2005 No.12
(0314 -0320)
 

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>>経 済

ゴールデン・エイジズに入る中国の造船業

才 順

地球規模の鋼材価格の高騰も、ここ数年の中国造船業の急速な発展に歯止めをかけることにはならなかった。世界の造船業が好転するとともに、中国の造船業は長年にわたる蓄積を経て、インフラ施設や造船能力などの面で著しく向上したこともあって、ここ数年の船舶建造量が急増し、世界市場におけるシェアも上昇を続けてきた。OECD造船作業部会の試算データでは、2004年の中国の船舶建造量は800万トンの大台を突破し世界の市場シェアの15%に達し、2005年には1千万トンを突破し世界シェアの18%に達するという。ちなみに2003年の船舶建造量は世界シェアの11.8%で、ここ十年間5%ないし7%にとどまっていた局面を突破した。

専門家の見方では、造船業は労働集約型・資本集約型・技術集約型産業であり、現在の中国の重工業・重加工業の中でも世界の前列を行き、世界の先進水準と競争できる業種である。先進国と比べれば中国の人件費コストは低いが、その他の発展途上国と比べれば中国の技術や資金及び工業インフラは相対的に強い。中国はほかの先進諸国が兼ね備えることができない総合的優位を持っているのである。

中国の造船業の総合的優位性がすでに顕在化している。造船量は1995年に初めてドイツを上回り、世界シェアの5%を占め、韓国と日本に次いで世界第3の造船大国となり、また9年連続世界3位を占めている。いまでは船舶の輸出は中国造船総量の70%以上を占め、アメリカやイギリス、ドイツ、日本、フランスなど先進国を含めた90余りの国・地域に進出しており、その半分以上はヨーロッパに輸出されている。

学者の封順氏は次のように語っている。

中国造船業の勃興はかなりの度合において自国経済の高度成長によってもたらされたものである。幾多の歴史的な経験から明らかなように、ある国の造船業の振興はほとんどその国の経済がテークオフし、貨物貿易が急増するなかでなし遂げられるものである。中国の輸出入貿易の伸びはすでに国際海運業の動きに影響を及ぼすようになった。世界の海上輸送量の半分を占める雑貨・バラ積み貨物の流通量がここ二年48%も増えたのは、主に中国が鉄鉱石など原材料を大量に輸入しているからである。中国のコンテナ年間取扱量も世界一となった。また、中国は世界二位の原油輸入国であり、その輸入原油の90%以上は海上輸送によるため、世界のタンカーによる輸送量の3分の1を占めることになった。

専門家の予測では、中国の国産タンカーによる石油輸送の割合は今年は25%に達するが、2010年には40%、2020年には60%に達することになっている。また、中国のVLCC、SUEZMAX、AFRAMAXの三つの船種に対する総需要量は今年は35隻に達し、金額に換算すれば人民元150億元となるが、2010年には52隻、230億元、2015年には97隻、430億元に達すると予測されている。

2003年以来、中国の関連部・委員会は何度も国内の3大石油生産メーカー及び主要な石油運送メーカー4社と共同で会議を開き、2005年には5000万トン、2010年には7500万トン、2020年には1億3000トンの輸入原油を運ぶための大型船団をつくる計画を立てた。

国内の造船業をサポートするために、中央政府は国内の船主が国内の造船所に発注することを奨励すると同時に、造船価格を相殺するため、船舶価格の17%に財政補助を与えている。また、大型タンカーを建造する造船所には全額低利貸付を提供している。

政府はまた渤海湾、長江河口、珠江河口に三つの造船基地の設置を決め、2010年に大型船舶工業グループを主体とし、この3大造船基地を拠り所とし、造船業と関連企業がバランスの取れた形で発展する産業構造をつくりあげる意向を示した。

最近、国家発展・改革委員会は2015年以前に中国造船業を一段と発展させるという計画を打ち出すと同時に、造船業の戦略的構造調整を推し進めるための税収面や融資面などの優遇措置の実施を始めた。

国防科学技術工業委員会も次のような目標を打ち出した。つまり、10年から15年の発展を通じて、中国の造船業の総合的競争力を日本と韓国の当時のレベルに近づかせるということがそれである。造船総量は2015年には2400万トンに達し、世界シェアの35%を占め、保有トン数は世界一となる。

今後十年間は中国造船業発展のゴールデン・エイジズになると思われる。現在の中国の造船大手2社----中国船舶重工業集団公司(主に中国北部地域の造船企業を管轄)と中国船舶工業集団公司(主に上海をはじめ中国南部地域の造船企業を管轄)では新規船舶受注量が大幅に増え、主要造船企業の生産スケジュールはすでに2007年の上半期まで組まれている。

ヨーロッパ市場では船舶需要量がここ数年来増え続け、中国の新規造船受注量もそれに伴って増え、中国の船舶輸出の最大の市場となっている。世界海運業界が輸送の安全性を一段と重視するようになったため、一部の中古船舶の廃棄処分が加速されたことも、中国の造船業により多くのビジネスチャンスをもたらしている。

資料によれば、国内外の需要が盛んなため、今後10年ないし20年の世界造船市場の需要量の見通しは堅調と予測されている。2006年から2015年までの世界新規船舶受注トン数は年平均5000万トンに達し、それまでの10年間の年平均生産量を20%以上も上回り、3大主力船種と言われるバラ積み貨物船、大型コンテナ船、LNG(液化天然ガス)船の需要もものすごい。今後十年間の中国の新規船舶需要量は年平均700万トンと見られ、海洋開発設備市場の展望も明るくなり、海底ボーリングだけでも70余基を必要としている。

現在、韓国と日本の造船業はその発展の重点を新興造船国が建造できないハイテク性と高付加価値を備えた船舶の開発に置くことになった。ヨーロッパは人件費コストが高すぎることや、韓国、日本などの造船業の台頭といった影響を受けて、その世界シェアは下落し続け、1993年の23%から現在ではわずか15%となっている。ドイツは現在はヨーロッパ最大の造船国であるが、造船規模は1990年以前の西ドイツ(ドイツ連邦共和国)のレベルの3分の2にしかならず、世界シェアの5%を占め、世界4位にランクされている。スウェーデンは30年前には日本に次ぐ世界2位の造船大国であったが、現在は船舶修理工場や海軍艦艇修理建造工場及び各種の船舶用設備生産企業が数社を残すのみとなっている。ギリシアも現在は造船所が数社残っているだけであるため、船舶を大量に輸入せざるを得なくなっている。にもかかわらず、ヨーロッパは依然として高付加価値を備えた船舶用設備の強みを保ち続け、一流の製品とブランド品を持っている。また、ドイツやノルウェーなどの国では船舶用設備の60%は輸出されている。中国の造船業には人件費コストが低いことと大型ドックの開発、建造という強みがある。1998年以来、中国では設備投資は連年2ケタの伸びを続け、世界の先進水準並みのバース、港や大型埠頭などのインフラもしっかりしており、人件費コストは日本と韓国の10分の1から15分の1にしかならないが、人件費コストは造船費用の30%前後を占めるものである。したがって、中国は汎用船と設備の面で価格競争力を持っていると言えよう。

中国船舶経済研究センターの王文軍氏は次のように語っている。

この新しい構造の中で、中国はすでに国際造船市場で成長性が最も高い国となり、より高い目標へと邁進する基点と能力を持つようになった。経済環境のほか、低いコストによって高いコストに取って代わることが世界造船業のシフトを推進する根本的な要素となっている。一方、中国の造船業の発展は低い人件費コストのみではとうてい不十分である。中国にとっては生産効率の低下や規模効率性の低下及び補助設備の国産化率の低下などが低い人件費コストのメリットを相殺するものとなっている。

ある専門家の話によると、一人当たりの年間造船トン数、年間生産額、年間生産性という三つの指標について言えば、中国の造船企業と外国の先進的な造船所とのギャップは5ないし7倍もなる。中国では船舶一隻当たりの建造労働量、造船用ドックの一カ所当たりの年度造船数と造船労働生産性はそれぞれ日本の5倍、5分の1、10分の1となっているが、生産額1万ドル当たりの電気消費量は日本の10倍にも達する。

中国船舶業種協会会長の王栄生氏は次のように語っている。

中国の造船業全体のレベルは大体1990年代初め頃の国際レベルにしか相当しない。超大型コンテナ船やLPG(液化石油ガス)船、LNG(液化天然ガス)船、豪華客船などハイテク性と高付加価値を備えた船舶はまだ開発段階にある。造船関連業種の技術水準の低下が中国造船業の発展を制約する最大の障害となっている。日本や韓国など世界の主要な造船国にはいずれもよく整備された強力な関連工業が揃っている。日本の船舶用設備業の国産化率は97.8%にも達しており、輸出も大量に行われ、年間生産額は80億ドルに達している。韓国の船舶用設備業の歴史はそれほど長くはないが、発展テンポは速くなっており、国産化率も80%前後に達している。関連工業のレベルが低いため、中国の造船業はヨーロッパや日本、韓国などの国から関連製品を輸入せざるを得ず、業種の収益もそのために大幅に減少している。

低い人件費コストという中国の造船業の強みも国内の経済発展と賃金水準の上昇に伴って弱体化し、そのうちにはゼロとなりかねない。韓国の造船業界の専門家は、今後の十年間には、韓国と中国の造船企業のこの二つの価格差が大いに縮まると予測している。

現在、造船業の国際間の産業移転には、かつての日本から韓国への技術移転とはだいぶ異なり、技術と管理面の強みがさらに明らかになっている。専門家の分析では、十年にわたるゴールデン・エイジズの終了後において、中国が造船業を発展させようと考えるなら、ハイテク性と高付加価値を備えた船舶の開発に力を入れなければならない。そうすれば、中国は現有の強みが存在しなくなっても、産業のグレートアップで産業移転によって造船業にもたらされる損失をカバーすることができる。昨年8月、上海滬東中華造船グループがLNG運搬船2隻の建造を受注したことがそれである。これは中国の造船企業が初めて受注した技術的難度の最も高いものでもある。