2005 No.12
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「京都議定書」、中国にどんな影響を
及ぼすのか?

中国は更に厳しくなる温室ガス排出規制によって、クリーンな開発を速めるチャンスに恵まれるとともに、経済の発展に影響を及ぼす挑戦に直面することにもなる。

蘭辛珍

「京都議定書」の「国連気候変動枠組条約」が2月16日、正式に発効した。「京都議定書」の発効は締約国の一つである中国に、どのような影響を及ぼすのか。本誌記者の取材を受けた何人かの専門家や学者は中国にとってはチャンスが存在するとともに挑戦に直面することにもなると見ている。

加速するクリーンな開発

「京都議定書」発効以前の数カ月間に、山西省晋城の人たちを悩ませていた排気ガス汚染に、世界銀行は大きなビジネスチャンスを見って取った。

世銀と晋城石炭業グループは2004年12月、「炭素基金排出削減量購入合意」に調印し、回収した炭層ガスが新規発電所の発電に利用された後、これによって生じたものと認証された二酸化炭素の排出削減量は世銀原炭基金が1900万ドルで購入し、それはもと炭素基金加盟国の温室効果ガス削減量とされ、2月16日から、世銀と晋城石炭業グループ二酸化炭素排出削減指標の合意が実施されることになった。

中国建設部の仇保興副部長によると、「京都議定書」が中国にもたらす直接の利益はクリーンな開発が加速されることである。

「京都議定書」に基づいて、先進国はクリーン開発メカニズム (CDM)を通じて温室効果ガスの排出量を削減することができる。CDMの中核的な内容は、先進国が資金と技術を提供する形で、発展途上国と協力して、発展途上国で温室効果ガス排出削減効果のあるプロジェクトを推進し、プロジェクトによってもたらされた温室効果ガスの削減排出量は先進国の実績と見なされ、先進国が「京都議定書」で約束した定額の履行と相殺することになる。

世銀と晋城石炭業グループの協力はCDMのもとで、中国で実施された最初の環境保全による排出量削減購入指標プロジェクトである。世銀が中国で購入した最初の環境保全による排出量削減業務でもある。

国家環境保護総局の祝光耀副局長は「CDMはともに利益をあげる協力メカニズムである」と語り、さらに次のように述べた。

中国の毎年の排出量削減による貿易額は10億ドルを超えると予測されている。中国がCDMを繰り広げるうえで四つの潜在的な国際協力分野がある。一、工業企業の汚染予防対策と循環経済分野。二、都市の家庭ゴミ処理の分野。三、中国ではオゾン層の物質、温室効果ガスを消耗することが大大的に繰り広げられており、CDMとの協力の大きな市場とすばらしい支えとなる条件が備わっている。四、中国は世界において生態系整備の範囲と度合いが最大の国の一つであり、植樹造林、草原整備と管理の措置は温室効果ガスの排出量を削減するうえでの強みとなり、CDMとの協力の可能性が大きくなる。

中国再生エネルギー専門委員会の李俊峰秘書長の話では、「京都議定書」の影響のもとで、風力エネルギー、太陽エネルギーなどの新エネルギー産業には明るい展望が見られるようになり、再生エネルギー産業の発展が新しい契機を迎えることになる。そのため、「京都議定書」はより深層次元において中国のエネルギー構造の変革を促すことになる。

大きくなる工業へのプレッシャー

中国社会科学院持続可能発展研究センターの推測によると、中国は二酸化炭素排出量において2003年〜2025年に、アメリカを超える世界最大の二酸化炭素排出国となる。

中国の政策決定者はそれを懸念している。「京都議定書」は中国に二酸化炭素排出量を削減する要求をまだ提起してはいないが、中国政府はかなり前から大気汚染軽減の仕事に取り掛かっており、エネルギー利用効率の向上に努め、生産活動における温室効果ガス排出量を削減している。

清華大学グローバル気候変化研究所の劉徳順副所長の話によると、現在中国の温室効果ガス排出量がすでに世界で二番目にあるため、中国の持続的発展にマイナスとなっており、たとえ排出量削減が義務付けられていなくても、中国は世界各国に仲間入りし、温室効果ガス排出量削減に寄与することになろう」。

中国では、コークス化、火力発電、製鋼、石油化学などは温室効果ガス発生量の最も多い産業であるため、「京都議定書」実施後に衝撃を受ける産業の中で、火力発電企業、鉄鋼企業、石油化学企業などは最も大きな影響を受け、その次は人造繊維、セメント業と製紙業である。

経済成長は恐らく影響を受ける

『チャイナ・ビジネス・ウィークリー』によると、中国は経済発展において、炭素含有鉱物の燃料が増えつつあるため、今のようなレベルで二酸化炭素排出量を削減する可能性はない。中国ではエネルギー高消耗の重工業が急速に発展しており、同時に先進国はエネルギー高消耗の工業を中国に移転しているため、中国が温室効果ガス排出量削減を緩めるなら、経済成長のテンポに脅威を及ぼすことになりかねない。

国家環境保護局CDMプロジェクトグループ・リーダーの陸国強氏は、中国の経済発展は持続的なエネルギー供給を必要とし、温室効果ガス排出量が引き続き増えることになり、その時になってルールが変われれば、中国は大きなリスクに直面することになる。その上中国が高排出量によって獲得した低生産量の製品は、「京都議定書」に基づけば恐らく国際貿易の紛争のタネとなり、先進国の貿易障壁の設置を誘発することになろう。

国外の排出量の高い企業の進出を防ぐ

清華大学グローバル気候変化研究所副所長の劉徳順教授は、国外の排出量の高い企業の進出を防ぐことは中国の政府関係者が注目すべき問題の一つであるとし、次のように述べた。

一部の先進国は排出量削減義務を履行するため、産業の構造調整を加速し、主にハイテク産業と高付加価値のサービス業を発展させ、エネルギー高消耗、高い排出量、低付加価値の基礎産業を発展途上国に移転し、発展途上国からこれらの製品を輸入することになる。「京都議定書」実施後、さらに多くの産業が移転されると予測されている。

いったんこれらの企業が中国に移転されれば、短期間に地方経済にメリットをもたらすことになるかもしれないが、これらの投資規模の大きなプロジェクトは50年内に出て行くことはない。

中国社会科学院発展研究センターの潘家華氏は、これらの産業が大掛かりに進出すれば、中国は第一段階と第二段階の公約期には「京都議定書」を履行しなくてもよいが、第三公約期になれば、現在誘致した投資に「縛られ」ことになるかもしれない。これらの産業をまた移転させるならば、就業と経済発展に大きな衝撃をもたらすことになり、中国はさらに大きなプレッシャーにさらされことになろうと語った。