農民がその日暮らしであり、社会保障システムもまだ確立されていない。

我々が実施してきた改革方案は、全般的に言えば都市部住民により多くの利益を受けさせるもので、農村部での受益は少ない。政策の選択、発展戦略の選択も長期にわたって都市部により偏ったものであり、農村部に対してのものではなかった。

究極的な問題は

三農の中で主要な問題となるのが農民の問題だ。この問題においては収入の低さ、収入増の鈍化が主要な問題となっている。

社会主義現代化建設では当然、十数億の人民、特に貧困状態に置かれ人口の大多数を占める農民に恩恵がもたらされるべきだ。この数年の経済高度成長の結果、農民1人当たりの平均収入はやや増大したものの、都市部住民の収入と比較すると、増加速度が鈍化していることから、両者の格差は年を追うごとに拡大し続けている。2003年の農民1人平均収入を1998年と比較すると460元増加し、年平均にして92元の増。だが、同期の都市部住民1人平均可処分所得は3047元の増で、年平均609元ずつ増えている。農民の1人平均収入は2004年に過去最高の2936元に達したが、それでも北京の一般会社員の1カ月の給料水準に過ぎない。

この数字は全国平均であり、そのかなりの部分は出稼ぎや農業以外の収入によるものだ。専業農家は農村部全体の60%を占めており、この5年来、大多数の農民の実収入は増えておらず、減少したケースすらある。

「都市・農村部との格差は、世界第一だ」。社会科学院経済研究所の李実研究員によると、調査で2004年の格差が1:2.9であることが分かった。李研究員は「これは実際的な格差を反映したものではない。都市部住民の現金以外の収入、例えば公費による医療や様々な物資の配給などが考慮されていないからだ。こうした要素を計算に入れれば、格差は4から5倍、6倍に達する可能性がある」と指摘する。

農民は国の工業化、現代化の過程において大きな貢献を果たし、大多数の農民は収入が増大し生活水準も向上したものの、経済の高成長に見合った利益は得ていない。全国の小売総額に対して、農民の消費レベルを反映する「県と県以下の小売額」が占める比率は年々低下している。

1978年を見ると、農業人口が総人口に占める比率は87%で、農民の小売総額は全国の67.6%を占めている。1990年には前者は79.1%で、後者は53.2%。2003年になると前者は70.8%、後者は35.1%まで落ち込んだ。農民の消費レベルは都市部住民に比べ10〜15年遅れている。

◆教育難

2000年に農村部の15歳以上が教育を受けた平均期間は6.85年で、都市部に比べ3年下回る。3大産業従事者の平均教育期間では、農業従事者が最低。2000年の非識字者は、西部の農村部と少数民族地区、国指定の貧困県で4分の3を占める。2002年に拠出された教育関連費用は5800億元に上るが、都市部向けが77%、人口の70%以上を占める農村部は僅か23%に過ぎない。

◆治療難

都市部と農村部とでは、公共衛生施設の整備面でかなりの格差がある。農民は全人口の70%を占めるが、関連施設不足は同30%に達する。ベッド数では、都市部で千人当たり3.5床なのに対し、農村部では同1床以下。衛生技師は同5名以上、農村部では同1名。医療保険加入率を見ると都市部は42.09%だが、農村部は僅か9.58%に過ぎない。貧困地区を含めた農村部では今なお、約1億3000万人が十分な治療を受けられない状態にある。

◆電話普及率の低さ

都市部では携帯電話の世代交代が続いているが、農村部での固定電話普及率は依然、都市部の90年代初期のレベルに留まったまま。こうした状態が知識や情報、技術、考え方などの面での差異を拡大させている。

◆社会的地位の低下

経済学者の胡鞍鋼氏は都市・農村部という二元経済社会構造について「これが現代の、中国社会の基本的な問題となっている。経済面から見ると、農業は各種産業の中で低効率、高リスク(市場・自然災害リスク)の弱体産業だ。政治面から見ると、農民は人口の最大部分を占めながら、むしろ政治への参与権や利益の代表権を持てないなど最も冷遇されている階層であり、農民は非農民に比べ全人代の代表を選ぶ率は4対1と多い。社会的に見ると、農民は社会での不公平、機会の不均等、待遇の不公正、社会的な地位の低下などに見られるように、最も差別視されてきた階層だ。

農民労働者は全国各地で生活している。彼らは建設作業員など都市部住民が嫌がる仕事に従事するなど、都市社会の様々な面で貢献しながらも、かなり多くの農民が賃金の遅配や低賃金、差別、医療保険の未加入、劣悪な居住条件、子女の入学、生活習慣の違いなどで様々な問題に直面し、都市生活に溶け込むことが出来ないのが現状だ。

解決の難しさは

政府は長年にわたり一貫して三農問題を重視してきたが、解決は何故、これほど難しいのか。

陳錫文研究員は「農業問題は主に、農業をいかに加速するかという現代化の問題である。農村問題で非常に重要なのは、政治的にいかに農村の社会管理体制を解決するか、社会的にいかに農村の教育、医療といった社会事業の発展の問題を解決するかということだ。この三者は関係しながらも、また違いもある。三農問題解決の過程において、特に改革開放以降、様々な面で大きな進展を遂げてはきたが、20世紀から21世紀にかけて、特に農産品市場が変化して以降の三農問題は、例えば農産品が長年にわたり供給過剰の状態にある、農村の社会事業を発展させるのは難しい、といった問題が先鋭化してきた」と指摘する。

過去、三農問題の解決に当たっては、農村内部を考慮することに重点が置かれてきた。だが、この問題を解決するには、現代的農業を確立すると共に、農村経済の発展を更に促進して農民の収入を増加させていく必要があり、問題の解決を、農村の内部に封じ込めておくのは不可能だ。政府は既に解決方法を転換している。三農問題を都市部の発展と関連づけて解決する、というものだ。都市化プロセスを加速し、多くの農民を都市部に移転させて非農業産業に従事させることで、都市部と農村部が統一された社会的枠組みを形成していく。その過程において、三農問題を段階的に解決するための新たな方策を模索することにしている。